60万km以上走れば収益性を確保できると自信を見せる仕上がり 目先のエコを追いかけただけではない実用性重視の商用EV 【THE 視点】ダイムラー・トラックス傘下のメルセデス・ベンツ・トラックスは10月10日、長距離輸送に対応できるEVトラック「eアクトロス600」を正式発表した。 一度の充電で500kmの航続が可能という。欧州で定められている一日一回の法定休憩時に充電を行なえば、航続距離を1日あたり1,000kmに伸ばすことができる。総重量は44トンで、標準トレーラーでの最大積載量は約22トンとなる。今年中に販売が開始され、2024年末に量産開始予定だ。 モデル名にある「600」の数字は、最大容量600kWhを超えるバッテリー容量が由来。最高出力400kWの急速充電(CCS規格)に対応し、将来的にはメガワット充電 (MCS) も可能になるという。 価格は発表されていない。しかし従来のディーゼルトラックの2〜2.5倍のプライスで購入しても、5年間の保有もしくは走行距離60万kmを経過すれば、ディーゼルよりも高い収益を産むことができるとうたっている。 バッテリーの搭載量の詳細は、最大容量207kWhのバッテリーパックが3つで合計621kWhとなる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)を採用し、耐用年数が長いことが特徴だ。 10年間の稼働で最大120万kmの距離を走行できるよう設計し、この条件下でもバッテリーの劣化状態(SOH)は80%を下回らないという。 その状態の使用済みバッテリーであれば、リユースバッテリーとしても十分に使用可能だ。加えて言うならば、この容量でV2Xに対応できれば、仮想発電所はもちろん災害時の緊急バッテリーとしても頼りになる。 パワートレインは、2つのモーターと4速のトランスミッションを備えた800Vの高電圧の「e-アクスル」(モーター・ギアボックス・インバータ一体型の駆動装置)を新開発した。 モーターは定格出力400kW・最高出力600kWで、高い加速性能と快適性などを実現しているという。 最大容量600kWhのバッテリーで500kmの航続が可能とは、かなりの効率である。高効率のパワートレインだけではなく、エアロダイナミクスの影響も大きいはずだ。 四角いボディではあるが、風洞実験を重ねて空力を検証しており、ボディの周りを空気が綺麗に流れるよう徹底的に検証・デザインをしている。セオリー通りのトラックのフロントフェイスに見えるが、どこかスタイリッシュで先進性を感じるのは、それらの機能性を極限まで追求した結果であろう。 「60万kmの走行距離で収益性が見込める」と、導入・運用コストの目安を示したことも自信の表れだろう。設計上走ることができる120万kmを走行して十分に元がとれるとは頼もしい。一過性の流行やエコの追求で発売したものではないとも受け取れる。 日本のEVトラックも、eアクトロスが示した耐久性に近づくことができれば、一気に普及するのではないだろうか。EVトラックのベンチマークが登場したと言えよう。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、JMSに出展するスポーツEVを一部公開 ……スポーツEVのコンセプトモデル「FT-Se」を出展するという。開発はトヨタのスポーツ部門のGazoo Racingが主導したようだ。一部公開された画像には、「GRスープラ」や「GR86」といったスポーツモデルに付くバッジ「GR」がつけられていることが確認できる。また、SUVタイプの「FT-3e」も出展する。 ★DMM、道の駅やガソリンスタンドへの充電器の導入を後押し ……急速充電器を無料で導入できるプラン「急速充電0円プラン」の提供を開始した。事業者向けのプランで、初期費用やサービスの利用料が無料となる。充電器の導入費用を事業者が負担する代わりに販売価格の一部を還元するプランも用意。 ★エネチェンジ、グランキューブ大阪に充電器を設置 ……大阪府立国際会議場「グランキューブ」<大阪市北区>に最高出力6kWタイプの普通充電器を1口導入した。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.17]