#バッテリー
TEXT:渡辺陽一郎
バカデカい電池を積んだEVで大して走らないんじゃむしろ環境に悪い! いま考えるべきEVの姿とは

製造段階で排出されるCO2の量はEVのほうが多い EV(電気自動車)は、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出抑制に効果的とされる。 その理由は、燃料を燃焼させるエンジンと異なり、走行する段階で二酸化炭素を排出しないからだ。風力や太陽光などの再生可能エネルギーによって発電された電気でEVを走らせれば、二酸化炭素の発生を効果的に防げる。 しかしEVを走らせる電気を火力発電によって生み出すと、その時点で二酸化炭素を排出する。さらにいえば、車両の製造/流通/廃棄など、走行以外の行程でも二酸化炭素が発生する。 EVでは駆動用リチウムイオン電池の製造段階で二酸化炭素が多く発生することも指摘されている。 この影響もあり、車両の製造段階で排出される二酸化炭素は、ガソリン/ディーゼルエンジン車よりもEVが上まわるとされる。その後の走行段階では、EVはエンジン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないから、走行距離が増えるに従ってEVのメリットも際立ってくるわけだ。 ちなみに車両の製造段階を含めて、EVの二酸化炭素排出量がガソリン/ディーゼルエンジン車を下まわるのは、北米では購入後1年から1年半といわれる。ただし、比較する車両の燃費性能や電力消費量、1年あたりの走行距離によっても異なるから一概にはいえない。 マツダでは、MX-30 EVモデルが搭載する駆動用リチウムイオン電池の総電力量を35.5kWhに抑えた。その理由として「製造段階における二酸化炭素の排出抑制」を挙げている。 仮に95kWhの大型リチウムイオン電池を搭載した場合、製造時に発生する二酸化炭素が走行段階で取り戻せないほど多くなるという。そこでMX-30 EVモデルは、ライフサイクル全体で二酸化炭素を減らせるように総電力量を35.5kWhとした。 その上でマツダは「リチウムイオン電池の製造段階における二酸化炭素の排出量は、今後の技術進歩によって下がってくる。それに伴って総電力量を拡大して、1回の充電で走行可能な距離も拡大できる」としている。 以上のように60kWhを超える大容量のリチウムイオン電池を搭載したEVを購入して、1年間の走行距離が5000kmを下まわるような使い方では、二酸化炭素の排出抑制に結び付かない可能性もある。火力発電による電気で充電すれば、この傾向はさらに強まる。 結局のところ、EVの二酸化炭素排出量をライフサイクル全体で減らすには、ボディをコンパクトに軽く作ることが大切だ。そうなれば駆動用リチウムイオン電池も小さくなり、製造時の二酸化炭素排出量も減らせる。走行時の電力消費量も抑えられるから、ライフサイクル全体で二酸化炭素の発生を抑えられるわけだ。

TAG: #バッテリー #二酸化炭素 #排出量
TEXT:TET 編集部
「航続距離保証付き中古EVリース」でレアメタルの海外流出を防げ! 国内3社による中古EVを利用した画期的新サービスが始まる

