烏山 大輔 記事一覧

TEXT:烏山 大輔
レクサス初のBEV専用モデル「RZ450e」登場

レクサスが、バッテリーEV(BEV)専用モデルである新型「RZ」を発売した。発売を記念した特別仕様車“First Edition”は最初の500台限定だ。First Editionは940万円、version Lは880万円。 新型RZは、レクサス初のBEV専用モデルであり、電動化技術がもたらすレクサスらしいクルマを感性に訴えかける走りとデザインで体現し、BEVを軸とするブランドへの変革の起点となるモデルである。BEV専用プラットフォーム(e-TNGA)採用に加え、バッテリーやモーターの最適配置による理想的な慣性諸元や、軽量かつ高剛性なボディの実現により、車両の基本性能を大幅に進化させている。また、電動化技術を活用した四輪駆動力システム「DIRECT4」の採用などで、より人とクルマが一体となった気持ちの良いドライビングフィールを提供する。 新型RZのエクステリアデザインは、BEVならではのシームレスな加速感や躍動感を表現するとともに、スピンドルグリルをスピンドルボディと一体化することで、BEVの機能的な進化や空力性能の向上を図っている。また、インテリアデザインにおいては、SDGsやサステナブルなモビリティを中心に考え、洗練された空間づくりにこだわり、シンプルな設えの中にも上質さや細やかさを感じられる空間を実現。さらに、パノラマルーフや輻射熱ヒーターを含めた空調の協調制御による高効率な暖房システムなど、快適な室内空間を提供する機能も備えている。 発売にあわせ、「LEXUS Electrified Program」というサービスプログラムも提供される。このプログラムは、オーナーがRZとともに過ごす時間をより豊かにするために設けられたもの。商業施設などに設置された「レクサス充電ステーション」が同プログラム加入者は事前に予約が可能で待ち時間なく150kW以上の急速充電器が利用できるなどのサービスを受けられる。 レクサス RZ450e version L スペック 全長:4,805mm 全幅:1,895mm 全高:1.635mm ホイールベース:2,850mm 車両重量:2,100kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:147Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:494km(WLTCモード) 最高出力:150kW(203.9ps) 最大トルク:266Nm(27.1kgm) バッテリー総電力量:71.4kWh モーター数:前1基、後1基 トランスミッション:eAxle 駆動方式:AWD フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット リアサスペンション:ダブルウィッシュボーン フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 最小回転半径:5.6m 車両本体価格:880万円

TAG: #RZ
TEXT:烏山 大輔
NEXCO、EV・PHEV向け急速充電器を1,100口へ大幅増設。充電目的の一時的退出でも高速料金据え置きを予定

高速道路の運営会社であるNEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本の3社は、2025年度までにサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)におけるEV・PHEV向け急速充電器の充電口数を約1,100口に大幅に増設する計画を策定したと発表した。これは2020年度末から5年間で約2.7倍の数である。 日本政府は成長戦略会議にて、「2030年までに電動車についてガソリン車並みの経済性・利便性を実現する」(2021年6月18日閣議決定)との目標を掲げており、電動車の普及が加速することが予想される。NEXCO3社はこれに応じて、合同会社日本充電サービス、ジャパンチャージネットワーク株式会社と協力し、2021年度から株式会社e-Mobility Powerを共同事業者に加え、EV・PHEV向け急速充電器の整備・運営を進めてきた。急速充電器の新設・機器更新については、2022年度には新たに82口の充電口を増設し、2023年度には充電口155口を増設する予定である。 さらに、高速道路の路外に整備されたEV・PHEV向け急速充電器の利用についても、2024年度から順次実施できるよう、料金調整や新たな課金・決済の導入などを検討する予定だ。 NEXCO3社およびe-Mobility Powerは、これらの施策によって高速道路SA・PAの利便性を向上させ、EV・PHEV車を利用するドライバーのニーズに応えていくとしている。

