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TEXT:福田 雅敏
EVバスの現在地、現役EV開発エンジニアが参加した勉強会で浮き彫りになったEVバス普及への課題[THE視点]

2023年3月14日、東京都内で業界関係者・識者向けの勉強会「交通ビジネス塾 第135回『社会と事業者に恵みをもたらすEVバスの普及に向けて』」が開催された。 この催しは2015年に筆者も講演をしたことがあるが、今回は受講側として参加した。EVバスの普及についてがテーマだが、EVバスを導入する利点と難点を、実際に導入した企業から話を聞くこともできた。ぜひ世の中に知らせたい内容なのでレポートをしたい。 商用・公共交通用EV普及に向けて補助金を用意する政府だが導入は進まず 最初の講演は「EVバスの普及に向けた国交省の取組み」だ。国土交通省・自動車局・技術環境政策課・環境基準室長・小岩慎之氏が登壇した。 電動車の構造から始まり、電動車が必要な理由、CO2の削減について説明があり、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップが示された。商用車(バスを含む)の小型GVW(車両総重量)8トンクラスでは、2030年に新車の電動化率を20~30%に増やし、2040年には100%を目標としているという。 今後10年を見据えたロードマップでは、官民合わせ10年間で150兆円の投資となるとのこと。この金額は車両開発費のみならず、インフラまで含んだ数字となっている。 輸送事業者におけるEV等の導入目標については、2030年度の保有台数に占める割合として、トラックの8トン以下で5%。8トン超については示されなかったが、バスは全体(小型から大型まで)5%とし、タクシーについては8%と示された。 海外では、ノルウェーが乗用車で2025年までにHEV/ガソリン/ディーゼル車の販売を禁止。商用車では、都市内バス/小型トラックもEV・FCEVの販売比率を100%と他に先行している。これに米国が続く。 日本でのEVバスの導入状況であるが、24万台程度のバス保有台数のうちEVバスはわずか150台程度に留まる。僅か0.1%の割合だ。このうちほとんどが中国製というのが現状である。 今後の日本における次世代商用車(EV・FCEV)の普及・導入に向けた取組として、「産学官連携による高効率次世代大型車両開発促進事業」「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」「次世代商用車導入支援」などが示された。 このうち、「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」には、2050年カーボンニュートラル実現に向け国庫負担額として1,130億円を計上しているという。「次世代商用車導入支援」では、令和4年度二次補正と令和5年度当初予算合わせ約250億円が計上されている。 このほか、一般乗合旅客自動車運送事業者に係る特例措置の創設により、EVバス等に係わるものの固定資産税・都市計画税の軽減、水素活用による運輸部門等の脱炭素化支援事業(環境省)、商用車の電動化促進事業(経済産業省・国土交通省連携事業)など、2050年カーボンニュートラルの達成を目指しているという。 ※資料出典:国土交通省 EVバス導入事業者が悩む車両トラブル対応 2番目の講演は「EVバスの導入経験と国への政策への希望」だ。登壇者はイーグルバス株式会社・代表取締役社長の谷島 賢氏(下記写真の右が谷島 賢氏、左は小岩慎之氏)。同社は埼玉県川越市を拠点に貸切・路線バスを運営する。 イーグルバス社がEVバスを導入した理由として、社内事情と対外的事情があったという。その事情とは、小江戸川越巡回バスの老朽化によるものだ。 これまでマイクロバスをわざわざボンネット付きのバスに改造して走らせて来たというが、乗車定員が少ないこと、そのため採算が合わないこと、そして導入後20年を超えメインテナンス・部品調達の問題が露出。これに対外的事情としてSDGsの世界的な広まりもあってEVバスの導入に踏み切ったという。 イーグルバスが保有するEVバスは合計2車種7台で、ボンネット付き中型2台に路線型小型(全長7m)バス5台である。 導入した中国製EVバスについて赤裸々な意見が伺えた。中国製バスは、工場では日本向けのステッカーが貼られ特別扱いされているというが、それでも部品の品質がチープで壊れやすいという。「逆に日本人は過剰品質を求め過ぎるのか?」とも話されていた。 それでも購入する理由は、国の補助金を入れると小型バスが1,300万円程度で購入できるからだ。同じサイズの国産ディーゼルバス(日野・ポンチョ)よりも安く、さらに環境性能・騒音・走行性能が優れているのがEVバスのメリットとのこと。 実際にハンドルを握るドライバーからは、良い点として「力があり運転が楽」「エアコンが効く」「始業点検が楽で運転している優越感もある」との声が上がっているという。逆に悪い点として「ブレーキ(回生)に慣れるまで時間がかかる」「ウィンカーとワイパーのレバーが逆」「スイッチ等中国語なので分からない」とのことだが、肯定的な意見が多いようだ。 メカニックからは、「分からないことだらけで細かなトラブルも多く自ら直すことが出来ない」「トラブルの多くが原因不明のためその究明が大変」だという声が上がった。さらに日本製の料金箱や、行先表示板などを取り付けたら、電力が足りなくなり止まることもあったという。 また、充電方式も日本の急速充電規格の「CHAdeMO(チャデモ)」の充電器は高いとのことで、中国規格の「GB/T」のまま充電器も持ち込んで運行しているという。 その充電も、50kWを超える急速充電をすると充電量による電気代は少し安くなるが、基本料金が高くなるのが問題と話していた。これに電力使用時のピークが上がると、向こう1年間の基本料金が高くなるのも問題とのこと。 そのため、充電時にはピークを越えない気遣いも必要で、経済性(ランニングコスト)は、2年程度では判断できないとのことだった。冬場の暖房や真夏日のエアコンフル稼働により電費は悪化するとのこと。数年後にバッテリーが劣化した場合の交換費用も掛かるので、導入2年程度で経済性はわからないというのは理解できる。 最後に国への要望として「補助金の申請をいつでも出来るようにして欲しい」「補助金はしっかり予算化して減額はしないで欲しい」「EVバスへの電気料金体系を何とかして欲しい」など話していた。 中国製は壊れやすくメインテナンスも大変と言われていたが、EVバスを2台から7台へと増車している前向きな姿勢には、採算だけでなく、SDGsにも真剣に取り組んでいる証と感じた。 この2件の講演を聴いて抱いた感想は、国としても大掛かりかつかなり野心的な目標を掲げているということだ。24万台あるとされるバス。その5%が2030年にEVバスとなると、今後7年で1万2,000台となる。これから普及が加速はされると思うが、かなり補助金とラインナップが増えないと達成は難しいだろう。 資料出典:イーグルバス株式会社

