34秒のピットストップで超高速充電! フォーミュラE シーズン11(2024/2025)第6戦・第7戦を取材するため、モナコを訪れた。この2週間後には、昨年以来の2回目開催となる東京E-PRIXが控えているタイミングだ。 日本のユーザーにとっては、フォーミュラカーといえば、レッドブル角田裕毅選手の人気に湧くF1、そして若手による接近戦が見ものになっている国内スーパーフォーミュラをイメージするだろう。 一方で、フォーミュラEに対する認識はあまり高くないが、昨年の東京E-PRIXによってフォーミュラEに対する理解が日本でも徐々に高まっていると感じる。 そんなフォーミュラEの特徴は、やはりEVであることだ。日本でもEVに関するレースが存在するし、また海外でも各種EVレースがあるが、興行として成立しているケースは極めて少ない。 一方でフォーミュラEは、レースマシンとしてのEVとしてだけではなく、徐々に市場が拡大することが期待される量産型EVに対するユーザーの意識変革を狙っているところが大きな特徴だ。 たとえば、決勝レース中の急速充電「ピットブースト」がある。参戦するすべてのマシンに対して、ピットエリアでの最大出力600kWで急速充電を義務付けるものだ。シーズン10(2024/2025)までは「アタックチャージ」と呼ばれていた。電気容量では3.85kWhで、34秒で充電を完了させる。 充電システムを供給するのは、英国Fortescue社。以前は、ウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジーと呼ばれていた企業である。 充電口はマシン後部にあり、充電器はピットボックスの脇に置かれている。ピットブースト作業にあたるのはピットクルーのうちの2名。ひとりが充電ケーブルさばきをし、もうひとりが充電コネクターを両手でもちながら、ピットインしてきたマシンの後方にすばやくまわりこむ。 今回のモナコE-PRIXは土曜、日曜日のそれぞれで予選と決勝を行ったが、ピットブーストは土曜日決勝のみで採用された。 これは、フォーミュラEが、最新EV技術の進化とエキサイティングなレース形式とのバランスを考慮しているからだ。 モータースポーツの存在意義のひとつに、量産車への技術フィードバックがある。フォーミュラEのピットブーストは、急速充電の将来を占う上でとても興味深いレースレギュレーションだと感じる。 なお、フォーミュラEのマシンは、シーズン13(2026/2027)から最大出力が現在の2倍に相当する600kWのフルタイム4WDに進化する。充電機能についても新技術を採用する可能性が高い。
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