TAG: #eモビリティパワー #SA・PA #充電
TEXT:烏山 大輔
普通免許で運転可能なリバーストライクを二子玉川「蔦屋家電」で展示中

岡山県の両備ホールディングス株式会社の社内カンパニーである両備テクノモビリティーカンパニーが開発した”チョイ乗り”EVトライクが、2023年3月27日(月)~5月7日(日)の間、東京都世田谷区の二子玉川にある次世代型ショールーム「蔦屋家電+」で展示される。 このEVトライクは、普通自動車免許で乗れる3輪のEVリバーストライク(前2輪、後1輪)であり、ちょっとした買い物や気分転換に最適で、女性でも気軽に乗れるEV車両である。展示特別価格での販売も実施中だ。 展示される「SOREX(ソレックス) EVリバーストライク RT-01」は、車両サイズが全長2,140mm、全幅1,070mm、全高1,240mm、1人乗りと2人乗りの2タイプがある。最高速度は50km/h、航続可能距離は約120km(30km/h 定地走行時)、充電時間は約12時間。前輪と後輪には油圧ディスクブレーキを装備している。 通常のトライクや車輪が前2輪、後1輪のリバーストライクは重心位置が高いものが多いが、同車は低重心になっているのが特徴だ。国産のEVリバーストライクの製品化・販売は初めての事例となる。 車体カラーは10種類、シートカラーも3色から選択できるため、性別年齢問わず、好みや用途に応じて選ぶことが可能だ。 同社の吉備工場(岡山県加賀郡吉備中央町)では試乗も可能、下記の問い合わせ窓口からの申し込みが必要だ。 <https://ryobi-techno.com/ev-trike/contact/> EVリバーストライク スペック 車両サイズ:全長2,140mm、全幅1,070mm、全高1,240mm タイヤサイズ:前輪・後輪 10インチ バッテリー:リチウムイオン 最高速度:50km/h 航続可能距離:約120km(30km/h 定地走行時) 充電時間:約12時間 原動機種類:インナーローターモーター 定格出力:1,000W ブレーキ: 前輪・後輪 油圧ディスク式

TAG: #EVトライク #両備テクノモビリティー
TEXT:烏山 大輔
大日本印刷と島田理化工業、EV用ワイヤレス給電の実証実験装置を共同開発

大日本印刷株式会社(DNP)と島田理化工業株式会社は、EV用ワイヤレス給電の実用化に向けて、実証実験装置を共同開発した。 近年のEVの普及や自動運転技術の進展にともない、新たな給電方法としてEV用ワイヤレス給電システムが期待され、EV関連企業による実証実験や共通規格化が世界的に進められている。 この共同開発を通して、DNPのシート型コイルや島田理化のPWM(Pulse Width Modulation)制御インバーターなど、2社が強みとする技術や製品を融合・最適化し、実証実験装置として提供する。そして次世代インフラとしてのEV用ワイヤレス給電システムの社会実装に貢献していく。 今後、EV関連企業へこの装置の利用と実証実験の実施を促進する。また実証実験装置用として販売することで、EVワイヤレス給電の実用化が加速するだろう。 2社の強みを発揮した実証実験装置 島田理化は誘導加熱装置で長年培ったインバーター技術に加え、独自開発したデジタルPWM制御により、高効率で省エネルギーな大電力の給電を可能にした。実証実験装置は、出力11.1kWのインバーターユニットを4台内蔵し、複数車両への個別または同時の給電や、1車両への複数コイル同時給電に対応する。 DNPは独自開発したシート型コイルにより、SAE(米国自動車技術会)が定める規格(WPT3:11.1kW)に準拠した薄型・軽量かつ漏洩磁界を抑えた給電を可能にした。コイルと給電ケーブルの接合回路の最適化により、ケーブルの長さが最大30mでの給電を実現したことで、多様な設置レイアウトに対応できる。 実証実験の想定レイアウト トラックヤードで荷役作業中のEVトラックへの給電や、タクシープールで待機中のEVタクシーへの給電を想定している。  

