#EX30
TEXT:小川フミオ
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」

ボルボのテクニカルリーダー・バッカー氏は「BEV(バッテリー駆動のピュアEV)の技術革新はものすごい速度で進み、近未来の予測は難しくなってきている」と話す。イノベーティブな時代だからこそ、氏の知見を、ボルボは大事にしてもらいたいと小川フミオは思うのだ。 日本にフィットしたEX30 狭い道幅、混合交通、サイズに制限のある駐車場……自動車にはけっしていい環境とはいえない日本にもぴったりのBEV。 ボルボカージャパンの不動奈緒美代表取締役社長は、23年8月の「EX30」導入時にメリットを説明した。 乗ってみれば、たしかに狭かったり混んでいたりする道路環境で扱いやすく、かつ、いざというときは俊敏で、しかも走りも高いレベルにある。 そんなEX30は、どういう背景で開発されたのだろうか。 EX30の動的性能におけるテクニカルリーダー、エグベルト・バッカー(Egbert Bakker)氏に、2023年10月、EX30の国際試乗会のタイミングでインタビューした内容をお伝えしよう。 BEVへ、ボルボであるためのDNAを組み込む ーーバッカーさんは、いままでずっとボルボで、ICE(内燃機関搭載車=エンジン車)の開発をずっと手がけてきた経歴を持っています。BEVであるEX30の開発はまったく違うものでしたか。 「動的性能の面でまったく違います。そこはご存知のとおりです。エンジンという大きなマスがフロントにありません。いっぽう、駆動用バッテリーという重量物をフロア下に搭載してます。なので、低重心でコーナリング性能などにすぐれるのはBEVですが、いっぽう内燃機関のドライブトレインは、バイブレーションのダンパーとして機能していましたが、それはなくなるわけです。いい面もそうでない面も出てきてしまいます。ただし、動的性能における基本的セオリーは共通です」 ーーEX30においても、いわゆるボルボ車らしさは重視したのでしょうか。 「もちろんです。ボルボ車がボルボ車であるための重要な要素は3つ。Predictability(操作に対する車両の動きの予測容易性)、Functionality(機能性)そしてControllability(操作容易性)。これが、ボルボ車のDNAに組み込まれた動的性能の基本要素です。そして、安全性や快適性は、これら3つと密接にかかわっています」 ーーバッテリーについてですが、EX30は、用途別に2種類、都市で使えればいいというひとには低価格でちょっと性能のひくいLFP(リチウム鉄リン酸塩)を、性能や長い走行距離を求めるひとにはNMC(ニッケルマンガンコバルト)を用意したのは、たいへんいいコンセプトだと思います。 「ありがとうございます。欧州をはじめ、このクルマが売られる市場ではどこも、使い方はひとつでありませんから。選択肢はとても重要だと思いました」 近未来の予測は、とても難しくなってきている ーーバッテリーの搭載方法は、従来の、いわゆるパック・トゥ・シャシー、つまりセルをモジュール化してひとつのパックに収めたものをシャシーに載せる設計ですね。このさき、たとえばセル・トゥ・シャシーのように、バッテリーをシャシーの一部として使うような設計に変更する可能性がありますか。 「プラットフォームが、パック・トゥ・シャシー前提で設計されてしまってますので、そこまで大きな変更はありません。このさき、BEVの技術革新はものすごい速度で進んでいくとは思います。いままでボルボのプロダクトは、比較的長いライフサイクルを持っていましたが、それも過去の話になるかもしれません。近未来だってどうなっていくのか、予測がとても難しくなってきています」 私がこの仕事をはじめたとき、設計者はみな鉛筆を手に製図板に向き合っていたものですが、いま、そんなことするひと、見たことありませんよ。バッカー氏はそう言って苦笑。 とはいえ、動力がどうなろうと、クルマには”味”が必要なのは、おそらくずっと変わらない(はず)。 数かずの名ボルボ車を送り出してきたベテラン・エンジニアであるバッカー氏の知見は、この先もずっと大事にしてもらいたい。そうするべきである。ボルボ車のファンの感想である。 <了>

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:小川フミオ
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの

