日米欧韓8メーカーによる「IONNA」は成功するのか IONNAは、北米で事業を展開する大手自動車メーカー各社が出資したEVの充電ネットワークを運用する企業だ。アメリカのゼネラルモーターズ(GM)、欧米ブランドをもつステランティス、ドイツのメルセデス・ベンツとBMW、韓国のヒョンデとキア、そしてホンダが2023年7月に共同で設立した。 ここにトヨタが7月に加わったことで、本稿執筆時点で8社となっている。 事業の目標としては、2030年までに北米内で3万の充電ポート(または口数)を設けること。充電システムとしては、テスラの充電システムを米SAE(自動車技術会)が規格化したNACS(ノース・アメリカン・チャージング・スタンダード)と、CCS(コンバインド・チャージング・システム)のそれぞれに対応する。 では、なぜこのタイミングでIONNAがスタートすることになったのか。 それは、北米でも中長期的にはEVシフトが進むという考え方を自動車メーカー各社がもっていることに起因する。周知のとおり、直近ではアメリカでのEVシフトが停滞気味で、代わってハイブリッド車の需要が高まっているところだ。そのため、GMやフォードなどは従来描いていたEV事業戦略の見直しをせざるを得なかった。 また、バイデン政権ではEVを含めたカーボンニュートラルへの早期移行を掲げた大統領令が発せられたが、第二次トランプ政権になってから急激なEVシフトに対して連邦政府は慎重な姿勢を見せている。 だが、次の政権では再びEVシフト強化が要求される可能性もあるなど、アメリカ連邦政府の政策として、EVシフトの先行きは不透明だといわざるを得ない。 それでも、グローバル市場での動きを見ると、2010年代後半から2020年代前半にかけてのESG投資バブルが弾けたことで「EVシフトは踊り場」といわれている。ESG投資とは、財務状況だけではなく、環境、企業の社会性、ガバナンスを重んじた投資のこと。また、中国では国内市場でのEVの価格競争が激しさを増しているとはいえ、中央政府の基本方針としてはEVシフト強化の流れが根強い。 このような世界動向と北米での将来を見据えて、自動車メーカー各社が充電インフラ拡充を共同で進めるべきとの判断に至ったといえるだろう。 そもそも、EV向け充電規格については、日本が主導したチャデモ規格に対して欧米メーカーが強く反発した結果、欧米それぞれで規格が違うCCSが生まれた。その一方で、テスラが独自充電方式を採用し、EV市場でのテスラのシェアが高まるなかでテスラ方式の需要が高まり、その反対にCCSの需要が伸び悩むという図式ができたという経緯がある。その上で、テスラ方式であるNACSとCCSの共栄共存が必要になったことが、IONNA発足を後押ししたといえよう。 果たしてIONNAは成功するのか? その動向を継続的にウォッチしていきたい。