車名法則の変更はEV戦略の変化のため?
最近、欧州ブランドでEVに関するネーミングに変化が出てきた。たとえば、メルセデス・ベンツの場合、国内市場における現行EVは「EQA」「EQB」「EQE SUV」「EQS Sedan / EQS SUV」というラインアップだ。つまり、「EQ+クラス」という法則である。
ところが、最新モデルであるGクラスのEVは「G 580 with EQ Technology」と呼ばれている。同モデルはメルセデス・ベンツのEV戦略の変化点だといえよう。
商品として見ると、筆者はこれまでに同モデルをさまざまなシチュエーションで試乗しているが、速さ・悪路走破性・快適性において、グローバルNo1のEVという印象をもっている。
時計の針を少し戻すと、2016年のパリ・モーターショーのメルセデス・ベンツブースに「ジェネレーション EQコンセプト」の姿があった。
その前年の2015年にパリで開催されたCOP21(第21回 気候変動枠組条約 締約国会議)で示された「パリ協定」がキッカケとなり、自動車産業界では本格的なEVシフトに向けた準備が加速した。メルセデス・ベンツとしても、2020年代に入れるとEVシフトが急速進むものと予測し、EV専用ブランドEQをお披露目した形だ。
だが、EVの実需は一定程度までは増加したものの、大ブレイクするまでには至っておらず、また環境に対する投資機運もひと段落した雰囲気がある。
そうしたなか、2023年に入ってからメルセデス・ベンツがEQブランドのあり方を再検討しているとの報道が欧州で目立つようになった。2024年後半にはCセグメントSUVでの次期EVの開発中スパイフォトが出まわるようになり、同モデルの今秋公開を予想する報道がある。さらに、国内販売店でもEQの名称から変更が進んでいる状況だ。
こうした時流を鑑みての、ブランドに対する素早い経営判断は日本メーカーも見習うところが大きいと思う。
また、アウディでもEVに関するモデル名称の変更を進めている。アウディの電動化戦略では、e-Tronをブランド化してきたが、EVについては数字の部分を偶数表記で統一するとしていたが、これを撤回した。現在は、従来どおり車格やボディサイズによって数字を振りわけており、基本的にはそうした発想に戻ることになる。
いずれにしても、中長期的には日本を含めてグローバルでEVシフトがさらに進む可能性は高い。ただし、具体的に「中長期とはいつを指すのか」を現時点で予想することは難しい。
そのうえで、欧州メーカーではEVブランドのあり方を再検討しているわけで、こうした事情は日本メーカーでも同じだといえよう。