フォルクスワーゲン 記事一覧

TEXT:小川フミオ
どうなる?IDシリーズのミライ。VW製品開発責任者に、その展望を訊く

IAAモビリティでのVWの存在感は大きく、発表した「ID.GTIコンセプト」は注目を集めていた。ID.4と異なるドライブトレインを持つこのモデルをみて、これからのラインナップへ期待を高めて小川フミオが製品開発責任者にインタビューをした。 180度かわったドライブトレイン 2023年、ミュンヘンで開催された自動車ショー「IAAモビリティ」の目玉ともいえるのが、フォルクスワーゲン(VW)が発表した「ID.GTIコンセプト」。 興味ぶかかったのは、このモデルと、このモデルのベースになる「ID.2 all」(2025年末発表予定)のドライブトレインだ。 日本には「ID.4」が導入されているVWのBEV「ID.」シリーズ。ドライブトレインの基本レイアウトは、リアモーターの後輪駆動。 それに対して、上記「ID.2 all」と「ID.GTIコンセプト」は、車名のとおりいまはコンセプトモデルとはいえ、フロントモーターと前輪駆動方式と、いわば180度ちがっている。 なぜわざわざ変えるのだろう? そんな疑問を含めて、フォルクスワーゲンのボードメンバーで、製品開発を統括するカイ・グリューニッツ氏にインタビューを行った。 ーーID.GTIコンセプトを作るのは、既存のGTIオーナーを安心させて、将来的にICEのGTIからの乗り換えをうながすのが目的ですか。 「そうですね。すでにクルマを所有しているひとが、次にBEVを選んでくれるよう説得しなければなりません。不安材料を取り除くとともに、積極的な購買動機を持っていただきたいのです」 ーーそのときに”武器”になるのが、GTIのヘリティッジだったのですね。 「まず、市場で評価されるVWらしさとは何であるかということを、私たちは考えました。そして、過去のレガシー、ヒストリー、ブランドといった点から、VWをVWたらしめているものは何であるかということを、突き詰めたのです」 ーー結果たどりついたのが、ID.GTIコンセプトですか。 「(乗り換えへの)説得力を持たせるためのデザイン。そのためには、内燃機関と似たようなデザインがまず大事だよねと。BEVにスイッチしても安全であるというメッセージを、デザインに込めるべきだと考えました。同時に、新しいデザインは、アグレッシブなものでなく、むしろ古典的な要素をしっかり盛り込もうと。そう意思決定しました」 2万ユーロ以下のモデルや大きなサイズのSUVを計画中! ーーでは、ID.2allとID.GTIコンセプトは、いくつもある選択肢のひとつ、というより、VWのラインナップにおいて、大きな柱になりうるものだということでしょうか。 「フォルクスワーゲンをフォルクスワーゲンたらしめているものは何かと考え、(ヘッド・オブ・デザインの)アンドレアス・ミント氏が発表したとおり、デザインの3原則をうち立てました。Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)です。それをID.2 allでかたちにしました。2025年にID.2allを発表し、そのあと、同様のコンセプトをすべての車両に展開する予定でいます」 ーーそのときに新しいBEVのシリーズは「ID.」の名前を継続して使いますか。現在のラインナップを参考にすると、ID.2allより小さな数字はID.1しかない。いっぽう、ID.7はすでに全長が5m近いサイズですね。ID.8があるとしたら、そうとう大きなクルマになるしかないですよね。 「ID.2allよりも価格の低い、2万ユーロ以下のモデルはいますでに検討はしています。ID.2allよりも大きいけれど、ID.3やID.4との間に入るモデルも計画にあります。それ以外にも、SUV、より大きなサイズのSUVもモデル計画の中に入っています。期待してお待ちください」 カイ・グリューニッツ(Kai Grünitz)氏プロフィール フォルクスワーゲン・ブランド・ボードメンバー/ブランド技術開発取締役 開発および管理部門でさまざまな職務を歴任。2002〜12年に2012〜14年VWブランド車両開発担当、2012〜14年にVW商用車部門事務総長、またシュコダ開発部門エグゼクティブアシスタントを兼任する。2014〜16年VW商用車部門メカトロニクス・シャシー・システム責任者、2017〜2020年VW商用車部門電気電子開発およびシャシーシステム開発責任者、2020〜22年VW商用車部門技術開発責任者を歴任。2022年10月からVWブランド技術開発取締役に就任。機械工学と工業工学の学位を持つ。 <Vol.2へ続く>

