#フォーミュラE
フォーミュラE2023年シーズンより(photo=ポルシェ)
TEXT:福田 雅敏/磐城 蟻光
「東京ビッグサイト」がサーキットに……「フォーミュラE」東京大会のコースが決定[2023.11.14]

交通への影響を最小限に抑えたと見えるコースレイアウト マシンの充電にはグリーン電力も積極的に活用してほしい 【THE 視点】フォーミュラEアソシエーションは、「フォーミュラE」の東京大会「Tokyo E-Prix」<2024年3月30日開催>のコースレイアウトを正式発表した。「東京ビッグサイト」<江東区>周辺の公道と港湾施設を利用。全長2.582kmでコーナー数は18ヵ所のレイアウトとなる。 コースの特徴は長いストレートが3本あることと、ターン1から8にかけてタイトなコーナーが連続する点であろう。「フォーミュラE」はピットインがなく電池残量との戦いでもあるため、ストレートを飛ばしすぎると電力を使いすぎてチェッカーを受けられない可能性が出てくる。 そのため、ストレートでは電車のように1列に隊列を組んで、お互いに空気抵抗を減らしながら走るシーンが見受けられるのだが、その代わりコーナーが続くセクションでは追い抜きが頻繁に行なわれる。今回の東京大会のコースは、ホームストレート後の1コーナーから90度コーナーが連続するようなレイアウトのため、この辺りでのバトルが熾烈になるのではないだろうか。ホームストレートからのブレーキング勝負は見ものだろう。 東京史上初めて、レースのために公道を封鎖するという点もトピックだ。今回のコースレイアウトを見るに、公道を使用するのは「東京ビッグサイト」周辺の一部にとどまった。この辺りは乗用車よりもトレーラーや港湾関係車両が多く走る道だ。 市街地戦なのでもっと公道を多めにと思うかもしれないが、ただでさえ大混雑している東雲付近の公道を大規模に止めるとなれば大混乱は必至だ。それを考えると今回のレイアウトは妥当ではないだろうか。「東京ビッグサイト」も関連施設として活用できそうである。 気になるのは電力関係の設備だ。およそ20台のマシンとはいえ、その辺の電柱から電気を引っ張るわけにはいかない。各ピットに専用の充電設備が必要になるはずだが、そのインフラをどう構築するかも気になるところ。また、その電力にどれほどの再生可能エネルギーを活用するのかも注目している。限りなくCO2排出ゼロに近づけたレースとなってほしい。 東京の市街地を封鎖しての開催とは歴史的な行事であるが、これも音が静かで排ガスも出ないEVだからこそ実現できたものであろう。高回転のエンジン音に酔いしれながらレースを見るのも良い。しかし、東京臨海部の潮風に吹かれながら静かにレースを観戦するのも悪くはないと思う。当日は是非とも現地観戦したいものだ。 そういえば先日、お台場にレーシングチームのトムスが運営するEVカートのサーキットが完成した[詳細はこちら<click>]。お台場近辺が、ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)モータースポーツの“聖地”となったら面白い。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ボルボ、EVミニバン「EM90」を発表 ……かねてから登場を予告していたEVのMPV「EM90」が発表された。「トヨタ・アルファード」のような豪華ミニバンタイプで、特にセカンドシートは旅客機のビジネスクラスのような仕様となっている。まずは中国に導入されるという。 ★★世界最高加速度のハイパーEV日本見参 ……0-60mph(約96.6km)加速1.72秒、最高速度413km/hのハイパーEV「アスパーク・アウル」が、大阪にあるアスパーク本社(エンジニアリング人材サービスを展開する企業)に展示される。販売価格は290万ユーロ(約4億7,000万円)。 ★アウディ、屋久島でEVのレンタカーを開始 ……アウディの正規販売店を運営するファーレン九州は、鹿児島県屋久島町で「e-tronレンタカーサービス」を11月14日より開始する。導入車両は「e-tron」と「e-tronスポーツバック」各1台。 ★薄型の公共用急速充電器が発売 ……新電元工業は、最高出力50kWの「CHAdeMO」対応急速充電器「SDQCシリーズ」をリニューアルした。奥行350mmの薄型ボディが特徴。公共充電カードはもちろん様々な充電サービスに対応できるという。 ★リチウムイオン式を超える密度をもつバッテリーが実現か ……東京理科大学は、ナトリウムイオンバッテリーやカリウムイオンバッテリーに使用するための「ハードカーボン」の合成に成功した。両方のバッテリーの負極材として優れた特性を示し、リチウムイオンバッテリーを超える312Wh/kgのエネルギー密度を達成したという。 ★法人向けの「エネオス・チャージ・プラス」にロードサービス ……「EV駆け付け充電サービス」を展開するプレステージインターナショナルが、「エネオス・チャージ・プラス法人充電カード」の付帯サービスとして展開する。提供開始は11月13日から。 ★充電スポットの撮影・投稿でNFTゲット ……駐車場検索アプリの「ヴィーモ」は、EV充電スポットのレビューキャンペーンを開始する。写真付きでレビューを投稿すると、先着30名にNFT(非代替性トークン)の一種である「SBT」(ソウルバウンドトークン)をプレゼントする。応募期間は2月13日まで。 ★“水素再利用ターボ”の実証に成功 ……IHIは、航空機向け燃料電池(FC)用の「電動ターボブロア」を開発した。FC内の未反応の水素を回収し再循環する装置で、これまで困難だった高湿潤環境での性能を実証したという。 デイリーEVヘッドライン[2023.11.14]

