2023年9月
TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例」とVWアンドレアス・ミント氏が語るEVデザイン

EV化によってデザインは、どのように変化していくのだろうか。「ID.GTIコンセプト」は、ミライを見据え、現在にデザインをしたとミント氏はいう。 自動運転がレベルアップにともなってデザインも変わる ーーこれからのBEVのデザインについてうかがいます。レベル3以降の自動運転など、あたらしい技術が実現すると、クルマの形状も、本質的に変わっていくのでしょうか。 「たしかに、自動運転が、レベル3やレベル4以上になった場合には、車内におけるエンターテイメントですとかインフォテイメントの価値がどんどん上がってくるでしょう。デザインも変わってくると思います」 ーーフォルクスワーゲン(VW)らしさは、どうやって打ち出していきますか。 「私たちは、Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)という3つのピラー(柱)を、これからのデザインの理念としています。3つめの”刺激”については、秘密のレシピであって、言葉にしにくいのですが、これらが変わらないかぎり、デザインランゲージを維持しながら、あたらしいプロダクト作っていけます」 ーーそこまで、すでに手を打っているということですか。 「いま現在の話として、あまり先までの心配をすることは、おそらく必要ないんじゃないかと思います。なぜならば、レベル4はまだ来ていないですし。いま私たち意識しなくてはならないのは、自分たちが寄って立つべき価値を見失わないようにすることです。そうであれば、VWらしさを失わない。そういうふうに思っています」 車内のエンターテイメント、そしてファン・トゥ・ドライブ ーー若い世代については、顧客としてどのようにとらえていますか。 「若い世代は、車内のエンターテイメントにより注目する傾向にあると思います。いままでのように、コーナリング性能だとか加速性能だとかでなく、どれぐらいエンターテイメントを車内で提供できるか。そこが若い世代から求められていると思っています」 ーー若い世代が、従来のような、クルマ本来のドライブの楽しさを語らないのは、自動車メーカーの責任でしょうか。それとも、これは不可避的に起きたことなんでしょうか。 「若い世代にたいして、私たちがやるべきことがあります。真の意味でのドライビングの楽しさを教えることです。ID.GTI(コンセプト)はBEVの時代に、従来と同様のファン・トゥ・ドライブを教えることができるのではないかと思っています」 ーーBEV独自のファン・トゥ・ドライブもありますね。 「重量物であるバッテリーを床に敷き詰めることで重心を低くでき、コーナリング性能が上がるとか。回生ブレーキを使うことで、制動性能が上がったりとか。真の意味でのドライビングの楽しさも、ID.GTIで実現できると思います。私じしん、ドライビングが好きですし、若い世代にも、ファン・トゥ・ドライブを訴求していく必要があると思います」 デザイナーからすれば、自由度が高まるBEVはファンタスティック ーークルマがBEV化すると、デザインの面で、今までできなかったこと、やりたくてもやれなかったことが実現できますか? 「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例です。ボディとホイールベースとの関係をみると、完璧なプロポーションです。おなじセグメントで、こんなに均整のとれたクルマはないですよ。ホイールベースが260cmに対して、ボディ全長が410cmこのプロポーションは完璧です」 ーークルマのデザインにおいて、もっとも大事なのはプロポーションというのは昔から言われてきたことですね。 「もうひとつ、タイヤの外径が大きくなっています。非常に見た目がいいでしょう。デザイナーからすると自由度が高まるので、BEVはファンタスティックです。強くパワフルでスポーティーな印象を与えるけれど。同時に、かわいらしさも失わないデザイン。これがID.GTIコンセプトなのです」 ーーICEではむずかしったのですね。 「エンジンルームの役割が違いますから。ラジエーターもあるし、エンジンやギアボックスが入っているので、どうしても前車軸より前の、いわゆる、オーバーハングが長くなってしまいます。デザイン的にダメとは言いませんが、BEVのほうががいいと思います」 <了>

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TEXT:生方 聡
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