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TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例」とVWアンドレアス・ミント氏が語るEVデザイン

EV化によってデザインは、どのように変化していくのだろうか。「ID.GTIコンセプト」は、ミライを見据え、現在にデザインをしたとミント氏はいう。 自動運転がレベルアップにともなってデザインも変わる ーーこれからのBEVのデザインについてうかがいます。レベル3以降の自動運転など、あたらしい技術が実現すると、クルマの形状も、本質的に変わっていくのでしょうか。 「たしかに、自動運転が、レベル3やレベル4以上になった場合には、車内におけるエンターテイメントですとかインフォテイメントの価値がどんどん上がってくるでしょう。デザインも変わってくると思います」 ーーフォルクスワーゲン(VW)らしさは、どうやって打ち出していきますか。 「私たちは、Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)という3つのピラー(柱)を、これからのデザインの理念としています。3つめの”刺激”については、秘密のレシピであって、言葉にしにくいのですが、これらが変わらないかぎり、デザインランゲージを維持しながら、あたらしいプロダクト作っていけます」 ーーそこまで、すでに手を打っているということですか。 「いま現在の話として、あまり先までの心配をすることは、おそらく必要ないんじゃないかと思います。なぜならば、レベル4はまだ来ていないですし。いま私たち意識しなくてはならないのは、自分たちが寄って立つべき価値を見失わないようにすることです。そうであれば、VWらしさを失わない。そういうふうに思っています」 車内のエンターテイメント、そしてファン・トゥ・ドライブ ーー若い世代については、顧客としてどのようにとらえていますか。 「若い世代は、車内のエンターテイメントにより注目する傾向にあると思います。いままでのように、コーナリング性能だとか加速性能だとかでなく、どれぐらいエンターテイメントを車内で提供できるか。そこが若い世代から求められていると思っています」 ーー若い世代が、従来のような、クルマ本来のドライブの楽しさを語らないのは、自動車メーカーの責任でしょうか。それとも、これは不可避的に起きたことなんでしょうか。 「若い世代にたいして、私たちがやるべきことがあります。真の意味でのドライビングの楽しさを教えることです。ID.GTI(コンセプト)はBEVの時代に、従来と同様のファン・トゥ・ドライブを教えることができるのではないかと思っています」 ーーBEV独自のファン・トゥ・ドライブもありますね。 「重量物であるバッテリーを床に敷き詰めることで重心を低くでき、コーナリング性能が上がるとか。回生ブレーキを使うことで、制動性能が上がったりとか。真の意味でのドライビングの楽しさも、ID.GTIで実現できると思います。私じしん、ドライビングが好きですし、若い世代にも、ファン・トゥ・ドライブを訴求していく必要があると思います」 デザイナーからすれば、自由度が高まるBEVはファンタスティック ーークルマがBEV化すると、デザインの面で、今までできなかったこと、やりたくてもやれなかったことが実現できますか? 「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例です。ボディとホイールベースとの関係をみると、完璧なプロポーションです。おなじセグメントで、こんなに均整のとれたクルマはないですよ。ホイールベースが260cmに対して、ボディ全長が410cmこのプロポーションは完璧です」 ーークルマのデザインにおいて、もっとも大事なのはプロポーションというのは昔から言われてきたことですね。 「もうひとつ、タイヤの外径が大きくなっています。非常に見た目がいいでしょう。デザイナーからすると自由度が高まるので、BEVはファンタスティックです。強くパワフルでスポーティーな印象を与えるけれど。同時に、かわいらしさも失わないデザイン。これがID.GTIコンセプトなのです」 ーーICEではむずかしったのですね。 「エンジンルームの役割が違いますから。ラジエーターもあるし、エンジンやギアボックスが入っているので、どうしても前車軸より前の、いわゆる、オーバーハングが長くなってしまいます。デザイン的にダメとは言いませんが、BEVのほうががいいと思います」 <了>

TAG: #EV #ID.GTI #VW
TEXT:生方 聡
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

