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やっぱりマンション・アパート住まいにEVは厳しい? EVを2台乗り継ぐライターが語るホントのところ


TEXT:山本晋也 PHOTO:ENECHANGE/ユビ電/WEB CARTOP
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集合住宅での充電器の新規設置は難易度が高い

現時点でもっともEVオーナーになるハードルが高いと感じるのは、区分所有者が住む集合住宅、いわゆるマンションで、なおかつEV充電設備が備わっていないケースだ。

そこにはふたつの大きな課題がある。

ひとつは、集合住宅におけるEV充電設備の適切な選択と電気料金の負担(課金システム)。もうひとつが、共用部分となっていることが多い駐車スペースに充電設備を設置するためのコンセンサスを得る点にある。

前者については、簡易的なEV専用コンセントを設置するパターンから、利用者を明確にして課金するシステムまで選択肢は広いが、技術的な問題というのはほとんどないといえる。設置・運用コストにおける優劣があるため、その住環境や利用者における最適解を見つける難しさはあるかもしれないが……。

むしろ、最難題といえるのが共有部分にEV充電設備を設置するコンセンサスを得ることだろう。一般に、マンションの共有部分は管理組合・理事会が管理しているものだ。つまり、理事会などにより認められなければ、EV充電設備を設置することはできない。

マンションに充電器が設置されているようす

EVオーナーが多数派であれば多数決によって充電設備の設置を推進する動きも出てくるだろうが、現状の普及率では「EVなんか買わなければいい」という意見が多数派だろう。そして、充電設備がないためEVオーナーは増えることがなく、いつまでも共有部分にEVを充電する設備を用意しようというインセンティブが生まれないということになりそうだ。

ただし、今後はマンションなど集合住宅においてもEV充電設備に困ることは減ってくるだろう。たとえば東京都は2025年4月以降に新築されるマンションにおいて、以下に引用した条件でEV充電設備を義務化している。

大規模建築物(延床面積2,000㎡以上)を対象とする建築物環境計画書制度では、制度の対象となる建築主に、建築物を新築する際、5台以上の専用駐車場を有する場合にあっては、駐車区画数の20%以上の充電設備(上限値10台)及び駐車区画数の50%以上(設備設置区画を含む)の電気自動車充電設備を設置するための配管等を整備(上限値25台)し、10台以上の共用駐車場を有する場合にあっては、1台以上の充電設備及び駐車区画数の20%以上(設備設置区画を含む)の電気自動車充電設備を設置するための配管等を整備(上限値10台)することを義務付けています。

これから新築されるマンションにおいては、駐車スペースにEVの充電器もしくはEV専用コンセントを設置するための配線が整備されていることになる。すべての駐車スペースがEV対応になるわけではないが、今後のEV普及率を考えると、まずは十分な基礎充電が確保できるだけの条件となっていると評価できる。同じく、2025年4月以降に新築される戸建てを含む中小規模建築物(延床面積2000㎡未満)にも、EV充電に関する設備や配線が義務化されている。

集合住宅に設置された充電設備

冒頭でEVを運用する条件として、基礎充電設備を設置する容易さから「駐車スペースが敷地内にある戸建てを所有していること」と記したが、「東京都に限り、2025年4月以降に新築されたすべての住宅に住んでいること」という条件を追加することになりそうだ。

現時点では東京都に限定された新築時のEV充電設備義務化だが、これが日本全国で義務化となるような政策に発展していけば、EVの普及が進むことは間違いないだろう。

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