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TEXT:小川フミオ
「フォーミュラEのおかげでI-PACEの航続距離が伸びました」マネージング・ディレクターが語るジャガーの電動化

フォーミュラEを傍らにして「私たちはこれからBEVのメーカーになる」と明言するグローバー氏に、小川フミオはジャガーの未来像を聞き出す。それは同社の電動化における存在価値への言及だった。 レースからロード、ロードからレース −−フォーミュラEでの活動は、ジャガーの未来と密接に関係しているということですね。 「フォーミュラEはよくご存知のとおり、完全なBEVのレースです。私たちはこれからBEVのメーカーになるので、相性がいいんです。いままで以上に結びつきを強めていくつもりです。いま、私たちがフォーミュラEの活動から得られるものはたくさんあると思っています。それを私たちは、”Race To Road”、レースカーからロードカーへ、と呼んでます」 −−興味ぶかいです。レースからロード、ロードからレースっていう、ジャガーのスローガンですね。 「たとえば、フォーミュラEマシンの技術を応用して、I-PACE(アイペース=ジャガーが2018年から作っているBEV)の航続距離を30マイル、延長することができました。なので、このレースはとてもいい結果をもたらしてくれているんです」 −−つまりフォーミュラEへの参戦は、技術的も、そしておそらくイメージ的にも、ジャガーにとっておおいにプラスになると。 「いまのところ、技術的な恩恵が大きいです。電動化することで、いままでより若い世代の興味を惹きつけることができると思っています。フォーミュラEが、そもそも、そういう側面を強くもったレースですし。なので、信じている方向へと進む先にあるのが、私たちにとって、よいかたちの未来なのです」 −−それと同時に、モータースポーツ活動における存在感ですね。たんにBEVのブランドでなく、レースでちゃんと速い、というのはイメージ的にも重要なはずです。 「そうです、モータースポーツで強い、という私たちの強みを知らしめていくことも、同時に重要です。これまで私たちが積みかさねてきたモータースポーツにおける栄光が、これからも目標になっています。ただしそれをサステナブルなやりかたで追求する。そこに、今後のジャガーの存在価値があります」 電動化における存在価値は、サー・ウイリアム・ライオンズが導いている −−プロダクションについての質問です。ジャガーはどうやって、電動化の時代に存在価値を高めていこうと考えていますか。 「ブランドはたいへん重要だし、守っていく価値のあるものだと理解しています。90年におよぶ、たいへん豊かな内容の歴史です。そもそもジャガーが大きく評価されたのは、世界でもっとも美しいクルマを作ったからです。ジャガーの前身であるSSカーズの創設者サー・ウイリアム・ライオンズは、こう言っています。ジャガーの名声は、既存のクルマのコピーでないところから発したのだと」 −−それはたいへん興味ぶかい発言だし、ジャガーがその言葉を少なくとも1960年代までは忠実に守ってきたのは、歴史を振り返るとよくわかります。 「そうなのです。それを守ってきたのです。というか、これからもういちど、創設者によるクルマづくりの精神を考え、ジャガーの最高の時代に立ちかえるべきだと考えています。ジャガーは、ほかと違っていることを厭わなかった。なにかをやるにしても、ほかのメーカーとは、違うようにやろうとしました」 <Vol.3へ続く>

