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EVバスの現在地、現役EV開発エンジニアが参加した勉強会で浮き彫りになったEVバス普及への課題[THE視点]


TEXT:福田 雅敏 PHOTO:福田 雅敏
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地方路線バスにEVを導入するメリットはあるか、現役バス運転手からの質問と回答

最後に筆者の知人のとある地方のバス運転手からEVバス導入について質問を受けた。今回の受講内容も勘案しつつ答えてみた。もし業界関係者で本記事をご覧になった方がいれば、参考にしていただきたい。

問)冬場、暖房が必要なほど極寒地域でEVバスを普及させるには?

→筆者もこれまでにEVバスを何台も製作してきた。寒冷地向けには、屋根には断熱塗装(熱い地域にも有効)、窓には断熱フィルムを採用はしたが、効果はわずかなもの。基本的にはバッテリーの容量でカバーするしか方策がないようである。

問)交換式リチウムイオン・バッテリーを採用すべきではないか?

→筆者もバッテリー交換式のEVタクシーの実証試験を行った経験がある。急速充電では基本80%までの充電で運行せざるを得ない場合があるが、交換式だと100%まで充電したバッテリーパックと交換できる。交換に要する時間も僅か数分で軽油を入れている時間で交換は可能である。特に中国では、バッテリー交換式のEVが増える傾向にある。

問)本当にバスが必要な人がいる山間部(閑散路線)へEVバスを充当できるか?

→閑散路線にEVバスは相応しいと考えている。理由は運行本数が少ないので、充電時間が取れること。さらに補助金を使ったEVバスの導入コストがディーゼルより安い(但し中国製となるが)のも理由のひとつである。

問)EVバス施策は都市部だけの自己満足的施策にならないか。

→最近西東京バスが東京として初めて大型EVバスを導入したとの報道があった。この東京でもまだEVバスは普及していない。恐らく日中の充電の問題もあるので、繁忙している路線には向かない。むしろ地方の方が向いているのではないだろうか。

問)既存のバス車体を活用した「EVコンバージョンバス」を進めるべきではないか。

筆者も中古の50万kmも走ったディーゼルバスをEVに改造した経験がある。その当時(約10年前)は、バッテリーとモーターを含んだ部品価格が高くて中古改造にはメリットが出なかった。しかし現在西鉄グループは、台湾から部品を輸入して自社で使用した中古バスの改造事業を始めた。部品のスケールメリットが出れば、中古の改造も進むのではないだろうか。あとは中古にも補助金がでればなお良いだろう。

問)バッテリーEVのバスだけではなく、燃料電池バスの導入も進めるべきではないか。

→東京都交通局など、都内を中心にFCEV(燃料電池)バスも走り始めている。EVバスには大容量のバッテリーが搭載されているので充電に時間がかかる。FCEVバスであれば水素の充填が僅か5分程度である。まだEVバス一択と決まったわけではないと思うので、水素充填インフラの問題もあるがFCEVバスも有望と考えている。

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