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TEXT:岩尾 信哉
ハイパフォーマンスかつスタイリッシュな電気自動車、 ポールスター4が上海国際モーターショーにて発表

去る4月に中国で開催された上海国際モーターショーにおいて、ボルボ・カー(以下、ボルボ)は、電気自動車(EV)専用のハイパフォーマンスカー・ブランドであるポールスターの新型SUVモデル「ポールスター4」を発表した。 ポールスターの成り立ち 現在ボルボは、ジーリー・ホールディング・グループ(浙江吉利控股集団)傘下にあり、ジーリー・オート(吉利汽車、以下吉利)、ボルボ、ボルボのEV専用ブランドのポールスター、吉利のLynk&Coの各ブランドに、共同出資するかたちで業務提携している。 ポールスターは2000~2010年代にボルボのモータースポーツでの活躍を支えた後、2017年にハイパフォーマンスを訴えるEV専用ブランドに生まれ変わった。現在のポールスターは過去から引き継がれてきたスポーツ性を備えつつ、独自の個性をもつブランドとして成立している。 ポールスター・モデルの成り立ちは、近年では吉利とボルボの協業によって変化を続けている。現状で吉利グループ内のEV専用プラットフォームは、吉利がSEA(サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャー)、ボルボがSPA2(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー2)が挙げられる。 ポールスターでは、クーペセダンEVのポールスター2(2019年発表)が広くボルボ車で使用されてきたCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)を採用する。続く2021年に発表されたラージSUVのEVであるポールスター3は、ボルボ・ブランドのEX90と新世代プラットフォームであるSPA2を共有する。対して、最新モデルであるポールスター4は吉利が開発したSEAプラットフォームを使用するなど、吉利とボルボでの使い分けが進められている。 ポールスター4は「SUVクーペ」と表現 ポールスター4はポールスター3に続く2番目のSUVモデルとなり、ラインナップとしては既存のポールスター2とSUVのポールスター3の中間に位置づけられる。クーペライクなSUVというカテゴリーはすでに群雄割拠の体をなしているが、ポールスター4はデザインをより斬新な仕立てとしていることが特徴といえる。 流麗なプロファイルを備えるポールスター4のボディ仕様を確認すると、全長4,839mm、全幅2,139 mm、全高1,544 mm。 ホイールベースを2,999 mmとして、欧州のDセグメントに位置するボディサイズを生み出した。 ポールスター3とスペックを比べてみると、ポールスター4はより小柄といえる。ポールスター3は、全長4,900mm、全幅:2,120mm、全高1,628mm。ホイールベースが2,985mmとなり、ポールスター4はよりSUVらしいポールスター3よりも全長が短く、全高は低く抑えられたにもかかわらず、ホイールベースが長く採られていることが、より伸びやかなボディラインを形成することに貢献している。 グリルレスのフロントデザインはポールスター・モデルに共通のアイテム。「スマートゾーン」と呼ばれる、シャープな形状のヘッドライトの間の部分にはレーダー/カメラが内蔵される。いっぽうで、ポールスター4には大胆にもルーフ部分をボディ背後にまで延長したうえでリアウィンドーを廃して、ルーフ全体におよぶグラスルーフを与えた。フルグラスエリアといえるルーフ部は、電子制御調光機能も備えている。このルーフデザインにより、ポールスター4は、エアロダイナミクスの向上を含めた美麗なスタイリングを成立させることに成功している。 ボディのボリューム中心を前方に設定しているため、後席空間の不足が懸念されるが、後席位置をを低めて、繭に包まれたような感覚を与えたとポールスターは主張する。 インテリアでは、持続可能性の確保への取り組みを進めている。内装材としてニット素材の100%リサイクルされたPET(ポリエチレンテレフターレート)表皮と「マイクロテック」と呼ばれるバイオ素材を設定。カーペット素材にもリサイクルPETなどが使用される。ドア内装パネルにはNFPP(ナチュナルファイバーポリプロピレン:木材繊維強化再生PP)製として、バージン材使用を50%以下としつつ、40%の軽量化を実現したという。