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TEXT:西川 淳
常識を覆す「EQE SUV」のパッケージングとデザインは要注目![メルセデス・ベンツEQE SUV試乗記]

日本におけるメルセデス・ベンツの7番目の電気自動車として、8月25日に発売になった「EQE SUV」。いち早くこのモデルに試乗した西川淳氏にレポートしてもらった。上位モデルのEQS SUVも知る西川氏にEQE SUVはどう映ったのだろうか。 定石のモデル展開 「EQE SUV」はプレミアムブランドの上級モデルとして画期的である。商品のコンセプトそのものは、EVというよりもメルセデス・ベンツの乗用車シリーズにあって “予想通り”の展開、つまりは上(Sクラス相当の「EQS SUV」)と下(コンパクトな「EQC」や「EQB」)から攻めて、ブランド的に最もバランスのいいアッパーミドルクラス(Eクラス相当のEQE SUV)で締めくくるという定石に則ったものだ。だから、EQE SUVの登場そのものに驚きはない。パフォーマンスの想像も乗る前からだいたいついた。けれども画期的だと思う。なぜか。 “小さくて広い”からだ。ボディサイズに注目してほしい。なんと全長4.9mを切った。それでいてホイールベースは3m超え。このクラスのSUV(GLE)といえば5m級が当たり前で、それもモデルチェンジごとに大きくなってきた過去がある。たかが10cmの話とはいえ、フル電動化を機にこれまでの成長呪縛から一旦逃れ、BEV(バッテリー電気自動車)のレイアウト自由度を活用して小さく始めたことが画期的だと思ったわけだ。もちろん先にデビューしたEQS SUVも「GLS」に比べて短くなっている。けれどもセダン系はそうでもなかった。 メルセデスベンツは既存のICEラインナップから独立した専用プラットフォームをもつBEVで今後の主力となるはずのSUVシリーズにおいて、新たなボディサイズ戦略を取りはじめたということ。EQE SUV やEQS SUVが次回のモデルチェンジ時に大きくならないことを祈るばかりだけれど。

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「マスタング・マッハ-E・ラリー」(photo=フォード)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
本物のオフローダーに還った野生馬……フォード「マスタング・マッハ-E・ラリー」を発表[2023.09.13]

