#交通インフラ
TEXT:TET 編集部
世界初の自動運転EVバスが2台定常運行! マクニカが常陸太田市に新たな路線バスを投入

マクニカ「evefleet」とNavya「EVO」が地域交通の未来を創造する 茨城県常陸太田市で、マクニカが提供する特定環境下でレベル4に対応した自動運転EVバス「Navya EVO」が、世界初となる2台定常運行が2025年2月18日からスタートしている。 常陸太田市ではこれまでにも、同市の中心市街地「東部地区」における多様な移動ニーズへの対応、環境に配慮した交通システムの構築、次世代技術との融合による魅力ある街づくりの一環として、マクニカなど関係各社と連携し、自動運転EVバスの実証実験(2023年2月)や、Navya社製自動運転EVバス「EVO」の自動運転レベル2での定常運行(2024年2月から1年間)を行なってきた実績がある。   「じょっピー」の愛称で親しまれる自動運転EVバスの定常運転開始から1年が経過し、市民から要望の多かった常陸太田駅と鯨ヶ丘方面に新しいバス停を追加。さらに2台目の自動運転EVバスを追加し、2台を公道で定常運行させる世界初の取り組みを行うことで、走行ルートと距離を拡大し、市民の交通利便性を向上させる。 なお、2台のバスの位置情報や車内の混雑具合、バス停周辺の店舗情報などは「常陸太田デジタルマップ」で一元的に可視化され、常陸太田市の行政情報アプリ「じょうづるさんナビ」を通して市民に提供される。 それらの情報や運行管理には、マクニカの「everfleet」という遠隔運行管理システムが活用されており、リアルタイムで車両データや走行状況がモニタリングされている。これにより、安全性と効率的な運行が確保され、将来的には自動運転レベル4の運行(現状ではレベル2での運行)を目指す。 また、この取り組みは持続可能な街づくりの構築に貢献するため、他の自治体への自動運転EVバス導入にもつながることをマクニカは期待している。 常陸太田市での運行は1日6便、南まわりと北まわりでそれぞれ3便ずつが運行され、乗車は予約なしで無料で利用することができる。 使用される自動運転EVバス「EVO」のボディサイズは、全長4780mm、全幅2100mm、全高2670mmとコンパクトで、最大速度は18km/h(運行時は平均速度15km/h程度)、乗客人数は最大9名となっている。1回の充電で約100km走ることができ、緊急時にはオペレーターが手動で介入できる仕組みを採用している。 マクニカの「evefleet」とNavyaの「EVO」の組み合わせにより、安全を確保しながら自動運転バスの運用を高度に効率化し、運行にかかる人員を削減しつつ増便につなげられる可能性がある。市民の足を確保したいものの、バス運転手不足が叫ばれる現代社会において、自動運転バスの複数台同時運行実現は救いの一手であり、今後のさらなる開発に期待したい。

TAG: #EVバス #マクニカ #交通インフラ #自動運転
TEXT:福田 雅敏
EVバスの現在地、現役EV開発エンジニアが参加した勉強会で浮き彫りになったEVバス普及への課題[THE視点]