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TEXT:陶木 友治
「なぜテスラはうまくいったのか?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第7回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。EV界で最も注目を浴びるテスラの戦略に迫ります。 Q.「EV」と聞いて、真っ先にテスラを思い浮かべる人が多いと思います。実際、テスラは電動化や自動運転の技術で最先端を走っており、時価総額でトヨタを超えるなど高い評価を獲得しています。日本メーカーはEVの市場投入自体は早かったにもかかわらず、テスラに差をつけられました。なぜでしょうか。 答えは簡単です。テスラは「レガシー(遺産)」を持っていなかったからです。 日本メーカーは、ハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車の技術で先行しています。これは技術蓄積の賜物で、世界中のあらゆる地域で高評価を獲得してきました。今もその評価に変化はなく世界中で人気を集めているため、EVシフトの重要性が認識され始めたからといって、ある日を境に「明日からハイブリッド車の取り扱いをやめます」というわけにはいきません。 「産業」という視点で見ると、日本の自動車産業は約550万人が従事する日本を支える一大基幹産業で、いきなりすべてのクルマをエンジン不要のEVに置き換えてしまうと、必然的に多くの部品が不要となり、部品サプライヤーにおいて100万人規模の雇用が失われる可能性があります。全車EV化が雇用に与える影響があまりにも大きいため、メーカーはそう簡単にレガシーを手放すことができません。 また、日本車メーカーに限りませんが、トヨタや日産、GM、フォルクスワーゲンなどほとんどのメーカーは、エンドユーザーへのクルマの販売を基本的には「販売店(ディーラー)」を通じて行なっています。日本車メーカーは、製造工程や工場、販売店を含むこれらの「膨大な資産(=遺産)」がかえって足かせ・負担となってしまい、自由な動きが取りにくくなっているわけです。 一方で、テスラはどうでしょうか。 テスラはディーラーを持たず、EVをすべて「直販方式」で販売しています。しかも開発車種をEVのみに絞り込んでおり、過去の遺産を持たず一つのパワートレインだけを開発すれば良かったため、技術的に先行することができました。もしテスラのような新興メーカーが内燃機関やハイブリッドをゼロから開発して市場参入を企てたとすると、とてつもない労力と資金が必要になったはずです。 一方のEVの場合、バッテリーやモーターなどは専門サプライヤーから供給を受ければいいため、駆動系統の技術はコモディティ化します。だからテスラは、販売店にもサプライヤーにも気を遣う必要がなく、ゼロベースからクルマを設計することができました。しかも「ギガプレス」といって、ボディとシャシーを一体成型する画期的な技術を導入し、世界を驚かせるイノベーションを起こし続けています。 従来の自動車部品のサプライチェーンは、さまざまな場所で100個以上の部品を製造し、品質管理を経て組立工場に輸送していました。ギガプレスを使えば、1つの場所、1つの作業で完成できるため、シャシーの製造コストは大幅に低下します。EV一点勝負ですから、投資効率もすこぶる高い。このように、レガシーに縛られた自動車メーカーと根本的な思想が異なっていたことから、テスラは新しい取り組みをどんどん進めることができ、レガシーメーカーより先行できたのです。 Q.ではテスラは今後も順風満帆と言えるのでしょうか。それともどこかで落とし穴が待ち受けているのでしょうか。 今は販売台数がそれほど多くないため、足を引っ張るような重大な問題は出現していません。しかし販売台数が順調に伸び、200万台、300万台、500万台~と拡大していったときに、何かしらの問題に直面する可能性は考えられます。 具体的には、メンテナンスの問題ですね。流通台数が増えるにしたがって、例えば、予期せぬ不具合が発生して「大量リコール」を余儀なくされる事態も想定されます。簡単なメンテナンスで解決できないような問題だった場合、「全車回収」というケースもあり得るかもしれません。そうなった場合、テスラは顧客の信頼を失い危機に瀕してしまう可能性があります。 テスラは、これまで幾度も経営危機に瀕してきました。今は好調に見えるテスラも決して盤石ではありませんから、トヨタをはじめとするレガシーメーカーも「テスラには敵わない」「テスラに追いつけない」と悲観したり焦りを感じたりする必要はありません。レガシーメーカーにもレガシーメーカーなりの戦い方があるはずです。 これまでのハードウェア開発で蓄積された素晴らしい技術はEV時代には「レガシー:弱み」となりますが、未来のクルマにおいてはソフトウェアが担う役割が拡大していきます。実際、クルマの付加価値に占めるソフトウェアの比率は増加の一途を辿っており、2030年にはクルマのコストの約半分をソフトウェアが占めるようになるという試算もあります。今後のクルマの価値を決定するようになると見込まれるソフトウェアをハードウェアとうまく連携させることにより、レガシーを強みに転換できるような新しい戦略を編み出していくことがレガシーメーカーには求められています。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