TAG: #ID.4 #VW
TEXT:小川フミオ
VWが打ち出す「LOVE BRAND」へ。ヘッド・オブ・デザインが語るポイント

フォルクスワーゲンのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏との語らいのなかで、小川フミオは「伝統の継承」にある素晴らしきデザインたちへのオマージュをきき出していく。 シロッコが、ブーメランを再解釈したように ーー「ID.GTIコンセプト」は、ゴルフGTIの”伝統”を継承して、23年3月発表の「ID.2 all」と同様、基本的にフロントモーターで前輪駆動というレイアウトです。デザインも同様に、オリジナルにこだわりますか。 「Cピラーを太く見せることが大事だというのは、さきに説明したとおりです。しかもオリジナル・ゴルフを見ていると、とくに上面図でみるとわかりやすいかもしれませんが、後方にいくにしたがって、微妙なテーパーがついています。ちょっとしぼっているんです。そこもつよく意識しました」 ーーCピラーが太すぎると、ななめ後方視界がさえぎられてしまいます。従来のゴルフではそこがやや難点でした。 「なるほど、なるほど、ID.GTIコンセプトでは、ゴルフ7に比べたら少し細くはしましたけれども、やはりデザインのエレメントとしては重要だと思っています。巌(いわお)のように頑強とか、堅牢というイメージをそのリアからフロントにかけて統一した形で持たせ、ステイブルというVWデザインのテーマにつながる要素ですので」 ーー伝統的なデザインといいつつ、でもたしかに、あたらしさを感じる気がします。 「側面のベルトラインを、前から後ろにかけてまっすぐに続くようにしたいと思いました。それは、審美的にも、ステーブルな印象という点でも重要だからです。そこで後席ドアのオープナーハンドルは、Cピラーのほうに移しています。開閉構造がベルトラインのデザインに与える影響を回避するためです」   ーーオリジナル・ゴルフは、イタリアのジョルジェット・ジュジャーロひきいるイタルデザインがデザインを手がけたとされていますね。 「Cピラーのデザイン処理は、すごいですよ。当時のジュジャーロのデザインにおいては、じつは、このトリートメントは典型的なんです。ゴルフ以外には、アルファロメオ・ジュリアや、私がもっとも好きなマセラティ・ブーメランでも同様です。平面的なシートメタルを使って、どうやって力強さを出すか。考えぬいた、あるいは直感的に知っていた、結果でしょう」 ーーブーメランとは意外ですが、デザインとしてはとてもいいですね。 「ブーメラン(1971年)は1970年代的な、パワフルなクルマのデザインです。ジュジャーロ氏は初代VWシロッコ(74年)もデザインしています。シロッコは、ブーメランのもうひとつの解釈といってもいいでしょう」

TAG: #ニューモデル #フォルクスワーゲン #発売前モデル
TEXT:小川フミオ
IAAモビリティ開幕前夜に「VWグループ・メディアナイト」で語られたブランド戦略とは。

