絶縁被膜にも大きな可能性が
「ソルダーレジスト」というワードを聞いたことがあるだろうか。これはコンピューター基盤によく見られる緑色の被膜の材料のことで、あらゆる電気製品に使われている。電気が流れてはいけないところに塗布(パターニング)して絶縁するためのもので、ハンダ付けに耐え回路をホコリ、熱、湿気から保護する役割がある。
前述したとおり普通乗用車には1万5000点の半導体が搭載されるので、それらを正確に装着し、回路パターン間を絶縁する役割がソルダーレジストにはある。
素材づくりには10〜20種類の原料を均一に混ぜるノウハウが必要で、太陽インキ製造はそのソルダーレジストに関して世界ナンバーワンのシェアを誇る、埼玉県嵐山町に本社を置く企業である。
公演した同社ビジネスディベロップメント部の角谷武徳氏によれば、そもそもBEVは内燃機関車の1.5倍の基盤面積を要するので、1台あたりのソルダーレジストの使用量も増加する。ある機関の予測によれば、車載用基盤の需要は2035年に現在より163%増加するといわれている。
これまで車載用基盤の設計はTier1と呼ばれるボッシュ、デンソー等の大手自動車部品サプライヤーが担ってきたが、テスラなどのケースではメイン・コンピューターを自動車メーカーが自身の意向も入れて自社で設計するケースもあるようだ。
ソルダーレジストにはたとえば温度変化がー40℃〜+150℃と著しいインバーター用など、過酷な環境で使用されるものがあり、そうした特殊な素材はコストも高い。下手をすれば車両が適切に動作しないどころか、火災の原因にもなる。ゆえに適材適所でコストと耐久性のバランスを取るのが肝要なのだという。
そもそも現時点で太陽インキ製造は前出の3社と直接的な関わりがあるわけではないが、フォロフライは自社の設計開発でやがて同社に依頼するシーンも出てくるだろうと踏んで、今回のセミナーにも出席を依頼したのだという。
このように直接の関係がない企業が、将来を見据え、かつプレスへのインパクトも考えたうえでセミナーを共催する、というところにいまのEV業界の面白みがある。だれもが虎視眈々とチャンスを狙っているのだ。