#モータースポーツ
TEXT:小川フミオ
「ジャガーはフォーミュラEの技術を量産車へ」マネージング・ディレクターが語る電動化への姿勢

フォーミュラEへ参戦するジャガーの本気度を目の当たりにした小川フミオは、サーキットで同社マネージング・ディレクターに、その真意を問いかける。 技術的蓄積を、次世代量産車に投入 英国のジャガーはいま、ピュアEVのブランドへと舵を切りつつある。ピュアEVのレース「フォーミュラE」に本腰を入れて取り組み、そこで得た経験を「I-PACE」の改良に注ぎ込む。 それだけでない、と言うのは、ジャガー担当マネージングディレクターのロードン・グローバー氏だ。 ジャガーは2016年から参戦しているフォーミュラEで得た技術的蓄積を、次の世代の量産車開発に反映しているそうだ。 2023年7月29日にロンドンで、フォーミュラE選手権が開催されたのを機に、グローバー氏に、BEVへと向かうジャガーの姿勢をインタビューするチャンスを得た。 「レース活動は、私たちのDNA」 次は、レースが行われたイーストロンドンの「ExCeLロンドン」を舞台に、グローバー氏との一問一答。 −−ジャガーTCSレーシングは、今回ロンドンで最終戦を迎える2022−23年のフォーミュラEで好成績を記録しています。 「フォーミュラEは、私たちのブランドにとって、とても大切だと思ってやってきました。なぜなら、レース活動は、私たちのDNAの一部だからです。私たちは、ずっとモータースポーツ活動を続けてきました。最初は1949年に時速120マイルと世界最速を謳ったスポーツカーを発表し、その年シルバーストン(サーキット)でレースに投入、翌50年はXK120Sとしてルマン24時間レースに出走し、プライベートのエントラントが総合12位で完走しています。そのあとも、ルマンで2回優勝したCタイプ(51年)、4回優勝したDタイプ(54年)、ずっと後になりますが、88年のデイトナ24時間レースとルマンで優勝したXJR-9、そして2000年から2004年にかけてはF1にも参戦していました。でも、今回は、地球環境保全(サステナビリティ)を念頭に置いたレース活動として、フォーミュラEに参戦しています」 −−でも、2016−17年のシーズン3でフォーミュラEに参戦してから、平坦な道ではなかったはずです。2020−21年シーズンでようやく3位に浮上するまで、6位とか7位とかで低迷していました。シーズン9はとりわけ調子いいですね。 「そうなんです。ずいぶん多くのシーズンを過ごしてきて感じるのは、シーズンごとに、フォーミュラEはどんどん力をつけてきているなということです。それに、大きくなっています。たとえば、宣伝力がついてきているし、観客動員数もどんどん多くなっています。今回のロンドンでは、ピット前の観客席は満員に見えますよね。シリーズごとに人気が出ている証明でしょう」 −−ジャガーが強くなったのは、いいパートナーと組めているからでしょうか。 「それもあります。私たちと一緒に組みたいと言ってくれるパートナー企業が増えています。そうすると、どんどん高い技術力が手に入ります。それに、あなたがたのようなジャーナリストが取材に来てくれる。こうして、フォーミュラEでの活動は、さまざまな面で、いい成果を私たちにもたらしてくれるのです」 <Vol.2へ続く>

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEは進化している。ピュアEVのレーシング・シーンに高まる期待。ロンドン観戦記その3