2023年3月14日、東京都内で業界関係者・識者向けの勉強会「交通ビジネス塾 第135回『社会と事業者に恵みをもたらすEVバスの普及に向けて』」が開催された。 この催しは2015年に筆者も講演をしたことがあるが、今回は受講側として参加した。EVバスの普及についてがテーマだが、EVバスを導入する利点と難点を、実際に導入した企業から話を聞くこともできた。ぜひ世の中に知らせたい内容なのでレポートをしたい。 商用・公共交通用EV普及に向けて補助金を用意する政府だが導入は進まず 最初の講演は「EVバスの普及に向けた国交省の取組み」だ。国土交通省・自動車局・技術環境政策課・環境基準室長・小岩慎之氏が登壇した。 電動車の構造から始まり、電動車が必要な理由、CO2の削減について説明があり、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップが示された。商用車(バスを含む)の小型GVW(車両総重量)8トンクラスでは、2030年に新車の電動化率を20~30%に増やし、2040年には100%を目標としているという。 今後10年を見据えたロードマップでは、官民合わせ10年間で150兆円の投資となるとのこと。この金額は車両開発費のみならず、インフラまで含んだ数字となっている。 輸送事業者におけるEV等の導入目標については、2030年度の保有台数に占める割合として、トラックの8トン以下で5%。8トン超については示されなかったが、バスは全体(小型から大型まで)5%とし、タクシーについては8%と示された。 海外では、ノルウェーが乗用車で2025年までにHEV/ガソリン/ディーゼル車の販売を禁止。商用車では、都市内バス/小型トラックもEV・FCEVの販売比率を100%と他に先行している。これに米国が続く。 日本でのEVバスの導入状況であるが、24万台程度のバス保有台数のうちEVバスはわずか150台程度に留まる。僅か0.1%の割合だ。このうちほとんどが中国製というのが現状である。 今後の日本における次世代商用車(EV・FCEV)の普及・導入に向けた取組として、「産学官連携による高効率次世代大型車両開発促進事業」「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」「次世代商用車導入支援」などが示された。 このうち、「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」には、2050年カーボンニュートラル実現に向け国庫負担額として1,130億円を計上しているという。「次世代商用車導入支援」では、令和4年度二次補正と令和5年度当初予算合わせ約250億円が計上されている。 このほか、一般乗合旅客自動車運送事業者に係る特例措置の創設により、EVバス等に係わるものの固定資産税・都市計画税の軽減、水素活用による運輸部門等の脱炭素化支援事業(環境省)、商用車の電動化促進事業(経済産業省・国土交通省連携事業)など、2050年カーボンニュートラルの達成を目指しているという。 ※資料出典:国土交通省 EVバス導入事業者が悩む車両トラブル対応 2番目の講演は「EVバスの導入経験と国への政策への希望」だ。登壇者はイーグルバス株式会社・代表取締役社長の谷島 賢氏(下記写真の右が谷島 賢氏、左は小岩慎之氏)。同社は埼玉県川越市を拠点に貸切・路線バスを運営する。 イーグルバス社がEVバスを導入した理由として、社内事情と対外的事情があったという。その事情とは、小江戸川越巡回バスの老朽化によるものだ。 これまでマイクロバスをわざわざボンネット付きのバスに改造して走らせて来たというが、乗車定員が少ないこと、そのため採算が合わないこと、そして導入後20年を超えメインテナンス・部品調達の問題が露出。これに対外的事情としてSDGsの世界的な広まりもあってEVバスの導入に踏み切ったという。 イーグルバスが保有するEVバスは合計2車種7台で、ボンネット付き中型2台に路線型小型(全長7m)バス5台である。 導入した中国製EVバスについて赤裸々な意見が伺えた。中国製バスは、工場では日本向けのステッカーが貼られ特別扱いされているというが、それでも部品の品質がチープで壊れやすいという。「逆に日本人は過剰品質を求め過ぎるのか?」とも話されていた。 それでも購入する理由は、国の補助金を入れると小型バスが1,300万円程度で購入できるからだ。同じサイズの国産ディーゼルバス(日野・ポンチョ)よりも安く、さらに環境性能・騒音・走行性能が優れているのがEVバスのメリットとのこと。 実際にハンドルを握るドライバーからは、良い点として「力があり運転が楽」「エアコンが効く」「始業点検が楽で運転している優越感もある」との声が上がっているという。逆に悪い点として「ブレーキ(回生)に慣れるまで時間がかかる」「ウィンカーとワイパーのレバーが逆」「スイッチ等中国語なので分からない」とのことだが、肯定的な意見が多いようだ。 メカニックからは、「分からないことだらけで細かなトラブルも多く自ら直すことが出来ない」「トラブルの多くが原因不明のためその究明が大変」だという声が上がった。さらに日本製の料金箱や、行先表示板などを取り付けたら、電力が足りなくなり止まることもあったという。 また、充電方式も日本の急速充電規格の「CHAdeMO(チャデモ)」の充電器は高いとのことで、中国規格の「GB/T」のまま充電器も持ち込んで運行しているという。 その充電も、50kWを超える急速充電をすると充電量による電気代は少し安くなるが、基本料金が高くなるのが問題と話していた。これに電力使用時のピークが上がると、向こう1年間の基本料金が高くなるのも問題とのこと。 そのため、充電時にはピークを越えない気遣いも必要で、経済性(ランニングコスト)は、2年程度では判断できないとのことだった。冬場の暖房や真夏日のエアコンフル稼働により電費は悪化するとのこと。数年後にバッテリーが劣化した場合の交換費用も掛かるので、導入2年程度で経済性はわからないというのは理解できる。 最後に国への要望として「補助金の申請をいつでも出来るようにして欲しい」「補助金はしっかり予算化して減額はしないで欲しい」「EVバスへの電気料金体系を何とかして欲しい」など話していた。 中国製は壊れやすくメインテナンスも大変と言われていたが、EVバスを2台から7台へと増車している前向きな姿勢には、採算だけでなく、SDGsにも真剣に取り組んでいる証と感じた。 この2件の講演を聴いて抱いた感想は、国としても大掛かりかつかなり野心的な目標を掲げているということだ。24万台あるとされるバス。その5%が2030年にEVバスとなると、今後7年で1万2,000台となる。これから普及が加速はされると思うが、かなり補助金とラインナップが増えないと達成は難しいだろう。 資料出典:イーグルバス株式会社

TAG: #EVバス #THE視点 #交通インフラ

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