TAG: #SUV #ポールスター4 #上海モーターショー
TEXT:TET 編集部
すでに三菱車の屋台骨に。三菱eKクロスEVの販売好調のワケを探ってみた

三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」が売れているようだ。4月27日に同社が公表した今年3月の国内販売台数によると、eKクロスEVは1,544台で、三菱車としては「デリカD:5」(2,284台)に次ぎ2位に付けた。同社の3月国内販売は全体でも1万1,896台だから、三菱の販売した新車の10台に1台以上はeKクロスEVということになる。そこで今回は、eKクロスEVは何が評価されているのか検証してみたい。 補助金の利用により実質140万円台半ばで購入可 まず、あたり前のことだが、軽自動車であるeKクロスEVは他の電気自動車に比べ圧倒的に安い。例えば、トヨタの「bZ4X」や日産「アリア」といったSUV勢は500~600万円がスタート価格でおいそれと手が出ないし、コンパクトハッチバックの日産「リーフ」でも400万円オーバーだから日常の足としてはまだ高い。 その点、eKクロスEVは昨年12月に15万円ほど値上げされたとはいえエントリーグレード「G」なら254万6,500円となっており、リーフと比べて約150万円も安価なのだ。たしかに、eKクロスEVの航続距離(WLTCモード)は180kmと、リーフのエントリーグレードと比べても140km程短く、カタログ表記の約7割と言われる実走行可能距離にあてはめると、実質130km弱にとどまるが、そもそも軽自動車で一回のドライブで100km以上走行する機会はそれほど多くないだろう。 しかも、遅ればせながら政府がEVの普及に本腰を入れ始めたおかげで、今なら補助金も55万円と充実している。さらに例えば東京都民なら45万円の自治体独自補助も上乗せされるから、エコカー減税も加味すると、eKクロスEVは実質的に150万円台半ばで購入可能。これをベース車である内燃機関モデルの「eKクロス」と比べてみると、おおよそエントリーグレード「M」(146万3,000円)に近い価格帯になる。 しかも、eKクロスの「M」は、本革巻きステアリングホイールやタッチパネル式フルオートエアコンなどeKクロスEVの「G」に標準となる装備が装着されない。つまり、EVという点を一旦置いて、装備だけに注目しても、補助金が充実している今、eKクロスEVは「買い」と言える。ここに、ガソリン価格高騰中の今、燃料代がかからないというメリットが加わるのだから、まさに鬼に金棒状態なのだ。事実、エンジン車のeKクロスは兄弟車の「eKワゴン」と合わせても3月の販売台数が1,466台と、eKクロスEVに一歩届いておらず、既に主従逆転した感がある。 次ページ>>> eKクロスEVと日産サクラの違い

TAG: #eKクロスEV #サクラ #軽EV
TEXT:生方 聡
急速充電性能を改善、航続距離も把握しやすく:トヨタが「bZ4X」のソフトウェアをアップデート

トヨタ自動車は2023年4月22日、ミドルサイズSUVタイプのEV「bZ4X」のソフトウェアアップデートを5月以降に実施すると発表した。 ユーザーの声に応えるために 「bZ4X」は、トヨタが新開発したEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用するミドルサイズSUVタイプのEVだ。ハイブリッド車で電動化をリードしてきたトヨタだけに、EVのbZ4Xも優れた走行性能を有しているが、その一方で、急速充電やメーター表示に関してユーザーから改善を求める声が寄せられていた。 おもなものとしてトヨタは、 1 急速充電性能 2 メーター上の航続距離 3 メーター表示 を挙げている。 「1 急速充電性能」は、bZ4Xでは1日あたりの急速充電によるフル充電回数を2回に制限してきた。ここでいうフル充電とは、150kWの急速充電器でバッテリー残量(SOC)10%から80%に充電することを指す。また、SOCが80%を超えてからの急速充電は速度を制限。いずれも急速充電によるバッテリー劣化を抑制する狙いがある。 「2 メーター上の航続距離」は、メーターに表示される航続距離が0kmになるタイミングが早いという指摘だ。トヨタによれば、“電欠”で走行不能になるのを避けるために、航続距離が0kmになっても、実際には充電場所までたどり着ける余裕を持たせているという。 「3 メーター表示」は、「感動よりも扱いやすさを [トヨタbZ4X試乗記:その3]」でも指摘しているように、メーター内にSOCの%表示がなかった。また、エアコン使用時の航続可能距離が大幅に短く表示される傾向にあった。

