企業の自助努力だけでは成し得ない未来
一方で、ボルボ・カーズが調整を余儀なくされた要因として、充電インフラの整備が予想以上に遅れていること、一部の市場で政府の優遇措置が打ち切られたこと、さまざまな市場でEVに対する関税が導入され始めていることなど、不確実性が増していることを挙げている。これは、企業努力だけではなし得ることができない。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、社会に一石を投じる発言ともとれる。
ボルボ・カーズCEOのジム・ローワン氏は次のように結んでいる。
「ボルボ・カーズの未来は電動化であるという信念は揺るぎません。電動化車両は優れたドライビング体験を提供し、カスタマー・エクスペリエンス全体を向上させる先進技術を活用する可能性を高めます。しかし、電動化への移行が直線的なものでないことは明らかであり、お客様と市場への受け入れスピードはそれぞれ異なっています。私たちは、電動化とサステナビリティに関して業界をリードする立場を維持しつつ、現実的で柔軟な姿勢で対応していきます」
これまでボルボ・カーズは日本未導入モデルもあるが、EX40、EC40、EX30、EM90、EX90という5つのEVを発売してきた。ことEX30に関しては現在欧州で3番目に売れているEVだという。プラグインハイブリッドモデルも好調で、同ジャンルにおいてXC60は欧州でセールストップを記録している。
ボルボ・カーズの現状ラインアップに対し、市場は好意的に見ているからこそ好調なセールスを記録しているわけで、今回の調整を一部メディアではこれをもって「EV失速」とまくしたてる向きもあるが、どの業種・製品であっても目標到達まで紆余曲折はあるわけで、3歩進んで2歩下がることぐらいはいくらでもあり得る。だから決して失速ではなく、市況変化に柔軟に対処した調整であり、2040年に完全なるEVメーカーになるという当初目標は決して揺らいではいないのだ。