業界全体の課題に合同で立ち向かう 各所で、自動運転の実証実験が盛んに行われている。諸外国では乗用車が対象になっているところもあるようだが、わが国ではトラックやバスであることが多いようだ。ひと口に「自動運転」といっても、じつは5つの段階にわけられている。 公道で行われているものは、概ね「レベル2」。その内容は、ドライバーが監視するなかで、ハンドルとアクセル&ブレーキを自動操作するが、必要に応じていつでもドライバーに交代できる状況で走行するといったものだ。公道実験の多くは「レベル4」を目指しており、これはドライバーを置かずに特定条件下でシステムがすべて運転を担うことになる。 今回発表されたのは、飲料メーカー4社が自動運転システムの開発を手掛ける「T2」と組み、関東と関西の間の配送を自動運転レベル2で共同配送するというもの。飲料4社とは、キリンホールディングス・アサヒグループホールディングス・サッポロホールディングス・サントリーホールディングス。いわば、ゴリゴリのライバル同士が手を組んだということである。 傍から見ればありえない取り合わせかもしれないが、経営的に見ればなしとはいえない。まず、ベースとして飲料業界はライバル意識は強いものの、業界団体を通じて交流が深い。昭和の高度成長期とは違い、ライバルとは競っても潰し合うものではなく、互いに切磋琢磨することで業界全体の活性化を図りたいと考えているのだ。 加えて、商品の共通性だ。飲料はそのパッケージが似通っていることから、荷姿がほぼ同じになるために混載には向いている。温度管理などの商品管理状況もほぼ同じだから、荷室に商品管理区分などを設ける必要がない。各社の工場が関東・関西圏に集中しており、輸送ルートが組みやすいということもある。また、輸送効率が向上することでコストが下がるというメリットも大きい。 もちろん、直接的なきっかけとなったのは近年問題視されている「物流の危機」であろう。トラックドライバーの残業に上限規制がかかるなどするなかで、ドライバーの高齢化や新規就業者が少ないという状況が続き、各社ともその確保が難しくなってきているのだ。飲料は四季を通じて需要があるものの、とくに夏場は極端に配送量が多くなる。輸送の効率化は、飲料業界全体が抱える共通の課題なのだ。 共同配送の発想はバブル経済期から、小売業を中心とした各業界団体で検討されていた。しかし、まだ「ライバルを潰せ」という風潮が残っていたこともあって、競合を利するシステムは好まれなかったのである。加えて、景気がよかったためにコストをかけても大きな利益が得られていたことが、面倒な共同配送といった考え方に繋がらなかったのだと考えられよう。 すでに共同配送はコンビニなどでもその例がみられるようになり、今後はメーカー・小売事業者がライバルの垣根を越えて、自社配送に頼らない運送体系を構築していくだろう。また、自動運転についてもトラックドライバーを必要としない「レベル4」だけではなく、複数のトラックが連なって走行する「隊列走行(隊列を組む車両が走行状況を通信によりリアルタイムで共有し、自動で車間距離を保って走行する技術)」などが実現されることで、トラックドライバー不足の解消にもつながっていく。 今後の展開に、経済界全体の期待が集まっている。
































