コラム
share:

エアコンの使い方だけ気を付けるんじゃ足りない! EVの電費に影響する要因はほかにも沢山あった!!


TEXT:琴條孝詩 PHOTO:TESLA/TET編集部
TAG:

小さな心がけの積み重ねで電費は伸ばせる

<走り方の習慣や設定も電費に響く>

もうひとつ、空調や電装品と異なる角度で考えたいのが、ドライバーの走行習慣である。EVはモーター駆動ゆえに、発進加速は滑らかで力強いが、逆に急加速を繰り返すと、当然ながら消費電力は跳ね上がる。高速道路での速度も重要だ。時速100kmを超えると空気抵抗の影響で電費は急に悪化する。これはICE車でも同じ理屈だが、EVでは数値に現れやすいため、オーナーにとっては敏感になるポイントである。

高速走行する電気自動車

ドライブモードの選択も影響が大きい。多くのEVには、俊敏な加速が楽しめる「スポーツモード」や「パフォーマンスモード」が設定されている。これらのモードはアクセル操作に対するモーターの応答性を最大化するため、走行時の電力消費が増える傾向がある。穏やかな市街地走行では、「エコモード」や「コンフォートモード」を選ぶだけでも、電費を着実に改善できる。

ドライブモード選択の画面

タイヤの空気圧管理も、ICE車以上に重要だ。空気圧が低いと転がり抵抗が増大し、電費を悪化させるだけでなく、EVの生命線である回生ブレーキの効率にも影響を及ぼす。定期的なチェックを怠らないようにしたい。

<EVならではの「賢い走り方」と思わぬ落とし穴>

EVの運転の醍醐味であり、電費向上の要となるのが「回生ブレーキ」である。アクセルペダルを離すだけでモーターが発電機となって運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリーを充電する。この回生を最大限に活用する「ワンペダルドライブ」に慣れれば、フットブレーキをほとんど踏むことなく、スムースで効率的な走行が可能だ。しかし、この回生ブレーキも万能ではない。

意外な落とし穴として、バッテリーが満充電に近い状態では回生がほとんど利かなくなる、あるいは意図的に制限されるという特性がある。バッテリーを保護するため、それ以上充電できない状態では、エネルギーの回収が行えないのだ。100%まで充電した直後の下り坂などでは、普段通りの感覚でアクセルを離しても期待した減速が得られず、ヒヤリとすることがある。

下り坂でブレーキをかける電気自動車

また、自宅充電環境が整っている方はぜひとも出発前の「プレコンディショニング」を行ってほしい。これは、充電ケーブルを接続した状態で、出発時刻に合わせて事前に車内の空調を作動させておく機能だ。走行用のバッテリーではなく、家庭からの電力で車内を快適な温度にしておけるため、走り出しからの電力消費を大幅に抑えることができる。とくに冬場は、車内だけでなくバッテリー自体もある程度暖められるため、走行性能や回生効率の向上にも繋がり、一石二鳥の効果がある。

最後に、駐車場所を選ぶという、ごく基本的な工夫も馬鹿にはできない。夏は日陰、冬は日当たりの良い場所を選ぶだけで、乗り込む際のエアコン負荷は大きく変わる。EVの電費は、最先端のテクノロジーだけでなく、こうしたアナログな知恵の積み重ねによっても向上させることができるのだ。

駐車している電気自動車

EVとともにある生活は、エネルギーを常に意識する生活でもある。それは決して窮屈なものではなく、クルマの特性を深く理解し、対話しながら走るという、新しい運転の楽しみを与えてくれる。

今回紹介した内容は、数ある電費向上のヒントのほんの一部に過ぎない。自身の愛車と向き合い、試行錯誤を繰り返すなかで、あなただけの「最適解」を見つけ出すことこそ、EVを乗りこなす真の喜びといえるだろう。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
新車価格約3000万円も補助金を使えば半額で買える! トヨタのカワイイ新世代モビリティ「eパレット」の販売がスタート
more
コラム
エアコンの使い方だけ気を付けるんじゃ足りない! EVの電費に影響する要因はほかにも沢山あった!!
世界に衝撃を与えたアイオニック5Nをさらに超える6Nが公開! その恐るべき実力とは?
EV時代にゴロゴロ出てくる新興メーカー! 魅力はあるけど老舗ブランドにはない「危険性」もある!!
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択