#ボルボ
TEXT:小川フミオ
「小さなボルボ」は本当に安全? プロダクト責任者が語るボルボ独自の取り組み

ボルボが長年培ってきた安全性を、コンパクトBEVの分野へどのように投じたのか。プロダクト責任者が語る小ささに込めた安全設計。 「安全のボルボ」を、コンパクトなBEVへ EX30とともに本社から来日した、ヨアキム・ヘルマンソン氏へのインタビュー第2弾。 2023年中に日本で発売される予定の、コンパクトサイズのバッテリー駆動のSUVであるEX30。日本でも大きな成功が期待されている。 そこで、開発の舞台裏を、プロダクト全体の責任者であるヘルマンソン氏に訊ねてみた。 −−ボルボがいかに安全性について長年の経験を謳っても、EX30と、大型SUVであるEX90は、どちらもBEVですから、従来のICE車とは違うむずかしさもあったのでは、と想像しました。 「そうです。たとえば、ボディはさまざまな高張力鋼板を使って、スチールケージ構造にしました。EX30には、従来のICEと違い、大型のバッテリーというあらたな“乗員”もいます。衝突においてはこれを守らなくてはなりません。最新のコンセプトに基づいてアルミニウムによるハニカム構造の、バッテリープロテクションも採用しています」 −−バッテリー搭載のシャシーと、ボディとは分離した設計が採用されていますか? たとえば、フォルクスワーゲンがいま使っているMEBプラットフォームのように、バッテリーを敷き詰めたシャシーのうえにキャビンを置くようなイメージのアーキテクチャーでしょうか。 「そうです。いわゆるプラットフォームというバッテリーを敷き詰めた部分と、キャビンを含めたボディとは分離したかたちの設計です。私たちはエレクトリックアーキテクチャーと呼んでいますが、いわゆるプラットフォームには、バッテリーとモーターを搭載しています」 行き交う人々へも。都市ならではのリスクを回避する −−安全性についてもういちど、教えてもらいたいことがあります。衝突時の安全性、いわゆるパッシブセーフティについて、そうとう研究を重ねた模様ですが、事故を回避するアクティブセーフティについてはどんなことを実現しましたか。 「EX30は全長4,235ミリしかない、小さなパッケージでありながら、ボルボ独自の安全基準を満たしています。とくにここで強調したいのは、都市部で走る際の安全機能です。たとえば、通行中の自転車や電動キックボードなど他の交通利用者の前でドアを開けようとすると、音と視覚で警告する『ドア・オープニング・アラート』をすべての前後左右のドアに搭載。最先端の技術により、都市部を走行する際の安全性を、さらに、次のレベルにまで引き上げています」 −−すりぬけ時に、歩行者をはじめ、自転車やバイクと接触事故が起きる、というのは、都市部でありがちな事故ですね。 「前方を他の車両が不意に横切った際、自動ブレーキで車を停止させ、衝突の回避や軽減をサポートする新たな機能が加わった「インターセクション・サポート」も搭載。ドライバーサポートの面では、DAC(ドライバー・アラート・コントロール)なる安全装備も搭載しました。ボルボ独自のアルゴリズムで作動する特別なセンサーを使い、 1 秒間に約 13 回、ドライバーの眼や顔の動きを検知し、注意散漫や眠気などが認められたばあい、それについて警告するのがDACです」 <Vol.3へ続く>

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:小川フミオ
ボルボEX30がついに上陸!日本を意識したコンパクト・モデルへの思いをプロダクト責任者に訊く

