中西 孝樹 記事一覧

TEXT:陶木 友治
「こうなる! 2023年の自動車業界!」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第8回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。短期連載の最終回は2023年の展望について語ります。 Q.これまでの議論を踏まえて、2023年の自動車業界の展望をお願いします。 注目すべきポイントは3つあります。一つずつ説明していきましょう。 2023年は、先進国を中心に世界的な景気後退に突入することが予想されます。不況時、新車の売れ行きは鈍ることが普通ですが、逆転現象が起こって新車販売台数は伸張するでしょう。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2021年以降の減産です。 減産によって供給力が落ちたため、自動車の価格はむしろ上がり、減産すればするほど利益が上昇するという不思議な現象が発生しました。2023年はコロナ禍の影響の揺り戻しにより、新車需要が低下する以上のスピードで供給回復が見込まれるため、不況下でも新車販売が伸びることが予想されます。自動車業界には「数量回復」という追い風が吹くはずです。 販売台数が伸びるからといって、楽観は禁物です。二つめの注目ポイントについて、「人件費」の高騰を挙げたいと思います。 現在、世界を凄まじいインフレが襲っていますよね。自動車メーカーも「コストインフレ」の圧力を受けています。コストインフレとは、原材料や資源価格の上昇による資源インフレ、エネルギーインフレ、賃金の高騰による賃金インフレなどが代表的です。クルマの場合、原材料の高騰等により1台あたり実質20万円近くもコストアップしています。欧米ではこの影響の大部分を新車価格の引上げへ転嫁できていますが、日本では車両の販売価格そのものは上がっていません。20万円のコストアップ分の大部分を、メーカーが一旦受け留める形で影響を吸収しています。円安が進展したことで、円安メリットでその負担を吸収できる余力があったことも事実です。 このコストインフレが緩和されるのか、それともさらに強まるのか注視していく必要がありますが、私はコストインフレがさらに進むと思っています。理由は原材料等の高騰ではなく、日米市場ともに賃金のさらなる高騰が起きると予想されるからです。 アメリカは賃金上昇ペースが速く、自動車メーカーの工場で働くよりもマクドナルドで働いたほうが賃金が高いという、一昔前なら考えられない状況が出現しています。マクドナルドのようなサービス業に人材の流出に歯止めが掛からない状況です。 工場に人材を呼び戻すためには、賃金を上げざるを得ませんが、賃金を上げてまで新しく人を雇ったとしても、その人材が熟練するまでには一定の期間が必要ですから、当然、高い生産性は見込めません。つまり生産性の低い人材を高い賃金で雇わなければならないという状況が予想され、これは業績悪化の要因となります。販売数量が伸びたメーカーは利益増によりコストインフレを吸収できますが、それができなかったメーカーは業績悪化を免れないと思います。 Q.話をEVに限れば、2023年はどのようなことが予想されるでしょうか。 それが3つ目の注目ポイントです。アメリカやヨーロッパを中心にEVの新型車がたくさん発売されますから、世界的な景気後退の中でも、EV自体は快調に販売を伸ばしていくと思います。 EVは世界的な関心を集めているワードで、毎日のようにEVの動向がメディアで報道されているため、すさまじい勢いでEVシフトが進んでいるかのような錯覚に陥りそうになります。 しかし現状では、EVが一般ユーザーにまで浸透しているとはとても言えない状況です。アメリカでも日本でも、EVを購入しているのはごく一部の富裕層や高所得者に限られるため、本格的なEVシフトはまだ到来していません。富裕層や高所得者の所有車の一部がEVにシフトしているに過ぎなかったのです。 ところが、昨年9月を転換点として、テスラはEVの価格引下げに戦略を転換し、2023年1月には米国で9%~20%も小売り価格を引き下げる安売り攻勢に転じています。2023年はEVの低価格化の始まりとなるでしょう。一部の富裕層でない消費者がこの価格変動にどの様に反応するか、非常に強く注目しています。 伝統的な自動車メーカーはEV商品投入を積極化させていくのですが、低価格シフトがその出鼻をくじく格好となっており、EV収益性は際どく悪化し事業性そのものが崩壊するかもしれません。 日本メーカーはある意味この戦いの構図にはまだ参戦している状態ではありません。出遅れている日本メーカーが安全なところに立っていると考えるべきか、それとも戦う前から敗北していると考えるべきか、大きな論点となっていくでしょう。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司)