ミュンヘンで開催されたIAAモビリティを訪れた小川フミオは、フォルクスワーゲン・グループの動向を見れば、現在の自動車界を俯瞰できる、と考えていた。そのプレゼンテーションは、自動車界の未来を予見するものだった。 大きな存在感を示すフォルクスワーゲングループ ミュンヘンで「IAAモビリティ」と名づけられた自動車ショーが、2023年9月5日から10日にかけて開催。大きな特徴は、ほぼ電動化がテーマになっていたことだ。 クルマの電動化の尖兵ともいえるぐらい、今回、展示に力を入れていたのがフォルクスワーゲン・ブランドを筆頭にしたフォルクスワーゲングループだ。 この記事を読んでいるかたには、いまさら説明の必要もないだろうけれど、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーがグループ傘下に入っている。 加えて、シュコダ、セアト、クプラといった、日本への輸入がないけれど、欧州を中心にセールス好調なブランドも含まれる。 かつて大きな規模で世界中の自動車好きの注目を集めていたフランクフルトの自動車ショーに代わり、ミュンヘンで開催されるようになったIAA(Internationale Automobil-Ausstellung=国際自動車ショー)でも、大きな存在感を誇示した。 それが端的に表れていたのが、ショー開幕前夜にミュンヘン市内の特設会場を舞台に開催された「フォルクスワーゲングループ・メディアナイト」。 フランクフルトでショーが開催されていた時代から、フォルクスワーゲングループは、世界各地からジャーナリストを招いて、同グループが向かおうとしている方向など、紹介に向けての計画を発表してきた。 「私たちは環境への責任をたいへん強く受け止めています。地球環境保全は、これからの計画における核なのです」 ジャーナリストの前で登壇した、フォルクスワーゲングループのオリバー・ブルーメCEOは、そう語った。 ブルーメCEOは、グループ間でのプラットフォーム共用と、動力が電気になっても同様の戦略がとれるという。 じつはそれこそ、いまの自動車業界における共通の課題なのだ。あらゆる点でモデルごとに違いを出していく時代は終わり、共用と差異化のバランスこそが、市場で生き残っていくために重要ということだ。どのメーカーでも同様のことが言える。 電気時代のプラットフォーム、そしてキーコンセプト「サクセス・バイ・デザイン」 そこで、冒頭に記したように、この記事はIAAモビリティという自動車ショーについてのものなのだけれど、フォルクスワーゲンの考えを紹介することで、現在の自動車界を俯瞰できる。そう考え、もうすこし記述を続けたい。 「これまでフォルクスワーゲンは、MQBというフレキシブル・プラットフォームを開発。傘下ブランドの車両の多くは、この前輪駆動の内燃機関用プラットフォームを使って開発されてきました。このさきこれをMQBプラスへと発展させていきます」 同様の役割が期待されるのが、電気自動車用のMEBプラットフォーム、とブルーメCEOは言う。2019年に発表された全長4.2mの「ID.3」を皮切りに、「ID.4」、「ID.5」、「ID.BUZZ」など13車種で使われる。 「電気時代のプラットフォーム戦略の要(かなめ)になるもので、時代に合わせて常にアップデートしていきます。最新は、今回ショーでお披露目した「ID.7」で(5メートル近い車体にもかかわらず)698kmの走行可能距離を誇ります」 バッテリー戦略もやはり、競争力を核に、このさきの展開が考えられている。性能向上はもちろん、現時点での目標は専門企業の協力を得ながら、いわゆるドライセルバッテリーのギガファクトリーを、各地に建設することだ。 「もうひとつ、私たちがいまやるべきことがあります」。ブルーメCEOは続けた。 「それぞれのブランドとその製品に、より明確なキャラクター、アイデンティティ、そしてパフォーマンスを与えることです。ゆたかなヘリティッジを強調することで、このさきも市場でブランド力を確固たるものとしていけるのです」 そこでブルーメCEOが掲げたのが「サクセス・バイ・デザイン」なるキーコンセプト。成功のためデザインの重要性を上げる戦略で、デザインチームはこれまで以上に、CEOと密な関係で製品開発を行うそうだ。   「よいデザインはクライアントが喜んでくれる製品づくりのコアになるもの。エクステリア、インテリア、それにデジタルエクスペリエンスすべての領域で、フォルクスワーゲンはデザイン中心のブランドになります」

TAG: #IAA #VWグループ #戦略
TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプト」のCピラーに注目。ヘッド・オブ・フォルクスワーゲン・デザインが物語る、これからのVWのデザイン

フォルクスワーゲン(VW)の企業方針「Success By Design」を担うアンドレアス・ミント氏は、人を惹きつけることが必要と語る。その一例が、ID.GTIコンセプトのCピラーにあるという。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえること」 2023年にフォルクスワーゲン(VW)グループは、「IAAモビリティ」を前に、「デザインによる成功 〜Success By Design」という企業方針を打ち出した。 「デザインはブランドの説明のよい手段であり、ひとは自動的にデザインとブランドを結びつけます。そして、新車の購入にあたって、デザインは大きな影響力をもちます」 VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、グループの各ブランドにおいて、これからいっそうデザインに力を入れていくとする。 ただし、とんがっていればいい、ってもんではない。デザインが企業のありかたと、うまく結びついている必要がある。VWグループにおいて、デザイン部とCEOはよりダイレクトな関係を構築していくんだそうだ。 EVが本格的に発売されるようになった数年前は、上記のような考えはあまり見られなかった。ICE(エンジン車)との差別化が大事で、違って見えることに、各ブランドは注力した感があった。 いま、時代はあたらしくなった。そう思わせるクルマが、いくつか登場している。VWでいうと、23年3月にハンブルグでコンセプトが発表された全長4メートルのハッチバックEV「ID.2 all」、そしてそれをベースに開発するという「ID.GTIコンセプト」が好例だ。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえることです。あたらしい技術(電気)から距離をとっているひとが、近づいてきてくれるクルマ。いいかんじのデザインだね、と思ってもらえるクルマづくりです」 そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏だ。 そういえば、ハンブルグでの発表会のとき、ミント氏は「(23年1月にVWのヘッド・オブ・デザインに)就任してまずやったのが、ID.2 allのデザインでした」と語ってくれたのを思い出した。 ほぼ同時にID.GTIのデザインも手がけている。この作業をミント氏は「クリスマスと誕生日がいっしょに来たみたいな楽しさでした」と語っている。デザイナー冥利につきる仕事、ということかな。

