若者も手を出しやすい価格を実現
MONA M03は2種類のバッテリー容量とPlusとMaxグレード、合計4グレード展開です。どちらもBYD製のブレードバッテリー、そして前輪側のみにモーターを搭載するFWDグレードのみを設定しています。
このM03のEV性能について特筆するべきは2点あります。
まず1点目が効率性の高さです。M03の電費性能は11.5kWh/100kmと高効率であり、51.8kWhバッテリーながらCLTC基準で515kmという航続距離を確保することに成功。とくに電費のよさに直結しているのが1661kgという車両重量の軽さ、そしてCd値が0.194という空力性能の高さです。
また、2点目がファミリーセダンとしての実用性の高さという点です。トランク部分の収納スペースはクラス最大級の621リットルを確保。さらに最小回転半径も5.3mと、取りまわしのよさを両立することでファミリーセダンとしての扱いやすさを重視しています。
そしてもっとも注目するべき値段設定について、Maxは12.98万元、日本円で263万円を実現。じつはXpengはM03の発売開始当初、Maxグレードは15.58万元(316万円)からになるとアナウンスしていたものの、実際には大幅値下げを行ってきた格好です。
まさに、M03はハイエンドADASを使用できる中国でもっとも安価なモデルのひとつとして、とくにテクノロジーに敏感であり、ハイエンドADASが搭載されているプレミアムセグメントには手が出せないような大衆若者世代の希望の星となっているのです。
実際に、M03のEV性能や装備内容が競合と比較してどれほどのスペックを実現しているのかについて解説しましょう。比較対象はモデル3とともに、日産N7、さらにBYD Qin L EVなどを列挙しています。
M03 Maxは、
・航続距離600km
・急速充電は92kWに対応
・トランク容量は621リットルを確保
・ホイールベースも2815mm、最小回転半径は5.3m
・ビジョン方式におけるシティNOAを含めたハイエンドADASが標準搭載
・日本円で283万円という驚異的なコスト競争力を実現
とくに日産N7と比較してみても、EV性能で劣っているのは充電性能くらいで、N7よりも20万円ほど安価に発売することに成功しています。さらに注目するべきは、その標準装備内容の充実度合いです。
M03 Maxには、
・15.6インチのセンターディスプレイ
・プロセスノード7ナノのQualcomm Snapdragon8155P
・電動テールゲートはメモリー機能を搭載
・6方向電動シート調整、4方向ランバーサポート、シートメモリー機能、シートヒーター、シートクーラー、運転席側マッサージ機能
・ステアリングヒーター
・256色のアンビエントライト
・1.22平方メートルと、モデル3の0.71平方メートルと比較しても大型のガラスルーフ
・7スピーカー(8万円ほどのオプションで18スピーカーシステムにアップグレード可能)
・安全性について、高張力鋼の配合割合は73%、エアバッグも6つ装備
・車両保証期間は5年12万km、バッテリー保証も8年15万kmをカバー
・Nvidia Drive Orin Xチップを2つ搭載、演算能力は508TOPSを実現
・ビジョン方式としてLiDARを搭載せずに、複眼フロントカメラと7つものADASカメラ、4つのサラウンドビューカメラ、3つのミリ波レーダー、そして12の超音波センサーを活用することで、ハイウェイNOAとシティNOAに対応
これらの標準装備を網羅して、日本円で約288万円というコスト競争力によって需要が集中し、発売開始1時間の段階で1万2566台の注文を獲得。そのうちの83%がMaxグレードであり、ハイエンドADASをはじめとする装備内容の需要の高さがうかえます。
はたして、競合の日産N7やBYD Qin Lの販売にどのような影響を与えるのか。このM03 Maxグレードの追加によって、N7の注文キャンセルの割合が増えてしまうのかなど、最新動向に注目でしょう。
いずれにしても、いよいよ200万円台でハイエンドADASを使用できるEVが続々と登場しているのが中国市場の最前線です。これは、テスラが2万5000ドルのコンパクトモデルに対して思い描いていた姿に近かったはずでしょう。Xpengがテスラのコンパクトモデルの夢を引き継いで、さらにどれほど中国EVシフトを進めることができるのかにも期待です。