バイクを水素で走らせる。その答えはもう少し先に……
バイクを水素で走らせる開発は、国産4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)+トヨタ+デンソーのコンソーシアムで行っている。すでに四輪バギーに水素エンジンを搭載して走らせるなどしているが、バイクを水素で走らせるという答えはしばらく先になりそうだ。
「ガソリンで走らせるのはみんなが作れるからどんどん競争すればいいんです。でも水素はどのメーカーもできていません。今は四の五の言っている場合じゃない。まだ答えがないんです。でも将来のためにライバル会社と毎週のように会議をしています。だからこそ、このメンバーでやっていてできなかったらできないだろうなとも思います。
このコンソーシアムは日本だけでなくヨーロッパやアメリカともやりたいくらいです。市街地はEVで、遠くに行くにはエンジンを使う。燃料はe-fuelか水素。水素は原料自体の価格は安いのですが、輸送費がかかるんです。だから普及するには地域性も出ると思います。
水素の充填に関してもプロトコルというのがあって、まず水素自体の温度を冷やして、タンクの圧力を見ながら温度が上がらないようにして充填するんです。これはトヨタさんのミライとかですでにステーションがあるので、技術的には十分可能です。今ある問題は解決できると思います。
さらにウーブン・プラネットさんがカートリッジ式の水素ボンベを開発していて、このボンベを入れ替えるのも良いアイデアだと思っています。
EVもハイブリッドも開発当初はこういったカタチになるとは思っていませんでした。でもどんどん仕上がってきて発表できるようになってきています。水素も同じですよね。計画的というよりは、まだまだやりながら考えていく感じです。カワサキは、水素もハイブリッドもEVもすべて本気です」と松田さん。
今回展示されていた水素エンジンは、カワサキのニンジャH2系のスーパーチャージドエンジンをベースとするもの。直噴化するが内部パーツはニンジャH2系と大きな違いはないそうだ。
インジェクターはデンソーが開発した水素用で、トヨタの水素カローラ(GR Corolla H2 Concept)と共通の物を採用している。2022年の9月にモビリティリゾートもてぎで走行した四輪バギーに搭載していたのがまさにこのエンジンである。走行実績はあるものの、まだまだ課題はたくさん。ライバル会社と頻繁にミーティングを行い、試行錯誤しながら開発は進められている。
まだ水素バイクの形はない。しかし、一歩ずつ着実にその夢は近づいてきているような気がする。
バイクのカーボンニュートラル化と聞くとどうしても暗い未来を想像してしまっていた。しかし、国産メーカーの中では圧倒的に趣味性の高いモデルをリリースし、トレンドを作り続けているカワサキが進むその道は、明るく照らされているような気がした。カワサキが生み出すハイブリッドバイクや水素バイクは、きっと趣味性の高さに溢れているに違いない。