TAG: #EV #ID.GTI #VW
TEXT:小川フミオ
VW愛!デザイン責任者が語る「電気自動車時代に、わたしたちができること」

IAAモビリティ(ドイツ国際モーターショー)で注目を集めた「ID.GTIコンセプト」を手掛けたVWブランドのヘッド・オブ・デザインにインタビュー。 「GTIのファンのために、私たちは何が出来るかーー」 GTIファンだけでなく、フォルクスワーゲン・ファンだけでなく、世界中の自動車ファンが楽しみにしていること。それは、ひょっとしたら、「ID.GTI」の発売では? フォルクスワーゲン(VW)が、「ID.GTIコンセプト」を、2023年9月初旬のミュンヘンでの自動車ショー「IAAモビリティ」で発表したのは、既報のとおり。 「私たちは、まもなく電気自動車の時代に入ります。そのときに、GTIのファンをどうするか。そのひとたちのために、私たちは何が出来るかーー」 そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザイン(デザインのトップ)を務めるアンドレアス・ミント氏だ。 さっとミント氏の経歴をおさらいすると、アウディ時代に数かずの”仕事”をしているのが目につく。「A1」「Q3」「Q8 e-tron」などはミント氏のチームが手がけたとされる。 1969年にドイツで生まれたミント氏は、数おおくのデザイナーを輩出しているプフォルツハイム大学デザインスクールを卒業。1996年にVWに入社したあと、ブランドをいくつも経験している。 ベントレーでは、スポーツカーというよりレースカーのような「ユノディエール Hunaudieres」(1999年)を手がけた業績で知られる。 そのあと、VWでは、精悍な顔つきが好ましかった「ゴルフ7」(2012年)を担当。 2023年1月に、VWにヘッド・オブ・デザインとして戻る前は、ベントレーのデザインディレクターとして、「ベントレー・バトゥア・バイ・マリナー Bentley Batur By Mulliner」を手がけた。 バトゥアは、じっさいはミント氏がVWに移ったあと、23年6月に正式発表されている。過去のヘリティッジにこだわりすぎた感のあったベントレー車のデザインにあたらしい風をどっと吹き込むような魅力的なスタイルのクーペだ。

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TEXT:小川フミオ
VW「ID.GTIコンセプト」に、これからのモデルに重要な“3つの方向性”を発見!