TAG: #bZ4X #ソフトウェア #充電
TEXT:TET 編集部
軽EVやSUVも。ホンダが新たに4車種の電気自動車を国内投入

ホンダは4月26日、電動化を踏まえた企業変革に関する説明会「2023ビジネスアップデート」を開催し、今後の商品計画などについて発表した。計画では2026年までに4種類のEVを国内市場に投入するとのこと。詳しく内容を見ていこう。 2024年〜2025年にホンダから軽EVが2モデル登場 ホンダの発表によると、2024年前半に先陣を切って「N-VAN」ベースの軽商用EVがデビューする。こちらは既に昨年末プロトタイプが公開されたもので、航続距離200kmという目標値と、ガソリン車と同等の100万円台のスタート価格に設定されることが明らかにされていた。今回この既報が再確認されたわけだが、販売時期は昨年末時点で2024年春とされていたのが2024年前半へと改められた。単なる表現の違いかもしれないが、半導体不足の影響を受けての軌道修正の可能性もある。 そして今回の発表で最も注目されるのが、軽乗用車「N-ONE」をベースとしたEVを2025年に市場投入すると明言されたこと。2020年にデビューした現行の2代目N-ONEは個性的なエクステリアやマニュアルトランスミッションの設定など、各所にこだわりを感じさせるプレミアムな軽トールワゴンだが、一方で価格設定もライバルよりやや高かった。 ただ、EV版が追加されるということはバッテリー搭載も考えて設計されていることの証左であり、開発コストが上がってしまった理由も納得できる。先行する軽EVの「日産サクラ」や「三菱ekクロスEV」に、プレミアムな質感で真っ向勝負を挑むモデルとなりそうだ。 細かいところに注目すると、サクラとekクロスEVは全高1650mm超と一般的なタワーパーキングには入らないのに対し、N-ONEはFF車なら同1545mmでギリギリ入庫可能となっている。最近はマンションの立体駐車場に設置できる充電設備も登場しているから、EV版N-ONEの登場が更なるEV普及のきっかけとなる可能性もありそうだ。そのためには、サクラやek クロスEVの約250万円というスタート価格を下回ってほしいところだが、価格については現時点では明かされていない。 さらに、今回の発表では2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を発売することも明らかにされた。これについて詳細は明らかになっていない。推測だが、昨年4月に中国で東風ホンダから販売が開始されたヴェゼルベースのEV「e:NS1」が国内導入される可能性もある。e:NS1は中国の工場で生産されるEVだが、既にホンダはミニバン「オデッセイ」で中国産の車両を国内導入すると発表済み。その続編となる可能性もある。 >>>次ページ トヨタや日産と同じ土俵に

TAG: #N-ONE #戦略
TEXT:烏山 大輔
BMW、i5発売に向けサスペンションコントロールと運転支援システムの開発が最終段階。視覚操作による車線変更機能も装備

BMWグループのテストセンターがあるフランスのミラマスで、新型5シリーズの電気自動車仕様であるi5のサスペンション制御と運転支援システムの最終調整が行われた。この改良により、革新的な「バーティカル・ダイナミクス・マネジメント」を実現、スポーツ性能と乗り心地を同時に向上させた。 また世界初の新しい自動運転機能、ハイウェイ・アシスタントを開発した。この機能は視覚操作によって自動車線変更を実現する。この機能はドライバーの負担を軽減するとともに、事故を防止するために開発された。BMWは今後も自動運転技術の開発に力を入れていく予定だ。 i5の量産開発が最終段階 ワールド・プレミアが数週間後に迫る中、i5の開発はサスペンション・コントロールとドライバー・アシスタンス・システムの微調整を経て、最終段階を迎えていることが明らかになった。 特に革新的なバーティカル・ダイナミクス・マネジメント技術の採用により、5シリーズが誇る高いスポーツ性と乗り心地のバランスの実現を目指す。さらに、自動運転技術であるハイウェイ・アシスタントは、視線誘導により、先行車との距離調整、ステアリング調整や車線変更が可能となり、自動運転機能の新たな進化をもたらすことが期待されている。 i5はスウェーデンのアルジェプログにある冬季テストセンターの雪や氷に覆われた路面から、酷暑や乾燥した条件の地域、市街地走行や田舎道、高速道路や厳選されたテスト・トラックまで、多彩なテストプログラムをこなしてきた。 その後、南フランスのミラマス郊外にあるBMWグループの試験場で、走行性能に関わるすべてのコンポーネントの微調整が行われた。この微調整には駆動システム、高電圧バッテリー、ヒートポンプ機能付き統合冷暖房も含まれる。特に高電圧バッテリーの予測的な熱管理機能は、DC急速充電ステーションでの迅速かつ効率的な充電に貢献する。

