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EVの要「リチウムイオン電池」はレアメタルなしに作れない! そもそも「レアメタル」ってなに?


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:日産/TET 編集部
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世界のレアアース生産量の97%を中国が占める

リン酸鉄の電極は安全といわれているが、三元系も、マンガンを含む合金とすることで、マンガンの結晶がスピネル構造と呼ばれる崩れにくい特別な並びであるため、短絡(ショート)しにくさを確保している。

パーソナルコンピュータを含め携帯用機器などで熱膨張や火災が生じたのは、エネルギー密度を高くできる層状の結晶構造となるコバルトを電極に使っていたためと考えられる。EV用では、安全性を第一に、なおかつ容量も高める手法として、マンガンを加えた3つの元素を合わせる三元系が生まれた。

リチウムイオンバッテリー

レアメタルのなかには、レアアースと呼ばれる元素がある。レアアースには、駆動モーターで使われるネオジムやジスプロシウムなどがある。

ネオジムを磁石に加えることで、一般的なフェライト磁石の10倍ともいわれる強い磁力を得ることができる。なおかつ高回転で使った際の熱の影響を受けにくい耐熱性はジスプロシウムによって得られ、EVでの利用が叶うようになった。

レアアース生産量の97%を占めるのが、中国だ。

中国のイメージ

レアメタルやレアアースは、EVを普及させるために不可欠な存在である。採掘や採取ができたり、工業用に使えるよう加工したりする生産国が偏っているので、政治的背景を考慮しながら、それら産出国との通商が適切に行われなければ立ち行かなくなる。

そのうえで、とくに中国がEVを含めた新エネルギー車に熱心で、かつ普及を急ぐ背景にあるのは、モーター用のレアアースを産出する鉱物から、原子力発電に利用できるトリウムというウランに次ぐ元素を入手できるためでもある。

中国車のイメージ

トリウムを使う溶融塩炉の技術は、中国が世界最先端にあり、すでに実証炉が稼働している。従来からの軽水炉とともに、自国でまかなえるトリウムを原子炉に利用できることは、自力で電力を賄えることにつながり、同じく普及を急ぐ再生可能エネルギーとあわせ、エネルギーの安全保障を高い水準へもち込める。

原子力発電の開発と普及に力を注ぎながら、EVを含めた新エネルギー車の製造と販売に注力する背景には、電源構成の改革による脱二酸化炭素により世界を牽引したいという中国の国策を見ることができるのである。

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