ボルボEX30の発表にはスウェーデン本社からプロダクトに関わる人物たちが出席。様々な部門からインタビューをとおして、コンパクトBEVを創り上げたスカンジナビアン流儀を深掘りしていく。 日本重視のEX30 ボルボ・カー・ジャパンが2023年8月24日に新型BEV「EX30」を日本で発表した。 東京・青山の「Volvo Studio Tokyo」にジャーナリストを集めて行われた発表会には、スウェーデン本社からも重要な関係者が何人も出席。 ボルボ本社が日本市場をいかに重要視しているか。それが、開発やデザインやマーケティングといった部門で重要なポジションに就くひとたちの顔ぶれからも知れる気がした。 日本でまず発表されたのが、NMCバッテリー+シングルモーターで、最大480kmの航続距離を持つ中間グレード。「Ultra Single Motor Extended Range」などとも呼ばれる。 本国のラインナップでは加えて、やや性能は劣るが廉価のLFPバッテリー+シングルモーター(リアモーターで後輪駆動)の「市街地向け」仕様がその下に。 上には、315kW(428ps)のハイパワーを持つNMCバッテリー+ツインモーターによる全輪駆動仕様で、スポーツカーなみに静止から時速100kmまで3.6秒しかかからない高性能仕様もある。 ボルボ・カー・ジャパンによると、2023年の導入にあたっては、NMCバッテリーとシングルモーターの中間グレード(サブスクキャンペーン対象車でもある)のみ展開。 「追って、ほかのモデルの導入も計画しています」(広報担当者)とのこと。導入モデルを決定した背景は、「とりあえず日本でもっともニーズが高そうなスペックスなので」(同氏)と説明された。 標準的な機械式立体駐車場に対応するサイズに加え、ボルボ車に期待される安全性、サステナビリティ、最先端のテクノロジー、さらに、こだわりのスカンジナビアンデザインなどが、ボルボ・カー・ジャパンが挙げるEX30の特徴。 NMCバッテリーとシングルモーター車のベース価格は559万円。「プレミアムな電気自動車のSUVを、内燃エンジン搭載車両とほぼ同等の価格帯でご購入いただけます」(ボルボ・カー・ジャパン)とのこと。 じっさいに自治体の補助金を受けられれば、400万円台で購入できる可能性もあり、競争力の高いモデルといえる。 ヘルマンソン氏が語るコンパクト・ボルボへの哲学 冒頭で触れたとおり、EX30とともに本社から来日したひとりが、ヨアキム・ヘルマンソン氏。EX30プロダクト全体の責任者である。 「小さいことには大きな哲学があると私たちは信じています」とするのは、ボルボカーズのジム・ローワンCEO。 はたして、EX30には、どんな開発哲学が背景にあったのか、ヘルマンソン氏に、一問一答形式のインタビューで語ってもらった。 −−プロダクトの開発において、もっともたいへんだったのはどんなところですか。 「すぐに思いつくのは、安全設計です。EX30は、いちばん小さなボルボのSUVですが、これまでのプロダクトで重視してきた安全性を、ここでも、妥協せず最適化していくことに努力しました。小さいからといって、何かが簡単になるわけではないのです。なにしろボルボ車といえば安全性というイメージが強いので、それを裏切ってはいけません」 ヨアキム・ヘルマンソン(Joachim Hermannsson)プロフィール ボルボ・カーズEX30プロダクト全体責任者。ボルボでインテリア・ビジネス、製品定義など、複数分野でのマネージャーやマテリアル・エキスパートとして23年の経験を持つ。ボルボが手がけるEX30のプロダクト全体責任者として、技術面、デザイン、品質、コストを総合的に優れた製品へと導く役職を担っている。 <Vol.2へ続く>

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:烏山 大輔
「ボルボ EX30」のデザインに、テスラの影がちらつく

