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ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?


TEXT:山本晋也 PHOTO:山本晋也/日産/TET 編集部
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「SOH」を確認するには診断機が必要

SOHが70%を切った状態というのは、新車購入時に期待していた性能が、明らかに出ない状態であり、メーカー保証の対象となる基準になっているのは納得だろう。

余談めくが、SOCが20%以下で走らせないほうがいいのは、リチウムイオンバッテリーのライフを伸ばすためでもある。残量30%を切ったら充電するようにするといいというのはEVオーナーであれば認識しているであろうし、逆にいうと常に100%まで充電するのもバッテリーにはよくなかったりする。結局のところ、SOCが30~80%の間で使うのがベターという風にいわれることが多い。

EVのイメージ

加えて、バッテリーは急速充電を多用するほど劣化しやすい。急速充電が高出力となっているのは、時間あたりにバッテリー内部を流れる電流を増やすためだが、こうなるとバッテリー内部の温度が上がりがちで、この発熱がバッテリーの劣化を進めてしまう。急速充電につないだまま100%まで充電すると最後のほうはゆっくりとしか充電できなくなるのは、こうした劣化や、最悪の場合に起きる熱暴走を防ぐためでもある。

少なくとも現在の主流であるリチウムイオンバッテリーを搭載したEVにおいては、急速充電は80%を目安にすべきであって、どうしても100%まで充電する必要があるときは普通充電でゆっくりと入れ、発熱を抑えた充電を心がけたい。ときおり急速充電器に長時間つないで90%以上充電しようとしている人を見かけるが、時間の無駄でもあるし、時間課金制であればお金の無駄でもあるし、さらにバッテリーも傷みやすくなるしと、なにもいいことはない。

充電のイメージ

それでは、愛車のSOHを認識することはできるのだろうか。結論からいえば、標準機能としてSOHをメーター表示するようなEVは、少なくとも日本市場では見かけたことはない。正しくSOHを知るためには、正規ディーラーなどがもつ診断機をつなぐ必要がある。

そうした診断機は、車両情報を得るための国産標準コネクタである「OBD II」につなぐことが多い。グローバルな各モデルに設置が義務化されているOBD IIを利用して、そこから車両情報を得て、表示できるようなメーターやスマホアプリなどが多くのサードパーティから生まれている。そうしたEV用のアプリを使うと、SOHの数値を知ることはできるが、それがどれだけ正確かは不明であるし、メーカー保証の基準となるのは正規の診断機によるものであるため、参考にはなっても保証を要求する根拠とはなり得ないだろう。

OBDのイメージ

おそらく、唯一、SOHを日常的に知ることができるのが日産のEVだ。充電率を示すメーターに12個のセグメントが並んでいる。このセグメントはSOHを目安的に示すもので、劣化が進むとひとつずつ欠けていく。そうなるとリーフオーナーのなかでは「セグ欠けが始まった」などと表現することが多い。日産EVの場合は、保証期間・走行距離内で9セグメントを割り込んだら保証対応となると定められている。ただし、必ずしも新品交換というわけではなく、9セグメント以上に復帰することが保証内容だ。

バッテリーが劣化するたびに新品交換するようでは環境負荷も少なくないし、社会全体としての経済的負担も大きい。そこでバッテリー内のセルを選別してリビルトすることがEVの運用においては重要となる。不満のない走行性能が実現されるのであれば、それでヨシとすべきなのが環境にも配慮したEVオーナーのあるべき姿といえるのかもしれない。

セグ欠けした時のメーター表示

写真は筆者の所有していた初代リーフ(30kWh仕様)がセグ欠けした様子。その状態でも満充電での航続可能距離表示は200kmほどだったので実用性は確保されていた。

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