レアメタルの塊なEVの約8割は海外流出している危機的状況 スマートフォンには貴重で高価なレアメタルが多く使用されていることから、故障品、機種変更等による代替の場合、本体の回収が積極的に進められていることは周知の事実だろう。そして、状態に応じて中古品として市場に出まわる場合や、レアメタルを抽出してバッテリーや電気機器の生産に活かされているケースも少なくない。 しかし、ことEVに関してはどうだろうか? 乗らなくなったら買い取り業者かディーラーへ下取りに出すのが一般的だと思うし、そうしたクルマを売買する行為そのものは、例え電気自動車であったとしてもそれまでの内燃機関(ICE)を搭載したクルマとさして変わるところはないはずだ。 だが、日本国内では、ICE車が新車登録から2オーナー、3オーナーと所有者を変えながら10年超は国内で利用されているのに対し、EVに関しては新車登録から5~7年程度の比較的高年式な個体であっても、国内需要の乏しさもあり、約74%が海外に輸出されているそうだ。これでは貴重な資源が国内循環せず、各産業の資源調達コストの抑制や産業発展にはつながらないばかりか、多量のレアメタル、レアアースをみすみす他国に献上しているようなものだ。 その状況を打破しようと動き出したのが、循環型流通事業のコンサルティングや中古医療機器、ブランド品、クルマなどのオンラインオークションを行っている「オークネット」と、リース大手の「東京キャピタル」、そして「三菱HCキャピタル」の3社だ。 EV導入でカーボンニュートラル化を加速させるために必要のこととは? 国内の新車販売におけるEV販売シェアは年々上昇しているものの、それでも2023年時点で1.6%に達したに過ぎない。個人所有はもちろんのこと、事業用車両としてEVの導入を検討している企業にとって、車種構成の少なさや利用料金の高さから、新車EVのリースは勢いを欠いているのだという。 ならば、中古EVで企業のカーボンニュートラル化を進めよう!……と思っても、リチウムイオンバッテリーの性能劣化による航続距離の低下に懸念を抱き、導入を見送るケースが少なくないという声もある。 これらの理由により、比較的状態のよい中古EVであっても、需要がなく市場流通しない。オークネットが直近10カ月のオートオークションの結果を調べたところ、先述の通りバッテリーの劣化がそれほど進んでいない、新車登録から5~7年程度の中古EVのうち、約74%が海外に輸出されてしまっているというのが現状だ。 そこで、まだ十分利用できる中古EV、ならびにそこに搭載されている貴重資源の海外流出を防ぐべく、オークネットがリース大手の東京センチュリー、三菱HCキャピタルと「航続距離保証付き中古EVリースサービス」の構築に向け基本合意書を締結したと、2024年12月16日に発表した。 航続距離保証付き中古EVリースサービスの概要は次の通りだ。 1.オークネットが保証する航続距離(リース開始時のEVバッテリー劣化度合を加味した、満充電時の航続距離)を付した中古EVを、提携リース各社が関係会社を通じて提供する 2.万一、リース契約期間中に保証する航続距離を走ることができなくなった場合は、リース契約を解除する、もしくは、再度航続距離を満たす車両に交換することを可能とする 3.リース期間中の故障についても、オークネットと提携リース各社との規定に従った保証を受けることを可能とする また、リース後の車両(新車登録後8~10年程度経過)は、オークネットが買取り、使用済みEVバッテリーを活用したリパーパス製品流通プラットフォーム「Energy Loop Terminal(エナジー・ループ・ターミナル)」を通じて、リパーパス(製品における使用を終えたものを、目的を転じて別の製品に組込んで再度活用すること)による資源循環を進めていくという。 使用済みEVバッテリーをリパーパス製品として価値をつなぐ エナジー・ループ・ターミナルとは、EVに搭載されていた使用済みEVバッテリーを、診断結果や買い手企業のニーズに応じてリパーパス製品として流通させることを目的とした、B to B向けの流通プラットフォームだ。 2024年8月にリリースされたエナジー・ループ・ターミナルは、オークネットがプラットフォームの開発・運営・顧客開拓等を行い、パートナー企業のMIRAI-LABOがバッテリーの劣化診断業務と、バッテリーマネージメントシステム(BMS)付きバッテリーおよびリパーパス製品の商品化および製品保証、評価業務などを行う。 こうすることで、航続距離保証付き中古EVリースサービスでの利用を終えたEVバッテリーは、リパーパス製品設計事業者や製造事業者、リサイクル事業者などにその価値をつなぎ、国内のサーキュラーエコノミー実現に貢献していく構えだ。 また、オークネットは、中古EVの導入先が日々運行するのに必要な航続距離をデータ取得により算出し、バッテリーの劣化度合を加味して算定した満充電時の航続可能距離を保証する。そして東京センチュリーは、新車EVに比べ安価なリース料金で顧客に提供する考えだ。 東京センチュリーが発表したリリースのなかでも、自社グループ全体で約70万台ある車両管理台数のうち、EVの管理台数を2030年までには10万台へ引き上げる旨が語られており、EVシフトに積極的な姿勢だ。だからこそ一充電走行距離が保証されている中古EVを、安価に提供することにも積極的な動きを見せることが予想される。 カーボンニュートラルに向け産業界全体が電動化シフトを進めるなか、EVへの転換に二の足を踏んでいた企業にとって、自社の車両利用実績を分析のうえ、必要十分な航続可能距離をもった中古EVを保証付きでリースできれば、安心かつコストの低減にもつながるだろう。EVの利活用促進と、貴重な資源の国内循環活性化の両面から、期待の持てる取り組みになりそうだ。早期の実現を期待したい。