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TEXT:小川フミオ
「ジャガーはフォーミュラEの技術を量産車へ」マネージング・ディレクターが語る電動化への姿勢

フォーミュラEへ参戦するジャガーの本気度を目の当たりにした小川フミオは、サーキットで同社マネージング・ディレクターに、その真意を問いかける。 技術的蓄積を、次世代量産車に投入 英国のジャガーはいま、ピュアEVのブランドへと舵を切りつつある。ピュアEVのレース「フォーミュラE」に本腰を入れて取り組み、そこで得た経験を「I-PACE」の改良に注ぎ込む。 それだけでない、と言うのは、ジャガー担当マネージングディレクターのロードン・グローバー氏だ。 ジャガーは2016年から参戦しているフォーミュラEで得た技術的蓄積を、次の世代の量産車開発に反映しているそうだ。 2023年7月29日にロンドンで、フォーミュラE選手権が開催されたのを機に、グローバー氏に、BEVへと向かうジャガーの姿勢をインタビューするチャンスを得た。 「レース活動は、私たちのDNA」 次は、レースが行われたイーストロンドンの「ExCeLロンドン」を舞台に、グローバー氏との一問一答。 −−ジャガーTCSレーシングは、今回ロンドンで最終戦を迎える2022−23年のフォーミュラEで好成績を記録しています。 「フォーミュラEは、私たちのブランドにとって、とても大切だと思ってやってきました。なぜなら、レース活動は、私たちのDNAの一部だからです。私たちは、ずっとモータースポーツ活動を続けてきました。最初は1949年に時速120マイルと世界最速を謳ったスポーツカーを発表し、その年シルバーストン(サーキット)でレースに投入、翌50年はXK120Sとしてルマン24時間レースに出走し、プライベートのエントラントが総合12位で完走しています。そのあとも、ルマンで2回優勝したCタイプ(51年)、4回優勝したDタイプ(54年)、ずっと後になりますが、88年のデイトナ24時間レースとルマンで優勝したXJR-9、そして2000年から2004年にかけてはF1にも参戦していました。でも、今回は、地球環境保全(サステナビリティ)を念頭に置いたレース活動として、フォーミュラEに参戦しています」 −−でも、2016−17年のシーズン3でフォーミュラEに参戦してから、平坦な道ではなかったはずです。2020−21年シーズンでようやく3位に浮上するまで、6位とか7位とかで低迷していました。シーズン9はとりわけ調子いいですね。 「そうなんです。ずいぶん多くのシーズンを過ごしてきて感じるのは、シーズンごとに、フォーミュラEはどんどん力をつけてきているなということです。それに、大きくなっています。たとえば、宣伝力がついてきているし、観客動員数もどんどん多くなっています。今回のロンドンでは、ピット前の観客席は満員に見えますよね。シリーズごとに人気が出ている証明でしょう」 −−ジャガーが強くなったのは、いいパートナーと組めているからでしょうか。 「それもあります。私たちと一緒に組みたいと言ってくれるパートナー企業が増えています。そうすると、どんどん高い技術力が手に入ります。それに、あなたがたのようなジャーナリストが取材に来てくれる。こうして、フォーミュラEでの活動は、さまざまな面で、いい成果を私たちにもたらしてくれるのです」 <Vol.2へ続く>

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEは進化している。ピュアEVのレーシング・シーンに高まる期待。ロンドン観戦記その3

