EVに求められるブレーキングとは
油圧ブレーキシステムの使用を削減するということは、一見すると摩耗が少なくなるなどの、良いことばかりのように思えるかもしれない。しかしながら、見過ごせない懸念事項もある。それは、フットブレーキングの機会が減るために、かえって油圧ブレーキシステムの摩擦部品の腐食の原因となることだ。それによって、耐久性だけでなく、性能や安全な使用も損なわれるおそれがあるという。
以上の通り、安全で快適な乗り心地をEVにもたらすには、ブレーキングシステムは、酸化に強く、長寿命、静かといった厳しい要件を満たす必要があるのだ。
ブレンボが見出したブレーキの答え
摩擦ブレーキの使用が減ることによるリスクを踏まえた上で、ブレンボが目指したのは、静粛性と耐腐食性に優れ、かつ引きずり抵抗を最小限に抑えたブレーキキットを作ることだった。
具体的には、ダブルプロテクション処理によって、キット全体の腐食を防ぎ、ディスクに輝きと魅力的な美観を保つことに成功。銅を含まない特殊な摩擦材と亜鉛メッキのバッキングプレートにより、ブレーキ時のダストとロードノイズの両方を低減している。結果的に、最も過酷な使用条件でも、100,000 km以上、効果的な性能と錆からの保護が確保されるブレーキシステムになっている。
ブレンボのEVパッドおよびEVディスクの最新製品群は、世界市場において最も人気のある電気自動車 (日産リーフ、テスラ 3 / S / X / Yの各モデル、日産E-NV200、VW E-ゴルフ、アウディQ2 E-tron、ヒョンデIoniq 5、BMW i3、キア・ソウルEv、ルノー・ゾエ / カングーZ.E、ニオES6 / ES8、Xpeng P7、フォード マスタング マスタング・マッハE、ポールスター 1 / 2) に対応している。
足元から見直す、EVの安全
最近のクルマにおいて「安全」といえば、安全先進運転支援システム(ADAS)に注目が集まるのではなかろうか。筆者もその傾向がかなりあり、システムによって周囲を360度センシングしてくれると、安心して運転をすることが出来る。しかしながら、基本的にクルマが目的地まで安全に辿り着くことが出来るのは「動く」「止まる」という基本性能があってのことだ。だからこそ、足元や駆動系の装備にも目を向けていく必要があると痛感させられた。