TAG: #充電
TEXT:烏山 大輔
アウディ、2025年までに10車種のEVを発売、Q6 e-tronは今年後半に発表予定

アウディは2025年までに20車種以上のニューモデルを販売する予定で、そのうち10車種以上はEVである。2023年後半に発表される予定のQ6 e-tronモデルシリーズは、ドイツのインゴルシュタット本社工場で生産される初めてのEVである。本社工場敷地内に専用のバッテリー組み立て工場を建設。この工場で重要なノウハウを蓄積し、将来に向けた従業員のトレーニングを実施することができる。独自のバッテリー組み立て施設は、eモビリティへの移行を推進する、アウディの取り組みにおける重要な拠点となる。 デジタル化と電動化の大きな飛躍 アウディはQ6 e-tronプロトタイプを、ヨーロッパの北極圏でテストしている。Q6 e-tronシリーズは、ポルシェと共同開発したプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)を採用する初のEVである。800Vの主電源システム、パワフルで効率的な電気モーター、革新的なバッテリーと充電管理システム、新開発の電子アーキテクチャーを備えたQ6 e-tronプロトタイプは、アウディの電動化とデジタル化における次の大きなステップを体現するモデルである。 Q6 e-tronのラインナップはSUVとSportbackである。インゴルシュタット工場でスキルアップされた従業員により持続可能な方法で生産され、アウディの電動化の未来を表現している。アウディは、完全なコネクテッド機能を備えたプレミアムなeモビリティのリーディングプロバイダーへと急速に変革を進めている。 過去最高水準の業績 3月16日に発表された2022年度の会計では、売上高は16.4%増加し618億ユーロ(約8兆7,400億円)に達し、営業利益は約40%上昇して史上最高の76億ユーロ(約1兆700億円)を計上した。営業利益率は昨年の10.4%から12.2%に上昇し、ネットキャッシュフローは48億ユーロに(約6,800億円)達し、アウディ史上2番目に高い数値となった。 2022年度の好調な業績の主な要因には、世界的に困難な経済状況の中での一貫した危機管理、良好な価格ポジション、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティ ブランドの好調な業績が含まれる。2022年には、EVの販売台数も急増(44%増の11万8,196台)した。 2023年、アウディは今後発表されるQ6 e-tronシリーズを皮切りに、アウディ史上最大のニューモデル攻勢を展開する。

TAG: #Q6 #財務
TEXT:烏山 大輔
国内初商用EVメーカーHWエレクトロとアネスト岩田が資本業務提携を締結

HW ELECTRO(HWエレクトロ)株式会社は、アネスト岩田株式会社と、2023年3月に「Made in Japan=最高クオリティーの実現を目指す」をテーマに、自動車納車前整備(PDI)の業務提携ならびに資本提携を締結した。 アネスト岩田は今年創業97年の空気圧縮機や真空機器、塗装・塗布機器の製造販売を行う会社である。 HWエレクトロは、次世代の多用途EV商用車「ELEMO(エレモ)シリーズ」の車輌の開発・製造と販売を行うファブレスメーカーである。「環境問題」と「社会貢献」の視点から「The Essential Piece of Mobility(人に、社会に、不可欠なピースであるために)」をコンセプトにしている。2021年4月に輸入小型のEV商用車として国内で初めてナンバーを取得し、2021年7月24日より「エレモ」、11月20日より「エレモ-K」の販売を開始した。そして2023年6月には、中型バン「エレモ-L」が販売開始予定である。 流通・サービスの拡大に向けて HWエレクトロはものづくりにおいて、技術に加えものづくりに対する姿勢が品質の良さに繋がるとともに、信頼性としても評価されるとし、これを「Made in Japan」であると定義づけしている。この「Made in Japan」を実現するために、アネスト岩田の歴史と実績における製造技術が必要不可欠であると考えた。 またアネスト岩田は2026年に創業100周年を迎えるにあたり、新規事業開拓の必要性を強く感じていた。そこで、HWエレクトロの環境に配慮したラストワンマイル配送市場へのモビリティ事業や、商用EVが災害時におけるエネルギー源となり得る点に将来性を感じ、今回の資本業務提携が締結された。 この資本業務提携により、日本国内でのエレモの納車キャパシティーの拡大および全国レベルでのサービス体制の構築を実現することで、より多くのユーザーにエレモシリーズの車両を届けることができる。そして結果的に環境に優しく暮らしやすい社会の構築に貢献したいとしている。

