一攫千金どころか撤退が続出している中国自動車ディーラー 中国で新車販売を行うディーラーの淘汰が始まっている。最近、自動車販売に関する業界団体のデータを基にした各種記事が、日本のメディアでも紹介されることが多い。こうした中国での経済環境の変化は、起こるべくして起こっている印象がある。 時計の針を戻せば、中国は2000年代以降に経済発展のスピードが高まり、2010年代に入ってからは自動車産業に対する国や地方政府の影響力が強まった。なかでも、電動車を示す新エネルギー車(NEV)の研究開発と生産に対して、中国の中央政府と地方政府が補助金などを活用した積極的な支援策を続けてきた。その結果として、一部では過剰生産が起こり販売されないまま屋外に放置される大量のEVの姿が日本でも報道されることが増えた。 EVの販売体制については、メーカー毎に販売事業者との契約内容が違うのは当然だが、販売事業者の立場になれば、「政府が主導する施策に一刻も早く乗ろう」という気もちになるのは当然だったといえるだろう。自動車販売は客単価が高く、事業者としては一攫千金が狙いやすいからだ。 EVメーカー数が一気に増え、また同じメーカーが複数のEVブランド展開することで、それに見合ったディーラーが登場するのは当然だが、EV市場全体で見れば需要と供給のバランスが崩れるのも当然の流れだ。 ただし、昨今の中国EV市場を見ていると、単純に供給過多でディーラーが淘汰されているとはいえないと思う。 ポイントは大きく3点ある。 1番目は、EVメーカー同士、または大手や中堅メーカーとEVとの間での価格競争だ。これは、市場競争という観点では当たり前の動きだといえる。過去10年で急増したEV専業メーカー間では、技術的に明確な個性が打ち出せない場合に価格競争に走ってしまった。また、ガソリン車やハイブリッド車を主体として一部EVを販売している大手や中堅メーカーからお客を奪うためには、ガソリン車並のEV価格を無理に設定することでディーラーとしての収益性が下がってしまった。 2番目は、ファーウェイやシャオミを筆頭とするEV新興勢力の登場だ。製造から販売までの一元的に管理するなかでディーラーのあり方について新しい発想を盛り込んでいる。そのため、既存のEVメーカー・ブランドとの入れ替えが市場で起こっている可能性がある。 そして3番目は、2番目のEV新興勢力によるバリューチェーン変革だ。ここでいうバリューチェーンとは、新車販売後のメーカー側の新しい収益構造を指す。つまり、昨年から今年にかけての中国でのEVを含む自動車ディーラーの閉鎖ラッシュは、中国における自動車産業構造の大変化の兆候だと分析できるのではないだろうか。 こうした自動車市場の新陳代謝は、日本の自動車産業界にとっても大いに参考になりそうだ。