EVの常識を変えかねないLi AutoのMEGA
中国のLi Autoが初のバッテリーEVとなるミニバンのMEGAを正式発売しました。最大充電出力520kW、充電時間12分という地球上最速級の充電スピードを実現しながら、ミニバンの究極の利便性を追求することによって、中国市場に新たなEVブームを引き起こす可能性を秘めた、2024年にもっとも注目に値する新型EVの最新動向についてを解説します。
今回取り上げていきたいのが、2014年に立ち上がった中国のEVスタートアップであるLi Autoです。すでに4種種ものEVを発売することによって、2023年12月単体における中国国内の販売台数は5万台オーバーを実現しました。
そして、2024年シーズンについては、年間で80万台という販売台数目標を掲げてきており、この販売台数は、日本のマツダやスバルなどに近づく規模感であり、まさに現在、中国EVスタートアップとしてはもっとも成長著しい自動車メーカーとなります。
他方で、このLi Autoについてはこれまで、レンジエクステンダーEVのみをラインアップ。あくまでも、Li Autoの販売の中心であるファミリーの富裕層に対しては、現状のバッテリーEVの性能では、航続距離や充電時間という観点で、まだ満足させることができないとして、バッテリーEVの販売をあえて遅らせていたという背景が存在します。
そして、そのLi Autoがついに満を持して正式発売をスタートさせてきたのが、初のバッテリーEVであるMEGAです。
MEGAは、全長5350mm、全幅1965mm、全高1850mm、ホイールベースが3300mmという巨大なミニバンです。
これまで中国市場においては、ミニバンはそこまで大きなセグメントではなかったものの、Zeekr 009やDenza D9など、ミニバンEVがスマッシュヒットを記録。現在、電気自動車によって、ミニバンセグメントが盛り上がりを見せ始めている状況です。
そしてLi Autoのメインターゲット層である裕福なファミリー層に対して、このMEGAであれば、バッテリーEVならではの静粛性や振動のなさによる快適な移動空間という、新たなライフスタイルを提案することができるわけであり、初のバッテリーEVについては、高級ミニバンセグメントで勝負を挑んできた格好です。
それでは、今回正式発売がスタートしたMEGAについて、とくに気になるEV性能を、競合のバッテリーEVのミニバンである、Xpeng X9、Denza D9、Zeekr 009、さらに現在Li Autoの最大のライバルとなっているファーウェイAITOのフラグシップSUVであるM9とをそれぞれ比較していきましょう。
まず初めに、MEGAはAWDのMaxグレードのみという、すべての装備内容をコミコミにしたワングレード設定です。そして、102.7kWhの中国CATL製のQilin Batteryを搭載することによって、その満充電あたりの航続距離は710kmと、空力性能で不利となるミニバンとしては、かなり長い航続距離を確保することに成功しています。
この航続距離の長さを実現している要因というのが、空力性能のよさを示すCd値で、それは0.215とミニバンとしてはありえないレベルの空力を達成しています。それこそポルシェタイカンのCd値が0.22であることから、あのスポーツセダンであるタイカンよりも空力性能が高いとイメージしてみれば、その凄さが見て取れると思います。
さらに、もうひとつ重要な充電性能という観点についても、そのQilin Batteryによる高性能な熱マネージメントのおかげによって、最大充電出力は520kWに到達しています。よって、充電残量10%から80%まで充電するのにかかる時間も12分間と、現在地球上で発売されているほとんどすべてのEVのなかで最速の充電時間を実現しています。
充電残量が80%の段階でも、まだ300kW程度の充電出力を流すことができるという信じられないほどのフラットな充電カーブも相まって、12分間の充電時間でミニバンEVの500km分の航続距離を回復可能となったわけです。
そして、Li Autoについては、その最大520kWという充電出力を発揮可能な超急速充電ステーションの建設を急ピッチで進め、2024年末の段階でその設置数を2000ステーションと大幅拡充する方針を表明しています。