ファーウェイがEV高級セダンに旋風を巻き起こす予感
次に取り上げていきたいのがファーウェイの存在です。ファーウェイのEV事業に関する前提知識として押さえておくべきは、大きく3つのフェーズでEV事業に参画しているという点です。
まずひとつ目が、ファーウェイが独自開発しているモーターやバッテリーマネージメントシステム、コントロールユニットなどを含めた、EV関連テクノロジーを外販するというビジネスモデルです。ティア1サプライヤーのようなビジネスモデルであるといえます。
次に「Huawei Inside」と名付けられたEV関連のパワートレインだけでなく、コクピットまわりのソフトウェア、さらにはファーウェイのADASシステムを駆動する、ハードウェアとソフトウェアも内蔵することで、スマートEVにまつわるテクノロジーをファーウェイがすべて手がけるというビジネスモデルも展開しています。すでにChanganのEV専門ブランドAvatr、およびBAICのEV専門ブランドArcfoxについては、このHuawei Insideを採用しています。
そして、そのHuawei Insideからさらに一歩進んで、車両販売における商品戦略、マーケティング、そしてファーウェイストアにおける展示や販売に至るまで、自動車ビジネスすべてを包括的に担当するというビジネスモデルも展開しています。これは、Harmony Intelligent Mobility Alliance、通称HIMAと呼ばれる連合です。すでにSeresと立ち上げているAITO、Cheryと立ち上げているLuxeed、そして今回の北京オートショーで正式発表されたBAICと立ち上げるStelato、およびJACとも新ブランドを立ち上げる予定です。
いずれにしても、とくにHIMAについては自動車メーカーに極めて近いビジネスモデルとして、ティア0.5と呼ばれたりもします。
そして、今回取り上げていきたいのが、そのHIMAの一角を構成する、BAICとのStelatoブランドの存在です。そのStelatoブランド初のEVとしてお披露目されたのが、フラッグシップセダンのS9です。全長5160mm、全幅1987mm、ホイールベースが3050mmというフルサイズセダンセグメントに該当します。
前後にモーターを搭載するAWDグレードについては最高出力385kWを発揮。バッテリー容量については、79.9kWhと97.6kWhの2種類をラインアップする見込みです。CLTC基準での航続距離は、それぞれ672km、816kmという十分な航続距離を実現しています。
そしてなんといっても、このHIMAに属するEVについては、ファーウェイの独自開発OSであるハーモニーOSを採用しながら、独自開発の自動運転システムであるファーウェイADSを採用することで、市街地NOAであったり自動バレーパーキング機能を利用可能となります。これらのEV性能と先進性を武器にして、メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズ、アウディA8などに対抗します。
また、このフルサイズセダンセグメントについては、BYDがDenzaブランドからZ9 GTであったり、YangwangブランドからU7をラインアップし、どちらも2024年後半に正式発売がスタートしていくことから、一気に盛り上がりを見せるセグメントになる見込みです。
よって、今回発表されたStelato S9の登場によって、これまでドイツBBAが圧倒的な支配力を有していたフラグシップセダンセグメントにおいて、どのような変化が訪れるのか。とくに今回はファーウェイだけではなく、BYDが高級ブランドを引っ提げて、満を持してハイエンドセグメントに参入してくることから、2024年後半以降のフラグシップセダンセグメントの販売動向の行方にも大きく注目できるでしょう。
いずれにしても、北京オートショーにおいては、中国メーカー勢の人気が凄まじく、なかでも世界最大のEVメーカーであるBYDとともに、シャオミ、そしてファーウェイという第三勢力旋風が吹き荒れている状況です。
とくにシャオミについては、SU7を2024年中に10万台納車するというアグレッシブな目標を打ち立て、ファーウェイについてはHIMAを立ち上げて、その3つ目のブランドであるStelatoから、ついにフラッグシップセダンEVのS9を正式発表。
ドイツBBAのフラッグシップセダンと全面戦争を挑むことによって、どれほどの販売台数を実現できるのかに注目です。