SUVの「マスタング」を肯定し「シェルビーGT」と双璧をなせる新バージョン 趣味に振ったモデルが出るということはEVの新段階突入を意味する 【THE 視点】フォードモーターは9月7日、SUVタイプのEV「マスタング・マッハE」のラリー仕様「マスタング・マッハ-E・ラリー」を米国で発表した。 前後2モーター式AWDの「マスタング・マッハ-E GT」をベースに、最高出力358kW(487ps)・最大トルク最大トルク881Nm(89.7kgm)に性能を引き上げた。バッテリー容量は91kWhで、航続距離は400km。バッテリー容量の10~80%を、36分で急速充電できる。 足まわりは、専用のショックアブソーバーとスプリングにより車高を20mmアップ。直径385mmのフロントブレーキローターとレッド塗装のブレンボ製のキャリパーを装備。白いラリースタイルのアロイホイールを採用し、タイヤはミシュラン「クロスクライメート2」(235/55R19)を履く。フォードのこれまでのラリーカーをオマージュしたスタイルとなっている。 外観面での特徴は、車体上半身と下半身のモールディング/ユニークなフロントスプリッター/黒塗装のスチールルーフ/フォグランプ内蔵のフロントフェイシアなどを装備し、ラリーカーのテイストをふんだんに盛り込んだ。特にリアスポイラーは、「フォーカスRS」からインスパイアされたスタイルだという。 ちなみにフォードは、このモデルを開発するためにアメリカ・ミシガン州の試験場にラリーコースを新設したという。ラリークロスのベテランによる設計で、実際の公道に近い状況を再現した。「マッハ-E・ラリー」のプロトタイプを用いて800km走行してコースを作り上げたようだ。 EVにもいよいよラリーカーが出てきた。フォードはこれまで、「フォーカスRS」といったスポーツバージョンを販売してきたが、今度はそこにEVが加わった。 本気のラリーEVを設定するとは、フォードのEVが開発黎明期を過ぎ、普及期に入ったことを表すのではないだろうか。エコや実用ではなく、思い切り趣味、さらに言えばオンロードではなくダートに振ったスポーツモデルを設定することは、余裕がなければできないはずである。 いずれにしろEVでモータースポーツへの参戦ができる事を示しており、EVも新たな段階に入ったことを意味する。こういったとんがったEVは、スポーツカー好きなら一度は乗ってみたくなるのではないか。「マッハ-E・ラリー」ははっきり言って、一台のクルマとしてかなり魅力的だ。 「マスタング」には、オンロードのマッスルカーのイメージを強く抱く人も多いと思う。しかしEVの「マスタング・マッハ-E」は、新世代の「マスタング」が再現し昇華した伝統のマッスルスタイルを覆すような格好となってしまい、その名を冠することに疑問を抱く往年のファンもいたのではないだろうか。 しかし「マッハ-E・ラリー」が出たことで、そのSUVスタイルが肯定されたように思う。それも中途半端な“ガワ”だけのスタイルではなく、中身も本気でチューニングしてきたとあれば、ファンは納得するように思う。「シェルビーGT」の対極にある立派な“チューニング・マスタング”と言えるのではないだろうか。まさにエンブレムどおり“野生馬”である。 他社も「マッハ-E・ラリー」に負けないガチンコモデルをどんどんリリースして、EVにモータースポーツのイメージを植え付けてほしい。それがEV普及の後押しにつながるだろう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★EVのホットハッチ「アバルト500e」、10月初旬にいよいよ日本に ……発売に向けて特別サイトをオープン。記念グレード「ローンチエディション」も導入。発表同日に同サイトにて先行予約受付を開始する。 ★★ステランティス、「フィアット・600e」の生産を開始 ……ポーランド・ティヒにある工場で生産を開始した。生産第1号はオレンジカラーの「ラ・プリマバージョン」だという。「600e」はSUVの新型EVで、「500」の伝統的なスタイルを踏襲している。航続距離は400km(WLTPモード)。 ★★オランダのVDLグループ、FCEVトラックにトヨタのシステムを採用 ……トヨタモーター・ヨーロッパとVDLグループが協業。トヨタのFCシステムを搭載したFCEVトラックを発表した。2023年から5年間、ルートトライアルを行なうという。 ★BMWグループ、MINIのオックスフォード工場をEV専用に ……イギリスにある「MINIプラントオックスフォード」を2030年にEV専用工場にする。投資額は6億ポンド(約1,100億円)。EVモデルの「クーパー・3ドア」と「エースマン」は2026年から同工場で生産。 ★愛・地球博記念公園<愛知県長久手市>でEVの「ネコバス」が運行 ……トヨタ自動車・MONET Technoligies・豊栄交通・スタジオジブリ・愛知県が、EVバス「APMネコバス」の運行に合意した。同公園内「ジブリパーク」周辺を走る。車両はトヨタの短距離・低速型EVを改造した6人乗りの車両となる。 ★小型EV開発のGLM、長野県野沢温泉村と実証実験 ……小型EV「ミモス」をはじめとした3種類の電動モビリティを実験に投入。狭路・坂道・気候といった条件化での利点と課題を洗い出すという。 ★東北大学、太陽光発電とEVの組み合わせが脱炭素化に有効と発表 ……住宅向け太陽光発電に加えてEVを蓄電池として活用するフランスの施策「SolarEVシティー構想」で、この組み合わせが脱炭素化に大きく貢献できると試算した。周辺地域のイル・ド・フランス全体で最大76%削減できるという。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.13]

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TEXT:TET 編集部
大型トラックのEV化進む。メルセデスが航続距離500kmの「eアクトロス600」を発表