フォーミュラEの今季最終戦を観戦した小川フミオは、ピュアEVのレーシング・シーンへ期待を高めている。それは東京での開催があることだけではなく、地球環境維持へ、マシンとチームが進化しているからだ。 サステナビリティをテーマにしたフォーミュラE フォーミュラEにおいては、サステナビリティ、つまり地球環境維持が重要なテーマとされている。ゆえに、このレース開催が発表さたとき、私はおもしろい!と思ったし、世界中に同じことを思ったひとが多かった。 あいにく、レースがおもしろくないとか、内容をくさすような発言が、現役レーシングドライバーから出ているとの報道もあり、初期の熱に水がさされたかたちになってしまったのも事実。 でも、継続は力なりの言葉どおり、2023年のシーズン9は、ジャガーTCSレーシングと、エンビジョン・レーシングの首位争いもあって、大きな盛り上がりを見せてくれた。 とくに私が出かけたロンドンEプリ(グランプリでなくイープリ)では、上記ふたつの英国のチームの競り合いで、多くの観客が詰めかけたようだ。 来季は新体制でのぞむジャガー はたして、2023年7月30日の最終戦では、ジャガーTCSレーシングのミッチ・エバンスを抑えて、エンビジョン・レーシングのニック・キャシディが1位を手中に収めた。 それによって、2022−23年のフォーミュラEにおける選手権は、エンビジョン・レーシングのものとなったのだった。ジャガーには残念な結果でシーズンを終えた。 でも(といえばいいのか)、来季のジャガーTCSレーシングは、これまでナンバーツーを務めていたサム・バードを放出。上記のニック・キャシディ(下の写真)と契約を交わしたのだった。 これによって、シーズン10(2023−24年)のフォーミュラE選手権において、ジャガーTCSレーシングは、エバンスとキャシディという2人のニュージーランド人ドライバーを抱えることになる。 「ニック・キャシディのチームへの加入を発表できたことを嬉しく思います。彼が日本でレースをしていた頃からずっと注目していました。 フォーミュラEに参戦して以来ますます力をつけており、2023年シーズンの活躍は非常に目覚ましいものでした」 チームプリンシパルのジェイムズ・バークリーはこのような談話を発表し、「最も強力なドライバーラインアップを擁して新シーズンに臨む」としている。 いっぽう、英国では、BEVの売れ行きがけっこうよく、2023年前半の乗用車販売の5台に1台が電気で走るモデルだったとか。そんなことも、フォーミュラE人気を後押ししている、とする英国のメディアもある。

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEは熱い。ピュアEVのレーシング・シーンにある熾烈な争い。ロンドン観戦記その2

フォーミュラEをロンドンで観戦した小川フミオは、ピュアEVが駆け抜けるサーキットで、熾烈な争いを目の当たりにした。タイトル争い第15戦は白熱したものだった。 シーズンタイトルをかけた一騎打ち BEVのレース「フォーミュラE」のおもしろさは、じっさいにレースに足を運んでみて、なるほどと思うものだった。 私が出かけたのは、2023年7月29日の第15戦。このとき「ジャガーTCSレーシング」と「エンビジョン・レーシング」が選手権をかけて争っていた。 ジャガーTCSレーシングと、エンビジョン・レーシングの一騎打ちの様相で、かなり盛り上がっていた。ドライバー選手権も、やはり、両チームとも、自分たちが獲得できるかも、というところまで上がっていた。 このときの結果と、翌30日の第16戦(最終戦)の結果とで、2023年シーズンの選手権が決まるから、ピットまわりの興奮もひときわ。 応援しているジャガー・カーズのスタッフも「ドキドキするよ」とレース前は真剣な面持ちだった。 「マナーがアグレッシブすぎる!」 コースは、幅が狭いうえに、エスケープゾーンがほぼ存在しない。なので私が観ているあいだにも、スポンジバリアに突っ込む車両が何台もいた。 けっこうラフなレースで、タイトコーナーで相手のマシンを押しだしてスポンジバリアに激突させる走りも目撃した。途中で、「マナーがアグレッシブすぎる!」と、クレームを出すチームまで現れるしまつ。 スピンしたり事故を起こした車両がいることを後続車に知らせるイエローフラッグが振られるのはしょっちゅうで、私が観た第15戦はセッション中断のレッドフラッグも数回振られた。 リアのドライブトレインで差をつける アクセルペダルを踏み込んだとたん最大トルクを発生するモーターの特性のため、予想いじょうに速いペースでマシンは疾走。これも観ていて飽きない理由だ。2.1キロのコースを1分12秒ほどで回ってしまう。 フォーミュラE用のマシンは、フロントにはバッテリー充電用のモーター、リアには駆動用にモーター搭載の後輪駆動が基本レイアウト。シャシーやフロントサスペンション、タイヤ、それにフロントのモーターなどは同一規格。 チームごとに違うのは、後輪用のドライブトレインほぼすべて。モーター、インバーター、ギアボックス、ディファレンシャルギア、ドライブシャフトといったものだ。 ジャガーのばあい、自社開発の後輪用ドライブトレインを、ジャガーTCSレーシングと、もうひとつ、エンビジョン・レーシングというチームに提供している。 2023年から投入された「第3世代」マシンでは、ホイールベースを含めてディメンションがやや縮小。さらに、ドライバーを含めた重量が軽量化。 第2世代の2倍にあたる回生能力をもち、レース中に使うエネルギーの約40パーセントは回生エネルギーで、かつ、この回生の際のブレーキ効果により、リアブレーキを廃止。 エバンスの勝利。チーム・タイトルは最終戦にもつれる はたして、第15戦は、ジャガーTCSレーシングのミッチ・エバンスがみごと1位を獲得。チームプリンシパルのジェイムズ・バークリーが小躍りして喜んでいたのも印象的だった。 あいにく、そんなエバンスの頑張りでも、「アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE」のジェイク・デニス(英国出身)が2位獲得により、ポイント数で23年のドライバー選手権を手中に収めたのだった。 ドライバー選手権は残念だったが、ジャガーTCSレーシングのエバンスのチームメイト、サム・バードが4位入賞で、チームの選手権のポイント数でエンビジョンと同率1位に。勝利も夢でなくなった。 <その3に続く>

