自動車メーカーは試験を行っている
高電圧の電気で走る電気自動車(EV)に、もし雷が落ちたら大丈夫なのか、安全なのか?
答えは、そういった試験を自動車メーカーではやっており、安全を確認している。雷の威力は、数億~数十億ボルトの高電圧で、数万から数十万アンペアもの電流が流れるといわれる。100ワットの電球90億個というエネルギーだ。これが、1000分の1秒という速さで瞬時に通り過ぎる。
大木でさえ割けてしまうような出力なので、雷に打たれたらひとたまりもない様子は、そうした数字の大きさからも推定できる。
そのうえで、電気は流れやすい場所を選んで流れるという特性がある。したがって、電気が流れやすい通り道を用意しておけば、そのほかの場所は安全といえるのである。クルマのなかにいれば安全だというのは、人間の体に比べ、鋼板で作られているクルマの車体のほうが電気は流れやすいためだ。
EVも車体が鋼板でつくられているので、一番電気がとおりやすいところを伝って雷の巨大な電力が流れるため、問題はないとされる。実際、初代リーフのときから、人工的な雷の電力に相当する巨大なエネルギーを使って落雷の実験をし、安全を確認している。
ただし、雷の直撃を受ければ、莫大な電気エネルギーが車体を流れるので、車内の電気系がなんらかの悪影響を受ける可能性は考えられる。
大平原にクルマが1台というような状況は、避けられるなら避けるべきだろう。ゴルフ場に傘やクラブをもって、ひとりで立っているようなことはしないようにと注意喚起されるのと同様だ。近くに避雷針を設けた頑丈な建物があればそこへ避難し、避雷針の誘導線から離れて待機できればより安全だ。
ところで、科学の知識のある人は、タイヤで使われるゴムや大気中の空気は、電気を通さない絶縁体であるはずだと疑問に思うかもしれない。
その知識は物性として正しい。しかし、雷ほど強烈な数値に達する電圧や電流の電気エネルギーは、絶縁体であるか伝導体であるかを問わず、それを突き抜けてしまうほどの威力があるということだ。したがって、電気がとおりやすい車体の鋼板を伝い、タイヤのゴムさえもものともせず、地面へ電気が流れていくのである。