TAG: #EV経済学 #中西孝樹
TEXT:生方 聡
マルチタイプ急速充電器は運まかせ [ID.4をチャージせよ!:その9]

休日の充電渋滞解消の救世主になるのか!? 現在、増殖中のマルチタイプ急速充電器でID.4を充電してみました。 マルチタイプ急速充電器が常磐道にも 先日、「高速道路初、新東名のSAで150kW級急速充電器が運用開始」というニュースで、高速道路のサービスエリア/パーキングエリアとして初めて、1口最大150kW級の急速充電器が運用を開始したという情報がありました。 150kW器での充電は未体験なだけに、次に新東名を利用するときにはぜひとも使ってみたいと思っていますが、この情報とともに興味を持ったのが、浜松サービスエリアの上り/下りに6口、駿河湾沼津サービスエリアの下りに4口のマルチタイプ急速充電器が設置されたことです。 このマルチタイプ急速充電器は、すでに首都高速道路の大黒パーキングエリアで運用されており、1口の最大出力は90kW、同時に利用する場合には総出力が200kW以下になるようコントロールされるという特徴があります。 私がよく利用する常磐道にも、友部サービスエリアの上りに6口、下りに4口のマルチタイプ急速充電器が設置されました。そこでさっそく、友部サービスエリア下りで、できたてほやほやの急速充電器を利用してみました。