フォーミュラEの今季最終戦を観戦した小川フミオは、ピュアEVのレーシング・シーンへ期待を高めている。それは東京での開催があることだけではなく、地球環境維持へ、マシンとチームが進化しているからだ。 サステナビリティをテーマにしたフォーミュラE フォーミュラEにおいては、サステナビリティ、つまり地球環境維持が重要なテーマとされている。ゆえに、このレース開催が発表さたとき、私はおもしろい!と思ったし、世界中に同じことを思ったひとが多かった。 あいにく、レースがおもしろくないとか、内容をくさすような発言が、現役レーシングドライバーから出ているとの報道もあり、初期の熱に水がさされたかたちになってしまったのも事実。 でも、継続は力なりの言葉どおり、2023年のシーズン9は、ジャガーTCSレーシングと、エンビジョン・レーシングの首位争いもあって、大きな盛り上がりを見せてくれた。 とくに私が出かけたロンドンEプリ(グランプリでなくイープリ)では、上記ふたつの英国のチームの競り合いで、多くの観客が詰めかけたようだ。 来季は新体制でのぞむジャガー はたして、2023年7月30日の最終戦では、ジャガーTCSレーシングのミッチ・エバンスを抑えて、エンビジョン・レーシングのニック・キャシディが1位を手中に収めた。 それによって、2022−23年のフォーミュラEにおける選手権は、エンビジョン・レーシングのものとなったのだった。ジャガーには残念な結果でシーズンを終えた。 でも(といえばいいのか)、来季のジャガーTCSレーシングは、これまでナンバーツーを務めていたサム・バードを放出。上記のニック・キャシディ(下の写真)と契約を交わしたのだった。 これによって、シーズン10(2023−24年)のフォーミュラE選手権において、ジャガーTCSレーシングは、エバンスとキャシディという2人のニュージーランド人ドライバーを抱えることになる。 「ニック・キャシディのチームへの加入を発表できたことを嬉しく思います。彼が日本でレースをしていた頃からずっと注目していました。 フォーミュラEに参戦して以来ますます力をつけており、2023年シーズンの活躍は非常に目覚ましいものでした」 チームプリンシパルのジェイムズ・バークリーはこのような談話を発表し、「最も強力なドライバーラインアップを擁して新シーズンに臨む」としている。 いっぽう、英国では、BEVの売れ行きがけっこうよく、2023年前半の乗用車販売の5台に1台が電気で走るモデルだったとか。そんなことも、フォーミュラE人気を後押ししている、とする英国のメディアもある。

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「シティサーキット東京ベイ」のイメージ(photo=トムス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
お台場にクルマのテーマパークが復活……トムスが「メガウェブ」跡地にてEVカート場を運営[2023.08.18]

「メガウェブ」がEVカート専用のサーキットにパワーアップして事実上の復活 「静か」「臭くない」EVゆえに可能なモータースポーツの新しい世界 【THE 視点】レーシングチームを運営するトムスは8月15日、モータースポーツのエンターテインメント施設「シティサーキット東京ベイ」<東京都江東区>を、2023年10月下旬に開業予定と発表した。国内最大級のEVレーシングカート用の本格サーキットがお台場に誕生する。 トムスは、「全日本カート選手権」のEV部門の車両開発を手掛けている。この施設ではそのノウハウを活かし、一般人がEVカートを中心にモータースポーツを手軽に体験できるエンターテイメント施設となるという。 屋外と屋内にコースを設置し、実車はもちろんVRによるe-モータースポーツの体験コンテンツも用意する。特に屋内コースでは、プロジェクション・マッピングなどの演出を取り入れたコースになるという。また、キッチンカーによるフードサービスやラウンジ/サウナといった施設も併設する計画もあるとのこと。 施設は、複合施設「パレットタウン」の跡地の一部を利用する形となる。自動車ファンならご存じだろうが、ここはかつてトヨタが運営していたクルマのテーマパーク「メガウェブ」があった場所だ。東京臨海高速鉄道「りんかい線」の「東京テレポート駅」が目の前なので、アクセスは抜群である。 EVカートは、「静音」「排出ガス無し」「デジタル制御」という特性を持つ。これにより騒音の軽減/環境負荷の低減/安全性の向上を実現でき、これまでは郊外に限られていたサーキットを都市部に作ることが可能となった。夜間の営業も可能となり、インバウンド観光や夜間観光(ナイトライフ観光)の促進も期待できる。 EVカートは静かでクリーンということで、実は十数年前に日本EVクラブがこのベイエリアにてEVカートのナイトイベントを行なったことがある。筆者も参加し、EVでしかできないモータースポーツの世界があると実感したものだ。 昨年も、このベイエリアにてEVカートのイベントが行われている。さらに来年は、「フォーミュラE」もお台場を中心にコースが設定される予定だ。今まで一般の人から忌み嫌われていた過剰な「音」と「匂い」などがなくなるからこそ実現につながったと言える。 トムスは今年の「オートサロン」にて、レンタルカート用をはじめ3種類のEVカートを展示していた。その時点で計画がスタートしていたのかもしれないし、筆者も「EVカートなら23区内にサーキットを作れる」「燃料代や整備費も浮くからカートレースに参加しやすくなるかも」などと仲間と話し盛り上がっていた。 「シティサーキット東京ベイ」は、今後の日本のモータースポーツの方向性を示す一つのお手本ではないだろうか。オープンしたら、筆者も仲間と一度競り合ってみたいものである。 ちなみにトムスはトヨタと非常に縁の深いレーシングチームであり、トヨタ公認のカスタムパーツメーカーでもある。「メガウェブ」が、誰もが気軽にモータースポーツの魅力を体感できる施設にパワーアップして帰ってきたと言って良いだろう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★GLM、軽自動車規格の小型EV「ミモス」を日本に導入……行政や企業向けに販売(リースを含む)、航続距離139km ★★HWエレクトロ、運転者の体調急変時に緊急の自動運転機能を実装へ……メディロム・マザーラボと協業、マザーラボの活動量計にて体調を計測 ★パワーエックス、シリーズBラウンドにて計46.2億円を新規調達……バッテリーの大規模工場「パワーベース」の製造設備導入費などに充当 ★GM、AIによるバッテリー素材メーカー「Mitra Chem」へ投資……低価格EVの量産・販売を目指す ★凸版印刷、水素エネルギー事業へ参入……水素燃料電池用の「触媒層付き電解質膜」と「膜電極接合体」の生産設備を高知工場<南国市>に導入、印刷技術を活用し量産 デイリーEVヘッドライン[2023.08.18]

