BYDシールの受注台数はすでに300台以上
次にトヨタのEV販売動向について、トヨタは現在bZ4X、レクサスUX300e、RZという3種類のバッテリーEVを発売中ですが、7月に合計で152台と、前年同月の280台と比較すると、急速に減少している様子を確認可能です。
まだ7月中の販売内訳は判明していないものの、6月は、bZ4Xが83台、UX300eが18台、RZは47台でした。なかでもbZ4Xは、2023年末からKINTOを通じたカーリースのほかに一般向けの売り切り販売を開始しています。このことからも、やはり日本国内では、いくらトヨタといえども、EVをラインアップすれば売れるというような甘い状況ではないといえるのかもしれません。
また、日産アリアの販売動向について、6月は354台と、アリアの月間販売台数の変遷を示す薄緑のラインを追ってみると、少しずつ販売台数が回復し始めているようにも見えます。3月からの販売再開後、EV性能をはじめとして、オプション装備内容をほぼ変更していないにもかかわらず120万円もの値上げを行ったことでどれほど需要が落ち込んでしまっているのか。120万円もの値上げに対して、今後ユーザーがどこまでアリアに価値を見出すことができるのか。販売台数の行方には注目です。
最後に注目するべきは中国BYDの存在です。BYDは7月度で207台を発売することに成功。4月以降、BYDのEVに対する補助金は35万円と大幅減額されていることを踏まえると健闘しているように見えます。
もしかしたら、直近で高感度ランキング輸入車部門トップ、自動車部門でもNo.2である長澤まさみさんの出演するテレビCMが好影響を与えているのかもしれません。実際にBYDの販売店への来店者数も前年同月比で86%もの増加が確認されています。
その上で、BYDが6月末から発売をスタートしているシールについて、発売開始1カ月の段階で、すでに300台以上の受注台数を獲得しています。RWDグレードの補助金も45万円と、当初の予定額よりも増額されたことも好材料でしょう。7月の3車種の受注合計も400台を超えていることから、おそらく8月・9月にかけて、月間300台級の販売台数を実現してくる見込みです。この販売規模は、プジョーなどの中堅メーカーと同等となります。すでにトヨタのEV販売台数すらを超え始めていることからも、果たして下半期、シールの追加とテレビCMの浸透によってどれほど販売台数を増やせるのか。トヨタとのEV販売台数対決の行方も含めて目が離せません。
いずれにしても、この日本国内のEVシフト動向は、前年同月比でマイナス成長であり、EVシフト後退という状況が見て取れます。なかでも問題であるのが、日本メーカーの、とくにアリアやbZ4Xなどのような普通車セグメントの販売動向が芳しくないという点でしょう。残念ながら2024年シーズンは、この普通車セグメントに対して日本メーカーは新型EVを投入する予定がないことから、日本のEVシフトが今後も後退していく可能性が高いと思います。
他方で、軽自動車セグメント、および輸入メーカーのEVの存在によって、そのEVシフト後退をどこまで食い止めることができるのかに期待できるかもしれません。とくにテスラとBYDという輸入EVメーカーの販売台数増加、そしてホンダのN-VAN :eという最新の軽EVの投入は、2024年後半の最注目動向となりそうです。