TAG: #ID.4
TEXT:陶木 友治
「アジアはEVシフトに積極的? 消極的?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第6回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。今回、観察するのは日中以外のアジア市場です。 Q.中国はEVシフトに積極的ですが、それ以外のアジアの国々は、EVに対してどのようなスタンスをとっているのでしょうか。 ざっくり言いますと、どの国も新車の3割程度はEV化したいという意向を持っているようです。ただ以前もお伝えしたとおり、アジアの国々は再生可能エネルギーも原子力も持っていません。急激にEV化を推し進めると自分たちの首を絞める結果につながる可能性もあるため、慎重姿勢をとっています。その意味では、日本と同じようなスタンスの国が多いと言えるでしょう。アジアの中でEV志向が最も強いのはインドネシアで、タイ、ヴェトナム、インドが続きます。 ハイブリッド車を輸出したい日本車メーカーにとってアジア諸国は心強い存在と言えるかもしれませんが、アジアの国々の中にも「このまま日本と同じ戦略を取っていると、日本とともに沈没してしまうのではないか」と危惧している国も少なくなく、彼らが日本にとって好ましいスタンスをこのままとり続けてくれるかどうかは未知数であり、日本も油断はできません。 例えば、2013年にインド政府は「National Electric Mobility Mission Plan 2020」という戦略を発表しました。そこではEVシフトの必要性が言及されており、2020年までにCO₂排出量を1.3〜1.5%削減する目標を掲げていました。その3年後の2016年には、インド国内の移動手段を2030年までにすべて電動化するという大胆な目標を発表し、世界に衝撃を与えています。たいへん野心的な目標でしたが、インドはこの目標、すなわち2030年までの完全EV化を諦め、目標を30%に下方修正するなど現実路線をとるようになりました。インドの例からわかるのは、アジアの中にも本音では全車EV化したいと思っている国が存在するということです。状況が変われば、一気に100%EV化に方針転換する国が現れたとしても不思議ではありません。 Q.アジアの国々も欧米の動向は無視できないでしょうから、方針転換してEVシフトを急激に進めてくる可能性は考えられますよね。日本車が生き残るにはどうすればいいのでしょうか。 日本は欧米のようにルールメイキングできる国ではないにもかかわらず、世界の自動車マーケットで3割のシェアを獲得するまでの国になりました。なぜそれが可能だったかというと、消費者に「選ばれてきた」からです。欧米のようにルールメイキングで主導権を取ろうとすることを「デジューレスタンダード(公的機関によって定めた標準化)」と呼びますが、日本車は企業間の競争によって、業界の標準として認められる「ディファクトスタンダード」を勝ち取ってきた」のです。ガソリン車やハイブリッド車においては、信頼性や燃費性に優れる日本車がディファクトスタンダードになりました。EVにおいても「ユーザーから選ばれる」ことによって、ディファクトスタンダードを目指すしかありません。 アメリカやヨーロッパの顔色を伺いながら、そして中国の顔色も伺いながら、さらに世界の動向を見極めながら、高品質な製品を売っていく、選ばれていくということを実現していくしか日本メーカーが生き残る手段はありません。現状では不利な戦いを余儀なくされていますが、それをどうやって「勝ち戦」に変えていくのか、自動車メーカーの努力はもちろんのこと、政府の後押しやサポートも重要になってくると思います。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

TAG: #EV経済学 #中西孝樹
BMW iX5 HYDROGENとBMWのオリバー・ツィプセ会長
TEXT:小川フミオ
iX5ハイドロジェンが示唆するBMWの「戦略」とは。オリバー・ツィプセ会長が明かした水素の可能性

