コラム
share:

やっぱり日本でEVは需要薄か!? 国産で好調なのは軽EVだけという現実


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
TAG:

テスラとBYDで大きな差がついた2024年3月のEV販売状況

次に、問題は3月で販売台数が順調かに見えるテスラの存在です。このグラフは、テスラの日本国内の月間販売台数の変遷を示したものです。

日本におけるテスラの販売台数のグラフ

このとおり、テスラに関しては輸送の関係上、月間販売台数にばらつきがあるために、月間ベースでの販売台数をあれこれいっても、正確な比較とはなりません。

日本におけるテスラの四半期ごとの販売台数のグラフ

そこで、四半期別の販売台数の変遷を見てみるとこのとおり、2024年第一四半期に関しては1340台と、前年同四半期である2023年Q1と比較しても販売台数を落としてしまっていることが見て取れます。

他方で、テスラはグローバル全体においても販売台数を落としていることから許容範囲であると感じるかもしれません。そもそも日本国内ではこれまでテスラの販売が伸び悩んでいたわけであり、想定以上の落ち込みも見られなかったという点は、テスラジャパンとしては、意外に上手くやった四半期だったといえるのかもしれません。

ただし、このテスラジャパンが苦しいのは第二四半期です。すでに新型モデル3(ハイランド)の初期需要は売り切れているということを踏まえると、ここから新型モデルY(ジュニパー)の登場まで、なんとかして新規需要を開拓する必要があるわけです。

テスラのスーパーチャージャーの設置数のグラフ

ちなみにスーパーチャージャーの設置動向に関しては、Q1終了時点で全国に113カ所のスーパーチャージャーが建設されており、そのうちの111カ所が稼働している状況です。その普及の変遷を見てみても、設置速度が加速している様子が見て取れるでしょう。

個人的には、2024年度中にも北海道にスーパーチャージャーが追加される見込みであることから、来シーズンの北海道遠征までに間に合わせてくれることに期待したいところです。

また、車種別の販売動向として、とくに気になっているのがトヨタの存在です。トヨタ&レクサスについては、現在bZ4X、UX300e、およびRZをラインアップしているものの、すでにデータが判明している2月については、それぞれ124台、18台、そして58台と、まったく販売台数が伸びていない状況です。

トヨタbZ4Xのフロントスタイリング

とくにbZ4Xに関して重要なのは、11月末にもモデルチェンジを行いながら、KINTOを通じたカーリースだけではなく、一般の売り切り販売を行い始めている点です。つまり、bZ4Xがこれまで売れていなかった理由というのは、その販売方法が理由ではなく、bZ4Xという商品自体に問題があるということを意味するわけです。

トヨタは2022年5月の発売当初、その2022年度における日本市場への割り当てを5000台としていたものの、販売再開後から現在に至るまで、いまだに1500台程度という販売台数であり、明らかにトヨタの想定以下の販売規模に留まっています。販売戦略の見直しは避けられないでしょう。

他方で、乗用車セグメントで唯一、販売台数の大きな増加を記録したのが中国BYDです。3月単体で353台と、歴史上最高の販売台数を更新しており、レクサスを含めたトヨタ全体の販売台数を大きく超えているレベルです。

なんとQ1通しでも、BYDはトヨタ越えを実現しているレベルであり、BYDが順調に販売台数を伸ばしている様子を確認可能です。

日本におけるメーカーごとの販売台数のグラフ

ただし、BYDに対する逆風というのが補助金の減額です。4月以降、BYDがどれほど販売ペースを維持することができるのかには注目です。

また、4月以降については、いくつかの輸入車EVの補助金が減額されてしまうことから、これまで日本市場のEV販売に貢献してきていた輸入EVの減速、つまり日本市場のEVシフト全体への影響の可能性もあることから、その最新の販売動向には注視していく必要があるでしょう。

ボルボEX30のフロントスタイリング

※輸入EVとしてお買い得なEX30も補助金額が20万円減額されてしまいました

 

いずれにしても、2024年3月の国内EV販売動向については、前年を下まわる販売規模に留まってしまっているという、明確なEVシフト停滞の様子が見て取れるだけではなく、好調だった輸入EVに対する補助金が減額されることで、さらにEVシフトが減速する可能性があるという点は、極めて厳しい動向であると言わざるを得ません。

その一方で、唯一期待できそうなのが、ホンダの商用軽EVであるN-VAN e:です。ミニキャブミーブの売れ行きを見れば、最新型であるN-VAN e:がスマッシュヒットを飛ばす可能性があるのではないかと感じます。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
ヒョンデの野心的な中長期戦略「ヒョンデ・ウェイ」発表! 2030年までに年間販売台数555万台を実現しそのうちEVは200万台を目指す
EVに関心があっても導入に踏み切れないタクシー事業者多数! 広島でbz4Xを導入した事業者の陰に「電脳交通」の存在あり
買っていきなりレースを走るだと!? ヒョンデ「アイオニック5 N」の記念すべき納車第1号オーナーの声
more
コラム
BYDシールで1000km走って「充電性能の安定性」に衝撃! リアルワールドでも「コスパ最強」が証明された
日本で発売直後なのに中国では年次改良で新型登場! BYDの新型SEALの実力がヤバい
日産の第一四半期の営業利益は前年同月比でなんと99%減少……って大丈夫か? 円安解消も含めてアメリカ&中国市場で苦戦を強いられている!!
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
more
イベント
とにかくこの形に惚れたんです! 日本中から約140台もの日産アリアが集結した「日産アリア全国オーナーズミーティング2024」に潜入した
走る以外の楽しみがEVにはある! ラーメン屋台まで登場した「EVサマーキャンプ2024」を見るとEVが欲しくなる!!
中国市場のニーズに合わせて開発! 日産が北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカーを出展
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択