独メルセデス・ベンツの商用車部門メルセデス・ベンツ・トラック・バスは9月11日、電動大型トラック「eアクトロス」のロングレンジ版として、航続距離500kmを実現した「eアクトロス600」を、10月10日にワールドプレミアすると発表した。 1000kWh充電に対応 メルセデス・ベンツ・トラック・バスは世界で商用車の電動化を進めているが、その中でも大容量の荷物輸送に特化した大型電動トラックシリーズとして展開しているのが「eアクトロス」だ。そのネーミングどおり、かつて日本でも販売されていた内燃機関版の「アクトロス」をベースに、完全電動パワートレーンを与えられた同シリーズは、これまで「eアクトロス300」(112kWhバッテリー3個搭載)および「eアクトロス400」(同4個搭載)が発売済み。これらのモデルは、最大で400kmに達する航続距離を武器に、既に欧州などでは実際のビジネスシーンで活用が始まっている。 今回、そのeアクトロスに新設定されることが判明したeアクトロス600は、数字から分かるように、航続距離をさらに延長。メルセデス・ベンツ・トラック・バスによれば、充電なしで最大500kmの航続距離を達成しているという。さらに、将来的な1000kWh(メガワット)充電にも対応できるよう設計されているとのことだ。 その詳細なスペック等はまだ公表されていないが、昨秋ドイツで開催された「IAAトランスポーテーション2022」にメルセデス・ベンツ・トラック・バスが出展したプロトタイプ「eアクトロス・ロングホール」は、大容量のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを3つ搭載し、600kWh以上の電池容量で約500kmの航続距離を実現していた。明言はされていないものの、航続距離の公表値からして、eアクトロス600がeアクトロス・ロングホールの量産版と考えれば、そのバッテリーは上述のリン酸鉄タイプ3個ということになるのだろう。 また、今回同時に公表されたティザーイメージからは、eアクトロス600がトラクターヘッドであることも判明。もしかすると、これは数あるボディ形状の一つかもしれないが、少なくともメーカーが最も数を売りたいと考えているのは、トラクターヘッドなのだろう。実は、メルセデス・ベンツ・トラック・バスでは牽引されるトレーラーを使って航続距離をさらに伸ばすことも検討中。具体的には、トレーラーにもバッテリーと駆動モーターを搭載することで、航続距離を最大800km程度まで延長できる見通しということだ。 もちろん、これはすぐに市販可能というわけではないだろうが、トラクターヘッドをeアクトロス600のアイコンにすることで今のうちに数を売り、将来的なトレーラーの販拡にもつなげようという狙いかもしれない。 もうひとつ、注目なのはeアクトロス600が既存の300や400とは異なるデザインを採用しているらしいこと。ティザーイメージからは、コクピットが既存モデルより強くスラントしているようにも見え、メルセデス・ベンツ・トラック・バスもエアロダイナミクスを高めた旨発表しているから、トラックとしては異例のスタイリッシュなルックスも期待できそうだ。 世界では大型トラックも着実に電動化が進んでいる。こうした動きが日本にどのような影響を与えるのか、注目していきたい。  