TAG: #バッテリー #レアアース #中古車
TEXT:御堀直嗣
とりあえず余裕のあるやつ買っとけば……は損! EVのバッテリーは「大は小を兼ねない」

駆動用バッテリーの重さは大人数名分 「大は小を兼ねる」ということわざがある。それは、電気自動車(EV)に車載される駆動用バッテリーについてもいえるだろうか。大容量のバッテリーを車載するEVのほうが、より長距離を充電せずに走れるからだ。 しかし、日常的あるいは頻繁に長距離をクルマで移動している人以外は、考え物だといえそうだ。 EVの駆動用バッテリーは、小さな容量でも数百キログラム(kg)の重さがある。乗車人数に換算すると、3~4人に相当するだろう。そもそも軽自動車のEVでさえ、複数人数で乗車して移動しているくらいのバッテリー重量になっている。まして、一充電で長距離を走り切れるEVになれば、7~8人がつねに乗って移動しているのと同じといえるのではないか。 エンジン車でも、燃費を改善するには、余計な荷物を積まずに使うほうがよいといわれる。余計な荷物さえ降ろしたほうがいいくらいなのだから、大容量バッテリーのEVは、それ以上の重さを常に抱えながらの走りになっているといえる。 バッテリー容量と一充電走行距離の相関関係を、改めて検証してみる。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWh(キロ・ワット・アワー)だ。登録車のリーフは、標準車で40kWh、e+(イー・プラス)で60kWhのリチウムイオンバッテリーを車載している。ちなみに、アリアは最大(B9)で91kWhだ。 それらバッテリー容量によって、サクラは一充電走行距離が180km、リーフの標準車は322kmで、リーフe+になると458km、アリアは2輪駆動車で640km走れる。 サクラと比べれば、リーフの標準車は2倍のバッテリー容量、リーフe+は3倍、アリアは4.5倍のバッテリー容量だ。ではその増量分に対し、延長された走行距離は何倍になっているか。リーフの標準車は1.78倍、リーフe+は2.54倍、アリアは3.55倍で、バッテリー容量の倍増分に比べ、走行距離の伸びは少なくなっているのがわかる。 つまり、バッテリー容量が増えれば増えるほど絶対的走行距離はたしかに伸びるが、伸びしろという効率でみれば、バッテリーを倍増させたぶんそのまま遠くへ行けるわけではないのである。

TAG: #バッテリー #容量
TEXT:桃田健史
乗用車への採用はいまのところ期待薄! 充電待ちから解放される夢のバッテリー交換式EVの行方

最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化 ENEOSホールディングス、アメリカのスタートアップ「Ample」、そしてタクシー大手のエムケイホールディングスは、京都でEV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験で協力している。 バッテリーを交換するというアイディア自体は、以前から存在する。 時計の針を少し戻すと、日産リーフが世に出て間もない2000年代後半から2010年代前半にかけて、中東イスラエルとの関係が深いアメリカのスタートアップ「ベタープレイス」の存在が注目された。 同社は、日本政府からの事業支援を受けて、都内や横浜市内でEVタクシー向けの全自動交換ステーション実証を行ったことがある。筆者は当時、同社幹部らに事業計画について詳しく取材したが、同社はその後しばらくして事業を解散している。 中国では2000年代の北京オリンピック開催のタイミングで、市内中心部を走行するEVバスで交換式バッテリーを社会実装した。 2010年代に入ってからも、中国では乗用EV向けのバッテリー全自動交換ステーションの実用化を進めるさまざまな動きがあったが、ステーション導入におけるコスト、ステーション数の伸び悩み、そしてユーザーに対する安定したサービス体制維持に対する不備などがあり、一気に普及したとはいい切れなかった。 話を現在に戻すと、自動車産業界は2050年までにグローバルでカーボンニュートラルを目指すという大義のもと、少なくとも2030年代には本格的なEVシフトが始まるという予測を立てながら、2020年代を「EV普及に向けた移行期」と捉えているところだ。 そうなると、今一度、EV普及に向けた根本的な課題を注視する必要が出てきた。 EVが普及するための三大要素は、電池コスト、航続距離、そして充電時間といわれて久しい。バッテリー交換型EVになれば、充電時間は電池交換時間となるので短くできる。 また、電池パックの容量を大きくしたり、バッテリー交換ステーションの設置場所が増えれば航続距離についての不安も少なくなるだろう。 さらに、ユーザーが電池パックを所有するのではなく、充電サービスの一環として捉えるならば、EV本体のコスト削減にもつながる。 このように、バッテリー交換型EVは「いいことずくめ」に思える。だが、最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化だ。少なくとも、乗用EVについてはこの分野での議論が活発に進んでいるとはいえない。 他方、トラックなど商用車におけるバッテリー交換式EVについては、国土交通省が1月、「国際基準の策定をオールジャパンで目指す」という方針を発表している。 こうした国の議論と京都でのEVタクシー実証が上手く連動することを期待したい。

