#レアメタル
TEXT:御堀直嗣
EVにレアメタルを使わない電池が普及するとレアメタルのリサイクルの採算が合わなくなる……そんな説の真偽を考える

バッテリーリサイクルの未来はどうなる? 中国を牽引役としたリン酸鉄リチウムイオン電池や、そこから派生したリン酸マンガン鉄リチウム、あるいは、ナトリウムイオン電池などが注目を集めだした。すると、リン酸鉄のリチウムイオン電池が実際に電気自動車(EV)で実用化、拡販されていった。 このことにより、従来からの三元系と呼ばれる、コバルト/ニッケル/マンガンの3元素を正極に用いるリチウムイオン電池に代替する存在になるといわれ、それによって、「三元系で使われる希少金属のリサイクルの採算が合わなくなっていくのではないか?」との論議が浮かび上がってきた 果たしてそうなるだろうか? 一方で、全個体電池への期待も語られている。理由は、三元系リチウムイオン電池の電解質を固体化したものだからだ。全個体電池への期待は、優れた充電容量と、それによって小型化や軽量化されることを通じ、EVの機能や性能が一段高められるのではないか? という希望のもとで語られている。 しかし、すでに実用化の進んだリン酸鉄を電極にもつリチウムイオン電池は別として、リン酸マンガン鉄やナトリウムイオンの活用は、これから量産への道筋が始まろうとしているものであり、なおかつ、単に量産化の計画だけではEVへの適用や、効果は、単純に見通せないと思う。 理由は、当面の供給先として、定置型での活用も視野に入ってくるからだ。それに呼応して、三元系のリチウムイオンバッテリーを定置型として新しく活用することの無意味さも、意識されるようになっていくだろう。 実際、屋根に太陽光発電を設置した住宅に備えるリチウムイオンバッテリーは、電極がリン酸鉄の事例がある。リン酸鉄は、容量の点で三元系に負けるとされているが、定置型であれば寸法の制約はEVほど大きくないのではないか。ナトリウムイオン電池も、セルあたりの電圧はリン酸鉄と同等とされ、EVより先に定置型で普及がはじまることになるだろう。 もちろん、EVにリン酸鉄のリチウムイオンバッテリーを使うことを否定するわけではない。より低価格の車種で、あまり長距離移動をしない車種であれば、リン酸鉄のリチウムイオンバッテリーにより廉価で身近な車種が実現することは望ましい。 一方、より高性能であるとか、より遠くへ移動することに期待のかかる車種には、三元系や全個体電池など、より高性能な仕様が望まれるのではないか。 そのうえで、循環型経済の面において、リン酸鉄など希少金属に依存しないリチウムイオンバッテリーが増えれば、希少金属のリサイクルの採算が取れなくなるのではないかとの警鐘について、どう考えればいいのだろう。

TAG: #バッテリー #リサイクル #レアメタル
TEXT:琴條孝詩
中国の出方次第で世界のクルマが危機に陥る! 中国が掌握するレアアース事情と依存したくない日本の現状

中国が牛耳るレアアース市場に異変 世界のレアアース市場では中国の影響が非常に大きい。その中国がレアアース輸出規制を強化している。とくに米中貿易摩擦の激化に伴い、中国政府は2025年4月、トランプ政権による対中関税への対抗措置として、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種のレアアースの輸出に政府の許可を義務づけた。これらの元素は、電気自動車やハイブリッド車のモーター用磁石、触媒として欠かせない材料であり、中国は世界のレアアース精錬のほぼ9割を支配している。 <レアアースとその用途> そもそもレアアースとは? 簡単に説明すると、レアアース(希土類元素)とは、周期表のなかでも特殊な性質をもつ17種類の金属元素のグループのこと。経済的に採掘できる高濃度の鉱床が少ないため「希少=レア」と呼ばれている。中国が輸出管理を強化した前述の7種はレーザー機器や航空宇宙産業など、安全保障に直結する分野に必須であり、より重要度が高いものだ。 輸出申請の手続きも極めて複雑で、数百ページにおよぶ書類が求められ、許可の可否も不透明な状況だ。この輸出規制の影響は米国のみならず欧州でも主要自動車メーカーがサプライヤーとの協議を進めており、一部の部品メーカーでは工場の操業がすでに停止している。 なぜこれほど深刻な影響が生じるのか。問題の核心は「レアアース磁石」にある。これは現代の自動車の主要部品に使用されていることが多く、とくに今回規制対象となったテルビウムやジスプロシウムは、電気自動車用モーターに使用されるネオジム磁石の補助材料として、高温下でも磁性を保つ重要な役割を果たす。 また、サマリウムは、各種モーターやガソリンエンジンの点火装置などに使用される磁石の主要成分だ。これらが入手できないと、最新の自動車製造に深刻な支障をきたす可能性が生じてくる。

TAG: #レアアース #レアメタル
TEXT:御堀直嗣
EVの要「リチウムイオン電池」はレアメタルなしに作れない! そもそも「レアメタル」ってなに?

リチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊 電気自動車(EV)を支える重要部品のひとつが、リチウムイオンバッテリーである。その正極には、レアメタルが使われている。 レアメタルとは、言葉通り「稀な」という意味があり、地球に存在する量が極めて限られ、鉱物などからの抽出が難しかったり、安定的な確保が難しかったりする、非鉄金属をさす。 希少さという意味では、貴金属もある。これは、数が限られるのはもちろん、腐食に耐える性質を備えた金属をさす。たとえば、金、銀、白金、パラジウムなど8つの元素がある。白金やパラジウムは、エンジン車の排気触媒で使われている。 そして、ベースメタルと呼ばれるのが、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛など、生産量の多い金属だ。鉄やアルミニウムはクルマの車体で使われたり、銅は配線、鉛は鉛酸バッテリーで使われたりしている。 リチウムイオンバッテリーで使われているレアメタルは、多くが、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどで、一般に三元系とよばれるリチウムイオンバッテリーは、ニッケルとコバルトとマンガンを組み合わせた合金による電極を使う。そして、リチウムのイオンが正負極の間を移動することで充放電が行われ、まさにリチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊だ。 レアメタルは、それぞれに産地が異なる。リチウムは南米の塩湖、オーストラリアの鉱石などから得られる。ニッケルはフィリピンやロシアなど、コバルトはアフリカのコンゴ、マンガンは南アフリカや中国などで、いずれも、日本はもちろん欧米も輸入に頼らなければならない。 中国のEVが、リン酸鉄を正極に使う背景は、普及を目指した原価の低減にある。リンも鉄も、レアメタルやレアアースではないので、安価に入手しやすい。一方、電池性能は高くないとされてきたが、セルの工夫などで三元系と競争力をもてる仕様になってきている。

TAG: #バッテリー #メカニズム #レアメタル

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