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEは熱い。ピュアEVのレーシング・シーンにある熾烈な争い。ロンドン観戦記その2

フォーミュラEをロンドンで観戦した小川フミオは、ピュアEVが駆け抜けるサーキットで、熾烈な争いを目の当たりにした。タイトル争い第15戦は白熱したものだった。 シーズンタイトルをかけた一騎打ち BEVのレース「フォーミュラE」のおもしろさは、じっさいにレースに足を運んでみて、なるほどと思うものだった。 私が出かけたのは、2023年7月29日の第15戦。このとき「ジャガーTCSレーシング」と「エンビジョン・レーシング」が選手権をかけて争っていた。 ジャガーTCSレーシングと、エンビジョン・レーシングの一騎打ちの様相で、かなり盛り上がっていた。ドライバー選手権も、やはり、両チームとも、自分たちが獲得できるかも、というところまで上がっていた。 このときの結果と、翌30日の第16戦(最終戦)の結果とで、2023年シーズンの選手権が決まるから、ピットまわりの興奮もひときわ。 応援しているジャガー・カーズのスタッフも「ドキドキするよ」とレース前は真剣な面持ちだった。 「マナーがアグレッシブすぎる!」 コースは、幅が狭いうえに、エスケープゾーンがほぼ存在しない。なので私が観ているあいだにも、スポンジバリアに突っ込む車両が何台もいた。 けっこうラフなレースで、タイトコーナーで相手のマシンを押しだしてスポンジバリアに激突させる走りも目撃した。途中で、「マナーがアグレッシブすぎる!」と、クレームを出すチームまで現れるしまつ。 スピンしたり事故を起こした車両がいることを後続車に知らせるイエローフラッグが振られるのはしょっちゅうで、私が観た第15戦はセッション中断のレッドフラッグも数回振られた。 リアのドライブトレインで差をつける アクセルペダルを踏み込んだとたん最大トルクを発生するモーターの特性のため、予想いじょうに速いペースでマシンは疾走。これも観ていて飽きない理由だ。2.1キロのコースを1分12秒ほどで回ってしまう。 フォーミュラE用のマシンは、フロントにはバッテリー充電用のモーター、リアには駆動用にモーター搭載の後輪駆動が基本レイアウト。シャシーやフロントサスペンション、タイヤ、それにフロントのモーターなどは同一規格。 チームごとに違うのは、後輪用のドライブトレインほぼすべて。モーター、インバーター、ギアボックス、ディファレンシャルギア、ドライブシャフトといったものだ。 ジャガーのばあい、自社開発の後輪用ドライブトレインを、ジャガーTCSレーシングと、もうひとつ、エンビジョン・レーシングというチームに提供している。 2023年から投入された「第3世代」マシンでは、ホイールベースを含めてディメンションがやや縮小。さらに、ドライバーを含めた重量が軽量化。 第2世代の2倍にあたる回生能力をもち、レース中に使うエネルギーの約40パーセントは回生エネルギーで、かつ、この回生の際のブレーキ効果により、リアブレーキを廃止。 エバンスの勝利。チーム・タイトルは最終戦にもつれる はたして、第15戦は、ジャガーTCSレーシングのミッチ・エバンスがみごと1位を獲得。チームプリンシパルのジェイムズ・バークリーが小躍りして喜んでいたのも印象的だった。 あいにく、そんなエバンスの頑張りでも、「アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE」のジェイク・デニス(英国出身)が2位獲得により、ポイント数で23年のドライバー選手権を手中に収めたのだった。 ドライバー選手権は残念だったが、ジャガーTCSレーシングのエバンスのチームメイト、サム・バードが4位入賞で、チームの選手権のポイント数でエンビジョンと同率1位に。勝利も夢でなくなった。 <その3に続く>