BMWが、現行X5をベースに開発した燃料電池自動車「iX5 HYDROGEN(ハイドロジェン)」。2023年2月に、その国際試乗会がベルギーで実施された。本イベントに参加したジャーナリストの小川フミオが、オリバー・ツィプセ取締役会長に、彼らが燃料電池車を今このタイミングでリリースした背景を問うた。 「運転する歓びがなければ作る意味がない」 BMWが2023年2月に水素で走る「iX5」をジャーナリストに試乗させた。BEVに力を入れる同社が、なぜここで、水素で走る燃料電池車を作ったのか。 電気自動車の力強さと、エンジン車のような簡単な充填というメリットをもつ水素自動車。iX5は、水素を分解して電子を取り出し、それをバッテリーに貯蔵してモーターを回す燃料電池車。 いま世界で100台を走らせるという「パイロットフリート」のiX5に乗って、出来のよさに感心しつつ、BMWの戦略を、オリバー・ツィプセ取締役会会長に聞いた。 −−アントワープ(ベルギー)を舞台にしたテストドライブで、iX5に乗って、そのナチュラルさとパワフルさに感心しました。 「私も何度も運転しました。気に入ってもらえて嬉しいです。重視したのは、BMW車が大事にしているドライビングプレジャーです。それがなければ作る意味はない、とまで開発陣は肝に銘じて、iX5を開発したのです。このクルマを通して、未来のために私たちがなにをしているか、理解していただけると幸いです。iX5は、運転する歓びを与えてくれるクルマですよね。ひょっとしたら、ICE(エンジン車)以上に」 −−BMWはそもそも代替燃料車で比較的長い歴史をもっていますね。とくにいまのBMW iにつながるバッテリー駆動の電気自動車では。 「最初が2009年にお披露目したMINI E(150kWの電気モーターを35kWhのバッテリーで駆動)ですね。ミニクーパーをベースに開発した車両で、500台を北米でプライベートユーザーにリース販売しました。そのあと2013年にi3をローンチさせました。今回のiX5は、北米とか日本でテストフリートを走らせるので、私は当時のことを思い出しています」 BEVのみの1本脚ではなく水素との2本脚へ −−それにしても、なぜ水素なのでしょうか。これだけBMW iとしてBEVのラインナップが充実しているのに。 「未来へと歩みを進めるには、1本脚では歩行がむずかしい、と私は言っています。安定して先へと進むためには、もう1本脚があったほうがいいのです。それが水素燃料で走るクルマなのですね。主軸はBEVですが、それを水素でおぎなっていくのです」 −−BEVだけではなにかが足りないということでしょうか。 「たとえば、充電インフラです。このままBEVが増えていくと、それに合わせて充電ステーションを作っていかなくてはなりませんが、たとえば郊外などではペイにしくく、インフラのコストが負担となってのしかかってくることが予想されます。それを水素でおぎなえればというのが私たちの考えです。水素は液体のかたちで運搬可能ですし、化石燃料のように充填が早くできるメリットをもっています」 −−ちょうど昨日(2023年2月14日)欧州委員会が、2035年に内燃機関搭載の乗用車の販売を禁止する法案を採択しました。水素自動車の開発も急務ということでしょうか。 「2026年をめどに欧州委員会は、(ユーロ7とも言われている)ICEの規制をかなり強めると発表したところです。すでに国によっては、BEVが新車販売の6割に達するところもあります。しかし、原料の稀少性とか、充電ステーションの整備とか、27年とか28年には不足の問題が出てくるんじゃないでしょうか。そこで水素です。利点は、稀少な原料をあまり使わないこと、大きなバッテリーを使わないこと、軽量化できることなど、いろいろあげられます」 −−川崎重工業が液体水素を豪州から運んでくる運搬船を手がけるなどしていますね。 「ここで考えるべきは、クルマだけでなく、もっと広い視野でのインフラです。電気の充電インフラは乗用車しか使えません。クルマだけなんです。船舶もトラックも航空機も使っていません。でも水素にはいろいろな業界が注目しています。たとえば、iX5の試乗会の舞台になったアントワープは港湾地区に水素の充填ステーションを持ち、水素で走る小型船も実用化されています」 「これからの20年から30年のあいだのエミッションフリーのために、充電と水素という、ふたつが必要になってくるのではないでしょうか。クルマだけでいえば、市街地なら充電ステーションでもいいでしょう。でも長距離走る場合は、行き先によっては水素のほうが便利ということにもなるかもしれません」

TAG: #iX5 #燃料電池
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第7回:EV選びも楽しい! e-208GTになったのは その2

プジョーe-208GTを選んだ過程には、愛車となるイメージ作りがあったよう。絞り込まれた3車種、そして心を決めたのは奥様のひと言。EV選びの楽しさを綴ります。 眺めては乗り、比べてはどれも良くて わが家のEV探しが、フランス生まれの3車に絞られたことは前回話した。DSブランドが1車、プジョー・ブランドが2車。いずれもBセグメントのコンパクトモデルだ。 すでに話した通り、家内も僕もフランス車が好き。だから、プジョー208、2008、DS3クロスバックにEVモデルが加わった時は、「やったね!!」みたいな感じで、思わず手を打った。 とりあえずは3車を借り出して眺めまわし、そして試乗したのだが、どれもいい。ルックスにしても、乗り味にしても、走り味にしても……家内共々「いいね!」でまとまった。 DS3は、カッコが良いから…… 3車とも、ひと目見てユニークであり、フランス車ならではの才気をもタップリ感じさせられた。……が、DS3クロスバック E-TENSEにはひとつだけ引っかかるところがあった。 それは、「カッコよすぎ!」、「カッコ付けすぎ!」……どちらの表現が妥当なのかはわからないが、デザイン面での過剰感を感じたのだ。 DSの氏素性を考えれば「それでこそDS!」といったことになるのかもしれない。でも、「僕に馴染むのか?」「僕に着こなせるのか?」といった「?」が頭を過った。 家内も同じ。「コンパクト系ではもったいないくらい上質だし、デザインも斬新だけど……大丈夫かな……」と不安そうだった。 そう……高齢になって、とにかく「日々を気軽に楽しく過ごしたい」と思っているわれわれには、ちょっと「気の抜けないクルマ」に感じられたのだ。 もちろん、なりふり構わず乗りまわせる…といったことではない。でも、DS3クロスバック E-TENSEには、「日々のちょっとした外出での装いにも気を遣わされる……」、といった印象を抱いたのである。 そんなことで、最初に、DS3クロスバック E-TENSEは候補から外れた。

TAG: #EVは楽しい! #岡﨑 宏司
TEXT:清水和夫
最新のFCEVに乗って分かったBMWが“二刀流”を目指すワケ[BMW iX5 HYDROGEN海外試乗]

