バッテリーの原価は1kWhあたり1万6000円ほど
電気自動車(EV)の値段が高いのは、バッテリー原価のせいだといわれている。それはいまなお続いている。
では、いつになったらエンジン車と同等の価格に落ち着くのか?
米国の総合情報サービス会社であるブルームバーグの数値などを参考にすれば、初代リーフが発売された2010年当時、リチウムイオンバッテリーの原価は1kWh(キロ・ワット・アワー)あたり1000ドルといわれていた。円換算は、その時代の為替相場に負うため、日本円でいくらになるかを正確には表現しがたいが、当時は80円台から90円前後であったので、90円で計算すると、1kWhあたり約9万円になる。
初代リーフは、24 kWhのバッテリーを搭載したので、それだけで216万円になる。また、2009年に発売された三菱i-MiEVは、バッテリー容量16kWhの軽EVでありながら438万円(消費税抜き)と値付けされたが、それくらいの価格でないと採算が取れなかったであろう。
では、現在はというと、2024年の数字で1kWhあたり111ドルであり、現在の円相場は145円弱なので、1万6000円ほどだ。現行の2代目リーフの標準車は40kWhを搭載するので、64.3万円がバッテリーぶんと考えられる。
バッテリーの原価だけを見れば、15年を経て83%も値下がった一方、バッテリー搭載量が1.6倍に増えたことにより、車載のバッテリー原価の点では、70%減になる。
以上は、ざっくりとした試算であり、全体像を掴むうえでの数字を考えておいてほしい。
リチウムイオンバッテリーの価格は、初代リーフが発売されたころに比べ、大幅に安くなっている。
安くなった要因のひとつは、電極の材料価格が下がったことによる。ただし、ここは資源の話なので、需要と供給の様子によって一方的に下がっていくということにはならず、状況に応じて上下する可能性がある。
それから、バッテリーパック内にいかに効率よくセルを詰め込めるかというパッケージング技術の改善や向上も、バッテリー原価の低減に効いてくる。
そのうえで、いかに減価償却費を下げるかであり、それには大量生産という昔ながらの手法が求められる。それが、ギガファクトリーと呼ばれるような大規模工場の建設につながる。ただし、ただ工場を大型化すればよいわけではなく、その稼働率をいかに100%へもっていくか、采配が問われる。
あるバッテリー専門家によれば、「稼働率がバッテリーの値下げに不可欠だ」という。つまり、売れるEVを開発し、それを計画どおり売り切る販売戦略があってはじめて、バッテリー工場の稼働率を100%へもっていけるのである。