シートがユーザーにとって快適な座り心地を学習
そして、N7において特筆するべきは、EV性能ではなくファミリーセダンとしての装備内容の充実という観点です。車両中央に2.5Kの15.6インチセンターディスプレイを配置しながら、コクピットシステムはNissan OSという新世代OSを採用。駆動プロセッサーはQualcomm Snapdragon 8295Pであり、演算能力は60TOPS、メモリー容量は32GB、ストレージ容量も256GBと、これは競合を遥かに上まわるスペックであり、よってAIベースの複雑な音声認識システム、およびDeepSeekの統合も可能なのです。
さらにハイエンドADASについて、日産はMomentaと共同で開発して、高速道路上における追い越しや分岐対応、障害物への回避挙動などに対応するハイウェイNOAとともに、いくつかのルートを記憶させることで、市街地における信号や右左折、ラウンドアバウトや障害物への回避挙動などに対応させるメモリーシティNOAに対応。バレーパーキングをはじめとするハイエンドな自動駐車機能にも対応します。
その上、日産はファミリーセダンとしての快適性を追求するために、乗り心地と装備内容を充実させています。リヤにはマルチリンクを採用しながらシートを再設計しました。シートマッサージを搭載しながら、AIベースでマッサージやランバーサポート、サイドサポート、シートエクステンション機能などを連携させることで、ユーザーのもっとも快適な座り心地を学習。これらのアルゴリズムはOTAアップデートで改善されていきます。
また、N7はアームレスト下に5.8リットルの冷温庫を内蔵。−6℃から55℃にまで対応し、最大で24時間保温機能が持続可能です。
そして、今回もっとも衝撃を与えたのが値段設定でしょう。N7のエントリーグレードは11.99万元、日本円で約236万円という値段設定を実現。この値段設定は、ティアナのMSRPである17.98万元と、シルフィのMSRPである10.86万元の間に設定され、極めてコスト競争力が高いです。また、すべての装備内容が網羅された最上級グレードでも14.99万元(約295万円)からと、半ば信じられないような値段設定です。
今回のN7のコスト競争力について、ベンチマークとなるテスラ・モデル3をはじめ、Xpeng Mona M03やBYD Qin L EVなどの直接の競合と比較すると、N7はCd値を0.208と空力性能を高めるなどして、635kmの航続距離を確保しながら、最大240kWの急速充電に対応。これらのEV性能を実現した上で、中上級グレードは13.99万元であり、テスラ・モデル3と比較しても200万円近くも安価な値段設定を実現しています。
さらにXpeng Mona M03とBYD Qin L EVの12.98万元と比較しても、EV性能を踏まえれば極めて競争力が高く、航続距離を525kmに落とせば12.99万元からと、これら競合と完全に同じ値段設定となります。
そして、今回のN7の競争力を分析する上で欠かせないのが標準装備内容です。今回は上級グレードとそれぞれ比較していくと、N7 Maxには、以下の装備がついています。
・19インチホイール
・15.6インチ2.5Kセンターディスプレイ、プロセッサーはQualcomm Snapdragon 8295P
・USB Cポートは全部で3つ、27Wに対応
・ワイヤレス充電機は強制空冷機能付きの50W急速充電
・トランクはハンズフリー、メモリー機能付きの電動開閉
・ADAS用カメラを使用したセントリーモードに対応
・新設計シートは、運転席はメモリー機能付き6方向電動調整、4方向ランバーサポートに加えて、レッグレストとサイドサポート、シートヒーター、シートクーラー、シートマッサージに対応
・助手席は8方向電動調整と、さらにシートエクステンションも追加
・256色のアンビエントライト
・モダンなデザインに見せるサッシュレスドア、および格納式のドアハンドルを採用
・一面のガラスルーフ
・-6℃から55℃にまで対応可能な5.8リットルの冷温庫
・Nvidia Drive Orin-Nプロセッサーを搭載する新型プロパイロットはハイウェイNOAとメモリーシティNOAに対応
・V2L機能は最大6.6kW
・音響システムはサブウーファー付きの14スピーカーシステム。最大出力は910W
・リヤサスペンションにマルチリンクを採用
・エアバッグは6つを装備。最高2000MPaのAピラー骨格を含めた高張力の配合割合を高めることで衝突安全性を確保
・車両保証は4年12万km。バッテリーとモーターなどの主要EVパーツはファーストオーナーに限って無制限保証
このように装備内容を分析すると、N7のコスト競争力の高さが一目瞭然です。これは競合のXpeng MONA M03やBYD Qin L EVと比較してもまったく遜色がありません。実際に、発売開始数時間の段階で、すでに獲得していたディーラーにおける受注分も含めて1万台を超える受注を獲得済みです。
はたして、中国市場で危機的な販売不振に見舞われている日産が、N7やN7を皮切りとして2027年夏までに導入する9車種の新エネルギー車の存在によって、反転攻勢を仕かけることができるのか。まさに中国日産の命運をかけた戦いが始まろうとしているのです。