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TEXT:陶木 友治
「なぜテスラはうまくいったのか?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第7回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。EV界で最も注目を浴びるテスラの戦略に迫ります。 Q.「EV」と聞いて、真っ先にテスラを思い浮かべる人が多いと思います。実際、テスラは電動化や自動運転の技術で最先端を走っており、時価総額でトヨタを超えるなど高い評価を獲得しています。日本メーカーはEVの市場投入自体は早かったにもかかわらず、テスラに差をつけられました。なぜでしょうか。 答えは簡単です。テスラは「レガシー(遺産)」を持っていなかったからです。 日本メーカーは、ハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車の技術で先行しています。これは技術蓄積の賜物で、世界中のあらゆる地域で高評価を獲得してきました。今もその評価に変化はなく世界中で人気を集めているため、EVシフトの重要性が認識され始めたからといって、ある日を境に「明日からハイブリッド車の取り扱いをやめます」というわけにはいきません。 「産業」という視点で見ると、日本の自動車産業は約550万人が従事する日本を支える一大基幹産業で、いきなりすべてのクルマをエンジン不要のEVに置き換えてしまうと、必然的に多くの部品が不要となり、部品サプライヤーにおいて100万人規模の雇用が失われる可能性があります。全車EV化が雇用に与える影響があまりにも大きいため、メーカーはそう簡単にレガシーを手放すことができません。 また、日本車メーカーに限りませんが、トヨタや日産、GM、フォルクスワーゲンなどほとんどのメーカーは、エンドユーザーへのクルマの販売を基本的には「販売店(ディーラー)」を通じて行なっています。日本車メーカーは、製造工程や工場、販売店を含むこれらの「膨大な資産(=遺産)」がかえって足かせ・負担となってしまい、自由な動きが取りにくくなっているわけです。 一方で、テスラはどうでしょうか。 テスラはディーラーを持たず、EVをすべて「直販方式」で販売しています。しかも開発車種をEVのみに絞り込んでおり、過去の遺産を持たず一つのパワートレインだけを開発すれば良かったため、技術的に先行することができました。もしテスラのような新興メーカーが内燃機関やハイブリッドをゼロから開発して市場参入を企てたとすると、とてつもない労力と資金が必要になったはずです。 一方のEVの場合、バッテリーやモーターなどは専門サプライヤーから供給を受ければいいため、駆動系統の技術はコモディティ化します。だからテスラは、販売店にもサプライヤーにも気を遣う必要がなく、ゼロベースからクルマを設計することができました。しかも「ギガプレス」といって、ボディとシャシーを一体成型する画期的な技術を導入し、世界を驚かせるイノベーションを起こし続けています。 従来の自動車部品のサプライチェーンは、さまざまな場所で100個以上の部品を製造し、品質管理を経て組立工場に輸送していました。ギガプレスを使えば、1つの場所、1つの作業で完成できるため、シャシーの製造コストは大幅に低下します。EV一点勝負ですから、投資効率もすこぶる高い。このように、レガシーに縛られた自動車メーカーと根本的な思想が異なっていたことから、テスラは新しい取り組みをどんどん進めることができ、レガシーメーカーより先行できたのです。 Q.ではテスラは今後も順風満帆と言えるのでしょうか。それともどこかで落とし穴が待ち受けているのでしょうか。 今は販売台数がそれほど多くないため、足を引っ張るような重大な問題は出現していません。しかし販売台数が順調に伸び、200万台、300万台、500万台~と拡大していったときに、何かしらの問題に直面する可能性は考えられます。 具体的には、メンテナンスの問題ですね。流通台数が増えるにしたがって、例えば、予期せぬ不具合が発生して「大量リコール」を余儀なくされる事態も想定されます。