TAG: #メルセデス・ベンツ #商用EV #発売前モデル
TEXT:小川フミオ
VWが打ち出す「LOVE BRAND」へ。ヘッド・オブ・デザインが語るポイント

フォルクスワーゲンのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏との語らいのなかで、小川フミオは「伝統の継承」にある素晴らしきデザインたちへのオマージュをきき出していく。 シロッコが、ブーメランを再解釈したように ーー「ID.GTIコンセプト」は、ゴルフGTIの”伝統”を継承して、23年3月発表の「ID.2 all」と同様、基本的にフロントモーターで前輪駆動というレイアウトです。デザインも同様に、オリジナルにこだわりますか。 「Cピラーを太く見せることが大事だというのは、さきに説明したとおりです。しかもオリジナル・ゴルフを見ていると、とくに上面図でみるとわかりやすいかもしれませんが、後方にいくにしたがって、微妙なテーパーがついています。ちょっとしぼっているんです。そこもつよく意識しました」 ーーCピラーが太すぎると、ななめ後方視界がさえぎられてしまいます。従来のゴルフではそこがやや難点でした。 「なるほど、なるほど、ID.GTIコンセプトでは、ゴルフ7に比べたら少し細くはしましたけれども、やはりデザインのエレメントとしては重要だと思っています。巌(いわお)のように頑強とか、堅牢というイメージをそのリアからフロントにかけて統一した形で持たせ、ステイブルというVWデザインのテーマにつながる要素ですので」 ーー伝統的なデザインといいつつ、でもたしかに、あたらしさを感じる気がします。 「側面のベルトラインを、前から後ろにかけてまっすぐに続くようにしたいと思いました。それは、審美的にも、ステーブルな印象という点でも重要だからです。そこで後席ドアのオープナーハンドルは、Cピラーのほうに移しています。開閉構造がベルトラインのデザインに与える影響を回避するためです」   ーーオリジナル・ゴルフは、イタリアのジョルジェット・ジュジャーロひきいるイタルデザインがデザインを手がけたとされていますね。 「Cピラーのデザイン処理は、すごいですよ。当時のジュジャーロのデザインにおいては、じつは、このトリートメントは典型的なんです。ゴルフ以外には、アルファロメオ・ジュリアや、私がもっとも好きなマセラティ・ブーメランでも同様です。平面的なシートメタルを使って、どうやって力強さを出すか。考えぬいた、あるいは直感的に知っていた、結果でしょう」 ーーブーメランとは意外ですが、デザインとしてはとてもいいですね。 「ブーメラン(1971年)は1970年代的な、パワフルなクルマのデザインです。ジュジャーロ氏は初代VWシロッコ(74年)もデザインしています。シロッコは、ブーメランのもうひとつの解釈といってもいいでしょう」

TAG: #ニューモデル #フォルクスワーゲン #発売前モデル
TEXT:岩尾 信哉
BMW 「ヴィジョン・ノイエクラッセ」は次期3シリーズの姿を占うデザイン・スタディだ!

ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2023」のプレイベントにおいて、BMWはかねてから発表を予告していた「ヴィジョン・ノイエクラッセ(ドイツ語で新たなクラスの意)」を公表。それが示すBMWの将来像について想いを巡らせてみた。 内外装に漂う近未来のBMWデザイン BMWのコンセプトカー「ヴィジョン・ノイエクラッセ」は、2025年以降に発売予定とはいえ、次期3シリーズのベースとなることが想定されるだけあって、注目を浴びて登場した。デザイン・スタディの段階であっても「ノイエクラッセ」の名が与えられて姿を現せば、いよいよ正式な量産化に向けた詳細が少しでも明らかになるのではと期待された。だが、残念ながら今回はスペックや販売される価格帯などは紹介されずじまいだった。 それでも今回、コンパクトセダンであること以上の追加情報はなくとも、「ヴィジョン・ノイエクラッセ」のスタイリングなどには、将来に繋がる部分もあったので、いくつかのポイントを追ってみたい。 BEVとして設計された「ヴィジョン・ノイエクラッセ」 主たるコンセプトとして「ヴィジョン・ノイエクラッセ」(以下、ノイエクラッセ)でBMWが掲げたのは、将来に向けたデジタル化、電動化、循環性などの将来に向けた開発テーマだ。あくまでデザイン・スタディゆえに詳細なスペックは明らかにされていないノイエクラッセでは、目標として「30%の航続距離増加、30%の充電時間短縮、25%の車両全体の高効率化」と示されても具体的なイメージが湧きにくい。 BMWが新たな取り組みとして明確に掲げているのはBEV(バッテリー式電気自動車)としての進化だ。BEVであるノイエクラッセでは第6世代の電動パワートレインが採用される。高効率の電気モーターと新開発の円形バッテリーセルは、従来の角形仕様よりもエネルギー密度が20%以上高められているという。 セダンのスタイリングとして先を行く斬新さ BMWグループのデザインを統括する、エイドリアン・ファン・ホーイドンクは、「ノイエクラッセのデザインはBMWらしさを備えつつ、モデルの世代の推移を超越するような斬新さを備えています」とコメントする。そのスタイリングはBMWの将来のコンパクトセダン像を映し出していることがわかる。 前傾したシャークノーズのフロント先端部や「ホフマイスター・キンク」として知られるCピラー付け根にある跳ね上げられたラインなどは、従来から見られるBMW独自の手法。キドニーグリル内にダブルヘッドライトやセンサー類を収めたカバー部には、デジタルアニメーションが照明効果によって表示され、周囲の人々や交通に向けて車両情報を提供する。リサイクル性に配慮したブラックのバンパーとサイドスカートもエクステリアのアクセントとなっている。 ボディサイドから見ると、セダンのデザインとしてエッジの効いたプロファイルが見て取れる。キャラクターラインを境に上下で明確に分割された面で構成されたドアパネルや、前後オーバーハングを切り詰めた引き締まったボディラインは、シャープなイメージを際立たせている。

