EV仕様はフル充電で走行距離619km、内装も贅沢で、室内移動も楽々な電座D9だが、「何かが……」と小川フミオは思うのだった。 やはり2列めのシートが特別席 BYDとメルセデス・ベンツの合弁会社、騰勢汽車(Tengshi Auto)。ブランドは電座(Denza)だ。その代表的モデルであり、ジャパンモビリティショーでも展示されて話題を呼んだ「電座D9」とは、どんなクルマだろう。 私が、2023年10月に、深圳と珠海で運転できたD9は、プラグインハイブリッドの「D9 DM-i」と、ピュアEVの「D9 EV」。ひとことで言うと、快適そのものだった。 2023年10月26日から開催された「ジャパンモビリティショー」でD9 EVの実車を見たかたはご承知のように、2列め乗員に焦点を当てたような、ぜいたくな仕様が用意されているのも特徴だ。 2列目シートの操作は、スマホのようなコントローラーで行う。このあたりも、アルファード/ヴェルファイアとの近似性が指摘されるゆえんだろう。 スマートフォン型コントロールパネルでは、シートのポジションなどの調節が可能で、レッグレストが大きく持ち上がって脚を休められるし、10点マッサージの機能もここから使える。 フロントシートの背後には、2列め乗員のためにインフォテイメント用モニタースクリーンがそなわる仕様もあるけれど(ジャパンモビリティショーに展示された車両)、私が乗った車両にはそなわっていなかった。 後席への乗降のために、電動開閉式のスライドドアをそなえる。開口部は大きく、移動が容易なのも、国際的水準を軽くクリアしている。 さらに3列めへの移動は、2列めの独立型キャプテンシートのあいだをすり抜けていけばよい。これも無理なく移動が出来る。 内装は宜しいものだが、デザインの独自性は…… シャシーは、汎用性の高いBYDの「eプラットフォーム3.0」。じっさいは、ホイールベースは3110ミリに拡張されていて、EVでは103.36kWhのリチウムイオン・ブレードバッテリーと比較的大容量のバッテリーを床下に積む。 満充電での走行距離は519kmから619kmとされている。プラグインハイブリッドの満タンでの走行可能距離は945kmから1040kmと驚異的。最大190kmまでモーター走行が出来るという。 BYDの用意するスペックスには、つねにこのように幅がもたされている。仕様によって、若干の差が出るからだ。 ドライブトレインは、プラグインハイブリッドには、1.5リッターエンジンを使っての前輪駆動と全輪駆動とが用意されていて、EVはツインモーターの全輪駆動となる。 内装は、素材の選びかたといい、色づかいといい、洗練されている。悪くいえば、個性にとぼしいのだけれど、中国のメーカーが、デザインの独自性を取り戻すのは、もう少し先の話になるかもしれない。 個人的には、1950年代から80年代あたりまでの「紅旗 Hongqi」の「CA」シリーズのようなベロアの椅子みたいなシートを含めた内装、いまウケると思うだけれど。 いずれにしても、D9シリーズは、国際市場でもじゅうぶんな戦闘力をそなえたモデルだと思う。 <Vol.3へ続く>