簡単なメンテナンスで解決できないような問題だった場合、「全車回収」というケースもあり得るかもしれません。そうなった場合、テスラは顧客の信頼を失い危機に瀕してしまう可能性があります。 テスラは、これまで幾度も経営危機に瀕してきました。今は好調に見えるテスラも決して盤石ではありませんから、トヨタをはじめとするレガシーメーカーも「テスラには敵わない」「テスラに追いつけない」と悲観したり焦りを感じたりする必要はありません。レガシーメーカーにもレガシーメーカーなりの戦い方があるはずです。 これまでのハードウェア開発で蓄積された素晴らしい技術はEV時代には「レガシー:弱み」となりますが、未来のクルマにおいてはソフトウェアが担う役割が拡大していきます。実際、クルマの付加価値に占めるソフトウェアの比率は増加の一途を辿っており、2030年にはクルマのコストの約半分をソフトウェアが占めるようになるという試算もあります。今後のクルマの価値を決定するようになると見込まれるソフトウェアをハードウェアとうまく連携させることにより、レガシーを強みに転換できるような新しい戦略を編み出していくことがレガシーメーカーには求められています。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「アジアはEVシフトに積極的? 消極的?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第6回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。今回、観察するのは日中以外のアジア市場です。 Q.中国はEVシフトに積極的ですが、それ以外のアジアの国々は、EVに対してどのようなスタンスをとっているのでしょうか。 ざっくり言いますと、どの国も新車の3割程度はEV化したいという意向を持っているようです。ただ以前もお伝えしたとおり、アジアの国々は再生可能エネルギーも原子力も持っていません。急激にEV化を推し進めると自分たちの首を絞める結果につながる可能性もあるため、慎重姿勢をとっています。その意味では、日本と同じようなスタンスの国が多いと言えるでしょう。アジアの中でEV志向が最も強いのはインドネシアで、タイ、ヴェトナム、インドが続きます。 ハイブリッド車を輸出したい日本車メーカーにとってアジア諸国は心強い存在と言えるかもしれませんが、アジアの国々の中にも「このまま日本と同じ戦略を取っていると、日本とともに沈没してしまうのではないか」と危惧している国も少なくなく、彼らが日本にとって好ましいスタンスをこのままとり続けてくれるかどうかは未知数であり、日本も油断はできません。 例えば、2013年にインド政府は「National Electric Mobility Mission Plan 2020」という戦略を発表しました。そこではEVシフトの必要性が言及されており、2020年までにCO₂排出量を1.3〜1.5%削減する目標を掲げていました。その3年後の2016年には、インド国内の移動手段を2030年までにすべて電動化するという大胆な目標を発表し、世界に衝撃を与えています。たいへん野心的な目標でしたが、インドはこの目標、すなわち2030年までの完全EV化を諦め、目標を30%に下方修正するなど現実路線をとるようになりました。インドの例からわかるのは、アジアの中にも本音では全車EV化したいと思っている国が存在するということです。状況が変われば、一気に100%EV化に方針転換する国が現れたとしても不思議ではありません。 Q.アジアの国々も欧米の動向は無視できないでしょうから、方針転換してEVシフトを急激に進めてくる可能性は考えられますよね。日本車が生き残るにはどうすればいいのでしょうか。 日本は欧米のようにルールメイキングできる国ではないにもかかわらず、世界の自動車マーケットで3割のシェアを獲得するまでの国になりました。なぜそれが可能だったかというと、消費者に「選ばれてきた」からです。欧米のようにルールメイキングで主導権を取ろうとすることを「デジューレスタンダード(公的機関によって定めた標準化)」と呼びますが、日本車は企業間の競争によって、業界の標準として認められる「ディファクトスタンダード」を勝ち取ってきた」のです。ガソリン車やハイブリッド車においては、信頼性や燃費性に優れる日本車がディファクトスタンダードになりました。EVにおいても「ユーザーから選ばれる」ことによって、ディファクトスタンダードを目指すしかありません。 