God’s Eye Cのハードウェアは5000元未満か
また、BYDはNvidiaの最新ADAS用プロセッサーとなるNvidia Thorの採用を予告しています。おそらく演算能力は1000TOPSに到達する見込みで、God’s Eye Sと命名されてYangwangブランドの新型モデルに搭載される見通しです。
BYDは、すでにレベル2以上のADASを搭載した車両を440万台以上発売しており、中国最大の自動車クラウドデータベースを構築中です。その上でBYDは、グローバル全体で100万人以上の従業員を抱えながら、そのうち11万人以上が研究開発に従事する研究員となっています。とくに今回のGod’s Eyeシステムを開発するADASエンジニアは5000人以上を抱えており、よってハードとソフトのフルスタックで、独自内製の自動運転システムを開発する体制が整っているわけです。
また、BYDは3月中にも、ブレードバッテリーの第二世代、および新世代BEV専用プラットフォームを発表する予定です。初採用されるHan LとTang Lでは、1000Vプラットフォームを採用することで超急速充電に対応予定です。じつは直近において深圳にあるBYD本社の敷地内に超急速充電器を設置。この超急速充電器は1000kW級の超急速充電器でデュアルガンシステムを採用。ストールあたり800kW、充電器あたり最大1000kWに対応しています。
そして、充電器も内製化することで、充電器の原価、および設置費用のコストも最大30%程度ほど削減できる見込みです。225kWhもの蓄電池も併設することでグリッドへの負担を軽減します。
いずれにしてもBYDは、電動化とともに知能化という観点でハイエンドADASの導入を本格始動。God’s Eye Cのハードウェアは5000元未満(日本円で11万円程度)であるといわれており、すでに強烈なコスト競争力を実現している様子が見て取れます。とくに影響を受けるのは、ガソリン車販売が中心、なおかつ自動運転支援機能をオプション設定で販売するトヨタ、ホンダ、日産という日本メーカー勢たちでしょう。すでにBYDの第五世代のPHEVの導入で体力が削がれている状況で、さらなる値下げ競争にさらされる2025年シーズン、さらに厳しい販売状況に追い込まれることは間違いありません。
ちなみに、God’s Eye Cを標準搭載した最新のドルフィンでは、アームレスト下の収納スペース部分に冷温庫を標準搭載しました。すでにBYDは年産315万台の冷温庫生産工場を稼働させており、冷温庫すらも内製化しています。それによって生産コストを低減しており、今回のドルフィンではGod’s Eye Cと冷温庫を一切の値上げなしに標準搭載してきてしまっているという、まさに驚きのステルス値下げを実現できているのです。
さらにBYDは、Sea Lion 7やTang、Denza N9、Yangwang U8などに対して、ルーフ部分にドローンシステムを搭載する方針です。これもドローン開発を行うDJIに出資する形でコストを低減する見通しです。このドローンシステムは車両と高度に連携させることで、車載ディスプレイからドローン映像を確認したり保存したり、さらに充電もEVのバッテリーから自動で充電されるなど、冷温庫とともにEVの使い勝手をさらに広げようとしてきています。
いずれにしても、あらゆる最新テクノロジーを内製化、独自生産することでコストを極限まで低減し、シーガルをはじめとするあらゆるモデルに標準搭載しようとしてきているというのは、さまざまな装備内容をオプション設定することで利幅を確保しようとしている既存の自動車メーカーにとっては衝撃的なはずです。
果たして、2025年シーズン、中国国内においてBYDの新たな価格戦争に対抗できる自動車メーカーが存在するのか。とくに日本メーカー勢の動向には注視する必要があるでしょう。