電動化によってエキサイティングなGTIの未来を、初めて表した「ID.GTIコンセプト」。そこには、今後のフォルクスワーゲンのクルマづくりにおける重要な要素が入っているのだ。 電動化への3つのキーワードを、かたちとして表したID.GTIコンセプト フォルクスワーゲンのアイコンともいえるGTIモデルは、ICEの時代の遺産になるのか。そんな危惧をもっているひとへの朗報が、2023年のIAA自動車ショーで発表されたID.GTIコンセプトだ。 凝縮したようなコンパクトなボディをもちながら、20インチのホイールによるスタンスのよさと、GTIシリーズに特徴的なレッドラインなど、自動車好きなら食指が動くデザインだ。 デザインの背景には、どんなコンセプトがあったのか。ID.GTIコンセプトが発表されたIAA自動車ショーにおけるフォルクスワーゲン・グループのテーマはデザイン。 フォルクスワーゲン・グループのオリバー・ブルーメCEOは、「よいデザインは私たちのお客様を魅了させるための重要な要素」と語る。 そのなかで出てきたID.GTIコンセプトは、まさにその好個の例なのだそう。ヘッド・オブ・フォルクスワーゲンデザインであるアンドレアス・ミント氏が、最新のデザイン哲学を語ってくれた。 「デザインの柱として確定したのは、3つの要素です。ステーブル(stable)、ライカブル(likeable)、そしてエキサイティング(exciting)であること」 ジャーナリストに公開されたID.GTIコンセプトの前には、たしかに、その3つのキーワードが大きく掲げられていた。 ステーブルとは、「安定感」とフォルクスワーゲンの日本法人では訳す。ライカブルは「好感度の高いこと」、そしてエキサイティングは「感動」。 「3つの要素を完璧にひとつに統合した具体例として」 3つのキーワードは、ID.GTIのベースになったID.2 allが23年3月のハンブルグで公開された際、ミント氏が掲げたものだ。今回もそれが繰り返された。 「フォルクスワーゲンのデザインにとって最も重要な側面は、”安定感”です。安定した価値、安定したフォルム、信頼性、認知度が含まれます。2番目のコア要素は”好感度”。さらに私たちは、お客様を”感動”させたいのです」 ID.2 allの発表会の席上で、ミント氏が述べたこと(のちょっとした要約)だ。 「しかし……」とミント氏は、23年9月のミュンヘンで述べた。 「私が3つのキーワードを”シークレットソース”(秘密のレシピのような意味)として発表した際、そう言われても、よくわかんないな、という声ももらいました」 いまこそ、とミント氏は続ける。その言葉の意味を、具体的に示せるのです、と言い、伝統的なダイヤモンドシルバーメタリックなる塗色に塗られたID.GTIを改めて指し示したのだった。 「私がうれしいのは、3つの要素を完璧にひとつに統合した具体例として、ID.GTIコンセプトをお見せできることです」 これこそ完璧なプロダクト、とミント氏。オリジナルのゴルフGTIがもっていた要素をうまく盛り込み、スポーティさだけでなく、デザインとしてもアイコンだったオリジナルGTIの特徴を、満足いくかたちで取り込んだモデルなのだそう。 「(オリジナルとは)まったく違うクルマです。しかし、強いつながりを認めることが出来るはず。50年におよびそうなGTIの特徴を盛り込んで、このクルマを仕立てたのです」 <了>

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TEXT:小川フミオ
VWの新作「ID.GTIコンセプト」のデザインには、『伝説のDNA』が詰まっている!