TAG: #バッテリー #バッテリー交換型EV
TEXT:桃田健史
自分のEVが積んでる「電池のメーカー」がわからない! 最近自動車メーカーが「バッテリーのサプライヤー」を公表しないワケ

2010年代半ばから状況が一変 「このEV(電気自動車)、どこのメーカーの電池を積んでいるんですか?」。 ユーザーが新車販売店でそう聞いても、販売担当者は「メーカーが公開していないので、こちらではわかりかねます」と回答する場合が少なくないだろう。 これは販売店担当者の言い訳ではない。報道陣向けの新車試乗会や発表会の場で、EVの開発担当者に対して報道陣が聞いても「サプライヤー(製造メーカー)については公表しないことになっています」といわれるのが当たり前になっている。 それでも、海外メディアのなかには、各メーカーが搭載する電池メーカーについて、関係者の話として掲載する場合がある。ただし、技術面や事業面に対する経営判断によって、電池のサプライヤーが変化する場合もあるため、ネット上の情報の正確性を問うのは難しい。 時計の針を少し戻してみると、EVが大量生産されて世に出始めた2000年代後半から2010年代前半頃までは、EVを手掛ける自動車メーカーは搭載する電池について、いまと比べるとより多くの情報を開示していた印象がある。 たとえば、「リーフ」を世に送り出した日産は、NECトーキン(当時)との合弁事業を立ち上げ、日産社内で電池技術を手の内化(てのうちか)を強化した。 海外では、メルセデス・ベンツ(当時ダイムラー)は、電池の材料、電池セル製造、電池パック製造それぞれでドイツ国内企業とパートナーシップを組んで、自社グループ内で電気技術の熟成を加速させることを試みた。 また、円筒形の電池を数千本も使って電池パック化するテスラは、パナソニックと連携しながら円筒形電池の技術革新を進めた。 そうした状況が、2010年代半ばから後半にかけて大きく変化した。背景には、欧州、アメリカ、中国の間で政治的な思惑による環境関連事業などに対する投資が活発化したことが挙げられる。 この影響によって、自動車メーカー各社は製造する国や地域によって、同じ車種であっても採用する電池メーカーが違うケースが出てきたり、または長年取引のある電池メーカーとの契約を終了することもある。 さらに、直近では全固体電池について、自動車メーカー各社が自社で基礎研究や量産開発を進め、場合によっては化学関連メーカーとパートナーシップを組むこともある。 事例としては、トヨタと出光との連携が挙げられる。 このように、EVが本格普及に向けた準備期間から、中・長期的に見れば普及に向けて大きく市場拡大しようとしているいま、自動車メーカーと電池メーカーとのかかわりは大きな変化の時期を迎えているといえよう。

TAG: #バッテリー #メーカー
TEXT:御堀直嗣
EVのバッテリーも中を開けると「円筒型」「角型」「ラミネート型」とさまざま! それぞれどんな特徴があるのか?

円筒型は乾電池と同じ形状 電気自動車(EV)に駆動用として搭載されるバッテリーは、最小単位であるセルに、形状の違いがいくつかある。代表的なものでいえば、円筒型/角型/ラミネート型などだ。 円筒型は、乾電池などと同じ、筒形をしていて、筒の頭頂部の出っ張りが正極(+極)、反対側の端が負極(-極)になる。ケース内の電極は、巻物のように巻かれている。 米国のテスラがEV発売に乗り出した際に用いられたのがこの円筒型で、それは、パーソナルコンピュータ(PC)などで使われていた汎用のリチウムイオンバッテリーの活用だった。 円筒型は、たとえば初代のトヨタ・プリウスのハイブリッド車(HV)向けニッケル水素でも採用されたことがあり、同じ円筒型のニッケル水素バッテリーは、ホンダの初代インサイトでも使われた。 使い捨ての乾電池だけでなく、充放電を繰り返せる単3蓄電池などでもニッケル・カドミウム(通称ニッカド)やニッケル水素で家庭電化製品に使われてきた形式なので、生産技術が確立され、原価を抑えることに成功している。 現在でも、テスラのほか、SUBARUやマツダがパナソニックの円筒型バッテリーの契約を結ぶなど、新しいニュースもある。また、高密度な新しい設計の円筒型の開発も行われている。 ただ、正負極が筒の上下両端にあるため、配線などに工夫が必要だ。また、数多くのセルをバッテリーケースへ詰め込もうとすると、筒状の丸い外観なので、隣同士のセルとの間に隙間が生じ、積載密度で劣る可能性がある。 ほかに、電極が巻物のように巻かれているため、中心部と外周側で温度差が生じる可能性があり、リチウムイオンバッテリーで重要な温度管理に難しさがありそうだ。そこで、余裕ある容量の確保と、充放電制御の成熟度が試される。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:小鮒康一
ぶっちゃけ買ってはいけない中古EVもある! バッテリーの劣化度合いを確認する術とは?

