万能性こそインスターの特徴
東京オートサロン2025の会期初日にあたる1月10日(金)に、ヒョンデがスモールEVの「INSTER(インスター)」を発表し、同日から先行予約の受付を開始した。
いまや世界第3位の販売台数を誇る自動車メーカーの新型車日本導入発表ということもあり、ヒョンデブース内は報道関係者で寿司詰め状態。また、韓国のHyundai Mobility Companyからは、ジョン・ユソク副社長が駆けつけるなど、ヒョンデ側の熱量も感じられるカンファレンスとなった。
その冒頭で、Hyundai Mobility Japanの七五三木社長から、他人からどう見られたいかを優先してクルマ選びをしてはいないだろうかと問題提起がなされた。それに対し「ヒョンデは、それぞれの皆さまがクルマをどう使いたいか? に合わせて選ぶものだと考えます」と提唱。
十人十色のクルマの使い方があるなかで、インスターは裾野を広く、多くのユーザーに満足してもらうために万能性を重視したスモールEVに仕立てたと説明。
インスターのエクステリア
そして、アンベールされた注目のスモールEV「インスター」は、全長3830mm×全幅1610mm×全高1615mmという数値以上に、大きく堂々とした姿で我々の目の前に現れた。フロントフェイスにはファニーな丸形のLEDランプと、その上部にヒョンデEVを象徴するピクセルグラフィックがウィンカーランプとして配され、存在感を演出している。
サイドビューは、フロントとリヤを明確に分ける骨太のBピラーと、クロスオーバーSUVをイメージさせるフェンダー処理により、コンパクトなボディサイズに力強さを与えている。
それは、腰高なフォルムとこのクラスにしては珍しいルーフレールを採用しているところも大きいだろう。
ファニーさと無骨さが共存するインスターは、いわゆる「カッコかわいい系」のデザインで、街でも山でもアクティブに動きまわれそうなイメージをデザインから醸し出している。
インスターのインテリア
時間の都合上、じっくりと見ることは叶わなかったが、コラムタイプのシフトレバーを採用してたインテリアは、前席左右の足元空間にも余裕があり、クラスレスな快適性が備わっている印象だ。また、展示されていた「ラウンジ」グレードを含め、「ボヤージュ」との2グレードは、前席にシートヒーター付き合成皮革シートが奢られ、ステアリングヒーター付き本革巻きステアリングも備えるなど、装備の充実ぶりが目を見張る。
インパネまわりは、EVらしく10.25インチの高解像度メータークラスターとセンターのナビゲーションシステムのふたつの大画面ディスプレイから成るデジタルコクピットですっきりとしている。
全幅が1610mmであることから、後席は無理に3人がけとせず、ゆとりを持たせてふたりがけとしている。つまり、ヒョンデ・インスターの乗車定員は4名だ。その反面、リクライニングとシートスライド機構、さらに前後席のフルフォールディング機構を取り入れて快適性と多彩なシートアレンジを実現している。
このあたりの空間の使い方やデザインに関しては、韓国版の軽自動車にあたるヒョンデ・キャスパーを開発する際に、開発陣が日本にやってきて軽自動車を徹底的に調査したことが生きているのだと発表会の最後に明かされた。
だからインスターはグローバル向けのスモールEVでありながら、日本で使いやすそうなボディサイズで、さらに高効率なスペースユーティリティが備わっているのかと妙に納得した。
さらに、ヒョンデのEVに共通して装備されているV2L(Vehicle to Load)がこのインスターにも全車標準装備されている。これにより車内外で電化製品を使用できるので、最近流行りの家電キャンプをするのにも都合がいい。
インスターのEV性能とグレード別車両価格
さて、インスターのEVとしての性能はどうだろうか。バッテリー容量と最高出力はベーシックグレードたる「カジュアル」が42kWh/71kW、中間の「ボヤージュ」と上級の「ラウンジ」は49kWh/85kWと差がつけられている。このバッテリー容量と装備の一部省略化により、「カジュアル」は284万9000円という戦略的な価格設定が実現した。
国土交通省の型式認証を取得中のため、今回の発表では日本仕様の一充電航続距離は公表されなかったが、欧州仕様車で49kWhのラウンジが370kmとされているので、42kWhのカジュアルはおおよそ300km強になると見るのが妥当だろう。価格帯が近い軽EVに対し、この足の長さは圧倒的なアドバンテージになるかもしれない。
また、足まわりと運転支援機能に関しては、日本に拠点を構えるヒョンデのR&Dセンターが、日本の道路、交通環境に合わせた専用チューニングを施し最適化を図っているという。
その運転支援機能は、高速道路で前方車両との車間距離を維持する高速道路ドライビングアシスト(HDA)や、車両の周囲の状況をモニターに表示するサラウンドビューモニター(SVM)などのほか、ヒョンデでは初となるペダルの踏み間違いによる急加速を抑制する「PMSA」を採用し、機能の充実による安全性の向上に努めている。
航続性能を求めるがあまり肥大化の一途をたどるEVにあって、日本の道路・駐車場環境に適したサイズにして、室内空間も必要十分。それでいて車両本体価格は軽EVに対抗しうる戦略的な設定。ヒョンデ第4の刺客にして真打ち登場といったところか。納車は5月ごろからを予定しているという。
■ヒョンデ・インスター グレード別車両本体価格(税込み)
Casual :284万9000円
Voyage:335万5000円
Lounge: 357万5000円
■車両スペック(Loungeグレード)