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ホントにEVに乗り換えて大丈夫かな……不安なら確認! EVオーナーが語る買う前にチェックすべき3つのポイント


TEXT:琴條孝詩 PHOTO:日産/ホンダ/ENECHANGE/TET 編集部
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EVには新しい”気配り”が求められる

2)航続距離とバッテリー性能の現実的な理解

EVのカタログに記載される航続距離は重要な指標だが、その数字をそのまま信用してはいけない。最新モデルでも200~600km程度が一般的で、カタログに掲載されているWLTCモードによる航続距離は、理想的な条件下での数値にすぎない。実際の走行ではさまざまな要因で電費が変動する。

もっとも影響が大きいのは気温である。バッテリーは低温に弱く、冬季は夏季に比べて航続距離が20~30%減少することもある。加えてエンジンの熱を利用するICE車と異なり、EVの場合、暖房にバッテリーを使うため、航続距離が大幅に短くなる点に注意が必要だ。冬季に限らず、エアコンやシートヒーターの使用、高速道路での走行、急加速・急減速の多い運転スタイルも電費を悪化させる要因となる。

EVのイメージ

ライフスタイルに応じた適切な航続距離の見極めが重要なのだ。日常の通勤や買い物が主な用途であれば、250km前後の航続距離でも十分だが、週末に遠出や長距離ドライブを楽しみたい場合は、400km以上のモデルを選ぶと安心感が増す。普段の通勤距離、週末の買い物やレジャーでの走行距離、年数回の長距離移動の目的地までの距離など、具体的な数値を洗い出してシミュレーションしてみよう。

また、バッテリーはEVの”心臓部”であり、消耗品でもある。ほとんどの主要メーカーは8年・16万km以上のバッテリー保証を設けているが、保証期間終了後のバッテリー交換費用は非常に高額で、場合によっては数十万円以上となることもある。中古EVを検討する場合は、バッテリーの劣化具合や保証内容を厳密に確認することが重要だ。

EVのイメージ

3)購入・維持コストと地域特性を総合判断する

EVの経済性を正確に把握するには、初期費用だけでなく維持費や補助金制度、さらには地域特性も含めた総合的な評価が必要だ。

2025年度には、電気自動車購入時の国の補助金「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」に1100億円の予算が確保されている。車種やバッテリー容量によって異なるが、数十万円単位の補助金が支給される場合が多い。地方自治体も独自の補助金制度を設けているケースがあるため、国と地方の制度を併用できるかチェックしておこう。ただし、補助金の条件や金額は毎年変動し、申請は先着順であることが多いため、最新情報を公式サイトで確認し、購入タイミングを見極めることが大切だ。

維持費面では電気代の安さが最大のメリットだ。ガソリン代と比較して圧倒的に安価で、夜間電力プランを活用すればさらに節約できる。自宅充電がメインなら月々の燃料費は数千円程度に抑えられることも珍しくない。ただし、急速充電を頻繁に使うと1回あたり300~500円程度のコストがかかるため、利用頻度によっては思ったよりも維持費が高くなることもある。

普通充電のイメージ

税制優遇も見逃せない。自動車税のグリーン化特例による軽減、重量税や環境性能割の免税など、複数の優遇措置が用意されている。定期点検や車検費用についても、エンジンオイル交換やスパークプラグ交換が不要なため、長期的なメンテナンス費用を抑えることができる。

寒冷地での利用を考えている場合は、特別な配慮が必要だ。ヒートポンプ式暖房やバッテリー温冷房システムを備えたモデルを選ぶと、冬場の航続距離低下や快適性の低下を抑えやすい。寒冷地では充電スポットの凍結対策も重要な確認ポイントとなる。走りに関しても四輪駆動のAWDモデルのほうが雪道には心強い。

EVは、静粛性や加速性能、環境性能といったメリットがある一方で、バッテリー残量の管理や充電計画といった新しい”気配り”が求められる。従来のガソリン車とは異なる前提をしっかり理解し、「充電環境」「航続距離とバッテリー性能」「購入・維持コストと地域特性」という3つのチェック項目を自身のライフスタイルと照らし合わせ、十分なシミュレーションと情報収集を行うことが重要だ。これらの課題をクリアできれば、EVがもたらす新たな価値を存分に享受し、豊かなカーライフを実現できるだろう。

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