アメリカやヨーロッパの顔色を伺いながら、そして中国の顔色も伺いながら、さらに世界の動向を見極めながら、高品質な製品を売っていく、選ばれていくということを実現していくしか日本メーカーが生き残る手段はありません。現状では不利な戦いを余儀なくされていますが、それをどうやって「勝ち戦」に変えていくのか、自動車メーカーの努力はもちろんのこと、政府の後押しやサポートも重要になってくると思います。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「日本車メーカーの『二正面作戦』は正しい?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第5回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。メーカーによって異なるアプローチについて分析します。 Q.日本車メーカーの中には、トヨタの「全方位戦略」、マツダの「マルチソリューション戦略」など、EVに全振りせず、ハイブリッド車を残す「どっちつかず」とも取れる戦略をとろうとしているメーカーがいます。どの技術が将来のトレンドになるかが不透明なため、保険をかけたくなる気持ちはわかりますが、日本車メーカーのこの「二正面作戦」とも言える戦略は正しいのでしょうか。 結論から言いますと、正しいかどうかは関係なく、日本メーカーは「そうする以外に選択肢がない」のが実情です。 EVシフトといっても、これを強力に推し進めようとしているのは、あくまでもヨーロッパやアメリカなどです。そこに中国も加わろうとしていますが、いずれにしろ先進国に限っては、「EV化」の流れを止めることは難しいかもしれません ただ、世界は先進国だけで構成されているわけではありません。東南アジアにインド、中近東、南米、アフリカもあります。これらの地域はエネルギー事情が厳しく、再生可能エネルギーも原子力も持っていません。要するに、エネルギー資源的には日本に似た条件なのです。しかも経済発展が遅れているため、新たな発電インフラを整備する資金的余裕もありません。 これまで日本メーカーは、基本的にはアメリカをメインマーケットとして成長してきました。その戦略は正しく、これからも日本はアメリカ市場でクルマを売っていくことを基本戦略に据える必要があります。そのため欧米の意向や動向にアジャストし、EVの技術開発を積極的に進めていかなければなりません。 しかし世界は一枚岩ではありませんから、欧米の動向をウォッチしつつ、ハイブリッド車の需要が旺盛な新興国に対応するための技術戦略もとらなければなりません。すなわち、日本は「二正面作戦」をとらざるを得ないのです。確かに「どっちつかず」の態度かもしれませんが、日本には日本の生き方、戦い方があると私は思っています。 Q.国会議員の猪瀬直樹氏や小泉進次郎氏は、日本車はすべてEV化すべきという趣旨の発言をされています。ジャーナリストの中にも、同様の意見を持つ人が散見されます。 EVに関するメディアやジャーナリストの議論の中身を見てみますと、「EVか否か」という二者択一の議論に終始しているように感じます。それは間違いです。どちらか一方を選ぶのではなく、EVと内燃機関車の両方の競争力を確立させるという、日本はそういう運命を背負った国であると理解すべきだと思います。そう言うと、全方位やマルチソリューション戦略を掲げていれば上手くいくように感じますが、そうではありません。二重投資の負担を背負った日本メーカーは極めて効率を犠牲にしながら世界の自動車メーカーとの競争を勝ち抜かねばならないわけで、険しい道を進まなければならないということです。現時点で、先進国のEVシフトが急速に伸びているのに対し、トヨタを始め日本メーカーのEV戦略が大幅に出遅れているため、先進国市場での競争力維持に黄色信号が灯っています。全方位やマルチソリューションだからEVを手抜かりして良いという意味ではなく、EVでの競争力を確立して初めて、マルチソリューション戦略は成立するのです。 欧米が敷いたレールの上をそのまま歩いていっても、現状では日本車が勝てる要素は少ないと思います。日本メーカーが生き残るためには、欧米とは異なる競争力を維持していくことが大切で、日本の強みが残る領域の選択肢を残しておくことが欠かせません。 日本のハイブリッド車の「省炭素」性能はすこぶる高く、「省炭素」の分野では世界の超優等生です。もしEVに全振りしてしまうと、電力調達の問題に突き当たります。日本には再生可能エネルギーインフラが少なく「グリーンエネルギー」が手に入りにくいため、EV化を推進するとかえってCO₂排出量を増やしてしまうことになるからです。 