駆動用バッテリーを含めた保証を用意している中古車店もある 電動車を購入するにあたって気になるのが駆動用バッテリーの状態だろう。EVであれば満タン時の航続距離に大きく影響してくるし、ハイブリッド車であれば燃費性能に大きく影響してくる部分だ。 ただ、駆動用バッテリーは使い方によって劣化具合が大きく異なってくるため、一概に走行距離や年式だけでは状態を推測することが難しい。さすがに交換が必要な状況となっていれば警告灯が点灯したり、エラーメッセージが表示されたりするが、少々の劣化程度ではなかなか判別しづらいというのがホンネだ。 もしバッテリーが劣化して交換が必要となってしまえば、ハイブリッド車でも数万円から数十万円、EVでは100万円を超える出費となるケースもあるため、中古車で購入しようとしている人にとっては死活問題といえるだろう。 そんなバッテリーの状態だが、ハイブリッド車の多くはユーザーが簡単に確認する術はなく、診断機などを繋いで内部データを確認するしかないのが現状だ。 一方のEVでは、リーフなどのように大まかなバッテリー容量をメーター上で確認することができる車種や、テスラのようにアプリやオンボードコンピュータで確認できる車種、i-MiEVのようにディーラーに1泊2日程度預けなければ確認できない車種までさまざまとなっている。 しかし、メーター上で確認できる容量はあくまで大まかなもので、最大容量から目減りしていてもメーター上の表記は変わらないというケースもあるようで、厳密な数値を知りたいのであれば診断機などを用いるほかないのだ。 ただ、一部の専門店では中古車のバッテリー状態をチェックした上でそのデータを添付しているところもあるため、どうしても状態が気になるのであれば、こういった専門店で中古車選びをするのがいいだろう。 また、ディーラー系中古車店では駆動用バッテリーを含めた手厚い保証を用意しているところも多く、店頭に並べる前にバッテリーの状態をチェックし、容量が一定以下の車両はどんなに内外装の状態が良くても店頭には並べないというところも多い(バッテリー劣化で保証修理となると利益がなくなるため)ので、ディーラー系中古車店の保証付き車両を購入するのが一番安心といえそうだ。