ボルボ初のコンパクトBEV(バッテリー駆動のピュアEV)「EX30」が好評だ。シンプル&モダンなデザインに、コンパクトなサイズ、スムーズで扱いやすい。このモデルは、2025年までに新車販売台数の50%をBEVへと掲げるボルボにとっての戦略が秘められている。テクニカルリーダーに、小川フミオが訊き出す。 初のコンパクトBEVは、フレキシブルなプラットフォームで EX30は、ボルボが初めてゼロから手がけるBEV専用モデル。乗ると、スムーズで、扱いやすいサイズ感でもって、印象がよい。 もうひとつ、EX30の特徴として挙げられるのが、プラットフォーム。「サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー(SAE)」と名づけられており、ジーリー(Geely)との共同開発だ。 EX30の”姉妹”車は、ジーリーの新エネルギー車プレミアムブランドZeekrの「X」と、ジーリーがダイムラー(現メルセデス・ベンツ)と合弁で設立したスマートの「#1」。すべてBEV。 といっても、フレキシブルプラットフォームなので、ホイールベースなど異なる。基本プラットフォームが完成したあとは、ボルボはスウェーデン・ヨーテボリの自社でEX30を完成させた。 ボルボはどんなふうに独自のEVを作りあげたかったのか。 EX30の”味付け”を担当したのは、動的性能におけるテクニカルリーダーの肩書きをもつベテラン、エグベルト・バッカー(Egbert Bakker)氏。 2023年10月、EX30の国際試乗会が開催されたスペイン・バルセロナで、あまり表に出てこない開発ストーリーを聞いたのが、このインタビューである。 39年間ボルボを見渡し、Nedcarの共同開発も経験してきた ーー最初に、経歴について少し教えていただけますか。ボルボ・カーが用意したあなたの経歴をみると、さまざまなモデルにかかわっていらっしゃいますね。 「なにしろ39年間、ボルボで働いていますから。私はオランダ人で、デルフト工科大学を卒業したあと、1984年にヨーテボリのボルボ本社で働きはじめました。10年間、そこにいてから、オランダへ移り、三菱自動車との共同開発プロジェクトであるネッドカー Nedcarで、「S40」と「V40」(三菱版は「カリスマ」として95年から2004年にかけて生産)の開発に携わりました。本社に戻ってからは、フォード、マツダ、ジャガー、ランドローバー、それにピニンファリーナの仕事を手掛けていました」 ーーフォード・モーターカンパニーが1999年に、高級自動車ブランドを束ねて1999年に作ったPAG(プレミアオートモーティブグループ)ですね。ほかにアストンマーティンやリンカーン、マーキュリーなどが入っていて、ボルボも参加していましたね。 「私は、『850』(1991年)にはじまり、『V70』(96年)、『C70』(97年)、『S80』(98年)などにかかわってきました。いまはジーリーとの協業を担当しています」 EX30を起点にして、ラインナップが広がっていく ーー開発については、最初、プラットフォームの計画があって、それがほぼ完成してから、ボルボではそこからEX30というコンパクトなクルマを作ろうと決めたという説もあります。つまり当初は、コンパクトなBEVなんて、中長期計画に入っていなかったとか。 「そんなことないですよ。当初からEX30になるコンパクトBEVのベースを共同開発しようというプロジェクトでした。ジーリーが基本プラットフォームとサスペンションシステムを開発することが決まっていたので、私たちは、自分たちが欲しいスペックスを渡しました。それが2年半前です。そして、出来上がったものを、ヨーテボリに引き上げたのが1年半前でした」 ーーボルボではBEVはリアエンジンで後輪駆動が基本ですね。「XC40 Recharge」や「C40 Recharge」も、2019年の発表時はフロントモーターの前輪駆動でしたが、23年にモーター搭載位置をリアに移すとともに駆動方式も変更するという大胆な変更を行いました。 「ひとことで言うとパワーのためです。前輪駆動ではもちこたえられない、という判断です。XC40などはこのとき、いまのEX30や(これから発売される)『EX90』と共通の、パワフルで航続距離も長いモーターに変更しました。パワフルなモーターは後輪駆動でないと。ツインモーターは、これに加えて、ちょっと小さなモーターをフロントにも追加した仕様です」 ーージーリーのZeekr Xには、315kWバージョンがあって、静止から時速100キロまでを3秒で加速する、史上最速のコンパクトカーと標榜しているようです。EX30にも、同様のモデルが追加されますか。 「(笑)それはここでは言えません。出るか出ないか。もし出るとしたら、あなたたちジャーナリストが、まっさきにそのニュースを知ることになるでしょう。いまはそれしか言えません」 派生車種についていうと、次は「クロスカントリー」が予定されている(これは決定ずみ)。EX30はさまざまな可能性を秘めた車種なのだ。 <Vol.2へ続く>

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TEXT:生方 聡
後輪駆動の「EX30」はボルボ史上もっとも運転が楽しいクルマかも! [ボルボEX30試乗記]

