もっとも売れた車種はテスラ・モデルY
それでは、2024年シーズンはどのようなEVが世界で人気だったのかを詳細に確認しましょう。このグラフは2024年の1月から12月のBEVとPHEVの累計販売台数ランキングトップ20と、それらの人気車種が2023年シーズンどれほどの販売台数を達成していたのかを比較したものです。世界トップの117万台もの販売台数を達成したのがテスラ・モデルYです。確かに前年比でわずかに失速したものの、2年連続でトヨタ・カローラやRAV4を抜いて、世界でもっとも売れた自動車の称号も獲得しました。
他方でモデルYは1月中に世界全体でいわゆるジュニパーと呼ばれているモデルチェンジが行われており、さらにテスラは2025年前半までに生産をスタートすると公式にアナウンスしている、モデルYのコンパクトモデルとなるであろう通称レッドウッドの追加投入によって、モデルYの販売台数がどれほどカニバライズされるのかにも注目です。
また、2位以降はBYD Song Plus、テスラ・モデル3、BYD シーガル、BYD Qin Plusと続いていくことから、やはりテスラとBYDの完全2強体制である様子が見て取れます。
さらに、第18位にランクインしているAITO M9の存在も注目するべきでしょう。AITOはファーウェイが手がけているブランドであり、日本円で1000万円級という高級車に該当します。このファーウェイの1000万円級のEVがグローバル全体の販売ランキングでも上位に入ってきているという点は、このファーウェイがいかに中国市場で人気なのかを示しているのです。
そして、2025年シーズンにおける展望を予測する上で、12月単体のEV販売ランキングトップ20も確認していきましょう。上位の顔ぶれは2024年シーズン全体と対して変化がないものの、BYDがトップ20のうち過半数の11車種を押さえてしまっているという点は、まさに世界のEV市場をBYDが支配しているという現状が見て取れます。
そして、第13位にランクインしたのがシャオミのミッドサイズセダンであるSU7です。そして第20位がファーウェイのミッドサイズSUVであるLuxeed R7です。これは中国国内のランキングではなく世界全体のランキングですので、やはりファーウェイとシャオミの存在が、世界的に見ても見過ごせないレベルになってきているといえます。
何といっても12月単体の販売ランキングトップ20のうち、テスラが2車種、中国勢のEVが残りすべての18車種を完全支配しているという状況は、EV市場において中国勢が圧倒的なプレゼンスを発揮しているということを意味すると思います。
そして、2025年シーズンの展望について、販売シェア率という観点では2025年シーズン通しでのNEVシェア率は27%、さらにBEVシェア率は20%に達するのではないかと推測しています。とくにBEVシェア率は、
・欧州における2.5万ユーロの大衆コンパクトEVが矢継ぎ早にラインアップされるという点
・東南アジアと中南米市場で、BYDを筆頭とする中国勢の販売攻勢が引き続き同レベルで維持されるという点
・アメリカ市場は、おもにGMやホンダという既存メーカー勢がBEV販売を伸ばすことでわずかに成長する見通し
・最大マーケットの中国市場では、シャオミSU7とYU7、ファーウェイLuxeed R7、BYDの第二世代ブレードバッテリーの投入によるBEV性能の飛躍的改善によって、PHEVからBEVへのシフトという流れを含めて、近年でもっともBEVシフトが進む可能性
これらを総合すると、2024年シーズンの前年比の上昇幅を上まわるBEVシェア率上昇、つまり20%程度のBEVシェア率になるのではないかと推測可能です。
日本メーカー勢が人気車種トップ20に食い込むような魅力的な世界戦略EVを投入することができるのかも含めて、2025年シーズンも世界のEV普及動向の定点観測を続けていきたいと思います。