TAG: #バッテリー #中古
TEXT:斎藤充生
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは

貴重な資源の海外流出を食い止める 携帯電話やパソコンといったデジタル製品や高性能家電機器には、クロムやコバルトといったレアメタル、さらにはスカンジウムやイットリウムといったレアアースが用いられていることが多い。 これらのレアメタルのうち、とくにレアアースに関しては、中国が世界の埋蔵量の97%を保有していることから、今後も高性能機器を製造していくにあたっては、中国との関係性を友好的に維持しなければならない。しかし、情勢が不安定になりがちなことから、国内では並行してこれらを用いて製造された機器のリサイクルを徹底的に進め、素材の再精錬技術を磨き、リユースを推し進める必要がある。 そのため日本では、2013年に小型家電リサイクル法が制定され、リサイクルフローが確立され始めた。この動きに関しては、スマホや家電を適切に回収することで、山や地面を掘らなくても希少価値が高く高価な元素であるレアアースを国内からかき集めることができることから、「都市鉱山」というキーワードで例えられている。 これをクルマに置き換えると、目下全世界的に進められているクルマの電動化においては、車体の大きさから想像できる通り、家電とは比べ物にならない量のレアメタル、レアアースが含有されているそうだ。 と、ここまで書いているもの、ジャパンモビリティーショー ビズウィーク2024と併催された「CEATEC2024」のBASCブースを訪れるまで、EVのバッテリーも「都市鉱山の一部」であることをすっかり忘れていたことを白状しておきます。新型車のバッテリー性能がどうだとか、充電能力うんぬんは目にする機会も多いが、じゃあ使い終わった(廃車または買い替え)あとのことは? といわれると、申し訳ございません。中国の「EVの墓場」は報道に目にしていても、リユースまで意識がまわっておりませんでした。 ということで、バッテリーのリユースについてBASCブースで学びましょう。 BASCとは? BASCとは正式名称を「一般社団法人電池サプライチェーン協議会」といい、電池のサプライチェーン(部材・素材)を持続可能な形で発展させることで、日本、そして世界の電池産業に貢献していくことを目指した組織。 2024年10月時点では225社が加盟し、部素材メーカーでは住友金属鉱山や旭化成、電池メーカーではパナソニックエナジーやプライムプラネットエナジー&ソリューションズ、資源を調達する商社としては豊田通商や三菱商事といった錚々たる企業が名を連ねています。 主だったところでは、会員各社からの意見集約、および海外の諸規則に対する情報提供、分析を行っており、日本の電池産業として海外競争力を確保するための下地を整えている組織というのが大まかな活動内容といえます。 そのBASCが今回のCEATEC2024で訴えていたのは、電気自動車のバッテリー製造に不可欠なレアアース資源の調達から製造、廃車後のバッテリー回収から分解、リサイクル、そして取り出したレアメタル・レアアースを再精錬し、再びバッテリー製造へと向かう、リユースするためのサプライチェーンの構築と強化の重要性です。 これは、国内で素材が採掘できないこと、そして入手した素材を国内にとどめておく、つまりは折角入手した貴重な資源を海外に流出させず、国内で消費循環させることを目指したものだ。BASCでは、欧州で提唱された循環型経済を指す言葉「サーキュラーエコノミー」を用いて、このリユースの流れを紹介していました。 2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けては、バッテリーの重要性がますます高まることが予想されており、EVに貯めた電気が走行用だけでなく、家庭や社会インフラに利用されることが想定されている。それだけに、今後ますますバッテリー、蓄電池の需要は高まり、製造するにあたって必要なレアアース類の価値上昇が見込まれています。 それだけに、このサーキュラーエコノミーを実現させることが、カーボンニュートラル社会の実現には非常に重要なものとなってくるでしょう。 使用済みEVから取り出したバッテリーは新品同等 ここで、ひとつ疑問が残る。バッテリーを製品から取り出し、分解および素材抽出を行ったのちに、再精錬したもので作ったバッテリーの性能は、すべて新品から作り出されたものに比べ、性能低下が起きるのではないかということ。 これについては、硫酸コバルトや硫酸ニッケルといった素材になるまで再精錬されたものは、その工程で元素レベルにまで一旦戻っているため、リサイクル材を何パーセントか含有していたとしても、ほぼ新品同等の性能を持つバッテリーに生まれ変わることが可能なのだそう。 実際に、2031年ごろから施行される予定の欧州の新たなバッテリー規則では、一定以上のリサイクル材を含んでいることが条件となるそうだ。つまり、「新品ではないけれど、新品同等のバッテリーですよ」、ということになります。 では、リビルトとは何が違うのでしょうか。 リビルトの場合は、取り出したバッテリーのうち、部品交換で今後も使えるものと使えないものに選別し、一部の部品交換して市場に提供します。一方で、この素材から製造、分解、再精錬という一連の「BASC流サーキュラーエコノミー」の過程を踏むバッテリーは、先述の通り分解しブラックマスを作り出し、そこから元素レベルまで再精錬されるため、まったくの別物といっていいでしょう。 EVを作る、乗る、性能向上といった類の部分には普段から目が行くものの、EV同士の買い替えや廃車後のバッテリーをどのように活用するかまでは意識がまわっていなかった……。スマホのバッテリーであれだけ「都市鉱山」だと騒がれていたにも関わらずです。 同時に、EVをはじめとしたモビリティだけでなく、EV充電設備やスマートハウス向けの家庭用蓄電池など、身近なところにも多くのバッテリーが存在し、レアメタル・レアアース資源の乏しいに恩において、BASCが提唱する「サーキュラーエコノミー」は今後さらに重要度が増して行くでしょう。 日本の蓄電池産業の発展と継続性に、BASCが果たす役割は大きいはずです。

TAG: #BASC #CEATEC #バッテリー
TEXT:御堀直嗣
電気自動車に積む「リチウムイオン電池」には2種類がある! レアメタル不足問題を解決する「LFP」ってどんなバッテリー?