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「Ene-1 Suzuka Challenge」に出場した「ミツバイク」(photo=ミツバ)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
単三充電池40本のサバイバル……ミツバ、鈴鹿のエコレースで自社開発のEVバイクが9連覇[2023.08.17]

パナソニックの充電池「エネループ」40本分で鈴鹿東コースを8周 残電力をいかにマネジメントするかがEVレースのキモ 【THE 視点】ミツバは8月4日、「鈴鹿サーキット」<三重県鈴鹿市>にて7月30日に行なわれた手作りEVのエコレース「Ene-1 Suzuka Challenge」の「KV-Moto」部門(主催:ホンダモビリティランド)において、自社製の電動駆動システムを搭載したEVバイク「ミツバイク」が優勝を飾り、大会9連覇を達成したと発表した。 本レースは、パナソニックの単三充電池「エネループ」40本をエネルギー源とし、手作りのEVを使用してサーキットを走行する。2013年から開催されているレースで、今年は40台が参加した。 コースは鈴鹿サーキットの東コース(2.243km)を逆回りで走行。1台ずつ出走して1周のタイムアタックを行う「1 LAP」と、そのタイム順で決めたグリッドから一斉にスタートし、30分間走行する「30minトライアル」の2つの競技の合計ポイントで勝敗を決める。 クラスは、最低重量が15kgに制限されている「Div+」と「DivNEXT」、最低重量の定めがない「Div1」に分かれ、さらに一般、大学・高専・専門学校・高等学校・中学校の各部門に分かれる。 今回のレースでは、ミツバは「1 LAP」では2位だったが、「30minトライアル」でコース8周(走行距離18km)を完走し高ポイントを獲得した結果、総合優勝を飾った。高効率のモーターとエネルギーマネージメントが勝敗の決め手となったという。 「Ene-1」レースは、筆者がJAFの委員時代に開催されていたFIAのソーラーカーレースに併催されていたこともあり、見学したことがある。マシンはほとんど音を立てずに、選手が前傾姿勢で疾走していく姿が印象に残っている。 高レベルのモーター効率とエネルギーマネージメントが勝敗の決め手というが、マシンをどう省エネルギーで走らせるか、どのようなライン取りを行うかといった戦略も必要なはず。チームとライダーのスキルの差も結果に大きく働いていることは間違いない。 「フォーミュラE」もそうなのだが、飛ばしたもの勝ちではなく、チェッカーまでにバッテリーの残量をいかに制するかというサバイバルレースの側面もあるのが、EVレースの特徴である。 ちなみに「Ene-1」は、4輪クラスの「KV-40」も開催されており、次回は2023年10月15日(日)に「モビリティリゾートもてぎ」<栃木県茂木町>の予定だ。 余談だが、鈴鹿サーキットには、「ene-1(エネワン)」という一般者向けのアトラクションがある。一定のエネルギーで「走行距離」を競うものだ。エネルギーがなくなってしまえばゴール手前で終了。操作パネルにあるエコメーターを見ながらアクセルを調節し、400m先のゴールを目指すという内容となっている。“残電力サバイバル”の緊張感を味わえるアトラクションである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★中国の吉利汽車(ジーリー)、新型EV「JI YUE 01」を発表……クーペタイプのSUV、充電網を独自に構築 ★★グリーンコープ生活協同組合ふくおか、配送車にEVトラック「日野デュトロ Z EV」を13台新規導入……約500台ある配送車の全EV化を加速 ★★トムス、お台場にEVカート用のサーキットを開業……EVカートやe-モータースポーツを体験できる「シティサーキット東京ベイ」<東京都江東区>を10月下旬にオープン ★ボルボ・トラックス、マレーシアにてEVトラックの販売を開始……現地の物流企業が「FMエレクトリック」2台を初購入 ★プラゴ、スマホ充電レンタルサービス「シェアスポット」を運営するインフォリッチと協業……「ShareSPOT」と「Myプラゴ」をそれぞれのサービスのコンテンツに組み込む ★エネチェンジ、「竜宮城スパホテル三日月 富士見亭」<千葉県木更津市>にEV用充電器を導入……「ホテル三日月本社」と合わせて6kWタイプの普通充電器を11基 デイリーEVヘッドライン[2023.08.17]