8月24日にいよいよ日本で発表されたEX30のデザインを観察すると、テスラのような合理化が見えてきた。良い意味でのコストダウンにもなっているこのデザインの考え方のほとんどに賛成だ。 ある意味テスラ超えの部分も 「テスラ モデルY」の物理スイッチは、ステアリングホイールのスポークにある二つと頭上のハザードスイッチ、ドアにはパワーウィンドウスイッチとドアオープナースイッチくらいだ。 そして今回のEX30は、ドアにスイッチはない。あるのはインナーハンドルだけだ。それではパワーウィンドウのスイッチはというと、フロント用のそれはアームレストの先端にあり、リア用はセンターコンソールの後端にある。 こうすることでドアのスイッチを無くし、コストダウンとともにすっきりしたデザインと物入れスペースを実現した。ドアからスピーカーをなくし、ダッシュボード上部の左右に広がるそれに置き換えたのも、「ドアからなるべく電装品を取り除くため」と考えると合点がいく。BEV(バッテリー電気自動車)はICE(内燃機関)車と異なり、車体前部のダッシュボード空間に余裕があるし、ドアから電装品を取り除くことは余分な配線をなくし軽量化につながるからだ。 ドアのロック/アンロックスイッチは、フロントのアームレスト先端にまとめられている。ドアミラーの角度調整や格納は、センターディスプレイでの操作になっているのだろう。テスラでさえ物理スイッチとして残していたハザードスイッチもディスプレイの右下に“収納”された。 このスイッチの統合は良いと思う。しかし実際の使用を想定すると、一つだけ難点なのは後席乗員が窓を開閉する際に、上体を前に倒しスイッチまで手を伸ばさなければならないことだ。 フタ付きのアイデアが新しいセンターコンソールのデザイン ICE車とは異なり、BEVではプロペラシャフトやマフラーを通すことを考える必要がなくなり、自由度が格段に向上したセンターコンソールをどうするかが、デザイナーの腕の見せ所ではないかと思っている。 EX30の場合は、2台のスマホ置き場がある。無線充電ができて、画面はきちんと見えやすい角度に作られており、かつスマホを差し込む部分が柔らかいゴム製のレバーのような構造で、スマホが動きにくい設計になっている。   さらにその手前のバッグなどが置けるスペースは、実は観音開きのフタになっていて、ここを開けるとUSB-C端子が2つ備わる収納スペースが現れる。使用頻度が少ないものや車から離れる際に、人目につかないようにしておきたいものをしまうのに重宝するだろう。 そんなセンターコンソールの上に位置するアームレストには、可動式の2つ分のカップホルダーがある。この可動部にはダンパーがついていてゆっくり前に出てくる、かつしっかりした作りで全く「ちゃちさ」を感じさせない。こういうふうに、コストをかけるところとコストをかけずともデザインでカバーできるところを、しっかり分けているのが素晴らしい。 デザインにコストをかけているところをもう一つ。筆者が体験した最近のクルマには、多数の色の中から1色を選択できるアンビエントライト機能を備えるモデルがあった。EX30では、5つのテーマを持つ同機能が装備されているのだが、それはただ1色で光るだけではなく、グラデーションするのだ。 例えばスウェーデンブランドらしいノーザンライト(オーロラ)モードでは、緑から青や紫へと色が変わっていく。夜間に高速道路のサービスエリアで充電中に、この優しい光と、それぞれのテーマに合ったアンビエントサウンドの流れる車内にいたら、とてもリフレッシュできるのではないかと思う。光り方が気になる方はボルボのウェブサイトを確認して欲しい。

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:烏山 大輔
ボルボ、「EX30」を発表!272ps、559万円のRWDから発売開始。立体駐車場に入る全高1,550mm

ボルボ・カー・ジャパンは、8月24日に3番目のBEV(バッテリー電気自動車)となる「EX30」を発表した。月額95,000円のサブスクリプションは10月2日から受付、通常販売は11月中旬より開始予定。年内の納車開始を予定している。 AWDモデルはおあずけ これまでTHE EV TIMESでも注目してきたEX30がついに日本で発表された。SUVのボディスタイルにもかかわらず、全高が1,550mm、全幅も1,835mmに抑えられたため、都市部に多い立体駐車場にも入る大きさだ。全長も4,235mmなので狭い道での取り回しも良さそうだ。 この1,550mmの全高は日本市場用に調整や“車高短化”されたわけではなく、もともとのサイズ。日本の担当者も「まさに日本のためのサイズ!」と胸をはっていた。 EX30には、ボルボ史上最速である0-100km/h加速3.6秒のAWDモデルもあり、注目していたが、このタイミングでの日本導入には至らなかった。関係者に聞くと「今後の展開を楽しみにしてください」とのことなので、いずれ日本にも入ってくることは間違いなさそうだ。 最初に日本導入されるのはRWDの中でも航続距離が480km(欧州参考値)と長い、エクステンデッドレンジバッテリーモデルだ。このモデルのバッテリー総容量は69kWhで、最大153kWの急速充電に対応しており、26分で10%から80%まで充電できる。 本国のウェブサイトを確認すると、バッテリーが51kWhのモデルもあるので、よりリーズナブルであろう「ノーマルバッテリー」モデルの導入があるのか、今後の発表を待ちたい。 2ヶ月で2,000台の意欲的な受注目標 10月2日から受付が始まるサブスクリプションは、300台限定で用意される。その内訳はモスイエローのボディカラーが100台、10月16日から受付開始となるクラウドブルーが200台だ。 サブスクリプションは、申込金や頭金が不要で、任意保険や諸費用も含まれ、最長24ヶ月の契約期間となる。3ヶ月前からの申し出で、ペナルティ無しでの解約も可能だ。ライバル車にあったように、年数が固定のリースではないところが、契約のハードルを下げることにつながるだろう。 通常の販売も11月中旬から開始予定だ。「オンラインで入手可能」だった「XC40 Recharge」と「C40 Recharge」とは異なり、ディーラーでじっくり実車を確認し、内外装カラーやオプションなどを営業マンと相談したいユーザーにとってはありがたい。 このような販売方法により、ボルボ・カー・ジャパンは、サブスクリプションの300台を含め、年内に2,000台の受注目標を掲げた。 昨年1年間に日本で新車販売されたBEVが約31,000台(軽自動車は除く、普通乗用車のみ)だったことを考えると、もし仮にこのペースで1年間販売できるとすれば、3台に1台がEX30になってしまうのだからすごい。 国や自治体の補助金を使えば、車両本体への支払額が400万円台に抑えられる559万円という価格、フレキシブルでハードルの低いサブスクリプション、日本に適したサイズも相まって、どこまでEX30が人気を呼ぶかに注目だ。 ボルボ EX30 Ultra Single Motor Extended Range 全長:4,235mm 全幅:1,835mm 全高:1,550mm ホイールベース:2,650mm 車両重量:1,790kg 乗車定員:5名 一充電走行距離:480km(欧州参考値) 最高出力:200kW(272ps)/6,500-8,000rpm 最大トルク:343Nm(35.0kgm)/0-4,500rpm バッテリー総電力量:69kWh モーター数:後1基 トランスミッション:1速固定 駆動方式:RWD フロントサスペンション:マクファーソンストラット リアサスペンション:マルチリンク フロントブレーキ:ディスクブレーキ リアブレーキ:ディスクブレーキ タイヤサイズ:前後245/45R19 最小回転半径:5.4m 荷室容量:318L 車両本体価格:5,590,000円