そのため日本には、再生可能エネルギーの割合を少しずつ高めていくなどエネルギーミックスを転換させながら、徐々にEV化を進めていくしか手がありません。同時に、グリーン水素から合成される合成燃料や藻類から合成する次世代ディーゼルといったカーボンニュートラル燃料を動力源とするエンジンの可能性を追求していくことです。もしかすると日本は、世界の中で最後まで内燃機関車が残る稀有な国になるかもしれません。一種の「ガラパゴス」状態が出現する可能性がありますが、それを受け入れ、欧米とは一線を画した独自路線をひた走ることが日本には求められています。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「電気自動車(EV)を売らなければ、日本車はいずれ絶滅?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第4回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。これまでハイブリッド車に依存してきた日本メーカーが今後とるべき施策とは。 Q.日本車メーカーが今後とるべき方針について、国内では「EV推進派」と「EV否定派」とで意見が分かれているようです。「日本車は全車EV化すべき」という意見と「EV化は必要ない」という意見のどちらが正しいのでしょうか。 日本車メーカーに限った話ではありませんが、EV化を進めなければそのメーカーはいずれ世界でクルマを売ることができなくなってしまいます。関連する世界の動きをいくつかご紹介しましょう。 2022年8月に、アメリカのカリフォルニア州は州内で販売される新車の100%を、2035年までにCO₂を排出しないEVか全体の20%を上限としたプラグインハイブリッド車にすることを義務づける新たなZEV規制(大気汚染対策として導入された規制。自動車メーカーが州内で自動車を販売する場合、EVや燃料電池車など排出ガスを出さない無公害車を一定比率以上販売することを義務付ける制度)を承認し、他州もこの規制に追随する可能性があると言われています。仮に目標が達成できない場合は、1台につき2万ドルの罰金を科すようです。 EUの欧州委員会は、クルマのCO₂排出量を2030年までに現在のレベルから55%削減し、2035年までに100%削減することを決めました。これにより、EU加盟27か国では、EV以外のクルマを販売することが事実上不可能となり、自動車メーカーはEUからの罰金を回避するために、EVのラインナップを劇的に拡充させることが求められています。イギリスに限っては、2030年までにEV以外の販売を禁止する計画です。 世界最大のCO₂排出国である中国も、2035年を目途に新車販売のすべてを環境対応車にする方針を表明していて、50%をEVを中心とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車にするとしています。 最も厳しい欧州当局の規制に対応するとすれば、解決策はEV以外にありません。対策が間に合わなければ高額の罰金が科されるため企業としての存続が難しくなり、そのメーカーは倒産することになるでしょう。好むと好まざるとに関わらずEVを売っていかなければ企業の存続が危うくなるという焦燥感が、現在、世界中の自動車メーカーがEVに取り組む大きなモチベーションになっています。 よって「EV化すべきか否か」という二者択一の議論にあまり意味はありません。長期的な観点で見れば、EV化を進めなければ、そう遠くない将来にそのメーカーは潰れることになるはずです。日本車メーカーも条件は同じです。ただし、日本車はEVだけでなくその他のパワートレインを日本と様々な地域に向けて販売していこうとする「全方位」あるいは「マルチソリューション」の戦略を掲げています。マルチソリューションだからEVを手抜かりして良いという意味ではなく、EVでの競争力を維持して初めてマルチソリューション戦略の強みが発揮できると考えるべきです。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「EVシフトは、日本車イジメ?」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第3回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。アメリカ・ヨーロッパによる政策は日本にどう影響しているのでしょうか。 Q.欧米はEVシフトに舵を切り、中国もEVで先行していますよね。