TAG: #エレモ #商用EV
TEXT:烏山 大輔
GX支援企業のサステックが、EV充電インフラの新会社「ELIC Charge(エリックチャージ)」を設立

株式会社Sustech(サステック)は、EVチャージステーション(EV充電ステーション)およびEVチャージャー事業(EV充電器)を推進する新会社「株式会社ELIC Charge(エリックチャージ)」を設立した。エリックチャージはサステイナブルな未来の実現するために、これらの事業を通じて、再生可能エネルギーによる急速充電ネットワークを構築、EVシフトを推進し、カーボンニュートラルを進めていく。 EVシフトを加速 カーボンニュートラルの実現に向けて、世界の自動車産業では従来のガソリン車から、動力源を電力とするEVへ転換するEVシフトが急速に進んでいる。日本においても「2035年までに新車販売で電動車100%を実現」という政府方針が打ち出された。EVの利便性を高めるため、EVチャージステーションの早期拡充とEVチャージャーの急速化が求められている。しかしながら、複数のEVを同時充電できる施設の不足、急速充電器の普及の遅れ等、依然として多くの課題が残っているのが現状である。 エリックチャージは、社会インフラとして、EVチャージステーションを設置、急速充電のネットワークを構築し、EVへの転換を促進する。サステナブルな未来を実現するため、EVチャージステーションを整え、EVシフトを加速化させる。 GXからカーボンフリーへ またサステックは、グリーントランスフォーメーション(GX)を促進する複数の事業に多角的に取り組んでいる。再生エネルギーによる発電事業、分散型電力運用プラットフォーム「ELIC」の開発・運営、温室効果ガスの排出量算定と脱炭素支援の「CARBONIX」等である。サステックは、エリックチャージ設立を通じて、太陽光など自然のエネルギーを電力へ転換して、EVと都市へ届ける、カーボンフリーの連続した事業を総合的に展開していく。

TEXT:烏山 大輔
テラモーターズと山口県柳井市がゼロカーボンシティの実現を目指し協定を締結

EV充電インフラ「Terra Charge(テラチャージ)」を提供するTerra Motors (テラモーターズ)株式会社と、持続可能なまちづくりを目指す山口県柳井市は、SDGsの掲げる持続可能な地域づくりを目指し、2023年3月13日に「持続可能な地域づくりに向けた包括連携協定」を締結したことを発表した。 今後、テラモーターズと柳井市は一体となり、ゼロカーボンシティの実現を中心に幅広く連携協力し、環境に優しいe-モビリティの領域で理念の具現化を図る。まずは、テラモーターズが提供する日本製のEV充電インフラ「テラチャージ」100基を柳井市内施設に展開していく。ゼロカーボンシティの実現に向け、長期的に安全な運用ができることを目指し、地政学的リスクやアフターメインテナンスへの懸念が少ない「テラチャージ」が採用された。 ゼロカーボンシティ実現に向けての大きな一歩 世界的な環境危機に対して、SDGsへの取り組みが強まる中で、柳井市ではゼロカーボンシティを表明し、脱炭素化に取り組んでいる。市民の車移動が多い柳井市において、自動車の脱炭素化は不可欠なものである。今後EV充電インフラは、市民にとって重要なインフラになっていく。今回「テラチャージ」100基の大型導入が決定し、市民のEV購入や充電に対する懸念は少なくなるだろう。 地方に住む人にとって、普段の買い物や通院など移動手段である「足」の問題はつきものだ。またガソリン価格の高騰やガソリンスタンドの廃止など問題も多い。それらの問題を解決しつつ、災害時の非常用電源としても使えるEVの普及につながることを期待したい。 ■EV充電インフラ「テラチャージ」導入予定施設(計100基導入予定) ・翠が丘防災運動公園(複合図書館) ・南浜スポーツゾーン(FUJIBO 柳井化学武道館) ・アデリーホシパーク ・都市農村交流施設 ふれあいどころ437 ・柳井市役所 ・新・阿月公民館