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:生方 聡
性格変わった? [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

「C40/XC40リチャージ」の2024年モデルは、見た目は変わらないのに、走りの印象が大きく変わっていた。 スタイリッシュなプレミアムコンパクトSUV 日本でも人気の高いコンパクトSUVの「XC40」。そのEV版である「XC40リチャージ」と、EV専用モデルの「C40リチャージ」は、フロントグリルにボディ同色カバーが施されることで、エンジン車との違いは一目瞭然だ。さらに、今回試乗したC40リチャージは、クーペスタイルのルーフラインや大きなルーフスポイラーなどにより、スポーティで個性的なデザインに仕上げられているのも魅力のひとつである。 室内に目を移すと、仕立ての良いコクピットや縦型のセンターディスプレイなど、基本的にはガソリンモデルのXC40と同様のデザインを採用し、プレミアムコンパクトと呼ぶにふさわしい心地よい空間。一方、ダッシュボードとフロントドアの装飾パネルは、バックライトにより等高線をイメージした模様が浮き上がって見える凝ったデザインが採用され、夜間のコックピットに花を添えてくれる。 レザーフリーのインテリアを採用するのは従来どおり。ステアリングホイールは人工皮革で覆われるが、知らなければそうとは気づかないくらい違和感がない。オレフォス社製クリスタイルシフトノブとウールブレンドシートはリチャージ アルティメットにセットオプションとして設定されており、C40リチャージの上質さを際だたせている。

TAG: #C40 #XC40 #ボルボ
TEXT:生方 聡
パワーも航続距離も前年比プラス! [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

FWD(前輪駆動)からRWD(後輪駆動)に生まれ変わった2024年モデルのボルボC40/XC40リチャージ。気になるスペックも進化していた。 2024年モデルは2WDのみに ボルボのEVには、SUVクーペスタイルでEV専用モデルの「C40リチャージ」と、SUVらしいデザインの「XC40リチャージ」のふたつが現在販売されている。この2台は基本設計を共有し、グレード展開も同じである。 2023年モデルとしては、2モーターで4WDの「リチャージ・ツインモーター」と1モーターでFWDの「リチャージ・シングルモーター」の2タイプが販売されていたが、2024年モデルではRWDのリチャージ・シングルモーターだけになり、代わりに装備が違う「リチャージ プラス シングルモーター」と「リチャージ アルティメット シングルモーター」の2本立てに変わっている。後者は装備充実仕様で、ピクセルLEDヘッドライト、ハーマンカードン プレミアムサウンド、20インチアルミホイールなどが標準で装着される。 価格は次のとおり。 C40リチャージ プラス シングルモーター……699万円 C40リチャージ アルティメット シングルモーター……739万円 XC40リチャージ プラス シングルモーター……679万円 XC40リチャージ アルティメット シングルモーター……719万円 アルティメットはプラスの40万円高。C40はXC40の20万円高ということになる。 なお、4WDのリチャージ・ツインモーターはヨーロッパでは販売されているが、日本ではさしあたり需要の多い2WD(2輪駆動)モデルのみが販売される。ボルボ/カー・ジャパンとしては、市場の動きを見ながら日本への再導入を検討しているようだ。