TAG: #i5 #電気自動車
TEXT:烏山 大輔
上海モーターショー:BYDのニューモデルをふたたびチェック

BYDが日本で現時点で販売しているモデルはATTO 3(アット3)のみ(「ドルフィン」は8月から受注開始、「シール」は2023年の年末に発売予定)だが、地元である上海モーターショーでは多くのモデルを発表した。 各車を公式のリリースと写真で振り返ってみたい。 Yangwang U8とU9 Yangwang(ヤンワン、漢字表記は仰望)U8は、自社開発の2つのコアテクノロジーであるe4プラットフォームと DiSus-Pを搭載し、最先端技術を駆使したNEV(新エネルギー車:EVやプラグインハイブリッド車などの電動車を指す)ハードコアオフロードSUVである。 ※DiSusシステムについてはこちらをご覧ください。 e4プラットフォームにより、最大1100馬力以上のパワーを発揮し、わずか3.6秒で100km/hに達する。また、過酷な環境下でも安定した走行が可能で、水や流れに浮き(※)、360度のタンクターン(※)もできるオフロード性能に優れたSUVだ。 ※渡河性能ではなく、タイヤが川底から離れても船のように完全に浮いて「航行」し向こう岸にたどり着ける。 ※タンクターン:左右輪を逆向きに回転、例えば左側の2輪を前進、右側の2輪を後進させることで、その場で移動せずに360度のターンをすること。 Yangwang U8には、Premium EditionとOff-road Master Editionという2つのモデルがあり、Premium Editionは究極のオフロード性能と豪華さを併せ持ち、Off-road Master Editionはオフロード愛好家向けに設計され、オフロード性能を更に高めたモデルである。 Yangwang U8 Premium EditionとOff-road Master Editionは、109万8000元(約2,100万円)で先行販売を開始した。 また、Yangwang U8の先行販売に加え、Yangwang U9も正式に発表された。 Yangwangは、独自のブランドビジュアル・アイデンティティを表現するため、「タイムゲートデザイン言語」を採用しており、エネルギー、テクノロジー、スピード、美学を情熱的に表現している。 あわせてBYDはプレミアムNEV専用に開発されたYangwangアーキテクチャーを発表した。このアーキテクチャーは、e4プラットフォーム、DiSusシステム、ブレードバッテリー、マスターボディ、スマートコクピット、先進運転支援システム(ADAS)など、BYDの6つのコアテクノロジーを採用している。 Yangwangアーキテクチャーは、高性能であり、無制限かつ進化可能であることで、オフロード、都市部の道路、レーストラック、その他多くの運転シナリオをカバーすることができる。 U8とU9は、Yangwangアーキテクチャーを搭載した最初のモデルであり、優れたオフロード性能と最先端のテクノロジーを提供することが期待されている。

