これまでの取り組みが今後の日産を支えていく
その後、2005年から2011年までは、モーターショーのEVコンセプトカーとして、PIVO(ピボ)1~3が製作されている。ピボ1では、のちにリーフが採用するラミネート型リチウムイオンバッテリーを搭載した。ピボ2では、客室が回転することでどちらの方向へも前進できるようにして後退せずに利用できるようにしたり、タイヤを90度横へ操舵し、真横へ移動できるようにしたり、EVならではの容易さを提案した。そしてピボ3では、自動運転による自動駐車など、バレーパーキングの自動化などを実現し、クルマ利用で面倒な場面をEVで解消する提案を行っている。技術面では、インホイールモーターを採用した。
こうしたEVならではの技術や用途を模索したうえで、2010年に量産市販のリーフが発売となるのである。
そのリーフの要素を活用し、NV200のEVも発売し、商用バンやミニバンでのEV価値を提供している。
ここまでのEV開発を通じ、かつその技術を応用して登場するのが、シリーズハイブリッドのe-POWERだ。
さらに、リーフは2017年に2代目へモデルチェンジし、翌2018年には中国市場向けとして4ドアセダンのシルフィ・ゼロエミッションが発売になる。
フラッグシップとして、2020年にはアリアが誕生。
そして、2022年に日産として初の軽EVであるサクラが、三菱自動車工業との協業で誕生することになる。この開発は、日産と三菱自の合弁会社であるNMKV(日産・三菱・軽・ヴィークル)によって進められた。
ここまでを振り返ると、リチウムイオンバッテリーに着目し、それをNECとともにラミネート型へ発展させるという独自の取り組みを行い、自社で生産し、初代リーフの発売につなげるなど、一貫したEVへの取り組みが支えてきた歴史を知ることができる。今日まで、バッテリーを起因とした事故ゼロを積み上げる、安心のEVという価値は、日産のほかにないのではないだろうか。
また、これから競争が激化するとみられる自動運転においても、日産は初代リーフで取り組みをはじめており、モーター駆動の発展性を早くから探り続けてきた。
そして、スカイラインのプロパイロット2.0で、世界に先駆けハンドルからの手離し走行を実現し、e-POWERのセレナにも適用した。
自動運転は、モーター駆動であるからこそ実用化が目に見えてくる分野であり、1990年代から30年に及ぶEVの取り組みが、日産のこれからを支えていくことになるのではないだろうか。