TAG: #C40 #XC40 #ボルボ
TEXT:生方 聡
FWDからRWDに変わるなんてある!? [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

ついに日本に上陸した2024年モデルの「ボルボC40/XC40リチャージ」。見た目の印象は変わらないが、その中身は大きく変わっていた。 常識を超えた年次改良 ご存じのとおり、スウェーデンの自動車ブランドであるボルボは、2030年までにEV専業メーカーになることを目指している。直近の目標としては2025年までに販売台数の半数(日本は45%)をEVとしたい考えで、その第一歩として市場に投入されたが、コンパクトSUVのXC40をEVに仕立てた「C40リチャージ」と「XC40リチャージ」である。 XC40シリーズの日本での販売は好調で、ボルボ・カー・ジャパンによれば、2023年上半期のプレミアムSUVセグメントにおける販売台数はXC40が2位、C40が13位。一方、プレミアムEVセグメントではXC40リチャージが「テスラY」「テスラ3」に次ぐ3位。C40リチャージも9位と、ともにベスト10入りを果たす勢いである。 そんなC40/XC40リチャージの2024年モデルが日本に上陸。ヨーロッパやアメリカの自動車ブランドでは、いわゆるフルモデルチェンジやマイナーチェンジ以外のタイミングでも、年ごとに改良を加える“モデルイヤー制”を採用することが多く、ボルボも例外ではない。このC40/XC40リチャージの2024年モデルもあくまで年次改良版という位置づけなのだが、その変貌ぶりは耳を疑うレベルだ。なんと、2024年モデルではFWDがRWDに変更! エンジン車では、到底ありえない話だ。

TAG: #C40 #XC40 #ボルボ
ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボは熾烈な戦いをいかに制するか。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

相次いで新型EVを投入するボルボ。今後も毎年のようにニューモデルをリリースしていく予定であるという。EV専業メーカーになる道を選んだボルボは、これまでとは大きく変わっていくのだろうか。だが、舵取り役のジム・ローワンCEOの言葉からは、今回の「変身」は、彼らが「らしく」いるための選択であったことが明らかになった。 グローバル生産する“効能” 小型SUVのBEV、EX30を発表・発売(欧州)したボルボ・カーズ。このクルマが代表する今後のボルボの“行き方”こそ、市場に評価されるものだと、ジム・ローワンCEOは自信を見せる。 EX30発表会におけるローワンCEOへのインタビューから、ここでは、技術と生産と、それらに密接なかたちで結びついた印象のマーケティングについて、注目すべき発言をまとめた。 −−EX30は、2023年の欧州に続いて、日本でも発表・発売を予定しているとか。 「日本市場には、EX30のサイズはぴったりだと思うんですが、どうでしょうか。実際、私が聞くところでは、日本の市場調査では、EX30に期待する声はたいへん大きいとか。私が見たかぎりにおいても、東京のような市街地で乗るには、最適なサイズのクルマです」 −−先んじて2022年11月に発表された大型SUVであるBEVのEX90は、期待できる内容だが発売は2024年に延期された。 「いまソフトウェアをすべて書き換えて、2024年後半の発売に備えていこうという状況です。クルマはいちおう出来てきたのですが、私としてはソフトウェアの完成度に不満があり、そこで、4〜5ヵ月発売を延期しても、完成度を上げるほうを当然選んだわけです」 −−ボルボ・カーズにとってあたらしい動きは、EX90もEX30もグローバル生産を選択したことだ。 「EX30は中国生産した車両を世界各地に輸出します。EX90については、中国の自社工場とともに、サウスカロライナ州チャールストンの自社工場で生産します。私たちが吉利汽車(ジーリーともギーリーとも欧米では呼ばれる)と(EX30の)プラットフォームをシェアする戦略を選択したことで、開発費削減という恩恵が得られます。このさきボルボ・カーズでは毎年のように新車を発表していきたいと思っていますから、開発提携は重要な課題です」 「若いひと」に支持されるボルボ −−吉利汽車といえば、英国の伝統的なスポーツカー、アストンマーティンの大株主であり、ロータスの親会社でもあるが、BEVについても知見は豊富だ。 「吉利汽車のエンジニアリングにおける知見と蓄積されてきた技術力は、私たちのプロダクト開発においてもおおいに役立ちます。優秀なエンジニアもたくさん協力してくれています。中国企業がもつBEVの開発能力はたいそう高いものです。それらを役立てることでボルボというブランドの商品力はいっそう強化されると私は思います。ボルボに期待される安全性やデザイン性、それにサステナビリティに関するコンセプトは守りつつ、価格競争力を持つことが出来るのです」 −−大きな中国企業と密接な協力関係をもつことで、将来そこに飲み込まれていく不安はないか。 「協力関係を拡大していくことで、キャラクターを喪失しないかと不安の声も耳にしますが、ボルボ・カーズがボルボのブランドのもとで発売するプロダクトは、ホロモゲーション、安全性テスト、内外装、素材、サプライチェーンなど、すべて独自のものを使います。共用するのは、バッテリーなどを含めたプラットフォームです」 −−これから熾烈化するBEV市場で生き残っていく施策は、ボルボらしさを見失わないということか。 「ボルボは量産ブランドではありません。プレミアムブランドという位置づけです。そのなかには生産台数も含まれます。乗用車の市場で、1%ぐらいのシェアを持っていて、それを2%まで拡大することは出来るでしょう。ユーザーはボルボというブランドを好いてくれていて、安全性やサステナビリティに関して、ブランドイメージを高く評価してくれています」 −−ボルボはプログレッシブなブランドとして評価されている。 「調査によると、いまボルボに注目してくれるユーザーのなかには、科学の分野に携わるひとや、ソフトウェアのエンジニアや、マーケティングを担当しているひとなどが目立つそうです。年齢も若いひとが多い。このひとたちにとってボルボは“プログレッシブ(先進的)”なブランドなのです。これからも、やや保守的なイメージのあるブランドから多くのユーザーが移行してくると信じています。それは、私たちが大事にしている価値を、若いひとたちがシェアしてくれるからです」 <完>

