ポルシェの販売台数も減少中
では、小売価格が約50万元、日本円で1000万円級の高級セグメントの販売動向も確認してみましょう。これまで、中国でもっとも人気の高級車はアウディA6Lだったものの、それを追い越す形で5カ月連続で高級セグメントトップの販売台数を達成していたのが、ファーウェイのAITO M9です。
そして、A6Lの販売台数は前年同月比で14.3%ものマイナス成長を記録。さらに、BMW X5の販売台数が、9月単体で6050台と、前年同月比で26.8%ものマイナス成長を記録しています。このX5は中大型SUVセグメントであり、急速に販売台数を伸ばすAITO M9の競合ということから、M9に販売台数を奪われているのではないかと推測可能でしょう。
じつはドイツ御三家は、2024年Q3に突入した7月以降、中国国内の値下げ戦争への追随戦略を諦めて、販売のクオリティ向上にコミットする動きを見せていましたが、その7月単体の受注台数が想定以上に落ち込んでしまったのか、早々に値下げ戦略を復活させています。
実際問題として、A6Lは42.79万元からのスタートだったものの、現在28.67万元からと、300万円近い大幅値引きを断行中。BMW X5も、これまで61.5万元からのスタートであったものの、最大100万円程度の値引き中です。
そして現在、A6LとGLCという売れ筋モデルを狙い撃ちしてきているのが、ファーウェイとLi Auto、そしてBYDのです。とくにA6Lに対しては、ファーウェイのStelato S9、BYDの高級ブランドDenzaのフラグシップセダンであるZ9 GTが迎え撃ちます。
またメルセデスGLCに対しては、Li AutoのL6やAITOの売れ筋モデルのM7が迎え撃ちます。
ちなみに、ドイツ御三家とともに中国市場で厳しい動向が確認されているのがポルシェの販売動向です。2024年シーズンに突入して以降、明らかに販売台数が減少中であり、2024年1月から9月の通しで、前年同期比29%というマイナス成長です。
ポルシェは中国市場における販売減少の理由を、過度な値下げ戦争に追随していないからと説明しているものの、たとえば現時点でカイエンは8万元の値引き、パナメーラも12万元の値引き、売れ筋のマカンも7万元値引き、最新のマカンEVも、発売直後にもかかわらず5万元の値引き措置を断行しており、値下げ競争に参加していないことが販売台数減少の理由にはなっていません。
まさにこれは、中国において、ポルシェというブランド価値の終焉が近づいていることを意味するのかもしれません。もちろん細部を見れば見るほど、ポルシェのさまざまなよさに気づくことはできるかもしれませんが、結局、バッテリーEVによる動力性能の高さを存分に活かすことによって、ポルシェのような動力性能とともに、ソフトウェアの完成度の高さから来るさまざまなソフト部分の価値、および高級シート素材などの快適装備を追求することを両立。その上でポルシェの3分の1の価格で買えるとくれば、これまで見栄のためにポルシェをはじめとするドイツ車を購入していたユーザーも、中国製高性能EVを検討するのは自然なことでしょう。
日本では想像できないかもしれませんが、中国製EVが、ポルシェを含めたドイツ車を代替できるような性能と新たな付加価値を、コストパフォーマンス高く両立して提案することができているという点こそが、あのドイツ車好きの中国人のマインドの変化を促している最中なのです。
この世界最大マーケットであり、ドイツ御三家にとって重要な中国市場におけるプレミアムセグメントの販売動向の行方には目が離せません。