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEはおもしろい。ピュアEVのレーシング・シーンにある独創性。ロンドン観戦記その1

フォーミュラEが、来年の3月に東京で開催される。小川フミオは、今シーズン第15戦と最終戦の第16戦をロンドンで観戦し、ピュアEVのレーシング・シーンを体感してきた。 東京に来る前に、ロンドンで先触れする 自動車レースの最高峰と言われるのは、フォーミュラ1、通称F1。もういっぽうの極にあるともいえるレースがフォーミュラE。ピュアEVのレースだ。 正式には「ABB  FIA  Formula E  World  Championship」の「2023 Hankook London E-Prix」と呼ばれるこのレース。さきごろ、2022−23年シーズンの第15戦と、最終戦の第16戦が、立て続けにロンドンで開催された。 私はそれを観たが(最終戦はオンライン)、期待を上回るおもしろさだった。 このレースが、2024年3月に、東京にもやってくる。その先触れというか、私的に楽しめたロンドンでのレースについて、おもしろかったところを報告したい。 第15戦と第16戦と続けての見どころは、「ジャガーTCSレーシング」と、ジャガーがドライブトレインを提供している「エンビジョン・レーシング」との一騎打ち。 2023年の選手権がかかっているレースだった。エンビジョン・レーシングがややリードして迎えた最後の2戦だが、勝敗の行方は定まっていない。ジャガーTCSレーシングは力が入っていた。 市街地、オーバーテイクのむずかしさ、ラインか、パワーか…… そもそも、フォーミュラEというレースの特徴はいくつもあって、F1より広い層が楽しめるような工夫がいろいろ見られる。 ひとつは、市街地を使ってのコース設営。「F1のように遠くへ出かけるのでなく、レースのあとは商業地区でショッピングへとすぐ行けます」。ジャガー・カーズの広報担当者は、私にそう話してくれた。 インドアも使うので、そこでは派手な音楽がかかって、そもそも甲高い(しかしそんなに大きくない)音しかしないレースを盛り立てる。 この音楽がうるさいという声もあるけれど、1時間半ぐらいのレースなので、まあ、ガマンできる。 もうひとつは、オーバーテイクのむずかしい、幅員の狭い特設コース。そこを時速200キロで走るだけに、もとF1ドライバーなど、その道の達人がドライバーを務めているのもわかる。 そして、「アタックモード」。やや正しいラインから外れてしまうが、「アクティベーションゾーン」なる短い区間を走るときだけ、通常の300キロワットから350キロワットにパワーアップする。 ラインをとるのか、パワーアップをとるのか。かつ、アクティベーションゾーンを2回通行するのが義務づけられている。ゲーム感覚でおもしろい。 ジャガーのフォーミュラEへの本気度 ジャガーTCSレーシングが、フォーミュラE選手権に参戦したのは、2016年10月。その間に、マシンは第1世代(Gen.1などと表記される)、第2世代、そして23年から第3世代へと進化してきた。 本体であるジャガー・カーズ(とグループ企業のランドローバー)は、「将来のBEVのロードカーへの知見を得られる」と、ジャガーTCSレーシングフォーミュラE選手権に参戦する意義を語る。 そもそも、フォーミュラE選手権は、2012年に、F1も管轄する世界自動車連盟(FIA)がシリーズ化を発表。2014年9月に初開催された。 意義としては「明日のロードカーへの道を拓く」(FIAのHP)とされる。当初はワンメイクレースの色彩が濃く、私も、意義はりっぱに思えるけれど、F1ほど燃えないなあと思っていた。 2020年シーズンからは、しかし、FIAの正式選手権レースになり、同時にマシンの性能も大幅にアップ。かつてのように、フル加速するとゴールまでバッテリーがもたない、なんてこともなくなったようだ。 2022−23年のシーズン9に参戦したチームをみると、ジャガーをはじめ、ポルシェ、マセラティ、マクラーレン、日産、NIO、DSと、ハイパフォーマンスのBEVに力を入れているブランドの名前が並ぶ。 「ジャガーは2025年から完全なピュア電気自動車のブランドをめざしています。それゆえに、フォーミュラEはまたとない実験の場と考えています」 ロンドンのレーストラックで話を聞いた、ジャガー担当マネージングディレクターのロードン・グローバー Rawdon  Glover氏は、そう語った。 <その2へ続く>