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TEXT:小川フミオ
フォーミュラEはおもしろい。ピュアEVのレーシング・シーンにある独創性。ロンドン観戦記その1

フォーミュラEが、来年の3月に東京で開催される。小川フミオは、今シーズン第15戦と最終戦の第16戦をロンドンで観戦し、ピュアEVのレーシング・シーンを体感してきた。 東京に来る前に、ロンドンで先触れする 自動車レースの最高峰と言われるのは、フォーミュラ1、通称F1。もういっぽうの極にあるともいえるレースがフォーミュラE。ピュアEVのレースだ。 正式には「ABB  FIA  Formula E  World  Championship」の「2023 Hankook London E-Prix」と呼ばれるこのレース。さきごろ、2022−23年シーズンの第15戦と、最終戦の第16戦が、立て続けにロンドンで開催された。 私はそれを観たが(最終戦はオンライン)、期待を上回るおもしろさだった。 このレースが、2024年3月に、東京にもやってくる。その先触れというか、私的に楽しめたロンドンでのレースについて、おもしろかったところを報告したい。 第15戦と第16戦と続けての見どころは、「ジャガーTCSレーシング」と、ジャガーがドライブトレインを提供している「エンビジョン・レーシング」との一騎打ち。 2023年の選手権がかかっているレースだった。エンビジョン・レーシングがややリードして迎えた最後の2戦だが、勝敗の行方は定まっていない。ジャガーTCSレーシングは力が入っていた。 市街地、オーバーテイクのむずかしさ、ラインか、パワーか…… そもそも、フォーミュラEというレースの特徴はいくつもあって、F1より広い層が楽しめるような工夫がいろいろ見られる。 ひとつは、市街地を使ってのコース設営。「F1のように遠くへ出かけるのでなく、レースのあとは商業地区でショッピングへとすぐ行けます」。ジャガー・カーズの広報担当者は、私にそう話してくれた。 インドアも使うので、そこでは派手な音楽がかかって、そもそも甲高い(しかしそんなに大きくない)音しかしないレースを盛り立てる。 この音楽がうるさいという声もあるけれど、1時間半ぐらいのレースなので、まあ、ガマンできる。 もうひとつは、オーバーテイクのむずかしい、幅員の狭い特設コース。そこを時速200キロで走るだけに、もとF1ドライバーなど、その道の達人がドライバーを務めているのもわかる。 そして、「アタックモード」。やや正しいラインから外れてしまうが、「アクティベーションゾーン」なる短い区間を走るときだけ、通常の300キロワットから350キロワットにパワーアップする。 ラインをとるのか、パワーアップをとるのか。かつ、アクティベーションゾーンを2回通行するのが義務づけられている。ゲーム感覚でおもしろい。 ジャガーのフォーミュラEへの本気度 ジャガーTCSレーシングが、フォーミュラE選手権に参戦したのは、2016年10月。その間に、マシンは第1世代(Gen.1などと表記される)、第2世代、そして23年から第3世代へと進化してきた。 本体であるジャガー・カーズ(とグループ企業のランドローバー)は、「将来のBEVのロードカーへの知見を得られる」と、ジャガーTCSレーシングフォーミュラE選手権に参戦する意義を語る。 そもそも、フォーミュラE選手権は、2012年に、F1も管轄する世界自動車連盟(FIA)がシリーズ化を発表。2014年9月に初開催された。 意義としては「明日のロードカーへの道を拓く」(FIAのHP)とされる。当初はワンメイクレースの色彩が濃く、私も、意義はりっぱに思えるけれど、F1ほど燃えないなあと思っていた。 2020年シーズンからは、しかし、FIAの正式選手権レースになり、同時にマシンの性能も大幅にアップ。かつてのように、フル加速するとゴールまでバッテリーがもたない、なんてこともなくなったようだ。 2022−23年のシーズン9に参戦したチームをみると、ジャガーをはじめ、ポルシェ、マセラティ、マクラーレン、日産、NIO、DSと、ハイパフォーマンスのBEVに力を入れているブランドの名前が並ぶ。 「ジャガーは2025年から完全なピュア電気自動車のブランドをめざしています。それゆえに、フォーミュラEはまたとない実験の場と考えています」 ロンドンのレーストラックで話を聞いた、ジャガー担当マネージングディレクターのロードン・グローバー Rawdon  Glover氏は、そう語った。 <その2へ続く>

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ヤマハ発動機のEVトライアルバイク「TY-E 2.2」(photo=ヤマハ発動機)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
蘇る、40年前の興奮……ヤマハ、新型EVトライアルバイク「TY-E 2.2」を実戦投入[2023.07.14]

