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数値による明確な定義がない
いま、水素の価格は、1N(ノルマル=0℃1気圧の標準状態)㎥(立方メートル)あたり、日本国内で100円であるという。これが8円に下がらないと採算が合わないというのが、日本鉄鋼連盟の見解だ。ざっくりいって、10分の1以下の原価を目指さなければならない。
ところが、いまの目標は、2050年に20円という数値がかかげられ、25年後においても、あるべき原価の2倍の値段の水素で鉄鋼をつくることになる。
EVは、駆動用のリチウムイオンバッテリーの原価が高く、車両価格を押し上げているといわれる。だが、グリーンスチールを使うとなると、車体そのものの値段も2倍近くに上がりかねないという話だ。
しかも、グリーンスチールがすでに広く出まわっているわけではない。製造そのものも手探りの状況なのだ。したがって、部分的にでもグリーンスチールを使うことを行えば、5万円の補助金増額にしようという流れである。
しかし、その補助金の適用には不透明さが残る。
そもそも、グリーンスチールの指定は何を基準に行われるのか、明確でない。
先のように、水素を使った製鉄がまだ道半ばである。それでも、多大なCO2排出量である製鉄業から、CO2の削減を実現するに際して、直接的な作業部分ではなく、その他の企業活動におけるCO2削減があれば、それをグリーンスチールとして認可する動きがある。そのほうが、鉄鋼製品そのものを水素化するより現実的で、かつ迅速な適応が可能になるからだ。
それを正当なCO2削減によるグリーンスチールの認定とするためには、そもそも、製鉄の現場でどれくらいのCO2が排出されているかを明確に数値化する必要がある。そのうえで、50%削減とか、100%削減といった成果が目に見えるかたちで示されなければならない。
EVや、そのほかのエコカーに限らず、家庭電化製品などを含め、鉄の仕様を脱二酸化炭素化するのは並大抵でなく、製造業全体で知恵を絞る必要がある。また、そうした商品を選ぶという行動が消費者にも求められる。
それに際し、補助金という手法で促すのであれば、補助金額を定めた経緯が明らかにされなければならない。
いまのエコカー補助金は、車種ごとに補助金額が異なっており、その高低の根拠は一切示されていない。補助金の原資は税金であるはずで、納税者に対し、使途の根拠を示すことが行政に求められるのはいうまでもない。それがあってはじめて、補助金政策の有用性が保証されるのではないか。