BMWが燃料電池システムを搭載するFCEV「iX5 HYDROGEN(ハイドロジェン)」のパイロット販売を年内にスタートする。4年間の開発期間を経て出来上がった水素で走る新型SUVは、果たしてどのような完成度を見せるのか。国際自動車ジャーナリスト・清水和夫がベルギーで最速試乗した。 ドイツのアーヘンで見た不思議な光景 長い間首を長くして待っていた新型車にようやく試乗できる日がやってきた。そのクルマとは、BMWの燃料電池車(FCEV)「iX5 HYDROGEN(ハイドロジェン)」なのである。プロトタイプの国際試乗会がベルギーで開催されたので、さっそくその試乗記をレポートしてみたい。はたしてどんな電動車になっているのだろうか。 ベルギーの首都ブリュッセルに行くために、ドイツのフランクフルト空港から陸路で移動することにした。せっかくの機会なので、マツダが市販を始めた新型CX-60のPHEVモデルを借りて西に移動する。試乗会の基地はブリュッセルの港湾部として知られるアントワープだ。そこまで約400kmのドライブを楽しんだが、アウトバーンを西に進路を取り、ベルギー国境近くのドイツ・アーヘン市に入ると不思議な光景が目に止まった。 右手には火力発電所。その煙突から吐き出す真っ白な雲が空に向かって立ち上る。だが、左手には多くの風力発電があり、ゆっくりと大きな羽を回しながら電気を作っていた。この火力発電所では石炭燃料を使っている。白い雲は水蒸気だったが、CO2は排出している。しかし、ロシアからの天然ガスの供給が止まり、やむなく石炭を使う苦しい台所事情がありそうだ。風力発電は再生可能なエネルギーなのでCO2排出は基本的にはゼロだ。 この不可思議な発電事情の光景を後にして、さらに200kmほど走るとアントワープについた。早速ホテルにチェックインを済ませ、試乗前のレセプションに参加。なお、今回使用する燃料電池車の心臓部にあたるスタック本体はトヨタから供給されたものである。 BMWのFCEVはどんなシステムなのか iX5 HYDROGENにはトヨタMIRAIのスタックを使うので、システム全体もトヨタ製かと思ったが、実際にBMWへ供給されるのは、125kWのスタック本体だけであった。 ここでトヨタMIRAIのFCEVのスペックをおさらいしておくと、300枚のセルが直列に組み込まれたスタックは128kWの出力で発電する。リヤタイヤを駆動するモーターは最大134kWということで、MIRAIはスタックの電力でモーターを駆動する考えだ。バッテリーは空冷式で、主に回生ブレーキを使う30kW程度(筆者の予想)なので、トヨタMIRAIはTHS(トヨタのハイブリッドシステム)のアーキテクチャーを基盤としているといえる。また、3本の高圧水素タンク(700気圧)に蓄えられる水素は6kgの重量で、ベースモデルの車両重量は1920kgとなっている。 iX5 HYDROGENはMIRAIと同じスタックを使うので125kWを発揮するが、リヤモーターの上に配置されたバッテリーは水冷式のパワフルな170kW。したがって「125+170」となるから、リヤモーターは295kW(約401馬力)で駆動する。これは、高出力バッテリーとスタックによるBEVをアーキテクチャーとする考えである。高圧水素タンクは2本だが、水素重量はMIRAIと同じ6kg。だが、後続距離はMIRAIよりも短い500kmとなる。