パワーユニットなどを一新し今後も継続的に参戦と開発 筆者が40年前に開発を経験したマシンと似た構造 【THE 視点】ヤマハ発動機は7月13日、「全日本トライアル選手権第5戦・北海道・和寒大会(わっさむサーキット)」(7月16日開催)に、新型のEVトライアルバイク「TY-E 2.2」を投入することを発表した。「ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム」の黒山健一選手とともに出場する。「TY-E 2.2」は、全日本選手権の参戦を通じて開発を行ってきた電動トライアルバイク「TY-E 2.1」の改良新型となる。 「TY-E 2.2」の開発コンセプトは「FUN×EV」。軽量化と高強度化に加えて熱対策の熟成を目指した積層材モノコック・フレームや、出力密度を高めた新設計モーター、小型・高効率・高機能化したモーター・コントローラーなどの新コンポーネントを投入。実戦とともに車両の検証・データ収集・技術開発を続け、後半戦も随時アップデートを続ける予定だという。 「TY-E」は2018・2019年のFIMトライアル選手権のEV専用クラス「TrialE Cup」への出場を皮切りに、2022年には「TY-E 2.0」として同選手権の「Trial2」クラスにスポット参戦。2023年には「TY-E 2.1」を開発し、黒山選手とともに史上初となる全日本選手権へのフル参戦を開始した。 筆者は実は、現在所属する会社が1984年に電動トライアルを開発したことを雑誌記事で知り入社を決めた過去がある。そこからEVに興味を抱いたのだ。 およそ40年前のことだが、当時開発していたマシンの構造は「TY-E 2.2」に近いものだった。当時としては最先端のフルカーボン・モノコックボディに、インホイール・モーターが採用されていた。 一番の違いは、インホイール・モーターであったことに加えて、何よりもバッテリーが鉛だったことだろう。液式の大変重いものだった記憶がある。当時は、現在のように「EV用」などというバッテリーはない時代だった。それがリチウムイオン・バッテリーとなり、バッテリーの性能と軽さのおかげで「TY-E 2.2」は相当の性能を持ち、扱いやすさも備えていることだろう。 試作車の試験のたびに重たい鉛のバッテリーを交換したことを思い出す。もしリチウムイオン・バッテリーであったなら、ほとんど交換せずに試験走行もできたのではないだろうか。企業は違えど、かつて筆者も開発を経験したものに類似したマシンなだけに、「TY-E 2.2」には非常に親しみを覚える。実戦での勇姿を是非見てみたいものである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BYD、「アット3」が自動車導入促進補助金(CEV)対象車に新決定……型式指定認証を取得し、85万円の補助[詳細はこちら<click>] ★★ルノー、新型EV「セニック E-Tech エレクトリック」のプロトタイプを発表……CセグメントのSUV ★★BMW、新型「5シリーズ」のEVモデル「i5」を日本で発売……表参道のイベントスペース「OMOTESANDO CROSSING PARK」<港区南青山>内「ポップアップ・エキシビション」にて「i7」と共に展示<7月14日(金)〜9月17日(日)>[詳細はこちら<click>] ★★エネチェンジ、「ISP・池袋東口公共地下駐車場」<池袋駅直結>にEV用充電器を設置……最高出力6kWタイプを5基 ★★東京ガス、「千住水素ステーション」<東京都荒川区>にて水素を現場製造……エナプター社の「AEM水電解装置」を使用しCO2フリーの水素を製造、販売を開始 ※AIM:Anion Exchange Membrane(陰イオン交換膜)の略 ★ポールスター、SUV型のEV「ポールスター5」のプロトタイプが実走を披露……イギリス「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」にて公開 ★ワイトリシティ、EV用ワイヤレス充電器のOEMを推進……OEM導入・採用をスピードアップする「ファストトラック・インテグレーション・プログラム」を開始 ★ボッシュ、FCモジュールの量産を開始……2030年までに水素技術で50ユーロ(約7,700億円)の売り上げを目指す ★ジゴワッツ、日本最小の充電器「Ella」を極東開発グループ本社ビル<大阪市中央区>の立体駐車場に設置……極東開発が展開する充電サービス専用品の共同開発も検討 ★ルノー、EV向けの効果音を開発……対歩行者向けの近接接近音と車内向けのウェルカム・サウンドの2種類、音楽家のJean-Michel Jarreと協力 ★パーク24、カーシェアリング・サービス「タイムズカー」会員向けに「EV体験キャンペーン」を実施……大阪府の会員限定、「日産リーフ」「トヨタbZ4X」を用意 ★ISレンタリース、「レクサスRZ450eファースト・エディション」のレンタカーを導入……7月19日よりレンタル開始、料金5万9,950円〜 ★二輪用品店のナップス、EVモトクロッサー「SUN-RON」の販売を開始……横浜店/埼玉店/浜松店/春日井店/京都八幡店/ららぽーと立川立飛店の計6店舗にて ★テラモーターズ、沖縄の不動産系企業のマルユウグループと提携……マルユウグループ所有の物件52ヵ所に先行導入 ★凸版印刷、リチウムイオン・バッテリー用の消火フィルム「FSfilm」について国際団体が効果を認証……アメリカの試験・検査認証のUL社から「UL検証マーク」のお墨付き、EV用への展開も期待 ★ローム、ソーラーフロンティアの旧国富工場の資産を取得へ……EV向けSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の生産を拡大 ★テスラ、「テスラ サービスセンター大宮」<さいたま市中央区>にて特別試乗会を開催……7月22日(土)、「モデル Y」「モデル 3」を用意 ★ブレイズ、「オートプラザラビット稲沢店」<愛知県稲沢市>のイベントにて展示・即売会を開催……7月15日(土)・17日(日)の2日間、「ブレイズ スマートEV」など出展 ★フォーミュラE第13・14戦ローマ、今週末に開催……両日ともに予選と決勝を開催、現在のポイントリーダーはジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ) […]