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TEXT:桃田 健史
「フォーミュラE世界選手権」開催決定!来年3月東京ビッグサイト周辺公道での開催に向けた、3つの課題

電気自動車による自動車競技「フォーミュラE」が2024年3月30日(土曜日)、フォーミュラEシリーズ10の第7戦として東京沿岸部の東京ビッグサイト周辺の公道を使って開催されることが正式に決まった。開催における課題を分析する。 日本モータースポーツ界における歴史的な快挙 フォーミュラEの公式ホームページで2023年6月20日、24年3月の東京開催が明らかになった。 その中で、小池百合子 都知事からは東京都が推進している環境施策「ゼロエミッション東京」を前提にして、フォーミュラE開催を歓迎する旨のコメントも掲載された。 フォーミュラEは2014年に始まった、バッテリーを搭載し100%モーターで駆動するフォーミュラカーレース。F1(フォーミュラ1世界選手権)やWRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)等と同じく、FIA(国際自動車連盟)が管轄する世界選手権である。 今回の東京開催は、モータースポーツの観点から見れば日本における歴史的な快挙である。ラリーを除く競技として大規模な公道レースが日本で開催されるのは、今回が初めてとなるからだ。 これまで、F1については横浜やお台場などで、またアメリカのインディカーについては北海道の小樽での開催が検討されたことがあった。だが、観客に対する安全確保や、一般交通を遮断すること等を理由に、地元の警察が実施を許可するに至らなったと言われている。 また、主催者やプロモーターの視点では、公道レースでは仮設スタンドによる集客数が既存の大型レース施設と比べると少ないため、入場料収入の確保についてハードルが高い、というのがモータースポーツ興行における一般的な解釈でもある。 さらには、騒音や周辺での渋滞を懸念する声が地元住民から上がることも珍しくない。 そうした公道でのモータースポーツに対するネガティブな要因を伴う考え方を覆すかのように今回、フォーミュラEの東京開催が決定した最大の理由は何か? それは、「2050年でのカーボンニュートラル」という、東京都における大義名分だと思う。 東京都は2019年12月27日、2050年にCO2排出実質ゼロの貢献する「ゼロエミッション東京」を宣言。これまで、水素戦略、BEV(電気自動車)やEVバイクの普及促進などを積極的に行ってきた。 フォーミュラEの東京開催は、「ゼロエミッション東京」にとってシンボリックな存在になることが期待される。

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フォーミュラE(photo=日産自動車)
TEXT:福田 雅俊、ABT werke
東京の街で「フォーミュラE」が公式戦、東京ラウンドが2024年3月30日に開催決定[2023.06.22]