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TEXT:陶木 友治
「日本車メーカーの『二正面作戦』は正しい?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第5回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。メーカーによって異なるアプローチについて分析します。 Q.日本車メーカーの中には、トヨタの「全方位戦略」、マツダの「マルチソリューション戦略」など、EVに全振りせず、ハイブリッド車を残す「どっちつかず」とも取れる戦略をとろうとしているメーカーがいます。どの技術が将来のトレンドになるかが不透明なため、保険をかけたくなる気持ちはわかりますが、日本車メーカーのこの「二正面作戦」とも言える戦略は正しいのでしょうか。 結論から言いますと、正しいかどうかは関係なく、日本メーカーは「そうする以外に選択肢がない」のが実情です。 EVシフトといっても、これを強力に推し進めようとしているのは、あくまでもヨーロッパやアメリカなどです。そこに中国も加わろうとしていますが、いずれにしろ先進国に限っては、「EV化」の流れを止めることは難しいかもしれません ただ、世界は先進国だけで構成されているわけではありません。東南アジアにインド、中近東、南米、アフリカもあります。これらの地域はエネルギー事情が厳しく、再生可能エネルギーも原子力も持っていません。要するに、エネルギー資源的には日本に似た条件なのです。しかも経済発展が遅れているため、新たな発電インフラを整備する資金的余裕もありません。 これまで日本メーカーは、基本的にはアメリカをメインマーケットとして成長してきました。その戦略は正しく、これからも日本はアメリカ市場でクルマを売っていくことを基本戦略に据える必要があります。そのため欧米の意向や動向にアジャストし、EVの技術開発を積極的に進めていかなければなりません。 しかし世界は一枚岩ではありませんから、欧米の動向をウォッチしつつ、ハイブリッド車の需要が旺盛な新興国に対応するための技術戦略もとらなければなりません。すなわち、日本は「二正面作戦」をとらざるを得ないのです。確かに「どっちつかず」の態度かもしれませんが、日本には日本の生き方、戦い方があると私は思っています。 Q.国会議員の猪瀬直樹氏や小泉進次郎氏は、日本車はすべてEV化すべきという趣旨の発言をされています。ジャーナリストの中にも、同様の意見を持つ人が散見されます。 EVに関するメディアやジャーナリストの議論の中身を見てみますと、「EVか否か」という二者択一の議論に終始しているように感じます。それは間違いです。どちらか一方を選ぶのではなく、EVと内燃機関車の両方の競争力を確立させるという、日本はそういう運命を背負った国であると理解すべきだと思います。そう言うと、全方位やマルチソリューション戦略を掲げていれば上手くいくように感じますが、そうではありません。二重投資の負担を背負った日本メーカーは極めて効率を犠牲にしながら世界の自動車メーカーとの競争を勝ち抜かねばならないわけで、険しい道を進まなければならないということです。現時点で、先進国のEVシフトが急速に伸びているのに対し、トヨタを始め日本メーカーのEV戦略が大幅に出遅れているため、先進国市場での競争力維持に黄色信号が灯っています。全方位やマルチソリューションだからEVを手抜かりして良いという意味ではなく、EVでの競争力を確立して初めて、マルチソリューション戦略は成立するのです。 欧米が敷いたレールの上をそのまま歩いていっても、現状では日本車が勝てる要素は少ないと思います。日本メーカーが生き残るためには、欧米とは異なる競争力を維持していくことが大切で、日本の強みが残る領域の選択肢を残しておくことが欠かせません。 日本のハイブリッド車の「省炭素」性能はすこぶる高く、「省炭素」の分野では世界の超優等生です。もしEVに全振りしてしまうと、電力調達の問題に突き当たります。日本には再生可能エネルギーインフラが少なく「グリーンエネルギー」が手に入りにくいため、EV化を推進するとかえってCO₂排出量を増やしてしまうことになるからです。 そのため日本には、再生可能エネルギーの割合を少しずつ高めていくなどエネルギーミックスを転換させながら、徐々にEV化を進めていくしか手がありません。同時に、グリーン水素から合成される合成燃料や藻類から合成する次世代ディーゼルといったカーボンニュートラル燃料を動力源とするエンジンの可能性を追求していくことです。もしかすると日本は、世界の中で最後まで内燃機関車が残る稀有な国になるかもしれません。一種の「ガラパゴス」状態が出現する可能性がありますが、それを受け入れ、欧米とは一線を画した独自路線をひた走ることが日本には求められています。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「電気自動車(EV)を売らなければ、日本車はいずれ絶滅?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第4回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。これまでハイブリッド車に依存してきた日本メーカーが今後とるべき施策とは。 Q.日本車メーカーが今後とるべき方針について、国内では「EV推進派」と「EV否定派」とで意見が分かれているようです。「日本車は全車EV化すべき」という意見と「EV化は必要ない」という意見のどちらが正しいのでしょうか。 日本車メーカーに限った話ではありませんが、EV化を進めなければそのメーカーはいずれ世界でクルマを売ることができなくなってしまいます。関連する世界の動きをいくつかご紹介しましょう。 2022年8月に、アメリカのカリフォルニア州は州内で販売される新車の100%を、2035年までにCO₂を排出しないEVか全体の20%を上限としたプラグインハイブリッド車にすることを義務づける新たなZEV規制(大気汚染対策として導入された規制。自動車メーカーが州内で自動車を販売する場合、EVや燃料電池車など排出ガスを出さない無公害車を一定比率以上販売することを義務付ける制度)を承認し、他州もこの規制に追随する可能性があると言われています。仮に目標が達成できない場合は、1台につき2万ドルの罰金を科すようです。 EUの欧州委員会は、クルマのCO₂排出量を2030年までに現在のレベルから55%削減し、2035年までに100%削減することを決めました。これにより、EU加盟27か国では、EV以外のクルマを販売することが事実上不可能となり、自動車メーカーはEUからの罰金を回避するために、EVのラインナップを劇的に拡充させることが求められています。イギリスに限っては、2030年までにEV以外の販売を禁止する計画です。 世界最大のCO₂排出国である中国も、2035年を目途に新車販売のすべてを環境対応車にする方針を表明していて、50%をEVを中心とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車にするとしています。 最も厳しい欧州当局の規制に対応するとすれば、解決策はEV以外にありません。対策が間に合わなければ高額の罰金が科されるため企業としての存続が難しくなり、そのメーカーは倒産することになるでしょう。好むと好まざるとに関わらずEVを売っていかなければ企業の存続が危うくなるという焦燥感が、現在、世界中の自動車メーカーがEVに取り組む大きなモチベーションになっています。 よって「EV化すべきか否か」という二者択一の議論にあまり意味はありません。長期的な観点で見れば、EV化を進めなければ、そう遠くない将来にそのメーカーは潰れることになるはずです。日本車メーカーも条件は同じです。ただし、日本車はEVだけでなくその他のパワートレインを日本と様々な地域に向けて販売していこうとする「全方位」あるいは「マルチソリューション」の戦略を掲げています。マルチソリューションだからEVを手抜かりして良いという意味ではなく、EVでの競争力を維持して初めてマルチソリューション戦略の強みが発揮できると考えるべきです。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