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TEXT:桃田 健史
「フォーミュラE世界選手権」開催決定!来年3月東京ビッグサイト周辺公道での開催に向けた、3つの課題

電気自動車による自動車競技「フォーミュラE」が2024年3月30日(土曜日)、フォーミュラEシリーズ10の第7戦として東京沿岸部の東京ビッグサイト周辺の公道を使って開催されることが正式に決まった。開催における課題を分析する。 日本モータースポーツ界における歴史的な快挙 フォーミュラEの公式ホームページで2023年6月20日、24年3月の東京開催が明らかになった。 その中で、小池百合子 都知事からは東京都が推進している環境施策「ゼロエミッション東京」を前提にして、フォーミュラE開催を歓迎する旨のコメントも掲載された。 フォーミュラEは2014年に始まった、バッテリーを搭載し100%モーターで駆動するフォーミュラカーレース。F1(フォーミュラ1世界選手権)やWRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)等と同じく、FIA(国際自動車連盟)が管轄する世界選手権である。 今回の東京開催は、モータースポーツの観点から見れば日本における歴史的な快挙である。ラリーを除く競技として大規模な公道レースが日本で開催されるのは、今回が初めてとなるからだ。 これまで、F1については横浜やお台場などで、またアメリカのインディカーについては北海道の小樽での開催が検討されたことがあった。だが、観客に対する安全確保や、一般交通を遮断すること等を理由に、地元の警察が実施を許可するに至らなったと言われている。 また、主催者やプロモーターの視点では、公道レースでは仮設スタンドによる集客数が既存の大型レース施設と比べると少ないため、入場料収入の確保についてハードルが高い、というのがモータースポーツ興行における一般的な解釈でもある。 さらには、騒音や周辺での渋滞を懸念する声が地元住民から上がることも珍しくない。 そうした公道でのモータースポーツに対するネガティブな要因を伴う考え方を覆すかのように今回、フォーミュラEの東京開催が決定した最大の理由は何か? それは、「2050年でのカーボンニュートラル」という、東京都における大義名分だと思う。 東京都は2019年12月27日、2050年にCO2排出実質ゼロの貢献する「ゼロエミッション東京」を宣言。これまで、水素戦略、BEV(電気自動車)やEVバイクの普及促進などを積極的に行ってきた。 フォーミュラEの東京開催は、「ゼロエミッション東京」にとってシンボリックな存在になることが期待される。

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フォーミュラE(photo=日産自動車)
TEXT:福田 雅俊、ABT werke
東京の街で「フォーミュラE」が公式戦、東京ラウンドが2024年3月30日に開催決定[2023.06.22]