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TEXT:烏山 大輔
ポルシェ、BEVのマカンを2024年に販売開始 さらに718、カイエン、「第3のSUV」のBEVも投入予定

2030年のBEV 80%を目指して 3月14日、ポルシェはプレスリリースで将来のBEVモデル投入予定を発表した。直近の予定では来年、マカンのBEVをリリースする。そして2020年代半ばには718のBEVが登場予定。718は中期的にはBEVモデルのみになるとのこと。それに続くのがBEVのカイエンだ。ポルシェは2030年までに新車の80%以上をBEVにするという目標を掲げている。 カイエン、マカンに続くSUV さらにカイエンの上位に位置するBEV SUVによって、ポルシェは製品ポートフォリオを上方に拡大することを計画している。この新しい車両コンセプトは、「車内でのまったく新しい体験とともに、ポルシェ特有のフライラインを備えた強力なパフォーマンスと自動運転機能を提供するように設計されている」という。 プラットフォームはポルシェが開発したSSP Sportがベースとなる。「これによって我々のスポーティーラグジュアリーのポジショニングを明確に示しながら強化します。特に中国と米国において、このセグメントのプロフィットプール(このセグメントに参入するすべてのプレイヤーの利益額の総和)の増大に注目しています」とはオリバー・ブルーメCEOの弁だ。 業績好調のポルシェ このプレスリリースの中では、2022年の販売台数が2021年(301,915台)と比較して2.6%増加し、309,884台と過去最高を記録したこと。さらにはグループの営業利益率も16.0%から18.0%に上昇したこと。「Road to 20プログラム」と銘打ち、長期的には20.0%以上を目指す目標も発表された。

TEXT:烏山 大輔
EV充電エネチェンジ、累計受注台数3,000台を突破

ENECHANGE(エネチェンジ)株式会社は、EV用6kW普通充電器の累計受注台数が3,000台を突破したことを発表した。2021年11月のサービス開始から1年4ヵ月という短い期間での達成である。 EV充電インフラへの追い風 2021年11月のEV充電事業を開始。2027年までに最大300億円を投じ、国内で3万台のEV普通充電器の設置を目標に掲げ、設置の拡充を進めている。設置には政府の補助金制度「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」を活用できることもあり、エネチェンジの設置ゼロ円キャンペーンを活用した導入が加速し、3,000台の受注につながった。 2022年は日本カー・オブ・ザ・イヤーに軽EVの日産サクラが選出された。さらにEVとPHEVの販売台数が合わせて9万6585台(2021年の2.17倍)となるなど、EV市場の拡大を実感する象徴的な一年となった。エネチェンジも2022年11月からテレビCMやタクシー広告をはじめとするプロモーションを開始し、EV充電インフラにも注目が集まり始めている。 エネチェンジのふたつの強み エネチェンジが短期間で累計受注台数3,000台を達成した背景には、EV充電エネチェンジのふたつの強みがあげられる。 ひとつめは「EVドライバーの利便性の高さ」である。6kW普通充電器は、同じ電力量を充電するのに、これまでの3kW普通充電器に比べ半分の時間で済む。また大手EV充電ネットワークのe-Mobility Powerとの提携により、2023年4月下旬から自動車メーカー各社が発行しているすべてのEV充電カードが、EV充電エネチェンジで利用可能になる。これは6kW普通充電器において初めてのことだ。 ふたつめは全ての対応をエネチェンジが行う「オールインワンサービス」である。設置工事、補助金申請、決済アプリや管理システムの提供、集客サポート、故障やエラーによる問い合わせ対応に至るまで全てである。導入・運用の手間が最小限で済むということは、充電器オーナーも大変満足に感じていることだろう。 EVユーザーの利便性向上 これまで使用する充電サービスごとにカードやアプリ登録が必要だった。今後、自動車メーカー各社が発行するカードがEV充電エネチェンジで利用できることになるため、EVユーザーは登録の手間やカードの携帯などの煩わしさから解消されるだろう。また手持ちのカードを選ばないので、充電器を探す労力も少なくなる。EVユーザーの利便性向上につながるサービスを今後も期待したい。

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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