「GTI」を、よりダイナミックでスポーティに、ピュアEVの世界へ。ID.GTIコンセプトにある伝統と革新を、アンドレアス・ミント氏に訊く。 電動GTIは、素晴らしい未来像を示す 2023年9月4日に発表された「フォルクスワーゲンID.GTIコンセプト」は、ゴルフやポロに設定されているアイコニックなスポーツモデル、GTIを電気自動車の時代に生まれ変わらせようというもの。 「私たちは、ID.GTIコンセプトによって、フォルクスワーゲンが作ったGTIの哲学が、この先にも、どれほど素晴らしい未来をもたらすかを示します」 そう語るのは、フォルクスワーゲン・ブランドのデザイン責任者を務めるアンドレアス・ミント氏。ベントレーのチーフデザイナーやアウディのエクステリアデザイン責任者という経歴をもつ。 2023年3月にハンブルグで発表されたコンパクトBEVのコンセプトモデル「ID.2 all」もミント氏の指揮下でデザイン開発された。 ハンブルグでのインタビューで、ホットモデルの可能性を示唆していたとおり、6カ月後に、このようなかたちでコンセプトが発表されたのだった。 「パワフルなID.2 allは、電動GTIの完璧なベースとなると確信しております。ID.2 allのスケッチを初めて紙に描いたとき、すでにGTIのイメージも思い浮かべていました」 ID.GTI(コンセプト)は、すぐれたデザインとテクノロジーを備えた、手頃な価格の量産モデルという位置付けだという。 「スポーティなアイコンモデル」(フォルクスワーゲン)をめざしており、そのために「力強いプロポーションと、四隅に配置されたホイールが明確に示す安定感」などを重要視したそうだ。 コンセプトとしているが、量産を視野にしている コンセプトというわりに、ボディディメンションなどは、はっきりした数値が発表されているのが興味ぶかい。 全長は4104mm、全幅は1840mm、全高は1499mm。ホイールベースは2600mmにおよぶ。オーバーハングは短くとられ、タイヤとホイールは、245/35R20と大きめだ。 デザインの説明にあたって、ミント氏は「伝統的でアイコニックなデザイン」を強調。レッドラインや、太いリアクォーターピラー、さらに初代GTIが装着していたスチールホイールのカバーをイメージして軽合金ホイールをデザインしたそうだ。 バンパーは、モータースポーツをイメージしたこのモデル独自のデザイン。中央に配置されたブラックのフロントスプリッターが目をひく。「IQ.ライト」と呼ばれるLEDマトリクスヘッドライトもスポーティな雰囲気だ。 雰囲気だけでなく、高性能のための機能も採用。たとえば、空力性能を最適化し、ブレーキ冷却のためにエアホイールハウジングにみちびき、そこからエアをきれいに外部に排出するためのエアカーテンをもつ。 インテリアは、初代GTIをアイコンに仕立てるのに大きく貢献したチェック柄のスポーツシート、くぼみのある衝撃吸収材を備えた3 本スポーク のステアリングホイール、そしてゴルフボールデザインのシフトレバーといった要素を組み合わせた。 ID.GTIコンセプトでは、ゴルフボールのデザインをセンターコンソールのマルチファンクション「GTIエクスペリエンス・コントロール」に“移植”するなど、部分的ではあるがオリジナルデザインの要素を継承。 スポーツシートには、とうぜんチェック柄を採用。パターンは伝統的に「Jacky(ジャッキー)」と呼ばれてきたが、今回は電気をひっかけて「Jack-e」と呼ぶそうだ。 ユニークなのは、10.9インチのデジタルディスプレイだ。表示を変えられるのが特徴で、「ビンテージモード」を選択すると、セカンドシリーズ以降の初代ゴルフGTIのメーターレイアウトを表示することも出来るそうだ。 発売は、2027年と言われている。デザインに力を入れるというフォルクスワーゲンの自信作ととらえられるID.GTIコンセプト、発売が楽しみだ。 <Vol.3へ続く>

TAG: #IAA #ID.GTI #VW
TEXT:小川フミオ
フォルクスワーゲン・アウディ・ポルシェの近未来を「IAAモビリティ」でチェック

フランクフルトからミュンヘンへ場所を移し、開催された「IAAモビリティショー(ドイツ国際モーターショー)」。ヨーロッパの将来がみられる会場で、近い未来のモデルをチェックしていく。 フォルクスワーゲンはID.GTIコンセプトに加えて、パサート・バリアントを発表 2023年9月にミュンヘンで開催された「IAAモビリティ」ショーの特徴を簡単にいうと、会場が2つあったこと。 ミュンヘンのメッセ会場と、市内(オデオンスプラッツなど)に、展示が設けられた。 フォルクスワーゲンは、メッセ会場に、「ID.GTIコンセプト」を置いた。 前日のフォルクスワーゲングループ・メディアナイトの報道の影響もあるのか、そこで初お披露目されたID.GTIコンセプトは、まわりから、一般の来場者が離れることがないほどの人気ぶり。 同様に、ミュンヘン中心部のオデオンスプラッツ(オデオン広場)には、オープンスペースと呼ばれる一般客が無料で入場できる会場を特設(そちらのほうがうんと広い)。そこでも展示を行った。 オープンスペースでは、新型「パサート・バリアント」も展示された。全長が5m近くまで拡大した新型は、ワゴンボディのみ。 セダン廃止の理由について「そちらはBEVのID.7がカバーする」とVWブランド技術開発担当取締役のカイ・グリューニッツ氏は説明してくれた。しかもセダン人気は低迷中だ、とつけ加えた。 新型パサートは、LEDライトストリップをフロントマスクに持ち、ID.シリーズとの共通点を強く感じさせた。ただし、プラグインハイブリッドを頂点に、ドライブトレインは内燃機関だ。 見どころは、EVOプラスという新しいプラットフォームを使っていること。

TAG: #VW #アウディ #ポルシェ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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