TAG: #EV経済学 #中西孝樹
TEXT:生方 聡
電気自動車のドライブ、寒い日は要注意!? [ID.4をチャージせよ!:その8]

「電気自動車は寒さに弱い」という話をよく耳にします。実際、ID.4ではどうなのか、電費や充電の速さ、エアコンの効きなどを振り返ります。 「EVは寒さに弱い」は本当だった! 「このまえID.4で雪山に行ったら、電欠しそうになった」 先日、同業のライターからそんな話を聞きました。バッテリー残量に余裕があると思っていたのに、実際はギリギリだったと。私も以前、フォルクスワーゲンeゴルフに乗っていたときに同じような経験をしました。しかも、なんとか辿り着いた急速充電ステーションではなかなか充電が進まず、“寒さはEVの敵”と思い知らされたのです。 「EVは寒さに弱い」というのは事実で、ウチのID.4 プロでも、気温が10℃を下まわるようになると平均電費の数字が明らかに下がってきます。一般道では、それまでは6〜7km/kWhを示していたものが、4〜5km/kWhと3〜4割低くなり、それにあわせて走行可能距離も短くなるわけですから、油断は大敵です。 では、実際どのくらい電費が下がるのか、高速道路で比較してみました。 気温[℃] 平均速度[km/h] 電費[km/kWh] エアコン 備考 13.0 94 6.4 ON 3.0 95 5.2 ON 4.0 97 5.9 OFF -1.0 98 5.1 ON スタッドレスタイヤ装着 上の表は高速道路の同じ区間(常磐自動車道 守谷SA〜友部SA)を、ACCを100km/hに設定して走ったときの電費です。ただし、リアルな世界でチェックした電費ですので、気温以外の状況を完全に揃えることはできず、あくまで傾向を把握するための数字とご理解ください。 気温が13℃のときの電費を基準とすると、気温が3℃に下がると2割弱も電費が悪化しました。その要因のひとつとしてエアコンの消費電力が増えることが考えられます。 それでは、エアコンをオフにし、シートヒーターだけでガマンするとどうなるでしょうか? 実際に試してみると電費低下は1割ほどにとどまりました。とはいえ、エアコンをガマンしても電費の悪化をゼロにすることはできません。これは気温の低下にともない、駆動用リチウムイオン・バッテリーの働きが鈍くなるからです。スタッドレスタイヤを装着すると、若干ではありますがさらに電費が低下しました。 気温が低いと充電にも影響が出ます。リチウムイオン電池の働きが鈍い状態で無理に急速充電を行うとバッテリーを傷める恐れがあり、それを防ぐために充電量を抑制することがあるのです。実際、いつも利用している50kW急速充電器で、ふだんなら40〜47kWで充電できるのが、気温が低く、バッテリー温度が低い状況では20kW台とほぼ半分の出力に落ちることもありました。 最新のEVのなかには、急速充電前にバッテリーを温める機能が備わるものもありますが、ID.4ではそういった機能は備わっていないため、バッテリーが冷えた状態でいきなり急速充電せず、ある程度走行したあと、バッテリーが温まっているうちに急速充電するよう心がけています。

TAG: #ID.4 #VW
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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