見方によっては、世界が一丸となって日本車をイジメているように見えなくもないのですが、実際にそういう側面があるのでしょうか。 ガソリン車やハイブリッド車の分野では、これまで日本車が圧倒的な優位を築いてきました。日本車に対し「壊れにくい」「低燃費」というイメージを抱いている人が多いと思いますが、それは確かにそのとおりで、日本車は特に「低燃費」が評価されて国際的に高い競争力を誇ってきました。日本車の低燃費は、長年にわたってメーカーが積み上げてきた高効率な内燃機関技術の賜物です。それに対抗するため欧米はEV化を推し進め、特に日本のハイブリッド車潰しに躍起になっています。欧州の自動車メーカーの技術では日本車に太刀打ちできないため、自国の自動車産業を保護するために日本車の勢力伸張を抑えようとしているとも言えます。 2021年7月に、EUの欧州委員会はCO₂を1990年と比較して2030年までに少なくとも55%削減する提案を発表し、その構想には2035年にCO₂を排出する内燃機関車の販売を禁止する内容も含まれていました。ハイブリッド車も対象とするかどうかの結論は出ていませんでしたが、2022年10月に、正式にハイブリッド車も対象とすることが決まりました。基準を満たさない車を販売した場合、厳しい罰金が科されることになります。ハイブリッド車が主力の日本車にとっては厳しい規制と言わざるを得ません。 Q.日本車メーカーもEVを発売しています。日本は技術力に定評がありますから、ハイブリッド車同様に、EVの分野でも他国メーカーを圧倒できるのではないでしょうか。 それが一筋縄ではいかないんですよ。なぜなら、日本にはエネルギー資源がないからです。いわゆる一次エネルギーは3種類しか存在せず、それぞれ「化石燃料」「再生可能エネルギー」「原子力」です。化石燃料は燃焼時にCO₂を排出しますが、再生可能エネルギーと原子力は発電時にCO₂をほとんど排出しません。 見てわかるとおり、日本はどれも持ち合わせていませんよね。原子力は持っていますが、ほとんど稼働していないため「持ち腐れ」状態になっています。現状の日本のエネルギー環境下、すなわち化石燃料をベースとした電力供給に依存した状態でEVシフトを推進したとしても、充電に必要な電気を作る際に多量のCO₂が排出されることになり、EVシフトを推進すればするほどCO₂が増加するといった本末転倒な結果になる可能性があります。国家としてカーボンニュートラルの実現を目指している以上、現状では単純なEVシフトという選択は取り得ません。 一方で世界に目を転じると、欧州は再生可能エネルギーを持っていますし、アメリカは原子力を持っています。つまりEV化が進んでも、欧米はクリーン電力の供給に問題を生じないわけです。 このことからもわかるように、EVシフトはエネルギーを持たない日本をさらに弱体化させる方向へ導き、欧米の競争力を強める結果になります。冒頭の「日本車イジメですか?」という質問に対しては、「結果としてそうなっている」という答えになりますね。 日本にとってやっかいなのは、ここに中国やインドなどの新興国も絡んでくることです。中国はEV化を急いでいますが、その理由は、ハイブリッド車やエンジンに強みを持つ日本を飛び超えて、ルールメイキングで欧米に追いつき、さらに追い越そうとする「自動車強国」への進展を企図しているからに他なりません。インドはこういった中国の動きに警戒を強めていると言えます。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「EVシフトに潜む欧米の『ルールメイキング』の罠」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第2回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつける連載です。「EVシフトは欧州が仕掛けた経済戦争」という側面についてさらに詳しく迫ります。 Q.前回、EVシフトは欧州が仕掛けた「ルールメイキング」による経済戦争であるという趣旨の話がありました。もう少し詳しく教えてください。 まず2019年12月に、欧州委員会の新体制が発足しました。このとき欧州委員会は「6つの優先課題」という戦略を発表したのですが、その筆頭に掲げられていたのが「欧州グリーン・ディール」という構想です。これは「脱炭素」と「経済成長」の両立を目指すとする構想で、具体的な中身としては、「2050年までに気候中立を実現する」「欧州企業をクリーン技術・製品のリーダーにする」などの目標が掲げられています。