中国ではLFPを積極採用 中国製の電気自動車(EV)が、ひとつの優位性を誇るのは、リン酸鉄を正極(+極)に使うリチウムイオンバッテリーだ。 現在、もっとも高性能なリチウムイオンバッテリーとして多くのEVが採用するのは、三元系と呼ばれ、ニッケル/コバルト/マンガン(NCM)を組み合わせた金属リチウムを+極に使う方式だ。一方で、世界的なEV普及の流れになると、ことにコバルトやニッケルは希少資源のため、奪い合いや価格高騰につながる懸念がある。 対するリン酸鉄は普遍的な資源であるため、価格競争力をもつとされ、中国のEV用バッテリーで積極採用している。同様に、米国のテスラも、一部の車種でリン酸鉄のリチウムイオンバッテリーをすでに使用している。 ただ、モノには何でも長所と短所がある。 リン酸鉄のリチウムイオンバッテリー(LFP)は、三元系に比べ容量が小さいとされる。したがって、航続距離を問うEVでは、一充電走行距離に不足を生じる懸念があった。 それを突破したのが、中国のBYDだ。ブレードバッテリーと呼び、1セルの電極の面積を細長く板状にして、より多くの面積を確保した。1セルが大きいことから、電極をつなぐ配線を減らせる構造になり、これも面積を稼ぐのに役立つ。あるいは、セルをモジュール化せず積層したり、バッテリーパックを車体と一体構造にしたりすることで、車載容量を増やす技術もある。こうして、三元系に迫る容量を確保した。 たとえばBYDの4ドアセダンであるシールの場合、82.56kWhのバッテリー容量から、後輪駆動車で640km(WLTC)の一充電走行距離を得ている。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー #リン酸鉄
TEXT:TET 編集部
レンジローバーPHEVの使用済みバッテリーを再利用! エネルギー貯蔵システム「BESS」で真の循環型経済の実現を目指す

外出先でのゼロエミッション充電を実現 ジャガー・ランドローバーは、エネルギー貯蔵システムの開発を手がけるスタートアップ企業であるAllye Energyと提携し、外出先でゼロエミッション充電を実現する斬新なバッテリーエネルギー貯蔵システム「BESS」を開発した。 1台のBESSには、「RANGE ROVER」および「RANGE ROVER SPORT」のプラグインハイブリッド(PHEV)に搭載されていたバッテリー・パック7台分を再利用している。 車両から取り外したバッテリーは、一切の加工を行うことなく、カスタマイズされたラックに差し込むだけで使用することができ、各BESSはフル充電の状態で英国の平均的な家庭の約1カ月分の消費電力に相当する、270 kWhのエネルギーを貯蔵することができる。 ジャガー・ランドローバーのエンジニアリング・チームは、今年後半に受注開始予定の「RANGE ROVER」初の電気自動車である「RANGE ROVER ELECTRIC」のテストでゼロエミッション充電を可能にするBESSを初採用。このBESSは一度に最大9台の「RANGE ROVER PHEV」をフル充電することが可能。 充電はジャガー・ランドローバーのPHEVモデルおよび電気自動車(EV)モデルに採用しているコンバインド充電システム(CCS)に対応しており、充電プラグを接続するだけで充電を開始する。さらにパワーロック・コネクター経由でのマルチ給電コネクターにも対応しており、固定サイトまたはオフグリッドサイトで、再生可能エネルギーを充電することができる。 BESSの重量は3.5 t未満でさまざまな場所に移動することも、固定して利用することも可能。販売店やジャガー・ランドローバーの拠点に設置することもでき、ジャガー・ランドローバーの顧客以外も利用できるように市販する予定だ。 最高水準で設計されたジャガー・ランドローバーのバッテリーは、EVの要件を下まわった低エネルギー状態でも70~80 %の容量が残っているため、エネルギー貯蔵システムで安全に再使用することができる。 真の循環型経済の実現に向けた取り組みの一環として、これらの二次利用が終了した後、ジャガー・ランドローバーは原材料を回収して再利用できるようにするという。

TAG: #BESS #バッテリー

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