パーツの少なさではなく使い終えたあとが大事
もうひとつ、それぞれの最大トルク値を比較すると、モーターの最大トルクは、自然吸気エンジンの倍近い大きさがある。そのモータートルクは、ターボチャージャーなど過給機を使うエンジンより大きい場合がある。回りはじめから大きなトルクを出すことができ、なおかつ、そのトルク自体もエンジンよりずっと大きなモーターは、構造上変速機を必要としないのである。
このためEVは、発進で力強く動き出し、そこから短時間に速度を高め、その間、変速による振動もなく滑らかに加速していく。

滑らかな加速は、同乗者にも変速の振動による負担をもたらさず、疲れにくく快適な移動を可能にする。ハンドルをもつ運転者と違い同乗者は、体を支えるものがないので、加減速で車体が前後に動くと、その都度、自分で体を保持しようと力まなくてはならないからだ。
そもそもモーターはトルクの値が大きいことから、アクセルペダルをそれほど深く踏み込まなくても十分な速度に達することができる。アクセルペダルをそれほど踏まなくてよいことは、消費電力を抑え、電費(エンジン車なら燃費)を悪化させずに済む、省エネルギーにも通じる。
まさにEVは、クルマでの移動にとって、いいことずくめだ。

そのうえで、変速機のような大きな部品がひとつ減ることで、車内空間の有効活用にもつながる。4輪駆動では、トランスファーと呼ばれる前後輪への駆動力配分機構もいらなくなる。そのうえで、床下のバッテリーケースが、プラットフォームの強化に効果をもたらしていることが知られている。
一方で、バッテリー容量確保のため、バッテリーケースとプラットフォームを一体化する手法は、検討の余地がある。
理由は、EVのあとのリチウムイオンバッテリー活用に際し、分解の容易さが求められるからだ。

EVとしての役目を終えた車両についているリチウムイオンバッテリーは、まだ70%ほどの容量を残している。これを二次利用しなければ、資源の有効活用にならない。バッテリーケースのつくりや、冷却のための配管などの設計の仕方によっては、分解に手間取る懸念がある。そうなると、二次利用へ向けたバッテリー確保に、原価上昇を招きかねない。
過去、自動車開発は車両性能の最高・最善を目指し、発展してきた。EVでは、廃車後の資源活用へも目を向ける必要がある。そのことに気づけるかどうかが、自動車メーカーの資質を決め、また技術者の技量を問うことになる。

消費者も、環境全般に視野を広げた商品の見極めが求められる。そこに、新たな事業の可能性も生まれる。
変速機やトランスファーなどが不要だという、部品点数の削減が、供給メーカーの先行きや個々の仕事の確保を難しくするのではないかとの一元的な視点ではなく、次の産業や事業が生まれる可能性を考え、未来を創造し、築いていくことが、21世紀には事業者にも消費者にも不可欠であり、EVはそうした問いかけをする商品でもある。


























