あらゆる産業分野を対象としており、もちろん自動車分野も対象になっています。 前回も触れましたが、脱炭素はCO₂の削減に向けた取り組みをマネーに変えるために欧州が編み出した新しい経済ルールという側面が強く、その狙いが何かと言えば、温暖化から地球を守るという理想の下に、企業にイノベーションを促して雇用を創出させたり外貨を獲得させたりすることを目論んだ「企み」のようなものと言っても過言ではありません。実際、「6つの優先課題」を細かく見ていくと、貿易協定などを通じて他国にEUモデルの採用を促していくという方針も明示されています。そのことからも、脱炭素時代において国際ルールメイキング上のイニシアティブを握りたい彼らの思惑を見て取ることができるでしょう。 いずれにせよ「欧州グリーン・ディール」の発表が、EVシフトの流れを作ったことに間違いはありません。欧州はEVのみが次世代車の役割を担うと主張しており、他地域の自動車メーカーの強み、特にハイブリッド車で高い競争力を誇る日本メーカーを封じ込めようとする戦略性がそこに垣間見えています。 Q.トランプ退陣後、アメリカも欧州に追随する動きを見せたというお話でしたが、具体的に教えてください。 バイデン大統領は就任早々、トランプ前政権が離脱した地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰を宣言し、2050年までにCO₂などの温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」の目標達成を打ち出しました。この目標は、それまでのアメリカの政権では見られない意欲的なものでした。 バイデン政権の政策は「米国インフラ計画(アメリカン・ジョブズ・プラン)」から発動し、2030年までに新車の50%以上をEVや燃料電池車にする大統領令にも署名をしました。アメリカン・ジョブズ・プランにおいては、4年間に環境・インフラ部門に2兆ドル(約260兆円)を支出し、エネルギー分野の技術革新研究に10年間で4000億ドル(約52兆円)を投資する計画になっており、またクリーンエネルギー産業で1000万人の雇用を創出する目標も設定したほか、AIやバッテリー技術などの研究開発への追加投資を促し、より強靭な競争力を持つ国家の建設を唱えました。この法案は、後に「超党派インフラ法案(ビルドバック・ベター法)」として成立しました。このように、莫大な補助金政策を実行することで温暖化対策を実現し、自国の経済安全保障を強化する戦略を打ち出したのがバイデン政権です。 いま振り返ってみると、欧州の「欧州グリーン・ディール」とアメリカの「アメリカン・ジョブズ・プラン」が、その後の世界のEVシフトの流れを決定づけたと思います。繰り返しになりますが、欧州もアメリカも「温暖化を防いで地球環境を守る!」といった使命感から行動しているわけではなく、主導権を握って自国の権益を拡大するために行動しています。実際には、ここに中国やインドの動きも密接に絡んでくるのですが、その話は別の機会に解説しましょう。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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TEXT:陶木 友治
「EVシフトが急速に進み始めた裏側にあるもの」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第1回

電気自動車の登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。「伝説の自動車アナリスト」として知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつける連載企画の第1回です。 Q.ここ2~3年で、EVに対する関心が急激に高まり、普及に向けた取り組みも急速に進んだ印象があります。何か理由があるのでしょうか? 一言で説明することは難しいですね。順を追ってひも解いていきましょう。 ポイントとなるキーワードをいくつか挙げるとすると、一つ目は「カーボンニュートラル」になります。昨今、地球温暖化を抑制するために世界各国がCO₂削減に向けた取り組みを進めていますよね。その対策のひとつとして、CO₂を排出するガソリン車からCO₂を排出しないEVへのシフトを図る動きが本格化し始めたのが理由です──というのが一般的な回答になりますが、実際のところは、気候変動対策をめぐる世界的な潮流を利用して、それぞれの国、なかでも欧州が自分たちの強みを生かしたルールメイキングを図り、自らが有利になる競争を仕掛けてきているというのが実情です。 