TAG: #3シリーズ #BMW #ノイエクラッセ
TEXT:小川フミオ
IAAモビリティ開幕前夜に「VWグループ・メディアナイト」で語られたブランド戦略とは。

ミュンヘンで開催されたIAAモビリティを訪れた小川フミオは、フォルクスワーゲン・グループの動向を見れば、現在の自動車界を俯瞰できる、と考えていた。そのプレゼンテーションは、自動車界の未来を予見するものだった。 大きな存在感を示すフォルクスワーゲングループ ミュンヘンで「IAAモビリティ」と名づけられた自動車ショーが、2023年9月5日から10日にかけて開催。大きな特徴は、ほぼ電動化がテーマになっていたことだ。 クルマの電動化の尖兵ともいえるぐらい、今回、展示に力を入れていたのがフォルクスワーゲン・ブランドを筆頭にしたフォルクスワーゲングループだ。 この記事を読んでいるかたには、いまさら説明の必要もないだろうけれど、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーがグループ傘下に入っている。 加えて、シュコダ、セアト、クプラといった、日本への輸入がないけれど、欧州を中心にセールス好調なブランドも含まれる。 かつて大きな規模で世界中の自動車好きの注目を集めていたフランクフルトの自動車ショーに代わり、ミュンヘンで開催されるようになったIAA(Internationale Automobil-Ausstellung=国際自動車ショー)でも、大きな存在感を誇示した。 それが端的に表れていたのが、ショー開幕前夜にミュンヘン市内の特設会場を舞台に開催された「フォルクスワーゲングループ・メディアナイト」。 フランクフルトでショーが開催されていた時代から、フォルクスワーゲングループは、世界各地からジャーナリストを招いて、同グループが向かおうとしている方向など、紹介に向けての計画を発表してきた。 「私たちは環境への責任をたいへん強く受け止めています。地球環境保全は、これからの計画における核なのです」 ジャーナリストの前で登壇した、フォルクスワーゲングループのオリバー・ブルーメCEOは、そう語った。 ブルーメCEOは、グループ間でのプラットフォーム共用と、動力が電気になっても同様の戦略がとれるという。 じつはそれこそ、いまの自動車業界における共通の課題なのだ。あらゆる点でモデルごとに違いを出していく時代は終わり、共用と差異化のバランスこそが、市場で生き残っていくために重要ということだ。どのメーカーでも同様のことが言える。 電気時代のプラットフォーム、そしてキーコンセプト「サクセス・バイ・デザイン」 そこで、冒頭に記したように、この記事はIAAモビリティという自動車ショーについてのものなのだけれど、フォルクスワーゲンの考えを紹介することで、現在の自動車界を俯瞰できる。そう考え、もうすこし記述を続けたい。 「これまでフォルクスワーゲンは、MQBというフレキシブル・プラットフォームを開発。傘下ブランドの車両の多くは、この前輪駆動の内燃機関用プラットフォームを使って開発されてきました。このさきこれをMQBプラスへと発展させていきます」 同様の役割が期待されるのが、電気自動車用のMEBプラットフォーム、とブルーメCEOは言う。2019年に発表された全長4.2mの「ID.3」を皮切りに、「ID.4」、「ID.5」、「ID.BUZZ」など13車種で使われる。 「電気時代のプラットフォーム戦略の要(かなめ)になるもので、時代に合わせて常にアップデートしていきます。最新は、今回ショーでお披露目した「ID.7」で(5メートル近い車体にもかかわらず)698kmの走行可能距離を誇ります」 バッテリー戦略もやはり、競争力を核に、このさきの展開が考えられている。性能向上はもちろん、現時点での目標は専門企業の協力を得ながら、いわゆるドライセルバッテリーのギガファクトリーを、各地に建設することだ。 「もうひとつ、私たちがいまやるべきことがあります」。ブルーメCEOは続けた。 「それぞれのブランドとその製品に、より明確なキャラクター、アイデンティティ、そしてパフォーマンスを与えることです。ゆたかなヘリティッジを強調することで、このさきも市場でブランド力を確固たるものとしていけるのです」 そこでブルーメCEOが掲げたのが「サクセス・バイ・デザイン」なるキーコンセプト。成功のためデザインの重要性を上げる戦略で、デザインチームはこれまで以上に、CEOと密な関係で製品開発を行うそうだ。   「よいデザインはクライアントが喜んでくれる製品づくりのコアになるもの。エクステリア、インテリア、それにデジタルエクスペリエンスすべての領域で、フォルクスワーゲンはデザイン中心のブランドになります」