ボルボの最新コンパクトEV「EX30」から、まずはシングルモーターの後輪駆動仕様を、バルセロナの街中からハイウェイ、さらに、ワインディングロードで走らせた。 走り出す前に EX30を運転するための準備は簡単。センタースクリーンの下方にあるホルダーにカードキーを置き、ステアリングコラムの右にあるモードセレクターを操作すればいい。走り出す前にドアミラーを調節するが、専用のスイッチはなく、センタースクリーンの車両設定画面からミラー調節画面を呼び出し、左右を選んだらステアリングホイールの右にある矢印でミラーを動かすというやり方だ。スイッチひとつで操作ができないのもなんだが、ミラーがカクカク動くのが気になる。このあたりは、今後のアップデートで改良されるといいのだが。 一方、電動シートはシート横にある四角いスイッチひとつで簡単に調節できるのが便利。中央のスイッチを押してモードを切り替えればランバーサポートの調節も可能で、思いのほか使いやすかった。 もうひとつ、走行前に確認しておきたいのが“ワンペダルドライブ”。車両設定画面を開くと下段の中央にボタンが現れる。オンにすると回生ブレーキが利き、アクセルペダルの操作だけで車両を停止させることが可能になる。またこのモードではクリープが発生しない。一方、ワンペダルドライブをオフにするとアクセルオフで回生ブレーキは利かず、また、低速でのクリープ走行が可能になる。まずはワンペダルドライブをオンにして試乗することにする。

TAG: #EX30 #コンパクトカー #ボルボ
TEXT:生方 聡
「ボルボEX30」のインテリアはシンプルだけどこんなにユニーク! [ボルボEX30試乗記]

ボルボの最新コンパクトEV「EX30」にバルセロナで試乗。シンプルなデザインのインテリア、その使い勝手は? 操作は日本語でどうぞ! 国際試乗会の拠点となるバルセロナ空港の会場に着くと、簡単な説明のあとにカードキーが渡され、さっそく試乗に出かけることに。EX30のBピラーにある目印にカードキーを近づけるとクルマのロックが解除。今回は試すことができなかったが、EX30の発売後にはスマートフォンで解錠することも可能になるという。 ドアを開けて運転席に陣取ると、きわめてシンプルなコックピットに驚かされる。一番の特徴は、ドライバーの目の前にメーターパネルがないこと。ダッシュボードの中央に12.3インチのセンタースクリーンがひとつあるだけで、速度や走行モードといった必要な情報はセンタースクリーンの最上段に表示されるのだ。メーターパネルがあるのがあたりまえと思う私はこの状況に戸惑ったが、この日、同乗したテスラオーナーは、むしろこのほうが違和感がないというから、要は慣れの問題なのかもしれない。 センタースクリーンのまわりにスイッチ類はなく、基本的な操作はスクリーンをタッチして行うことになる。エアコンの調整や車両の設定など、多くの操作がサブメニューを呼び出す必要があるのが面倒だが、量産版ではある程度の操作が音声で可能になるはずだから、そのあたりは今後の進化に期待したいと思う。 ちなみに、EX30は他のボルボ同様、Androidベースのインフォテインメントシステムを搭載し、「Googleマップ」や「Googleアシスタント」による音声操作が利用可能。Googleマップを含め、インフォテインメントシステムはこのヨーロッパ仕様でも日本語表示が可能で、知らない土地をドライブする身にはとても心強かった。

TAG: #EX30 #ボルボ
TEXT:生方 聡
“ボルボ史上最も小さな電気自動車”「EX30」が日本を狙い撃ち!? [ボルボEX30試乗記]

