超コスパの新型電動SUVを分析 中国のEVスタートアップNIOが、新型EVとしてバッテリー交換に対応させた大型SUV「Onvo L90」の正式発売をスタートしました。日本円で337万円から購入可能という驚きのコスト競争力を実現。ますます競争が激化する大型SUVセグメントの最新動向を含めて解説します。 まず、NIOはプレミアムブランドとして、日本円で600万円以上の高級EVをセダンとSUVともにラインアップしながら、2024年9月から大衆ブランドOnvoを立ち上げて、ミッドサイズSUVのL60を発売。さらに2025年4月からは、小型EVのFireflyを投入するなど、販売規模を拡大するために大衆セグメントのEVの投入も始めています。ところがL60の販売台数は当初の想定よりも低く、NIOブランドの高級モデルの販売台数も減少傾向です。 とくに販売台数の伸びの鈍化以上に問題なのが収益性です。L60の不発によって2025年Q1は赤字が大幅拡大しており、キャッシュも急速に減少中です。 NIOは2025年Q4単体における黒字化を目標にしており、NIOが今後も安定した経営を持続するためには、この黒字化は至上命題です。まさに2025年下半期は、2014年の創業以降、もっとも重要な半年間になるといえるのです。 そして、NIOに関する最新動向が、大衆ブランドOnvoの2車種目となるL90の正式発売スタート、翌日8月1日から納車がスタートしているという点です。L90は、全長5145mm、全幅1998mm、全高1766mm、ホイールベース3110mmというフルサイズSUVです。L90のEV性能で注目するべきは、L60やNIOの全モデルと同様にバッテリー交換に対応しているという点でしょう。 すでにNIOのバッテリー交換ステーションは、中国全土に3000カ所以上、とくに経路充電において重要な高速道路上にも1000カ所以上を設置済みです。3分以内でバッテリーを交換することが可能であり、バッテリー交換ステーションを目的地にセッティングすると、ステーション内への自動駐車からバッテリー交換までがシームレスに起動することで、急速充電よりも利便性が高いことがアピールされています。 また、L90の強みは効率性の高さです。大型SUVにもかかわらず、電費は14.5kWh/100kmと、現在発売されている大型SUVのBEVとしては最高レベルの効率性です。これは900Vシステムの採用やバッテリーパックのエネルギー密度向上によって、RWDグレードで2250kgと車両重量を低減したことが寄与しています。 さらに、空間効率の最適化も実現しています。とくに目を引くのが240リットルという業界最大級のフロントトランクを確保しながら、リヤトランク部分も430リットルを確保することで、6人全員の乗員の荷物詰め込むことが可能であり、ファミリーSUVとして極めて実用性が高いことがアピールされています。 さらにインテリアも、大型SUVとして必須装備となるゼログラビティシート、後席向けの大型スクリーン、冷温庫といういわゆる「3種の神器」が網羅されています。 そして肝心の値段設定について、エントリーグレードが26.58万元(邦貨換算約558万円)という驚異的なコスト競争力を実現してきました。さらに、NIOについて特筆するべきポイントは、BaaS(Battery as a Service)として、車両本体とバッテリーを切りわけて所有することが可能となる点です。 するとL90は、月額のバッテリーサブスク料金を支払うことで車両本体を17.98万元(約377万円)で購入することが可能となり、イニシャルコストの高さでローンを組めないような大衆ファミリー層も購入できるようになります。BaaSならバッテリーの劣化や故障などの心配もなく、ユーザーが心置きなくBEVへ買い換えることができるようになるのです。