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TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプト」のCピラーに注目。ヘッド・オブ・フォルクスワーゲン・デザインが物語る、これからのVWのデザイン

フォルクスワーゲン(VW)の企業方針「Success By Design」を担うアンドレアス・ミント氏は、人を惹きつけることが必要と語る。その一例が、ID.GTIコンセプトのCピラーにあるという。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえること」 2023年にフォルクスワーゲン(VW)グループは、「IAAモビリティ」を前に、「デザインによる成功 〜Success By Design」という企業方針を打ち出した。 「デザインはブランドの説明のよい手段であり、ひとは自動的にデザインとブランドを結びつけます。そして、新車の購入にあたって、デザインは大きな影響力をもちます」 VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、グループの各ブランドにおいて、これからいっそうデザインに力を入れていくとする。 ただし、とんがっていればいい、ってもんではない。デザインが企業のありかたと、うまく結びついている必要がある。VWグループにおいて、デザイン部とCEOはよりダイレクトな関係を構築していくんだそうだ。 EVが本格的に発売されるようになった数年前は、上記のような考えはあまり見られなかった。ICE(エンジン車)との差別化が大事で、違って見えることに、各ブランドは注力した感があった。 いま、時代はあたらしくなった。そう思わせるクルマが、いくつか登場している。VWでいうと、23年3月にハンブルグでコンセプトが発表された全長4メートルのハッチバックEV「ID.2 all」、そしてそれをベースに開発するという「ID.GTIコンセプト」が好例だ。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえることです。あたらしい技術(電気)から距離をとっているひとが、近づいてきてくれるクルマ。いいかんじのデザインだね、と思ってもらえるクルマづくりです」 そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏だ。 そういえば、ハンブルグでの発表会のとき、ミント氏は「(23年1月にVWのヘッド・オブ・デザインに)就任してまずやったのが、ID.2 allのデザインでした」と語ってくれたのを思い出した。 ほぼ同時にID.GTIのデザインも手がけている。この作業をミント氏は「クリスマスと誕生日がいっしょに来たみたいな楽しさでした」と語っている。デザイナー冥利につきる仕事、ということかな。

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WAE EVRh(photo=WAE)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
ニュル7分20秒が照準……F1ウィリアムズ傘下のWAEがハイパーFCEVを開発へ[2023.09.12]

