電動車の走行を緻密に制御するなら台上試験装は欠かせない 東京大学と小野測器による社会連携講座の研究成果が発表された。 音や振動に関する計測器で知られる小野測器は、近年ではRC-S(リアルカーシミュレーションシステム)など実車の台上試験装置にも力を入れている。この試験装置は、ホイールに直接トルクを入力することで路面状況などを再現できるというもの。テストコースに持ち込むことなく、リアルな挙動を確認できるというのがセールスポイントだ。 東京大学との社会連携講座は第一期(2022年10月~2026年3月)が進行中。このRC-Sを活用して、電動車における駆動用モーターの振動抑制制御についての研究が行われている。今回発表された成果は、EV、PHEV、HEVまですべての電動車に有効と思える内容だった。さっそく、その情報を共有していきたい。 小野測器と連携しているのは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本研究室。リーダーである藤本博志教授は、EV業界では高名な人物で、インホイールモーターの電気駆動を挙動制御に活かす研究など、藤本教授の名前を目にすることは多い。 今回の社会連携講座では、「モーターの高応答性を活かし、車両構造に依存せず、乗り心地を考慮した低振動・低騒音な制御」が研究目的となっていると藤本教授は説明する。 内燃機関の応答性に対して、モーターは圧倒的に高応答だ。いわゆるトラクションコントロールのような出力制御を行うときも、モーターであればエンジンには不可能なレベルで、素早く正確に制御することができる。しかし、そうした制御はコンピュータ内のシミュレーションで十分にできそうなものだが、なぜRC-Sのような実車を使う台上試験装置が必要なのだろうか。 電動車両といっても量産されているモデルでは、ひとつのモーターで左右のタイヤを駆動するオンボードモーター・レイアウトが主流となっている。こうしたメカニズムでは、駆動系だけでもモーターを固定するゴムマウントやドライブシャフトのねじれ、デファレンシャルギヤのバックラッシュ(歯車の隙間)といった風に複雑な要因が絡み合い、それによって振動などの挙動が発生する。 多くの自動車メーカーでは、モデルベース開発といって、コンピュータシミュレーションによって設計を行い、制御による不具合を検証する開発スタイルが取られている。それでも前述した複雑な要因については実車において発覚することもあるという。 そこでRC-Sの出番というわけだ。

