EVシフトは、エネルギー問題と密接に関係しています。地球温暖化防止策としてCO₂排出量を大幅に減少させる可能性が高いEVは、将来の自動車の姿として重要な役割を担うとかねてより期待されてきましたが、動力となる電力を化石燃料で発電していてはCO₂を削減したことになりません。 そのためEVには再生可能エネルギー経由の電力を使用することが望ましく、その分野で強みを持っていたのが欧州です。だから彼らには、「カーボンニュートラル」の取り組みを機にEVシフトを加速させ、他国に先行したいという思惑があったのです。 カーボンニュートラルは「地球のため」「環境のため」という本来の崇高かつ純粋な目標がスタートにあったとしても、どちらかと言うと欧州のビジネス利益を拡大するための方策、具体的には「自国の経済安全保障の構築・強化」という意味合いが昨今は強まっている政策なのです。これが二つ目のキーワードです。 三つ目は「新型コロナウイルス感染症の流行」です。コロナ禍によって、世界は戦後最悪の経済危機に直面しました。対面によるコミュニケーションの制限や移動の停滞で生産活動や物流がストップするなど、あらゆる業界に影響を与えています。 自動車分野ももれなく影響を受け、多くのメーカーが減産を余儀なくされたことは記憶に新しいところです。とはいえコロナはプラスの影響ももたらしています。例えば多くの会議がオンラインで開催されるなど、コロナの感染拡大が進化圧となって様々な分野のデジタル化が促進されることになりました。 社会のデジタル基盤やユーザーのデジタル嗜好の強まりが、デジタルと相性が良いEVシフトを強めている背景があります。 もともと自動車業界では、100年に一度とも言われる大変革期を象徴して「CASE」という言葉が使われていました。CASEは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の略で、従来は保有から利用への転換である「MX(モビリティトランスフォーメーション)」を実現する技術革新の意味合いから注目されてきました。 ところが昨今の議論を見ていると、「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉とともにCASEが語られるようになってきています。 どういうことかと言うと、EVシフトは「MX」を実現するためのものというよりも、カーボンニュートラルを達成する「GX」や「DX」を実現するためのものとしての文脈で語られる風潮が強まっています。その変化を促したのが、デジタル化への進化圧となったコロナです。 Q.まさかコロナがEVシフトに影響を与えているとは思いませんでした。 CO₂もウイルスも、どちらも人間の目には見えません。カーボンニュートラルは、目に見えないCO₂削減の取り組みをマネーに変える欧州発の新しい経済ルールです。ウイルスやCO₂のような微小なものが企業の行動指針に影響を及ぼすようになったのがここ2~3年に起こった出来事なのですが、そのきっかけとなったのは、アメリカ・トランプ前政権の崩壊です。 トランプ前政権は欧州のルールメイキングに抗い、その流れに歯止めをかけようとしていました。トランプ前政権時、アメリカが「パリ協定」から脱退したことを覚えている人も多いと思いますが、あれもその動きの一つです。 端的に言ってしまえば、カーボンニュートラルに向けた行程の策定をめぐって、各国間の争いが激化しており、トランプ前政権は欧州のルールメイキングに「待った」をかけようとしていたのです。トランプ政権が巨大なダムとなってカーボンニュートラルへの流れをせき止めようとしていたわけです。 ところがトランプ大統領は再選を果たせず、2020年にバイデン政権が誕生しました。バイデン政権は方針転換し、EVシフトに舵を切って欧州と同じようにルールメイキングで主導権を握ることを狙い始めました。 「トランプ政権」という名のダムが決壊した結果、自動車業界においてEVシフトが激流のように進むようになったのです。EVシフトが加速した背景には、こうした政治的・経済的な動きが潜んでいるのです。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司) <つづく>

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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