最高出力748psを発生するハイパー燃料電池(FC)ユニットを提案 FCトップランナーの日本勢も見過ごせないのでは 【THE 視点】F1チームを運営するウィリアムズの子会社ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング・テクノロジーズ(WAE)は9月5日、高性能スポーツ燃料電池車(FCEV)のプラットフォーム「EVRh」を発表した。 「EVRh」は、最高出力120kWの水素燃料電池と同430kWの液冷式バッテリーを組み合わせたエネルギーシステムを採用し、車両全体の最高出力は550kW(748ps)になるという。車重1,900kg以下、0-100km/h加速は2.5秒以下で、航続距離は600kmとのこと。 駆動方式は複数のモーターを備えたAWDを採用するようだ。水素タンクとバッテリーを車両中央部に配置することで重量配分の最適化を行ない、ドイツの「ニュルブルクリンク・北コース」のラップタイムは7分20秒以下がターゲットとのこと。 実は今回発表された「EVRh」は、昨年WAEが開発・公開したEV用の革新的なプラットフォーム「EVR」に続くものとなる。同社は、革新的な技術開発を行なうとともに、カーボンフリー車両の開発を重要視している。特に「EVRh」はOEM生産に対応し、コストパフォーマンスを最適化した上でスピーディに市場に投入できるモデルとなるようだ。 「EVRh」のプラットフォームは、今年の「人とクルマのテクノロジー展」で東京アールアンドデーが発表した「FCEVスポーツコンセプト」にも似ている。スポーツカーのプラットフォームの前後に水素タンクを搭載し、二次バッテリーを積むハイブリッドFCEVという構造だ[関連記事はこちら<click>]。 スポーツFCEVは、「トヨタ・ミライ」や「ホンダ・クラリティ・フューエルセル」「BMW iX5ハイドロジェン」といった実用車とは一線を画す独自の構造を持ったカテゴリーになる。EVでもハイパーカーが登場するようになってきたが、「ハイパーFCEV」が登場するのも時間の問題だろう。走る楽しさを追求している日本のメーカーも負けてはいられないのではないか。 FCEVにも様々なカテゴリのクルマが増えれば選択肢が増え、普及拡大にもつながるだろう。実際にFCEVに乗る筆者も、こういった楽しいFCEVが出ることは歓迎である。「EVRh」ベースの「FCEVスポーツコンセプト」の実車が見れることを楽しみにしている。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ベルエナジー、「電気の宅配便」本格稼働 ……「日産・サクラ」に「チャデモ」対応の充電器およびバッテリーを搭載して電気を宅配する実証実験を9月19日から開始する。場所は茨城県つくば市内限定で、ユーザーが自宅以外に駐車した場合に限る。本サービスは2024年度内に開始予定。 ★メルセデス・ベンツ・トラック、新型EVトラック「eアクトロス」を発表へ ……10月10日に世界初公開予定と発表した。長距離輸送用のEVトラックで、航続距離は500kmになるという。 ★レクシヴ、日産とEVで協業 ……EVのデータ連携に関する実証実験を共同で行なう。日産のEVの車両データをサーバーを通じて連携。車載デバイスなどが必要なくなり、車両管理やエネルギーマネジメントがしやすくなるという。 ★指月電気、V2X対応のEV用充放電機を発表 ……「グリーンファクトリーEXPO」<幕張メッセ…9月13日(水)〜15日(金)>で新製品「エクシーブ」を公開する。ピーク電力カットや災害時にEVの電力を使用できる機器となる。 ★三菱重工、90MPaの水素昇圧ポンプを市場投入へ ……水素ステーション向けの「90MPa級超高圧液体水素昇圧ポンプ」の長期耐久試験をクリア。ポンプの起動・停止運転を300回実施。累計250時間の運転を達成したという。本実験は米カリフォルニアにあるファーストエレメント・フュエル社の水素供給施設で行われた。来年まで継続するという。 ★あいおいニッセイ同和損保・MS&ADインターリスク総研・法政大学、空飛ぶクルマを共同研究 ……空飛ぶクルマの社会実装に向けて共同研究契約を締結した。MaaS事業の保険・サービスの開発や人材育成などを行なう。特に法政大学は、次世代航空人材向け教育カリキュラムへ研究成果の活用を検討するという。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.12]

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