TAG: #デンザ #ヤンワン #上海モーターショー
TEXT:栁 蒼太
使用後EVの2次・3次利用の可能性を探る実証実験が開始

能勢町、豊能町、株式会社能勢・豊能まちづくり、株式会社 E-konzal(イー・コンザル)、EC SENSING株式会社、住友三井オートサービス株式会社(以下「SMAS」)は、2023年4月より、リユース EVを活用した運用実証を開始する。 適材適所な再リース・再々リース 世界中で脱炭素化や循環型社会実現への期待が高まる中で、限りある資源を有効活用する「サーキュ ラーエコノミー」の考え方が注目されている。それらの課題を解決しうる施策の一つとして「1台のEVを長く使い続けるコンセプト」が掲げられている。 再リース・再々リースの対象となるリユースEV車両について、公用車としての活用可能性を共同して検証する。 リユースEVは新車時と比較してバッテリー性能は低減するが、用途や条件によっては十分に車両電源として再び利用できる。EVの二次利用・三次利用の可能性を見極めることで、EV利用の選択肢を広げ、脱炭素化と循環型社会の実現に貢献することを目的としている。 EVを基軸に6者がコラボ 地域における脱炭素化に向けた対応が急務となる中、地方自治体でもEV導入の事例が増加している。地方自治体では、公用車の走行範囲が限定的となる利用実態をふまえて、今般リユースEVの活用可能性を検証すべく、共同して本実証に取り組む。 それぞれ、地域の脱炭素化ならびに循環型社会の実現に向けた取り組みを推進することで、地域社会の持続的発展に資することを目指している。EVを基軸にした6者のコラボレーションによって、全国に展開できる可能性の高い取り組みができるのではないだろうか。   (1)実証期間 2023年4月より2024年3月までの1年間 ※豊能町は、7 月より運用実証に参加予定 (2)実証内容 1.テーマ 地方自治体における脱炭素化ならびに循環型社会実現に向けた具体的施策としてのリユース EV導入の有効性検証および使用・要件の確立 2.検証項目 ・リユースEVに関する品質・性能面、心理面での課題検証 ・ガソリン車・新車EV等との経済性に関する比較検証 ・リユースEVのメインテナンスに関するトレーサビリティ ・EVバッテリーの劣化状態などに関するトレーサビリティ (3)主な役割 ・能勢町・豊能町 :公用車としてのリユースEVの使用実証および各種運用データの提供 ・能勢・豊能まちづくり:リユースEV充放電データの収集・提供 ・株式会社 E-konzal :実証実験の効果検証、取りまとめ ・EC SENSING 株式会社 :リユースEVのバッテリー劣化診断 ・SMAS:リユースEVの提供、仕様・保守要件および利用価値最大化に関する考察  

TAG: #SDGs #リユースEV
TEXT:烏山 大輔
北洲、HEV駆動用バッテリーをリユースした太陽光発電蓄電池システムE-Pillar(イーピラー)を開発 

宮城県の住宅メーカー・建設資材販売の北洲(ほくしゅう)は、太陽光発電蓄電池システムE-Pillarを開発したと発表した。このシステムは、東北大学の田路和幸名誉教授が考案したもので、HEV(ハイブリッド車)に搭載されていた中古の車載リチウムイオン・バッテリーを再利用することで実現している。環境負荷の低減に資する設備などの開発費用を補助する宮城県の補助事業に採択されている。 世界各国が気候変動対策としてEVの普及を加速させている中、車載用リチウムイオン・バッテリーの将来的な大量廃棄が懸念されている。そこで、北洲は家づくりを通して脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進め、このようなリユースやリサイクルによる取り組みを行うことで、CO₂排出削減に貢献できると考え、開発に着手した。 今後は、事業化に向けた準備を進め、提携先企業を探していく予定だ。この取り組みが実現すれば、車載用リチウムイオン・バッテリーのリユースの受け皿としてだけでなく、住宅において自家発電・自家消費の仕組みを築くことで、CO₂排出削減に寄与することが期待される。 E-Pillar(イーピラー)の概要 【主に4つの使い方を想定】 1. 太陽光発電で発電した電力をE-Pillarを介してEVに給電(H2V) 2. EVに蓄えられた電力をE-Pillarを介して家電に放電して活用(V2H) 3. 平時には太陽光発電で発電した電力をE-Pillarに蓄電することも可能 4. 非常時には太陽光発電で発電した電力をE-Pillarを介することで安定的に住宅内へ供給

TAG: #V2H #バッテリー #蓄電池
TEXT:烏山大輔
ヤマト住建、電気を自給自足できる「トライブリッド蓄電システム」搭載のモデルハウスを上尾市と奈良市にオープン。停電時にEVからの給電も可能

注文住宅を手がけるヤマト住建は、ニチコン開発のトライブリッド蓄電システムを搭載した、電気の自給自足をかなえるモデルハウスを埼玉県上尾市と奈良県奈良市にオープンした。 太陽光発電システム・蓄電池・V2Hを連携したトライブリッド蓄電システムで電気の自給自足を可能に このシステムを搭載することで、電気の自給自足を実現する。エネルギーの価格が高騰している昨今で、普段の生活では電気代を気にせず、さらに災害等による停電時にも安心して暮らすことができる。上尾市と奈良市にオープンした2棟のモデルハウスは、実際の生活を見据えた見学や宿泊も可能だ。さらに実際停電になった際に蓄電池や電気自動車から、家の中に電気を供給する模擬停電も体験できる。 トライブリッド蓄電システムとは ニチコン開発のトライブリッド蓄電システムは太陽光発電・蓄電池・電気自動車を活用して、電気の自給自足を促進するシステムである。日中は太陽光で発電した電力を家庭で使い、使いきれなかった電力は蓄電池や電気自動車に貯める。貯まった電力を夜間や停電時に使用できることで、電気代を抑えられCO2排出量の削減にもなるので、家庭にも環境にもやさしい次世代の住宅になる。 モデルハウスでの模擬停電 上尾市・奈良市のモデルハウスでは実際の住宅での停電時を想定し、あえて一時的にブレーカーを落とした状態で蓄電池や電気自動車から住宅に電力を供給する様子を体験できる。電力会社からの供給が止まっても、家庭では電力を使用でき(6kWまたは6kVAまで)、蓄電池・電気自動車に貯まっている電力でほぼ普段通りの生活を送ることができる。