手に汗握る展開の「残電力サバイバルレース」がいよいよ東京にて開催 再生可能エネルギーを活用しながら電力の安定供給体制の構築を 【THE 視点】フォーミュラEと国際自動車連盟(以下、FIA)は、「ABB FIA フォーミュラE ワールド・チャンピオンシップ」の来年度のカレンダーを発表した。東京ラウンドが正式決定し、3月30日(土)に第7戦として組み込まれている。コースは、「東京ビッグサイト」<東京都江東区>周辺の一般道を使用する。 東京の市街地を使用したFIA管轄のレースとしては、日本初の開催となる。日本勢唯一のチームである日産をはじめ、強豪のポルシェやマセラティ/ジャガー/マクラーレン/マヒンドラ/ニオ/DSなど11チーム・22台が参戦予定だ。 東京都は、カーボンフリーの「環境先進都市ゼロエミッション東京」の実現に向け、ZEVの普及を拡大すべく、東京での大会実現に向けた協議をフォーミュラEと重ねてきた。 開催にあたり、小池百合子東京都知事は、「フォーミュラEは、エンジン音や排気ガスがない電気自動車の市街地レースとして、世界の主要都市で開催されています。この国内初、世界最高峰のレースの迫力を間近で見て、応援しましょう。大会は、ゼロエミッションビークルの普及に弾みをつけると同時に、東京の魅力を世界に発信し、国際的なプレゼンスを高める絶好の機会ともなります」とコメントを寄せている。 今回の開催決定は喜ばしいことだが、充電インフラをどう構築するか心配が残る。22台ものマシンを、フリー走行・予選・決勝などに間に合わせるために一気に充電するとなると相当の電力設備の増強が必要となるはずだ。 これは提案なのだが、100%は無理にしろ是非とも再生可能エネルギーの活用も検討してほしい。そうすれば「環境都市」としての良いアピールになる。電力が足りず、コースの近くでディーゼル発電機を回すようでは本末転倒なので、開催までの残りの期間で、電力の供給体制をしっかりと設計してほしい。 フォーミュラEは、今シーズンから「GEN3」と呼称する第3世代のマシンを使用している。これによりマシンのスピードが上がり、毎回のレースが見応えのある展開になっている。 特に面白く感じるのは、バッテリー残量を見ながらの接戦である。レースの展開としては、序盤から中盤は電費を抑えるために、おとなしく走行してポジション取り。そして終盤の残り10周ほどで、事実上のスプリント・レースをするのが毎回のパターンとなっている。予選トップがそのまま逃げ切りという展開は少ない。ラスト1周は、バッテリー残量が1%前後という電欠寸前の中で攻め合うという痺れる戦いを繰り広げている。EVレースというユニークさではなく、ひとつのモータースポーツとして非常に面白くなっている。 いずれにせよ、このレースが東京で開催されることを非常に嬉しく思っている。成功を願う。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ケータハム、EVの新型コンセプト「プロジェクトV」を発表……7月12日に実車を公開予定 ★★カワサキ、3輪の自転車型EV「ノスリスe」を6月30日に発売……前輪2輪のトライク型、EVモードと自転車モードを選択可能 ★★キャデラック、ラグジュアリーSUVの新型EV「エスカレードIQ」のティザー映像を公開……8月9日に正式発表予定 ★オペル、小型EV「ロックス・エレクトリック」をカスタマイズ……ラリーマシンのテイストを盛り込んだ「ザ・ロックス・e-エクストリーム」を公開 ★パナソニックエナジーとマツダ、車載用リチウムイオン・バッテリーの長期供給について協議開始……2020年代後半に発表予定のEVへの搭載を視野 ★アウディ、オーストラリアに充電拠点「アウディ・チャージング・ハブ」を開設……豪州初の設置、最高出力320kWの急速充電で4口を用意 ★ティアフォー、EV用の自動運転ソリューション「ファンファーレ」を開発……完成車メーカーにOEM供給が可能な「レベル4」水準のシステム、2024年までに9車種の商用EVに設定予定 ★テスラ、「おおたかの森」<千葉県流山市>にポップアップストア「テスラ おおたかの森」をオープン……ショールーム機能を持ち試乗車も用意 ★アイシン、「固体酸化物形電解セル(SOEC)による水素製造技術開発」がNEDO(※)の研究開発事業に採択……NGK・九州大学と連携、太陽光等再生可能エネルギー由来の電力で水素を製造 ※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ★折りたたみEVバイクシェアのシェアロ、「安全運転講習会」を「東京プリンスホテル」<東京都港区>にて6月10日(土)に実施……原付一種としての交通ルールを再確認、今後も継続して実施予定 ★東京湾アクアラインに時間帯別料金制が導入……普通車の木更津→川崎方面が1,200円(土日祝日・13時〜20時)に、2023年7月23日(土)〜2024年3月31日(日)まで実施 デイリーEVヘッドライン[2023.06.22]

