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普通充電が当たり前という世界へ
この件では、急速充電器を普及させるためe-Mobility Powerの立ち上げにかかわった元東京電力の姉川尚史(現CHAdeMO会長、Advanced Float社長)は、「社会基盤整備が先に決まっている」と述べている。また、主にドイツの自動車メーカーを中心に高性能EVを市場導入する銘柄は、先行投資として高性能急速充電器の設置を進め、そこでは他社のEVも利用できる動きが出ている。
いずれにしても、急速充電器の設置やその高性能化は、先行投資の視点がなお高い状況にある。
そうしたなか、経路充電と、目的地充電を併せもつ場面では、急速充電器より普通充電器のほうが適切な場合がある。

たとえば、買い物をしたり、食事をしたり、打ち合わせをしたりというように、EVを停めた場所で滞在時間が1時間以上になるような場面では、30分を基本とする急速充電では、かえって慌ただしく、煩わしい事態になりかねない。
時間にとらわれず、買い物をしたり、食事をしたり、親しい人とお茶を楽しんだり、ゴルフなどスポーツを楽しんだり、会議に集中したりしたいときは、普通充電でじっくり時間をかけたほうが目的にかなう。

出先で普通充電をする際の充電器は、一例として50万円ほどだ。50kWの急速充電器と比べ8分の1ほどの費用で済む。なおかつ、その店や施設では、来客による売り上げも期待でき、充電代だけで商売を考えることはまれだろう。なので、公共の充電器といえども、客が集まる場所への設置は、かえって急速充電器でないほうがよりよいことになる。
EV利用者も、宿泊など長時間滞在する目的地ではなくても、数時間過ごす場所であれば、普通充電で十分であるし、かえってそのほうが都合がよいと感じるような考えの人が増えるのが理想だ。

そのうえで、経路充電の場合でも、何かをしながら充電できるなら、そこで満充電にする必要は必ずしもないことを理解すべきだ。そして立ち寄るたびに、少しずつ継ぎ足し充電すれば、家に帰ってこられる安心や、自信をもてるようになるとよい。
公共の充電器の口数が、急速充電より普通充電のほうが多い背景に、単に設備投資費用の大小だけでなく、何かをしている間に充電を済ますという、EV本来の充電の在り方を進めようとする姿が今後もっと必要になる。

そうした充電の仕方を日常的にできる充電環境の整備が広がれば、リチウムイオンバッテリーの寿命を保つうえでも効果があり、結果、EV所有者の整備代や部品交換代の節約にもつながっていくことになる。
急速充電器や、その高性能版の整備が不要であるとはいわない。だが、EVの普及にあわせ、あるべき姿としての充電の仕方が広く世のなかに伝わることを願う。





















