TAG: #V2H #充電
TEXT:岩尾信哉
トヨタの研究開発会社「ウーブン・バイ・トヨタ」、電気自動車開発を含む事業内容を発表

トヨタ自動車は2023年4月11日のプレスリリースにおいて、去る2月に「ウーブン・プラネット・ホールディングス」が社名を変更して生まれた「Woven by Toyota(ウーブン・バイ・トヨタ)」のグループ内での役割を明らかにした。 「ウーブン・バイ・トヨタ」は、トヨタのモビリティ技術を開発する子会社であり、「安全でスマートな人に寄り添うモビリティをすべての人に届ける」ことを目的として掲げている。具体的には、ソフトウェア・プラットフォーム「Arene(アリーン)」の研究開発、安全を第一においた自動運転技術、現在2025年の一部実証開始を目指して静岡県裾野市に建設中のモビリティのためのテストコース「Woven City(ウーブン・シティ)」を通じて、「人々と社会に移動の自由と安全、幸せを届ける」としている。今回の発表を機に、「ウーブン・バイ・トヨタ」の概要について解説する。 新体制発足に伴う社名変更 「ウーブン・バイ・トヨタ」は、2018年に東京で設立された「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)」を引き継ぐ企業である。TRI-ADは、自動運転技術のソフトウェア開発の企業として、トヨタ自動車、アイシン、デンソーが共同出資して誕生。米国におけるトヨタの自動運転やAI開発などの将来技術の研究開発拠点であるTRI(2016年設立)に対して、より現場に近い業務を行う日本側の開発拠点とされている。設立当初は、広く自動運転などの技術や知識を備える企業・人材を集めるという意図を含めて、「トヨタ」の名を冠さないことも新鮮な印象を与えていた。 その後TRI-ADは、2020年に持ち株会社として「ウーブン・プラネット・ホールディングス」として社名変更を受け、2021年以降は投資ファンドである「ウーブン・キャピタル」を含む4社で構成されるようになった。 そして今回、トヨタの新体制発足をきっかけとして、同社は「ウーブン・バイ・トヨタ」として新たにスタートすることになった。なお、同社のCEO(最高経営責任者)はジェームス・カフナー氏が継続してその役職を務めている。 あえてBEV開発に言及 先に触れた4月11日の発表内容を見ると、事業内容の説明にこれまで見られなかったBEV(バッテリー型EV)に向けた取り組みが加えられていることがわかる。従来はTRIと旧TRI-ADでは、自動運転と水素技術への取り組みが主な研究開発として主張されてきた印象があった。実際、TRI-ADは発足当初の目標として、「自動運転に関連する新しい技術と、先進的で安全なシステムを世界中の人々に届けること」を掲げていた。 「ウーブン・バイ・トヨタ」も、トヨタの佐藤恒治社長が先に発表した内容に基づき、トヨタの次世代モビリティに関する商品・技術開発を支える企業として、企業名に再びトヨタの文字が加えられてスタートすることになった。 確認しておけば、今回の発表リリースでも、「ウーブン・バイ・トヨタ」はトヨタが掲げている「トヨタモビリティコンセプト」、すなわちクルマの価値の拡張、モビリティの新領域への拡張、モビリティと社会システムとの融合を進めるとしている。そのうえで、「トヨタの先進的なBEVを含む次世代車の開発」という新たなテーマを加えたことは、佐藤新社長が就任発表時に打ち出したBEV開発推進の方針を受けての表明といえる。  

TAG: #BEV
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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