“ボルボ史上最も小さな電気自動車”として、まもなく日本でもデリバリーが始まる「EX30」を、ひとあし早くスペインのバルセロナで試乗。まずはどんなクルマなのかを確認しておこう。 1,550mmの全高がうれしいコンパクトなEV 日本車、輸入車を問わず、国内で販売されているEVは、背の高いモデルが多い。バッテリーを搭載しやすいことやSUVブームもあって、SUVスタイルがもてはやされるのは理解できる。一方、日本で使うにはもう少しコンパクトで、多くの機械式駐車場に対応する1,550mm以下に全高を抑えてくれたら……と思うのは、きっと私だけではないだろう。 その点、“ボルボ史上最も小さな電気自動車”として日本での発売が迫る「EX30」は、SUVスタイルを採用しながらも、全高が1,550mmと低く、全長も4,235mmと短め。すでに日本で発売されている「C40リチャージ」や「XC40リチャージ」の高い完成度を考えると、EX30には期待が高まるばかりだった。そんな興味津々のEX30にひとあし先に試乗できるということで、10月中旬、夏の暑さが残るスペインのバルセロナに向かった。 試乗の拠点となったバルセロナ空港には、淡い青の“クラウドブルー”と、薄い灰色の“ヴァイパーグレー”のEX30が、整然と一列に並んで、われわれの到着を待ち構えていた。私自身は、オンラインのワールドプレミアでPCのモニター越しにその姿を確認済みだが、実車を見るのはこれが初めて。遠目でもはっきりとボルボとわかる特徴を備えている一方、これまでのボルボと比べてクルマっぽさが薄れ、モダンで上品に仕立てあげられたエクステリアがすぐに気に入ってしまった。最近の新型車は、前後に全幅いっぱいのLEDライトストリップを配置するのが流行だが、それとは異なる表現をしているのも、EX30のユニークなところだ。

TAG: #EX30 #コンパクトカー #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

TAG: #EX30 #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

TAG: #EX30 #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

TAG: #EX30 #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
ボルボ「EX30」は「脱炭素」をキーワードにインテリアの“プレミアム”を再定義する

前回に引き続き、小川フミオ氏が「EX30」の室内のこだわりや新たな手法を、ボルボのインテリアデザインの責任者に訊いていく。 新しい方法で作り込まれたインテリア −−「EX30」のインテリアは、じつにシンプルです。機能がコンパクトにまとめられているし、スイッチ類が中央のセンターコンソールにしか設けられていないなど、ある意味、とても割り切りのよいデザインです。いっぽうで、このデザインはシンプルすぎるという批評もありそうです。  「私たちが手がけるBEV(バッテリー電気自動車)であるEX30では、インテリアにおけるプレミアムさを再定義しようと試みました。作りこみを新しい方法でやろうと試みたんです。結果、いわゆるデコレーションだと思われる部分は排除しています。クロームの加飾も美しいけれど、それじたいが無駄。機能はないし、目的もないので、排除しようと決めました」   −−たいへん明快なコンセプトだと思います。 「私たちはBEVを脱炭素とを結びつけて開発しているので、エネルギーをたくさん使って作る素材を排除しました。いっぽうで、エネルギー消費が少なく製造できる素材を見つけて、それを使いながら、かつ、デコレーションを排除して、素材じたいでをあたらしいフ ォルムを作るように使っていくことにしました。 たとえばピクセルシートです。表皮は、あたらしいパターンを開発して使っています。デザイン的にもサステナブルなフォルムが実現できたと自負しています」 −−あたらしい素材がいろいろ使われているようで、そこは、デザイナーとして誇りたい部分ではないでしょうか。 「もっともむずかしかったのは、この新素材の開発です。非常に複雑で時間のかかるプロセスですし、いろいろな試験が必要だからです。気候、耐久性、キズやスクラッチに対する耐久性もテストしなくてはなりません。さまざまな時間のかかるテストをしました。ただし、それによって新素材を使うからこそ出来るあらたなデザインなどですとかが期待できたので、わくわくするプロセスでもありました」     4種類のインテリアパッケージ EX30のインテリアは、レザーフリーだけでなく、リサイクル素材を多く使っていることで話題を呼んでいる。日本には「ブリーズ」と「ミスト」と名づけられたパッケージが導入される。 ブリーズにおけるシート表皮は、リサイクル素材を使ったピクセルニットに、ボルボ車ですでにおなじみのやわらかな手触りの合成皮革ノルディコを組み合わせたもの。 ダッシュボードのパーティクルパネルは、廃棄されたPVC製の窓枠からリサイクルしたもの。フロアマットは廃棄された魚網からのリサイクル素材で作られている。 ミストのシートは、テイラードウールブレンドなる、ちょっと衣服のような手ざわりで覆われている。ダッシュボードには再生可能な亜麻の繊維で織られたリネンを使い、フロアマットはブリーズ同様にリサイクルされた漁網で作られている。 −−EX30のインテリアは、リサイクル素材と再生可能素材を使って実現したものですね。そこもBEVでもって新しい世界へと入っていこうという強い意思を感じさせます。 「2040年までにサーキュラーエコノミー(廃棄物をなくし資源を循環させる経済システム)を実現するという目標のために新素材はなくてはならないものです。本国には4つの内装があります。カラーマテリアルチームとこの仕事で決めていきました。いろいろな素材、コンポーネンツを集め、こういう色調を実現したいんだというようなものを拡げて、観ていきました。インテリアに使う色は、つねに自然からインスピレーションを得たものです。それがテーマにありました。たとえばパイングリーンとかクラウドブルーとかモスイエローとか。自然からインスピレーションを受けた色です」 ボルボはあらたな(BEV)時代を迎えても、従来からの自分たちの価値をしっかり見据えて、それを失わないようにと考えているのだ。ブランドバリューが確立しているメーカーは強い。そう感じさせてくれるインタビューだった。