TAG: #EX90 #トップインタビュー #ボルボ
ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボが電動化の先に見る明日とは。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

ボルボ・カーズはいち早く電動化に向けて大きな一歩を踏み出したメーカーのひとつ。とりわけ彼らは、リサイクル素材を多用するなど、ボルボ=サステナブルなイメージを強化するEVを精力的にリリースしている。何故彼らは電動化に“全振り”する戦略を採ったのか。ジム・ローワンCEOに、自動車ジャーナリスト・小川フミオが直撃した。 ボルボはこれからどこへ向かうのか 2023年6月に発表したコンパクトサイズのSUV、EX30で大きくBEVメーカーへの変身へと舵を切った感のあるボルボ。 EX30は、中国の吉利汽車とプラットフォームの共用戦略も採用。生産も中国で行なう一方、北米での販売も行なうなど、ボルボにとって、重要な車種だ。 2022年3月からボルボ・カーズの舵取りを行なっているジム・ローワンCEOに、ミラノでのEX30発表の機会をとらえて、インタビューを行なった。 スコットランド出身のローワン氏はダイソンCEOも務めていた経歴の持ち主。ローワンCEOを迎えたボルボは、EX90を2022年11月にストックホルムで公開。 このとき、ローワン氏は世界中から集まったプレスの前に姿を見せた。私もそのとき最前列でステージを見学させてもらった。 日本人の耳にはちょっとクセのある英語とともに、1965年生まれという先入観を吹き飛ばすような精力的な身振り手振りでもって、このさきボルボ・カーズは大胆にカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の削減に取り組んでいくと語った。 EX90は(読者のかたは先刻ご承知のように)BEVの大型SUV。「30分の充電で600km以上走るBEVで、私たちがいまどういう姿勢であり、そしてこれからどこへ向かうかを示す指標です」と、ローワンCEOはそのとき述べた。 リサイクル素材の使用を大々的に謳っていたのも印象的だった。たとえば、スチールでは11%、アルミニウムでは25%、そしてプラスチックは15%(重量では48kg)がリサイクル素材となるという。 「電動化自体が目標ではない」 その流れのなかで、次に発表したのが、EX30である。ローワンCEOはなにを考えているか。 各テーマごとに、ローワンCEOのコメントとして、インタビューでの回答のなかから抜き出してみた。 −−現在、ボルボが掲げている目標のなかで、もっとも重要なものはなにか。 「一般的に言っているのは、2030年までに販売するクルマをすべてBEVにすることです」 −−電動化を着々と進めている。 「電気化自体が目標というわけではないのです。目指しているのは、サステナビリティ、地球環境保全です。そのために、カーボンフットプリントを削減します。パワートレインが電気になればそれでサステナブル、というわけではありません。部品、生産、廃棄まで含めて、2025年までに、2018年比で約40%、二酸化炭素を減じていく大胆な目標を立てました」 −−EX30ではリサイクルパーツの多用が謳われている。 「カーボンフットプリント減少のために重要なのは、クルマのなかで使う素材の選択です。リサイクルしたアルミニウム、リサイクルした鉄、リサイクルしたプラスチック。往々にしてリサイクル素材はコストがかかりますが、そこは問題でなく、正しいことをやっているのがもっとも重要なのです」 −−さらに素材には踏み込んでいる。 「私たちは、グリーンスチールを使う最初のメーカーです(注:現時点では未使用)。製造プロセスこそ一般のスチールとおなじですが、(製鉄プロセスにおいて通常コークスを使う際の二酸化炭素排出量を抑制する)水素を利用することでカーボンフットプリントを減らすことが出来ます。私はこれはいい選択だと思っています」 −−このさきもカーボンフットプリント削減への努力は惜しまない。 「私たちが掲げている目標は、2025年までにカーボンフットプリントを2018年比で40%減らすことです。そこに向かって、こうして着々と進んでいるのです」 Vol. 2へ続く

