レイアウトの自由度が増したEV
では、エンジン車とEVで、どのようにプラットフォームは違ってくるのか。
一見したところ、プラットフォーム自体の構造の差はあまり見えてこない。だが、EVでもっとも重要かつ中心となる部品はリチウムイオン・バッテリーであり、質量が数百キログラムに及ぶバッテリーは、車体の床下一面といった大きさの箱に収められている。エンジン車では、床下に排気の配管があったり、変速機があったり、燃料タンクがあったりした床に、EVではバッテリーケースが置かれることになる。
リチウムイオンに限らずバッテリーは精密部品で、衝撃から守る必要がある。したがってバッテリーケースは頑丈につくられる。これが床下一面に置かれるのだから、エンジン車の変速機など各部品が散らばって床下に配置されるのとは違う床構造になって当然だ。そして頑丈なバッテリーケース自体が、プラットフォームの丈夫さを保つ機能も果たすことになる。加えて、平らなケースの下は空気の流れも整える。
そのうえで、モーター、減速機、制御機器、充電器などを、車体前後に配置する。また、サスペンションがプラットフォームに取り付けられる。
たとえばスウェーデンのボルボは、前輪駆動(FWD)で売り出したEV(C40とXC40のリチャージ)を、後輪駆動(RWD)に変えて売り出すことをはじめた。EVであればFWDであろうとRWDであろうと、さらには四輪駆動(4WD)であろうと、車載バッテリーの前後に電気駆動系の部品を自在に配置できる。ある形式のプラットフォームを完成させておけば、車両ごとの商品性に応じて駆動系統の配置を分けることができる。エンジン車では難しいことだ。
現在のエンジン車やハイブリッド車(HV)を含めた新車販売を続けながら、EV専用設計へ移行するのは容易でない。米国のテスラのように、はじめからEV専用設計でEVしか販売しなければ、EV市場の拡大とともにその合理性は他に先んじて高まる。
EVの将来に対し、いかに決断し、新たなEV市場を創造していけるかが、今後は自動車メーカーの存続を左右する。そこを見極める要素が、EV専用プラットフォーム戦略から見えることになる。