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BYDがじわり進出もまだ日本のエンジン車が有利! EVシフトが進む「日本車天国」タイの動向


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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タイではコスト競争力の高いEVが選ばれている

他方で、ATTO 3と同等の登録台数が、BYDドルフィンの存在です。ドルフィンは70万バーツ、日本円で302万円ほどで発売されており、値下げ後のATTO 3と比較しても同等の登録規模という、やはりドルフィンの圧倒的なコスト競争力の高さが見て取れます。

そして、じつはドルフィンは、6月後半から値下げを実施している状況です。44.9kWhバッテリー搭載グレードが55万9900バーツ、日本円で242万円という驚異的な値段設定を実現しています。この値下げの動きは、いよいよタイ国内の車両生産工場が完成し、7月以降、順次タイ製のドルフィンの生産がスタートすることによって、中国からの輸入分の車両の在庫一掃セールを行なっているという流れになります。

いずれにしても、ついにタイ国内の現地生産がスタートすることで、その分だけ輸送費を削減することが可能になり、ドルフィンのさらなるコスト競争力アップに期待が集まっています。

また、3位がShenlanのミッドサイズSUV、S07の存在です。S07は現在中国国内でも、月間で5000台程度継続して売れている人気車種です。中国国内ではバッテリーEVとレンジエクステンダーEVもラインアップしているものの、タイ国内へはバッテリーEVのみを出荷しています。競合のテスラモデルYと比較しても圧倒的な登録台数を実現。やはりタイ国内では、テスラというブランドよりも、よりコスト競争力の高いEVがチョイスされている様子が見て取れます。

Shenlan S07

※Shenlan S07

また、テスラは、モデルチェンジを果たしたモデル3が、5月末までで1500台程度を登録したものの、そのモデル3と同セグメント、BYD SEALはすでに4000台と圧倒しています。この流れも同様に、テスラというブランド価値以上に、コスト競争力に優れるEVのほうが人気があることを示唆しているのではないでしょうか?

他方で、タイの新車登録全体において、バッテリーEVがどれほどの存在感を示すことができているのかを確認しましょう。このグラフは、最新のデータが判明している4月までの、セダンとSUVセグメントにおける登録台数を示したものです。トップ20に絞ると、バッテリーEVが6車種もランクインしており、着実にバッテリーEVの存在感が高まっている様子が見て取れます。

グラフ

その一方で、トップ10に絞ると、バッテリーEVトップのドルフィンが第8位にランクインするものの、ドルフィン以外はすべて内燃機関車です。なかでもトヨタ・ヤリスATIV、ヤリスクロス、ホンダHR-Vという、コンパクトセグメントの車両が圧倒的人気です。

よって、BYDという視点では、ヤリスクロスやHR-Vの強豪として、コンパクトSUVのYuan Upを投入する必要があるのではないかと感じます。

BYD Yuan Up

※Yuan Up

さらに、ドルフィンよりも安価なシーガルを現地生産して、ヤリスATIVと同等レベルのコスト競争力を実現する必要もありそうです。逆にシーガルとYuan Upを投入してきたときこそ、BYDが真の意味でタイ市場のシェア奪取を本格化するときであり、BYDの今後のラインアップ展開にも注目できそうです。

BYDシーガル

※シーガル

そして、このタイ市場をはじめ、グローバルサウスを攻略する上で重要なセグメントが、ピックアップトラックです。このタイ市場も、ヤリスATIVよりも売れているのがトヨタ・ハイラックスといすゞD-MAXというピックアップであり、このシェアを奪うこともBYDの至上命題となります。

グラフ

そしてようやく、BYD初のピックアップであるシャークが市場投入されます。タイ国内でも2024年中に正式発売がスタートすると見込まれていることから、王者ハイラックス、D-MAXに対して、どれほどのコスト競争力を実現して、どれほどの販売台数を実現できるのかに大きな期待が集まっているわけです。

BYDシャーク

※シャーク

果たして、BYDの全方位戦略によって、日本メーカーの庭でもあるタイ、そして東南アジア全体においてどれほどプレゼンスを高めることができるのか。2024年後半に本格化していく日中メーカーの戦いの行方から目が離せません。

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