TAG: #EX90 #トップインタビュー #ボルボ
TEXT:烏山 大輔
ボルボ・カー・ジャパン、Volvo Studio Tokyoで90kWの急速充電サービスを開始

ボルボ・カー・ジャパンは、4月にオープンしたブランド発信拠点「Volvo Studio Tokyo」でメディア向けの体験会を実施。新たに運用が始まった90kWの急速充電サービスの詳細も発表した。 都心の青山に現れたボルボオーナー専用の充電スポット Volvo Studio Tokyoは東京都港区南青山に位置する。この度始まった急速充電サービスは、ボルボオーナー向けだ。都心では珍しく、2口同時接続ながらそれぞれに90kWの充電能力を持つ。 「これだけの高性能充電器は、ビルの建設に合わせて、Volvo Studio Tokyoが入るという前提だったから設置できた。」と、ボルボ・カー・ジャパンの広報担当者が誇らしげに教えてくれた。 同じ港区内で充電器を探すと多数がヒットするが、その言葉通り、90kW以上に絞るとこの施設以外では2箇所4口に激減した。もし絞り込み条件に「雨にも濡れない」「スペースが広い」があればヒットするのはVolvo Studio Tokyoだけになるだろう。 オンラインで予約も可能なこの急速充電器(ABB製Terra184)は“1時間”の枠で予約ができる。充電時間は30分だ。この1時間枠というのは、ボルボ・カー・ジャパンのボルボオーナーに対する配慮だと思った。 急速充電ではスタンダードの30分という時間は、トイレ休憩には長いが、ランチには短いというまさに「帯に短し襷に長し」なのだ。実際に筆者も高速道路のサービスエリアで食事の途中に、充電が終わったクルマを一般駐車エリアに移動させ、食事に戻ったという経験がある。 ボルボオーナーは充電中にスタジオ内で愛車のチャージを待つのもよし、ランチに行ったとしても余裕を持って食事を楽しめるだろう。 充電料金は税込1,500円、つまり1分あたり50円だ。7月からe-Mobility Powerの急速・普通併用プランの急速充電料金も既報の通り1分あたり27.5円に値上げされるので、1,500円はそのおよそ2倍となるが、Volvo Studio Tokyoが都心の青山であることを忘れてはいけない。 この付近の時間貸し駐車場は1時間で1,600〜2,000円ばかりなのだ。つまり青山に1時間駐車したら実質無料で急速充電ができるようなもの。 「その30分の充電で現状のボルボのBEVは80%くらいまで充電できますよ」とは、先ほどの広報担当者の弁だ。 ボルボオーナーなら、青山で買い物や食事をしながら、愛車も充電し、十分なバッテリー残量で次の目的地へ出かけられるのだ。他ブランドのオーナーが羨むスポットではないだろうか。

TAG: #ボルボ #急速充電 #急速充電器

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