TAG: #EX30 #デザイン #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
日本でついに発売「ボルボEX30」のインテリアはピュアな北欧デザインそのもの

いよいよ日本でも発売になったボルボ「EX30」。8月に実施された日本での発表会にはインテリアデザインの責任者も来日していた。ジャーナリストの小川フミオ氏が室内空間の詳細に迫る。 いくつもの仕掛けで室内を自分好みに ボルボが手がけるコンパクトサイズのBEV(バッテリー電気自動車)「EX30」が2023年8月24日に日本発売。 「ボルボ史上最も小さな電気自動車」とか「日本の交通事情にマッチ(したディメンション)」とかを日本法人のボルボ・カー・ジャパンは謳う。 もちろん、それだけで商品力がつくわけではない。EX30の特徴として「サステナビリティ、最先端のテクノロジー、こだわりのスカンジナビアンデザイン、新しいユーザーエクスペリエンス」があげられている。 どんなコンセプトで、内外がデザインされたのか。その興味を満たしてくれる人物が、ボルボ・カーズ(本社)から、東京での発表会のタイミングで来日したのでインタビューした。 英国人リサ・リーブス氏は、2014年からボルボ・カーズでインテリアデザインのマネージャーを務め、現在はインテリアデザインの責任者の要職にある。 ーー日本の道路事情にもよく合うサイズとは、23年6月にミラノで行われたワールドプレミアのときから言われていました。リーブスさんがじっさいに東京の路上でチェックして、どんな印象でしたか。 「私は日本が初めてなんですが、そのあたりを見学したところ、日本市場にベストフィットだとわかりました。ディメンションも素材もデザインもぴったりだと信じています 」 ーーもうすこし詳しく教えていただけますか。 「このクルマが、フレキシブルで、個人に特化したパーソナライゼーションに対応しているからです。室内の装備のなかには個人の好みで設定できる仕掛けがいくつもあります。なので、自分が選んだ使いかたができるはずです。コネクティビティも高いですしね」 ーーEX30のコネクティビティとデジタライゼーションについて、どういう内容になっていますか。 「グーグルにサインインすれば、シームレスにデジタルエクスペリエンスが展開できるようになっています。 5Gの規格も使えるので、プロセッサーのスピードも確保できるでしょう。OTA(オーバージエア)によるアップデートも可能です。購入後も、デジタルで拡張性を持たせていこうと考えています」   シンプルでナチュラルなインテリア ーーインテリアデザインに話題を移します。ボルボはニューモデルを解説するにあたって、つねにスカンジナビアン(北欧)デザインといいます。それの意味するところを説明していただけますか。 「スカンジナビアンのデザインの価値とは、ピュアさと、空間の整理のしかたにあると思います。ボルボ車の価値はまさにそこ。複雑になりがちな要素をできるだけシンプルにまとめています。余分なものはないようにしています。そこも人間中心に考えています。充分なものだけがあるのです」 −−以前、他のメディアのインタビューでリーブスさんは、デジタライゼーションはボルボのインテリアデザインにとって、ある種の福音であると答えていらっしゃいました。 「デジタルエクスペリエンスの分野では、いろいろな技術が搭載されていますが、そこも人間中心に考えています。あまり機械にまかせにしすぎないように気をつけています。デジタルエクスペリエンスといっても、あくまでもナチュラルな感覚に寄り沿うことをめざしています。そこが私たちのブランドのバリューです」 次回へ続く リサ・リーブス Lisa Reeves ボルボ・カーズ インテリアデザイン部門 責任者 2014年にボルボ・カーズに入社し、インテリアデザイン・マネージャーを務める。数多くのプレミアム自動車メーカーでの経験をもち、プレミアム・デザインを通じてボルボ・カーズ・ブランドを再定義するという企業のビジョンに貢献している。 現在は、インテリアデザインの責任者として、次世代電気自動車の開発に取り組んでおり、また、ボルボ・カーズのビジネスにおける高い循環性の実現に向けて、スカンジナビアン・プレミアム・インテリアデザインを変革するという戦略的ビジョンにも取り組んでいる。

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