手に汗握る展開の「残電力サバイバルレース」がいよいよ東京にて開催 再生可能エネルギーを活用しながら電力の安定供給体制の構築を 【THE 視点】フォーミュラEと国際自動車連盟(以下、FIA)は、「ABB FIA フォーミュラE ワールド・チャンピオンシップ」の来年度のカレンダーを発表した。東京ラウンドが正式決定し、3月30日(土)に第7戦として組み込まれている。コースは、「東京ビッグサイト」<東京都江東区>周辺の一般道を使用する。 東京の市街地を使用したFIA管轄のレースとしては、日本初の開催となる。日本勢唯一のチームである日産をはじめ、強豪のポルシェやマセラティ/ジャガー/マクラーレン/マヒンドラ/ニオ/DSなど11チーム・22台が参戦予定だ。 東京都は、カーボンフリーの「環境先進都市ゼロエミッション東京」の実現に向け、ZEVの普及を拡大すべく、東京での大会実現に向けた協議をフォーミュラEと重ねてきた。 開催にあたり、小池百合子東京都知事は、「フォーミュラEは、エンジン音や排気ガスがない電気自動車の市街地レースとして、世界の主要都市で開催されています。この国内初、世界最高峰のレースの迫力を間近で見て、応援しましょう。大会は、ゼロエミッションビークルの普及に弾みをつけると同時に、東京の魅力を世界に発信し、国際的なプレゼンスを高める絶好の機会ともなります」とコメントを寄せている。 今回の開催決定は喜ばしいことだが、充電インフラをどう構築するか心配が残る。22台ものマシンを、フリー走行・予選・決勝などに間に合わせるために一気に充電するとなると相当の電力設備の増強が必要となるはずだ。 これは提案なのだが、100%は無理にしろ是非とも再生可能エネルギーの活用も検討してほしい。そうすれば「環境都市」としての良いアピールになる。電力が足りず、コースの近くでディーゼル発電機を回すようでは本末転倒なので、開催までの残りの期間で、電力の供給体制をしっかりと設計してほしい。 フォーミュラEは、今シーズンから「GEN3」と呼称する第3世代のマシンを使用している。これによりマシンのスピードが上がり、毎回のレースが見応えのある展開になっている。 特に面白く感じるのは、バッテリー残量を見ながらの接戦である。レースの展開としては、序盤から中盤は電費を抑えるために、おとなしく走行してポジション取り。そして終盤の残り10周ほどで、事実上のスプリント・レースをするのが毎回のパターンとなっている。予選トップがそのまま逃げ切りという展開は少ない。ラスト1周は、バッテリー残量が1%前後という電欠寸前の中で攻め合うという痺れる戦いを繰り広げている。EVレースというユニークさではなく、ひとつのモータースポーツとして非常に面白くなっている。 いずれにせよ、このレースが東京で開催されることを非常に嬉しく思っている。成功を願う。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ケータハム、EVの新型コンセプト「プロジェクトV」を発表……7月12日に実車を公開予定 ★★カワサキ、3輪の自転車型EV「ノスリスe」を6月30日に発売……前輪2輪のトライク型、EVモードと自転車モードを選択可能 ★★キャデラック、ラグジュアリーSUVの新型EV「エスカレードIQ」のティザー映像を公開……8月9日に正式発表予定 ★オペル、小型EV「ロックス・エレクトリック」をカスタマイズ……ラリーマシンのテイストを盛り込んだ「ザ・ロックス・e-エクストリーム」を公開 ★パナソニックエナジーとマツダ、車載用リチウムイオン・バッテリーの長期供給について協議開始……2020年代後半に発表予定のEVへの搭載を視野 ★アウディ、オーストラリアに充電拠点「アウディ・チャージング・ハブ」を開設……豪州初の設置、最高出力320kWの急速充電で4口を用意 ★ティアフォー、EV用の自動運転ソリューション「ファンファーレ」を開発……完成車メーカーにOEM供給が可能な「レベル4」水準のシステム、2024年までに9車種の商用EVに設定予定 ★テスラ、「おおたかの森」<千葉県流山市>にポップアップストア「テスラ おおたかの森」をオープン……ショールーム機能を持ち試乗車も用意 ★アイシン、「固体酸化物形電解セル(SOEC)による水素製造技術開発」がNEDO(※)の研究開発事業に採択……NGK・九州大学と連携、太陽光等再生可能エネルギー由来の電力で水素を製造 ※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ★折りたたみEVバイクシェアのシェアロ、「安全運転講習会」を「東京プリンスホテル」<東京都港区>にて6月10日(土)に実施……原付一種としての交通ルールを再確認、今後も継続して実施予定 ★東京湾アクアラインに時間帯別料金制が導入……普通車の木更津→川崎方面が1,200円(土日祝日・13時〜20時)に、2023年7月23日(土)〜2024年3月31日(日)まで実施 デイリーEVヘッドライン[2023.06.22]

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