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.11.22]

    ・東京都、ZEV-Tokyo Festival開催……フォーミュラEがデモラン 【THE 視点】東京をフォーミュラEが走った! 19日(土)に東京都庁前で開催された「ZEV-Tokyo Festival」、20日(日)にはお台場での「JAF MOTORSPORT JAPAN 2022」において、フォーミュラEのデモランが行われた。  東京都の小池都知事は、「ZEVの普及を一気に進めるということで、電気自動車のF1とも言われるフォーミュラEを、2024年の春に東京で開催するという協定を大会主催者と結んだ」と語った。  ようやく日本にも来たか! といった感じだが、東京で走る車両は、これまでのGen.2から大幅に性能がアップされるGen.3となる予定だ。  モーターの最高出力は250kWから350kWに、ドライバーを含んだ最低重量も900kgから840kgへと低減され、最高速度は280km/hから320km/hへと大幅に性能が向上した仕様となる。 開催は1年以上先だが、EV好きやモータースポーツ好きにとっても今から楽しみなイベントだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMESエグゼクティブアドバイザー) ・第28回日本EVフェスティバルがお台場で開催……「日産・サクラ」「VW・ID.4」など展示 ・自民党、税制規制議論開始で走行距離課税に焦点……12月中旬に大綱まとめる ・フォーミュラE、シーズン9のスケジュール発表……レギュレーション変更で1レース45分から周回数カウントに ・韓国、エコカー登録150万台の中EV比率が73%増……EV登録36万5000台 ・テスラ、米国で32万1000台リコール……尾灯が断続的に明るくならない可能性 ・フィアット、1台限りの「500e」をLAモーターショーで公開……ジョルジオ・アルマーニ仕様のワンオフ ・フィスカー、新型EV「オーシャン」生産開始……航続距離547kmのSUV、23年生産分は完売 ・VW、EV商用車「ID.Buzzカーゴ」を引き渡し……ドイツの家電ブランド「ミーレ」に ・ベトナムのビンファスト、米レンタカー会社から大量受注……5人乗りSUV「VF8」と9人乗りSUV「VF9」の計2500台 ・キア、豪でカーオブザイヤーに……「EV6」が「BMW・iX」、「テスラ・モデルY」など抑え ・トルコ、初の国産常用EVの試験生産開始……来年3月までにSUVタイプ発売予定 ・エネオス、新充電サービス「ENEOS Charge Plus」開始……22年度中に170基の急速充電器設置、SSネットワークほかコンビニなどにも

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BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
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ニュース
ヒョンデが東京オートサロン2025でスモールEV「インスター」を日本初公開! ドリキン土屋圭市監修のNパフォーマンスパーツのお披露目と屋外ドリフト走行も披露
ホンダの新世代EV「e:NP2」と「イエ」シリーズはここから生まれる! 中国合弁会社「広汽ホンダ」の新工場が広州市に誕生
2025年末までに100店舗展開を目標に開店ラッシュが止まらない! 全国37番目となる佐賀県初のBYD正規ディーラー「BYD AUTO 佐賀」がオープン
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コラム
初代リーフはなんと中古で20万円もある! ぶっちゃけバッテリーは劣化しているけど人によっちゃアリな選択だった!!
中国車との兄弟車と噂される日産N7! 中国で起死回生の1台となるか?
EV時代の到来はむしろ原点回帰! T型フォードが登場するまでクルマといえば電気自動車だった
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インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
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イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
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